Re:絶望の戦士から始める異世界生活 作:スーパーサイヤ人
人造人間……それは、世界を瞬く間も無く地獄に変えた二人組の総称であり、今やその名を知らぬ者はいない、恐怖の代名詞である。
――そう、その筈だが
「人造人間? 何だいそれは?」
――それは、俺がいた世界に限ることでしかない。
「くっ、やはり……か」
ラインハルトさんの返答に、俺は奥歯を噛み締める。
事の異変には事前に気付いていた。中世期風の街並み、見覚えがない文字と地名に平穏に日常を過ごす星の数ほどある人々。ここまで来たら、最早否定する余地もないだろう。
「でも、なぜ異世界に……」
「ん? 異世界?」
心中に留めるはずだった疑念を思わずこぼしたところを、ラインハルトさんは見事に拾い上げ、此方に問いかける。それに俺は無意識に疑念を口にしていたことに気づき、「あ」と声を漏らし、反射的に口を手で塞いてしまう。
何かを隠そうとしている人の仕草の見本である。それを見てラインハルトさんは、笑みを漏らし苦笑いを浮かべ、
「何か、困ったことでもあるんかい? 悟飯?」
「い、いえ。そんな大したことじゃ」
何とか誤魔化そうとしつつも、この人相手では適当な嘘は通用しないだろう。明確な理由はないが、肌に触れる彼から漂うオーラが自分にそう告げる。
「本当かい悟飯、必要であれば手を貸すよ」
予想通り真っ先に疑ってくるか、まぁ先程のあの動揺ぶりじゃ、一般人でも疑念を抱かないほうが可笑しいだろう。それよりも、『剣聖』と聞くからに、重任を背負われ忙しいだろうにも関わらず、見ず知らずの俺にここまで関与を携ろうとする所、この人、ラインハルトさんはかなりのお人よしに違いない。
「分かりました」
誤魔化しても無意味。ならば素直にこの人を頼ればいい。
「実は人探しをしていまして……」
ただ、別の目的で。
「人探し? どんな人を探しているのかい?」
脳裏に蘇るのは、ついさっきまで自分が追っていた耳が尖った少女。
「えっと、そうですね。白いローブを羽織った銀髪の女の子ってところですかね」
「白いローブに、銀髪……」
「?」
――気が……
ほんの一瞬だが、俺は確かに感じた、強烈且つ静かな気の歪みを。
それの意味を吟味する前に、
「……その子を見つけて、どうするんだい?」
「あ、心当たりがあるんですか!?」
期待できると踏んで、顔を綻ばせてしまう。それにラインハルトさんは一瞬にして、僅かに目を見開くと、瞼を閉じすまなさそうに口を開いた。
「ううん、すまない。ちょっと心当たりはないな。もしよければ探すのを手伝うけど」
「あ、いえ、そこまでしなくでも」
実際人探しの目的が達成したとしても、その後の予定は全く立てていない。あの銀髪の少女の捜索に出たのは、単に力になりたかっただけで、言い方を変えればただの『余計なお世話』だ。最終目的である盗品の奪還の作戦の検討もないこの状況で、救助を要求するわけにはいかない。とは言え、ここまで来て人の好意を無駄にするわけにも……
そんなことを考えていた時だった。
――! 待てよ……
「すみません、ラインハルトさん。質問を変えてお聞きしたいことが――」
「? なんだい?」
夕日の日差しが愛着の山吹き色の道着と同化し、現在の時刻を告げている。
此処は貧民街。盗品をさばくとすれば、治安の悪いところで行われる可能性が高い、と推測し、ラインハルトさんにスラム街のような法律機関が働きにくい、地域の在り処を尋ねた結果、俺はこの場にいる。
個人の気を分別することができなくなったため、盗品の主の捜索は仕方なく断念したが――
「取り合えず、進歩はあった……か」
貧民街の方々の協力も得て、俺は主に盗品を中心にお金のやり取りをしている、とある場所の情報を入手した。そして、俺は今その場を目的地にし、この地を歩いている。
十数分の時が経ち、俺はある平屋の前で足を止めた。
「これが盗品蔵か、印象と少し違うな」
情報では、フェルトという名の女の子が盗品を
「気は一つ……か」
扉の前に立ち、とりあえず木造のそれをノックする。
「すみませんー、何方かいらっしゃいませんか?」
一応中の人に呼び掛けてみるが、もし必要の場合は強行手段にでる。もとい、法に反して経済活動を行っているから、多少乱暴に扱っても問題ないだろう、と思ったところで気が動き出し、こちらに近づいてきた。警戒心を抱きながら、これからの展開に注目したところで、
「大ネズミに」
「はい?」
先ほどの呼びかけに応じ帰ってきた返事に、俺は素っ頓狂な声を上げる羽目になった。
悟飯は、片腕を失っていることから、貧民街の人達に同情されているから、聞き込みは協力的だった。