真・恋姫†無双 ご都合主義で聖杯戦争!?   作:AUOジョンソン

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いったい何スロットさんなんだ・・・!

それでは、どうぞ。


第八話 南蛮と仮面と騎兵と

「ゆーえちゃん!」

 

「あ、響さん」

 

ギルガメッシュ達が出かけてから数日。

響は月へと声をかけた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「どうかしたって訳じゃないんだけどね。今からお昼でしょ? 詠ちゃんも誘ってお昼食べに行こうよ!」

 

「もうそんな時間ですか。・・・そうですね、そうしましょう。詠ちゃんは確か・・・お洗濯してるはずです」

 

「じゃ、迎えに行きますかー!」

 

「はいっ」

 

メイド服を着た奇妙な二人は、益体の無い話をしながら詠のいる所まで歩き始めた。

 

・・・

 

「詠ちゃん」

 

「あ、月。どうかしたの?」

 

「あのね、お昼一緒に食べよう?」

 

「もうそんな時間・・・うん、良いわよ」

 

メイド服三人娘は街へと向かって歩いていく。

途中、うげっ、と声が聞こえたが、響が

 

「ああ、多分ハサンじゃないかなぁ。あの子、私たちを守ってくれてるんだよ」

 

そう言った後、響は誰もいない草むらに向かってありがとねー、と声をかけ、再び歩き始める。

 

「そだ、今日は街でお昼食べよっか」

 

「良いわね。取り敢えず街に出てから考えましょ」

 

・・・

 

「ちょっと、どこまで行くのよ、響」

 

「えへへー、こっちの路地裏に、美味しいラーメン屋、見つけたんだー」

 

「へぅ、響ちゃんは元気だね・・・」

 

町へと出てきた三人は、響の先導で美味しいラーメン屋があるという路地裏まで来ていた。

昼間でも若干薄暗く、人通りもほとんど無い道を歩いていくと、先を歩いていた響が何かにぶつかった。

 

「ひゃうっ、っとと、ごめんな・・・さい・・・?」

 

「ああ? ・・・んだ、お前ら」

 

強面の男が振り返り、三人を視界に入れる。

じろじろと一通り見てから、にやり、と笑い

 

「こいつは良い所に来たな。ちょうど商品が足りなくて困ってたんだ。良い感じに着飾ってるし、そのまま連れて行けるな」

 

その言葉を聞いた響が男の足元を見ると、縄で縛られた何人かの子供が見えた。

 

「ふぇ? えーと・・・ひ、人攫いさん?」

 

「そのとおりだぜ。こりゃ高く売れるなぁ」

 

「・・・響、さっさと片付けなさい。アサシンなら数秒もかからないでしょ?」

 

なにやら一人で喜んでいる人攫いを前に、詠は呆れたようにため息をつきながらそういった。

響は、あ、そっか、と何かに気づいたように声を上げてアサシンを呼ぼうと試みる。

 

「きて、アサシ・・・」

 

「おいおい、そういうのはいけないんだぜ?」

 

「ン・・・て、誰?」

 

三人が来た方向とは逆の方向からやってきたのは、紙袋を被った男と奇妙な被り物をした人影だった。

 

「・・・あれ、あのオレンジ色のほう・・・サーヴァント?」

 

「なんですって? ・・・アサシンは引っ込めておきなさいよ」

 

「りょ、了解っ」

 

詠に言われたとおり、響はアサシンにもう少しだけ隠れてて、と命令を下した。

そんなことをしているうちに、男たちはすでに臨戦態勢に入ってしまっていた。

 

「変な被り物しやがってよぉ。・・・いいぜぇ、少し痛い目見てもらおうか」

 

「いや、攫うのは駄目だからその子達を放せって言っただけなんだけど・・・ああもう、めんどくせえな。ライダー、やっちまえ」

 

「んだよ、そこまで言っておいて俺にやらせんのかよ。・・・ったく、しゃーねーなー」

 

そういうと、ライダーの身に着けている外套から、黒いもやで構成された手が出てくる。

 

「ちょっくら、寝てろ」

 

ライダーが男に手を翻すと、男は何度かふらついた後、その場に倒れてしまった。

やれやれ、とライダーのマスターがため息をつくと、月たちに声をかけた。

 

「無事かー?」

 

「あ、うん! ありがとねー!」

 

「あー、礼はこっちに言ってくれ。俺はただついてきただけだからよー」

 

「ケケ、おら、この子達解放するぞ」

 

「あーはいはい。分かってるって。悪いけど、手伝ってもらって良いかー?」

 

「もちろんっ!」

 

四人で子供たちにつけられていた縄などを解き、その縄で人攫いを拘束した。

その時、人攫いの顔を見ていた詠が何かに気づいたように声を上げる。

 

「・・・この男、どっかで見たことあると思ったら、手配書だわ。こいつ、ここ最近子供たちを攫って売ってるらしいのよ」

 

「そなの? ・・・だったら、子供たちと一緒にお城に連れて行こう? この子たちの親も捜さないと」

 

「そうね。・・・そうだ、そこの変な被り物した二人組。助けてくれてありがと。一応謝礼とかあるから、城に来てもらっていいかしら」

 

