ちなみに読んでいれば分かると思いますが、トリップ後のアヤセちゃんの姿は・・・
とりあえず歩いててわかるのはよくわからない奴らと人間が共存している世界であるということである。普通に会話してる奴らもいれば、避けて通る奴らもいる。なるほど、共存といっても受け入れられないやつは受け入れられない。十人十色、千差万別ってところか。
店も英語のやつより見慣れない言語の看板のほうが多い。
「共存という名の強要・・・か?」
歩きで観察できるのはこれくらいだろうか?と思っていると何やらさっきとは別の路地から怒鳴り声が聞こえた。
ほんの少し角度を変えて遠目に路地の中を見てみると弱そうな人間の男をよくわからないやつらが取り囲んでいる。穏やかじゃねーな。と、取り囲んでる奴の中でも特に背の高い奴が腕を上げてその手には財布、のようなものがあり、人間の男はそれを取り返そうとしているらしかった。・・・カツアゲか。
なんかこのパターン前にもあったような気がする。まったく感覚が鋭いと余計なことにも気が付いてしまう、そのうえなんとなくこういうの見つけると放っておけない。我ながら困った性分である。
自分に溜息を吐きながら問題の路地に入った。
「なあ、そんなとこで何してんの」
「ああ?」
「見てわかんねーの?嬢ちゃん、カツアゲだよカツアゲ!!」
「うわ、ついにさらっと認めやがったよこいつら!!」
人間の男は両手を上げつつ的確なツッコミを披露する。必死そうに見えて実は余裕あんじゃねーの?こいつ。
「とりあえず、返してやったら?
「ぶわはははは!何言ってんだこの嬢ちゃん!!」
「こいつは取った時点で俺らのなんだよ!部外者はすっこんでな!!」
「なにもできねえ人間のくせによお!」
「よく見ればいい女じゃねえか・・・まあ相手にすんだったらもうちょい年食ったほうがいいがきっと金持ちの変態どもには大人気だろうぜ!」
カツアゲに人拐いこいつらチンピラとか鉄砲玉とかそういうのか?つーかその図体で人間一人相手にって見かけ倒しかよ・・・
このままにしてても埒があかないので強行手段にでも出るか。そう思った私は上げられた手から財布を奪い着地する。
「取ーった」
「ああ!そいつは俺らのだ返しやがれ!!」
「ばーか、元々はそいつのなんだろ、それに奪った時点で私のもんだ。おまえらがそう言ったんだぜ?それを私がどうしようが私の勝手だ」
「この女ァ!!」
私に盗られたのが嫌だったのか、それとも言い返しが癪に障ったのか私に襲い掛かってきた。単純だな、まあひょっとしたら私も人のこと言えないかもしれないけど。
にしても・・・
「遅い」
今まで人間離れした捜査官たちや喰種の実力者相手に戦ってきたこともあってかこいつらの動きがすこぶる遅く見える。なので人間や喰種ではないこいつらに効くかは分からないが、試しに打ち込んでみた。
「げ」とか「え゛」とか短い悲鳴をあげて全員倒れ伏した。・・・本当に見かけ倒しかよ。ならなんでこういうことするかなこういう奴ら。
とりあえずこの場で唯一無事な男に話しかけることにするか、財布返さないとならないし。
「そこのあんた、無事?」
「はあ、なんとか・・・」
気の抜けた返事をする男に財布を投げ、それを男がキャッチした。
「そら、大切なもんならしっかり持っとけよ。こんな路地うろつくな、またさっきみたいな奴に絡まれるぞ」
「あ、ありがとう!」
「別に、私はたまたま通りかかっただけだから」
「でも本当に助かったよ、給料入ったばっかりでこれから仕送りしようと思ってたとこだったから」
仕送り?しかも給料入ったばっかりって・・・じゃあもう少しでほんとにヤバイとこだったのかこいつ。
「気を付けろよおまえ・・・世の中ってタイミングのいいことばっかりじゃないんだから」
「うう、それは身をもって知ってる・・・」
「じゃ、今度から気を付けろよ」
「あ、ちょっと待ってお礼、お礼させて!」
「いいよそんなの・・・あ、やっぱり待って、それだったら―――」
「この世界のこと、教えてくれる?」
「は?」
これが、私、金木絢世と秘密結社ライブラに所属する青年・レオナルド・ウォッチの出会いである。
文中は濁してアヤセちゃん本人もまだ気が付いてませんが、実はアヤセちゃんカネキくんと出会った頃の15歳くらいの姿になっています。レオが敬語を使わなかったのもそのためです。
次はレオ視点にするか、アヤセちゃんにするか迷ってます。
ちなみにカネキくんとのカップリングが確立しているので友情系になります。