詠の言葉に、ライダーたちは被りを振った。

 

「いらねえよ。特に何もしてねえしな。・・・それより、あんたたち、マスターだろ?」

 

「っ! 気づいてたの?」

 

「そっちの女がサーヴァント呼ぼうとしてたの、こいつが感知してたんだ」

 

「このくらい近くなら、呼ぼうとしたときの念話の魔力で分かるもんだぜ。クラスまではわからんけどさ」

 

「だから、俺たちを見逃してくれればいいかなぁって」

 

「・・・そう。分かったわ」

 

「お、話が分かるな。じゃーなー」

 

そういい残し、ライダーたちは去っていった。

 

「・・・アサシン、人攫いさんを連れてお城に行って。で、兵士さん何人か呼んできて」

 

こくり、と頷いたアサシンが人攫いとともに屋根に消える。

 

「ねえ、響?」

 

「ん?」

 

「アサシン、兵士呼んでこれるの?」

 

「ああ、いくつか言葉を書いた竹簡を持たせてるの。だから、呼んでくるだけなら出来るんだ」

 

「準備いいわねぇ、意外と」

 

「まぁ、ギルさんに言われたことなんだけどね・・・」

 

「・・・ああ、そう」

 

「えへへー」

 

「二人ともー、お話してないで、みんなの介抱手伝ってよー・・・」

 

「あ、ごめん月!」

 

「い、今すぐ手伝うよーっ!」

 

泣きじゃくる子供たちの世話にしばらく奔走していると、やがて数人の兵士が到着し、子供たちを城へと連れて行くことになった。

 

・・・

 

「そういえば、あいつらのクラスってライダーってやつでいいのかしら」

 

「たぶん。あのマスターさん、ライダー、やっちまえ、って言ってたし」

 

「じゃあ、騎兵の人なんだね。・・・どう見ても、馬に乗りそうなカッコじゃなかったけど」

 

「そ、そうだね。でも、あの人達は・・・悪い人じゃないみたいだね」

 

「そうだね。人助けしてたし」

 

「・・・兎に角、帰ってきたらギルに知らせてあげれば? 一応ハサンにも警戒して貰っておいた方が良いわ」

 

「ん、そうするよ、詠ちゃん」

 

・・・

 

「・・・おや」

 

「どうした? キャスター」

 

「街中で魔力使ってるのがいるね」

 

「・・・凄いね。何? 宝具?」

 

「それはないだろうね。宝具なんて使ってたらすぐ分かる。うーん・・・何かの魔術かな?」

 

「魔術? ・・・二人目のキャスターとかいうことじゃないだろうね・・・」

 

・・・

 

セイバーの正体は劉備だと言うことは一部の将だけの秘密となった。

呼び方も、劉備と呼ぶとややこしいので、これまで通りセイバーと呼ぶことに。

 

「それにしても、セイバーの奥の手って固有結界だったのか」

 

将達との話が終わった後、俺とセイバーは銀の所へと戻り、一緒に歩いているところだった。

 

「うむ。私には宝具らしき宝具はないからな」

 

「そう言えば銀は大丈夫なのか? 魔力とか」

 

気になったことを銀に聞いてみる。

 

「ん? ああ、セイバーから聞いてたんだけどさ、あれってセイバー達が維持してるみたいなんだよな。俺は展開する魔力だけだから、そんなでもない」

 

「そうなのか」

 

4次の時のライダーみたいなものかな。でも3人で維持するって凄くないか。

話の途中、ふと、魔力を感知した。場所は・・・蜀!? 

 

「セイバー」

 

「ああ、私も感じた。蜀で誰かが戦ったのか・・・?」

 

「まさか、アサシンとバーサーカーとか・・・」

 

「それはあり得ないだろう。いくら何でも白昼堂々街へと出現させたりはしない」

 

「そうだよな。・・・何かあったら俺を呼べとは言ってあるけど・・・」

 

何かあれば令呪で俺を呼び寄せろとは言っておいたが、果たして月は令呪を発動できるんだろうか。

3つしか無いので試すことも出来ずに此処まで来てしまったが。

 

「アサシンの気配遮断と素早さは一級品だ。小柄な少女2、3人抱えて逃げるくらいは出来るだろう」

 

「ああ。・・・それに、もう魔力が使われた形跡がない。多分大丈夫・・・かな」

 

無事だと良いけど。

そんな話をしていると、南方で南蛮を押しとどめている紫苑たちの元へと到着した。

いきなり現れた大軍に南蛮兵は驚いたらしく、すぐに撤退していったので、紫苑たちと合流して、蜀へと戻る。

さて、月と響から話を聞かないとな。

 

・・・

 

蜀へと戻ってきた。

桃香達には悪いが、すぐにセイバーと銀を連れて月の元へ。

 

「月っ!」

 

「あ、ギルさんっ。おかえりなさい」

 

月が笑顔で駆け寄ってくるので、頭を撫でながら声をかけた。

もう頭を撫でるのが恒例になっているな。

 

「ただいま。向こうで魔力を感じたけど、サーヴァントに襲われたのか?」

 

「いいえ。えっと、あと少しで響さんと詠ちゃんが休憩だから、その時にお話します」

 

「分かった。セイバー・・・は、ともかく、銀は鎧を外してこい」

 

「りょーかい。じゃ、一旦解散だな。行こうぜ、セイバー」

 

「うむ。また後でな、ギル」

 

二人は鎧をならしながら城へと消えていく。

 

「・・・ギルさん」

 

「ん?」

 

「先にお話してしまいますけど、私たちが見たのは騎兵の英霊でした」

 

「ライダーか。真名とかは分かった?」

 

「いいえ・・・なんだか、詳しく見ようとすればするほどもやがかかったようになってしまって・・・」

 

「そうか・・・それ、もしかしたらそういう宝具なのかもな」

 

「へぅ・・・お役に立てず、申し訳ありません・・・」

 

「気にするなって。月はいつも頑張ってくれてるんだ。それだけで嬉しいよ」

 

「えへへ・・・そういってもらえると嬉しいです」

 

今にも泣きそうだった月が笑顔になったので安心していると、背後から響の声が聞こえてきた。

 

「あ、いたいた! ギルさーん! 月ちゃーん!」

 

響の声に気付いた俺達は二人と合流した。

すぐにセイバーと銀も来たので、ぞろぞろと中庭へと向かう。

 

・・・

 

「それで、二人とも被り物をしていたんだな?」

 

「はい。それで、ライダーのほうは黒い外套も身に着けてました。そこから、黒い腕がにゅっと出てきたんです」

 

「身長とかは?」

 

「隣に立っているマスターさんより大きかったと思います」

 

「そだね、九尺はあったんじゃないかな」

 

うーむ、約2メートルほどか・・・?

とすると、結構でかいな。

 

「ああ、後あれね。なんか、サーヴァントが見づらい感じがしたわ」

 

詠が思い出したように言った言葉に、セイバーが反応した。

 

「見づらい?」

 

「ええ。こう・・・ぼんやりと見るだけなら問題ないんだけど、細部を見ようとすると見づらくなるというか・・・」

 

・・・まさか、ランスロットとかじゃないだろうな・・・。

 

「・・・直接戦うときはそこに気をつけないと駄目だろうな」

 

「そうだな。あと、マスターや君たちは一人で接触しないこと。私かギル、ハサンと共に接触すること。良いな?」

 

「はい。分かりました」

 

「ふん。ま、いいわ」

 

「はーいっ」

 

セイバーの言葉に、三人娘はそれぞれの返事を返す。

 

「マスターは?」

 

「ん? ああ、文句ないぜ。了解だ」

 

「よし。ならば、今日は解散しよう」

 

・・・

 

将達が集まって、いつものように会議を行う。

会議で良いのだろうか。軍議・・・とも何か違う気がするしなぁ、と変なことを考えながら朱里達の話しを聞く。

曰く、曹操、孫策の二つの勢力に対抗するには、今この時期にどれだけの領土を手に入れられるかが勝敗の分かれ道だ、と。

 

「でも、南にある南蛮って国のこと、鈴々はよく知らないのだ。どんなとこなのだー?」

 

「未開の地、と言ったところです。暑くて、虫がいっぱいいて、密林が生い茂っているところですね」

 

それを聞いた蒲公英が嫌そうな声と顔で文句を言うと、それに魏延が蒲公英に挑発の言葉をぶつけ、それからはいつも通り売り言葉に買い言葉だ。

言い争っていた二人を止めた後、桃香が朱里に南蛮の情報が少なすぎると意見をあげた。

 

「確かにそうですね。ですが、南方の村が頻繁に襲われている今、あまり悠長にはしていられません」

 

「朱里の言うとおりだな。近頃南方の村では桃香さまに対する不満が募っていると聞く。このままではまずい」

 

その後、順調に会議は進み、俺は朱里と雛里の手伝いをすることになった。

天の御使いが居ないので、その代わりに南蛮へ持って行く物などを二人に教えないとな。

 

「薬を沢山、ですか?」

 

「そう。暑いって事はすぐに食べ物が駄目になるって事だからな。食あたりとかの対策に薬を沢山持って行かないと」

 

今、俺は朱里達の部屋で持ち物の確認などを行っている。

あ、水を濾過する装置も進言しておいた方が良いのかな。

 

・・・

 

南蛮へと出発する前日、信じられない物を見た。

 

「どうしてこうなった・・・」

 

「どうしてだろうねぇ・・・」

 

目の前には、かなりカオスな状況ができあがっていた。

 

「なーんで、俺がこんなところに・・・」

 

「・・・」

 

「むむ、この二人・・・なかなか出来るな・・・」

 

今、俺の視界には街の人達が作った人垣に、屋根の上でにらみ合う三人の姿が映っている。

一人は、華蝶仮面。

そして、外套を身に着けたライダー。

更に、アサシン。

この顔を隠した人達のにらみ合いの理由は、少し前の事件まで遡る。

 

・・・

 

南蛮出発の前、最後のライダーを探すチャンスだった。

これを逃せば、南蛮から帰ってくるまで探すのはアサシンだけになる。

それだけでは危険だと言うことで、俺とセイバーも出張っているわけだ。

 

「にしても、見つからないなぁ」

 

「そんなに簡単に見つかったら苦労しないって」

 

「もうここから出て行ったのかもしれないしなぁ」

 

ここに住んでいるという可能性は少ないだろうし、ありえるな。

因みに、響が一緒にいるのは月、詠共に仕事を抜け出せないからだ。

今度二人に労う意味で何処か連れて行ってあげようと思う。

 

「それにしても、手がかり無しで探すのは辛いよねぇ」

 

「だなぁ・・・響は一応目撃者なんだから、頼りにしてるぞ」

 

「うんっ、頼りにされますっ」

 

そんな話しをしながら街を歩いていると、俄に騒がしくなってきた。

 

「なんだろう。なんかあったのかな?」

 

「取り敢えず行ってみようよ!」

 

「ん、ああ・・・」

 

響に手を引っ張られるままに騒ぎの元へ。

人垣が出来てきている場所で野次馬の仲間入りを果たした俺達は、まわりの人に状況を尋ねる。

 

「なんでも酔っぱらいが喧嘩を始めたらしいんだよ。で、喧嘩がどんどん熱くなって、ついに剣まで出たんだけど・・・」

 

「だけど?」

 

「こう、ばばっ、と出てきた華蝶仮面が二人の争いを止めたんだよ。そしたら、変な被りもん被ったやつまで出てきてさー」

 

変な被り物って、まさか・・・。

 

「響、ちょっと行ってくる」

 

俺が声をかけると、響はこくりと頷く。

 

「ちょっとすまない! 道を空けてくれ!」

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)からエアを取り出し、人垣をかき分けていく。

騒ぎの中心までたどり着くと、すでに酔っぱらい達は気絶していた。

だがすでに、別の騒ぎに発展しているらしかった。

 

「おぬしは相当な人見知りなのだな。顔だけではなく、頭全体を隠しているとは」

 

「人見知りぃ? むしろ知らない人に突っ込んでく方だぜ、俺。・・・っつーか、直接戦闘は苦手とはいえ俺英霊だぜ? それに立ち向かえてるってお前・・・人間やめてんの?」

 

「ふふふ、私は人間をやめてなどいないさ」

 

華蝶仮面とライダーがにらみ合ってる・・・!? 

なんてことだ。

英霊に人間が勝てないはず・・・なのだが、会話を聞くにどうもいい勝負をしているらしい。どういうことだ。

にらみ合いのまま、少しの時間が流れる。

そして、二人の中間あたりに現れるアサシン。

 

「なっ・・・!」

 

「なんだと!?」

 

華蝶仮面もライダーも、理由は違えど驚いているようだ。

 

「響、なんでアサシンを向かわせた?」

 

「だって! いくら華蝶仮面が強くても、英霊には勝てないよ!」

 

いや、だいぶ押していたけど・・・なんてこった。思わず頭を抱えた。

 

「おぬしは・・・なんだか禍々しい仮面を付けているな」

 

そりゃあ禍々しいだろうよ。暗殺者の仮面だし。

 

「アサシンか・・・っつーことは、マスターも近くにいるのかね?」

 

ライダーはライダーで戦闘態勢を取り始めるし・・・。

ぴりぴりとした空気が街に漂う。

 

「どうしてこうなった・・・」

 

こうして、冒頭に戻るのである。

 

・・・

 

にらみ合いを続けている三人だが、このままにしておく訳にもいかない。

そのうち警備の兵士達が来て、騒ぎが大きくなることは必至だ。

 

「・・・俺が止めるしかないか」

 

「えっ・・・!? あ、あれに混ざるの・・・?」

 

響が信じられないと言う顔をして言う。

・・・確かに、ドクロの形で顔に縫いつけているような仮面に、煌びやかな蝶の仮面。そしてトドメはよく分からないオレンジ色の被り物だ。

混ざりたい訳がない。

 

「・・・俺がやらなきゃ誰がやる」

 

「・・・お、男だ・・・男だよギルさん・・・」

 

だが、あれに素顔で参加は勘弁願いたい。何か・・・何か無いかな・・・。

宝物庫を探ってみると、何故かひょっとこの仮面が入っていた。・・・こ、これをかぶれと? 

だが、すぐにでも参入しないと危ない感じだ。

俺は路地裏に入ると、ひょっとこお面をかぶり、金の鎧を装着してから屋根の上に飛びだした。

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

「何だお前・・・ひょっとこ? 今日は仮装大会なのか?」

 

「また新しい仮面の男・・・私の知らない仮面がこんなに大量に・・・?」

 

「・・・」

 

・・・凄く・・・空気が痛いです・・・。

なんて言ってる場合じゃないな。

 

「華蝶仮面、矛を収めてくれ。ライダー、あんたに話しがあるんだ。アサシンもちょっと下がってて」

 

「・・・俺に話し?」

 

華蝶仮面は一応矛を立てて戦闘態勢を解いてくれた。アサシンも俺のお願いを聞いてくれた。

ライダーも話を聞いてくれそうな感じだ。良かった良かった。

 

「ああ。ちょっと着いてきてくれ」

 

「・・・信用できねえなぁ」

 

「そこは信用してくれとしか言えないな」

 

「・・・ひょっとこだし」

 

「それは放っておいてくれ・・・」

 

どうしよう。もうすでに心が折れそうだ。

 

「・・・ま、良いだろう。一応信用する。悪そうな奴じゃ無さそうだしな」

 

「ありがとう。着いてきてくれ。・・・あ、華蝶仮面、そろそろ警備兵が来るぞ」

 

そう言い残して、屋根の上を逃走する。

ライダーも着いてきてくれているらしい。アサシンは響を抱えて来るから少し遅いが、十分追いついてきている。

さて、説得はこれからだな。

 

・・・

 

「・・・成る程。戦いを望まないチームを作っているのか」

 

ああ、なんだか久しぶりに聞いた英単語だな。

 

「そうだ。セイバー、アサシン、で、アーチャーである俺が今のところチームに入ってる」

 

今、俺達は城壁の上で話しをしている。アサシンにセイバーを呼んできて貰い、サーヴァントだけの話し合いだ。

 

「そこに、俺も入れ、と」

 

「そんな感じだな。で、どうだ?」

 

「ふーん、まぁ、お前たちからは悪い感じはしないし、仲間に入っても良いとは思う」

 

「おお! それじゃあ・・・」

 

セイバーが嬉しそうな声色を出す。

しかし、ライダーは悪いんだが、と前置きしてから

 

「少し時間をくれ。マスターとも話し合うからさ」

 

まぁ、ライダーだけで決められないよなぁ。

でもこっちも時間無いんだが。

 

「分かった。俺とセイバーはこれから南蛮に行くから、帰ってくる頃に答えを聞くよ」

 

「その必要はないぞ、弓兵」

 

「誰だっ!?」

 

セイバーが声の方向に振り向く。

そこには、紙袋をかぶった男が居た。

それ・・・気に入ってるのか・・・? 

 

・・・

 

「おまえが・・・ライダーのマスターか」

 

セイバーが振り向いたと同時に突きつけていた剣を下ろして、確認するように言葉を放った。

その言葉に、満足そうに笑った(ように見える)ライダーのマスターは、こちらに近づいてくる。

 

「マスター。来てたのかよ」

 

「ん、まぁな。騒ぎを見てたらお前そこの金ぴかとどっかいっちまうじゃないか。急いで追いかけてきたんだぜ」

 

そう言いながら、ライダーのマスターは仮面を取って、よっ。と挨拶をしてきた。

 

「俺はライダーのマスター、幼錬。真名は多喜だ」

 

「それで、多喜。必要がないとはどういう事だ?」

 

セイバーが呆けている俺の代わりに話を進めてくれる。

 

「南蛮から帰ってくるまで待つことはないって事だよ。俺達はお前達と一緒に戦うぜ」

 

「・・・良いのか?」

 

ライダーが多喜に聞く。そりゃあ、こんなに即決されたら少しは不安になるよなぁ。

 

「良いんだよ。仲間は多いほうが楽できそうだろ?」

 

「ああ、いつものマスターらしくて安心したぜ」

 

ライダーの言葉を聞いた多喜は笑いながら答えた。

 

「そんなに褒めるなよ。それに、俺の人を見る目って言うのは結構信頼していいんだぜ」

 

「ああ、そうかい。・・・なら、もう何もいわねぇよ」

 

「おっし、じゃあ決まりだなっ」

 

多喜とライダーは話が終わると、こちらに近づいてきた。

多喜が手を差し出してくる。

 

「ライダーとそのマスター、加入するぜ。よろしくな」

 

俺はその手を取って、よろしく、と返した。

 

・・・

 

いつものように仲間に状況説明・・・と行きたかったんだが、城壁でごちゃごちゃやっていたのを愛紗に見つかり、ただ今説教をされている。

 

「まったく! 南蛮侵攻が迫っているというのに、ギル殿は城壁の上でなにを・・・」

 

この辺まで聞いて、後は右から左だ。

何というか、説教を受け流すスキルとかついてると思う。俺。

 

「兎に角! 今からギル殿は私がしっかりと監視させて貰います!」

 

そう言って、俺の襟首を掴み、ズルズルと引き摺っていく愛紗。・・・俺って結構重いよ? 

流石関羽ってところか。いや、納得して良いのか分からないけど。

 

「って、あ」

 

しまった。ライダー達に説明・・・。

 

「ま、いっか。セイバーとか銀がしてくれてるだろ」

 

「何をぶつぶつ言っているのですか!?」

 

「何でもない!」

 

愛紗、地獄耳だな・・・。

 

・・・

 

と、言うわけでライダー達とは話せず、南蛮へと出発してしまった。

道中、セイバーから話しを聞いてみると

 

「ライダーか。マスター共々、城で留守番だ。なんせ、あっちにはマスターが3人も居るんだからな」

 

「なるほど。それに、そのうち2人はか弱い女の子だしな」

 

セイバーの言葉を聞いて、少しホッとする。

英霊が二人もいるなら、バーサーカーが来ても何とかなるだろ。

 

・・・

 

ジャングルの中を進軍する俺達。

 

「うえー・・・。あっついー・・・」

 

蒲公英がだばー、と馬の首にもたれ掛かる。・・・心なしか、馬が少しうっとうしそうに首を振った気がする。

 

「おいたんぽぽ! 将がそんなんじゃ、士気が下がるだろ」

 

翠がそう注意すると、怠そうに返事をした蒲公英は一応背筋を伸ばしていた。

 

「それにしても、薬を沢山持ってきておいて良かったです」

 

朱里が誰に言うでもなくそう言う。

さて、これからが長いぞ。

何せ、七回か八回南蛮大王を罠に掛けなければいけないんだから。

 

・・・

 

「ふぃー。やっと終わったー」

 

居残り組の響の声があまり人のいなくなった城内に響く。

 

「なんかさびしーねー」

 

「そうですね。でも、きっとすぐに戻ってきますよ」

 

響の言葉に、月が笑顔で応える。

 

「それに、ギルも居るんだし」

 

「俺はそいつの戦いとか見た事無いんだけど、そんなに強いのか?」

 

「強いわよ。宝具も強いけど、最近は恋とかと訓練してるからね」

 

詠の答えに、多喜がふぅん、と返す。

そして、ライダーって強いのかなぁ、と心の中だけで呟いた。

 

「お、マスターじゃねえか」

 

「ん? おお、ライダー。仕事は終わったのかよ?」

 

黒い外套を翻したライダーが、マスター達に気付き、近づいてきた。

こんな悪目立ちしそうな格好をしていても、兵士たちには何の疑問ももたれていないらしい。

 

「今終わったところだよ。まったく、俺に仕事押し付けやがって」

 

「多喜、あんたねぇ・・・」

 

「次からは自分でやるよ。大丈夫だって」

 

疑うような目で見てきた詠に、多喜は苦笑いしながらそう返した。

 

「ふぅん。ま、いいわ。月、次は何があったんだっけ?」

 

「えっと、暇があったら蔵の整理をしておいて欲しいって言われてたよ?」

 

「そ、じゃあ、それ片付けちゃおっか。ちょうど、力仕事に使えそうな奴が来たことだし」

 

「俺達も手伝うのかよ!」

 

「当たり前じゃない。次からは自分でやるんでしょ?」

 

「うっ・・・」

 

「なら決定で良いじゃないの。全くもう」

 

少し不機嫌な詠を先頭に、ぞろぞろと移動を始める五人

 

「すいません多喜さん。詠ちゃん、ギルさんが居ないから機嫌が悪くて」

 

「分かってるって。妙にわかりやすいからな、ツン子は」

 

「ふふ、そうですねぇ」

 

少し大股に歩く詠に続きながら、月と多喜はそんなことを話していた。

 

・・・

 

「結局、夜までかかっちゃったね」

 

響が服に付いた埃を払いながら、ため息をつく。

蔵の整理を始めたのは昼過ぎだが、日が暮れてしまうまでやっていたらしい。

 

「でもま、これでしばらくは綺麗だぜ」

 

背伸びをして間接をならしながら、多喜が蔵から出てくる。

残りの三人も、それぞれ蔵から出てきて、それぞれ服に付いた埃を払ったり、強ばった体をほぐしたりしていた。

 

「今日はもう仕事無いだろ?」

 

「あ、はい。お手伝い、ありがとうございました」

 

「良いって事よ。俺もライダーも、暇してたしな」

 

「さって! 汚れちゃったし、湯浴みでもしに行く?」

 

「そうですね。ちょうど今日はお風呂の日ですし」

 

「その必要は無いぞ」

 

五人が歩き始めた瞬間、声が聞こえた。

 

「誰!?」

 

詠が驚きつつも声を張り上げると、足音が聞こえた。

和服に近い着物を着た男と、緑一色に身を包んだ男が歩いてきていた。

 

「ようやく追いついたな。俺はランサーのマスター。それで、こっちはランサーだ」

 

和服の男がそう言うと、ランサーが一歩前に出た。

 

「ランサー!? ギルも正刃も居ないのに、こんな時に!」

 

「おい、響! ハサンは!?」

 

「・・・だめ! 誰かと戦ってるからこっちにこれないって・・・!」

 

「誰か!? ランサーの他は・・・狂戦士か魔術師のどっちかでしょ? 分からないの!?」

 

詠が響にそう聞くが、響の答えは変わらなかった。

 

「どっちでもない、って・・・」

 

「なんなのよ、もう!」

 

「こういうときは、俺が矢面に立たないとねえ」

 

そう言って、ライダーが四人を守るようにして立つ。

 

「直接対決とか向いてないんだが・・・ま、時間稼ぎは出来る。出来るだけ守るぜ」

 

構えを取るライダーに、ランサーも武器を構えた。

 

「全員、どっかに隠れてろ!!」

 

ライダーはそう言うと、ランサーに飛びかかった。

 

・・・

 

ランサーはライダーの一撃を身を捩って避けた。

立ち上がると、すでにランサーは三人に増えていて、オリジナルらしき一人をのぞいた二人がライダーに飛びかかる。

 

「はぁっ!」

 

「くっ!」

 

突き出された武器が外套の中に突き刺さると、そこから炎が噴き出し複製を焼いた。

 

「がっ!」

 

真っ黒に焦げた複製は、短い悲鳴を上げて消えた。

 

「ライダーというよりはキャスターのようだが・・・なかなかやるな」

 

「はい。数を増やしましょうか?」

 

「・・・そうだな。後五人増やせ」

 

「はっ!」

 

ランサーの返答と共に、複製が現れる。

計六人になった複製は、ライダーを囲むように展開し、動きを制限させるように攻撃を仕掛ける。

 

「おおっ・・・?」

 

ライダーも隙を見つけては攻撃を仕掛けるが、数で押してくるランサーにはライダーでは決定力不足なのか、なかなか決着がつかない。

くるくると踊るように斬撃を避けると、包囲網の一瞬の隙間をついて抜けようとするライダー。

 

「埒があかねえな・・・。連携されると厄介、か」

 

ライダーは、目の前に立つ複製から、マスター達を守るように向かい合いながら、一人呟いた。

 

・・・

 

ライダーの所へランサーが到着する少し前・・・。

アサシンは偵察任務中、この城に侵入しようとする集団を見つけたので、様子見のつもりでそちらに向かった。

 

「・・・」

 

持っている武器と服装は蜀の物ではなく、動きも怪しい。

アサシンは、いつも侵入者にしているようにダークを投げた。

集団の一番後ろにいる人間からばれないように処理していく予定だったが、一人にダークが当たった瞬間、刺さった一人は消え、残りは一斉にこちらを見た。

 

「見つかったか。この攻撃手段はライダーではなく、アサシンだな。ならば、マスター達が向かった方が正解か」

 

そう言った後、それぞれの武器を構えた男達は、隙無く陣形を組む。

 

「神経をとぎすませ! いかに暗殺者とはいえ、攻撃の瞬間くらいは気配が漏れる!」

 

・・・これは埒が明かない。

何故かは知らないが英霊にしては自分でも戦えるくらいランクは低いようだし、アサシンは直接戦うことにした。

マスターは居ないが、緊急事態と言うことで許してくれるだろう。

ダークを数本用意して、闇夜から飛び出す。

 

「来たぞ! 直接戦うつもりかっ!」

 

「全員で囲むようにするんだっ」

 

相手は息のあった連携でこちらに駆けてくる。

ダークを試しに投げてみるが、弾かれてしまった。

だが、戦えない相手じゃない。出来るだけ気配を抑えて、集団とすれ違う。

そのまま、暗闇へと走り抜け、気配を殺す。

 

「な、がっ・・・!」

 

「一人・・・やられたっ!?」

 

集団とすれ違う一瞬で、攻撃を仕掛けた。

流石に一人しか倒せなかったが、それでも僥倖だろう。

 

「ち、さすがは暗殺者だな・・・」

 

悪態をつきながら、次はばらけるように陣形を組み直す集団。

 

「暗殺者を暗闇から引っ張り出せ! 各員、二発ずつ発砲を許可する!」

 

「了解っ!」

 

集団の内、半分が自分の武器を弄っている。

好機かと思ったが、罠かもしれないと考え直し気配を殺すことに専念した。

そのうち、もう半分も武器を弄り奇妙な構えを取る。

槍の扱いにあまり精通していない自分でもあの構えは普通ではないと感じた。

 

「・・・」

 

兎に角、自分に出来るのは死角に潜り、隙をついて倒すことだけだ。

アサシンはダークを構え、暗闇から飛び出す。

 

「っ! 発見っ!」

 

一斉にこちらを見てくる集団。だが、槍の攻撃範囲はまだだった。

 

「てーっ!」

 

はず、なのに。

何かが炸裂する音と共に、自身の腕に痛みが走る。

慌てて走る進路を変え、暗闇へと戻る。

痛みの所為で、気配を殺し切れていないが、すぐにばれることはないだろう。

 

「当たったか!?」

 

「はっ! おそらく、左腕に一発着弾しました!」

 

敵集団の言葉を聞くに、何かを撃たれたらしい。

意外と威力が高い。何だろうか。矢・・・とは違う、何か奇妙な形をした塊が、左腕から出てきた。

 

「・・・」

 

じっくりと眺めてみるが、分かるはずもない。

すぐにそれは消えてしまい、手には何も残らない。

 

「手負いにはしたが・・・逃がしたか・・・?」

 

このまま長期戦はまずい。戦っている途中から、マスターからの言葉が聞こえてきていたのだが、どうやらあっちも緊急事態らしい。

マスターから聞いた特徴とは似ているが違う、と答えると、じゃあ誰? と聞かれたのだが、分からないと返した。

同じ英霊が何体も召喚されるなんて言うのは聞いたことがないし、あり得ないと思う。

・・・取り敢えず、残りを倒して、合流してから考えよう。

 

・・・

 

二人が戦いに巻き込まれる前・・・。

 

「にゃー!?」

 

「おお、またかかったぞ」

 

蒲公英謹製の罠に猛獲がかかったところだった。

 

「これで七度目くらいだねー」

 

桃香の言葉に、俺は頷く。

そのまま猛獲の罠を外してやり、聞いてみる。

 

「それで・・・どうだ、猛獲。そろそろ、降参してくれないか?」

 

「うぅー・・・」

 

「まだやっても良いが・・・結果は見えてないか?」

 

「・・・わかったにゃぁ~・・・。もう歯向かうのはやめにするのにゃぁ・・・」

 

その言葉に、桃香が反応した。

 

「ほんとに? 約束してくれる?」

 

「うぅ、約束するにゃぁ・・・」

 

・・・

 

こうして、猛獲が仲間になったわけだが・・・。

 

「うにゃぁ! 鎧が金ぴかなのにゃ!」

 

「にゃー!」

 

美以やミケ、トラ、シャムが馬に乗っている俺にまとわりついてくる。

 

「ぬおお・・・!」

 

「頑張って、ギルさん」

 

桃香からそんな言葉を貰う。

いや、まぁ・・・四人一辺に相手しても重くないし、別に良いんだけど・・・。

何この肉球。凄いもきゅもきゅしてるんだが。

先ほどのうなり声はこの肉球に心が折れかけているからこそのうなり声だ。

 

「はぁぁ~・・・」

 

少し後方から愛紗の溜め息が聞こえる。どうやら、美以達にすっかり虜にされてしまったようだ。

 

「それにしても・・・」

 

少し長かったな、と言おうとして、言葉が止まる。

この感覚って・・・魔力か!? 

取り敢えず、愛紗に美以達を押しつける。・・・なんか悲鳴が聞こえたが・・・幸せそうなので聞かなかったことに。

 

「セイバー!」

 

急いで隊列の方へ戻り、セイバーの近くに向かう。

 

「これって・・・」

 

「ああ・・・蜀だな。参った。この反応、一人や二人じゃないぞ。十人はいる」

 

「どういうこったよ? サーヴァントって言うのは、最大七人までじゃないのか?」

 

銀の言葉に、俺とセイバーは少し思案する。

 

「・・・もしかしたら、宝具とか・・・?」

 

確かに、いつだかのアサシンは50人だかに増えていたな。

・・・だけど、今回はアサシンは分裂しないハサンだし、アサシンはこちらの味方になったはずだ。

 

「兎に角、早く戻らないと・・・!」

 

「はやくっつったって、ここから何日かかると思ってんだ?」

 

銀の言葉に、少し冷静さを取り戻す。

 

「なら・・・そう、宝具・・・黄金と宝石の飛行船(ヴィマーナ)っていう飛行用の宝具があった!」

 

「・・・落ち着け、ギル。それを此処で出すつもりか?」

 

・・・確かに・・・。

まわりを見渡すが、兵士が大量にいる。そんな中で黄金の船・・・しかも空を飛ぶ物を見れば、速攻で広まるだろう。

 

「そうだな・・・。すまん。取り乱した」

 

「ならいい・・・今は兎に角、ライダーとアサシンを信じるしか・・・」

 

「・・・それしかないか・・・」

 

・・・

 

「どっせい!」

 

「っ!」

 

声も上げずにランサーの複製が消える。

 

「これで五体目・・・ふぅ。何とかなったか・・・?」

 

ライダーは油断せずに最後の複製とオリジナルのランサー、そしてそのマスターを見据える。

 

「ちっ。少々予想外だな」

 

「はっ。いかが致しましょうか」

 

「・・・此処まで手こずるとなると、残しておくと厄介だ。帰りの分の魔力だけ残して、他を使って構わない」

 

「はっ!」

 

その瞬間、暗闇を暗い緑が埋め尽くした。

 

「おいおい、なんだよこの数・・・!」

 

半円を描くようにこちらを囲んでいる緑の軍勢。

 

「装填!」

 

ライダーの声をかき消すような声で、ランサーは指示を出す。

その指示に従うようにして、がちゃりと弾が装填され、構えられる。

 

「なるほど、どこかで見た覚えがあると思えば! 銃か!」

 

ライダーは射線上にいるマスター達を守ろうと駆けるが、ライダーはこの包囲から守り抜く宝具を持っていない。

取り合えず身体を盾にすればなんとか、と思いつくが、撃たれる前に間に合うかどうか・・・。

 

「・・・まずいよ、あれ、何かを発射する武器だ!」

 

「ゆ、弓・・・!? あんなのが・・・!?」

 

「違うよ! なんか、ばーんってやってどきゅーん、なんだよ!」

 

パニックに陥っている響の言葉に、月達も何をされるのかを理解した。

マスター共々、この場にいる物を殲滅する気だと。

 

「いやっ・・・ギルさん・・・助けて・・・!」

 

「てーっ!」

 

月が呟いたのと、ランサーの号令がかかったのは同時だった。

 

・・・




「ありがとねー」がささっ「あ、そっちか。ありがとねー」「・・・流石は気配遮断・・・マスターにも居場所が分からないのね・・・」「最初に声を掛けたところとは正反対の場所っていうのが、なんだか響さんらしいね」

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