真・恋姫†無双 ご都合主義で聖杯戦争!? 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
仕事も一段落付き、城内を歩いていると、向こうから恋が歩いてきた。
「お、恋。仕事終わったのか?」
「ぎる・・・っ。うん、終わった」
俺を見つけた瞬間に駆け寄ってきて、先ほどのように手を握ってくる恋。あまりにも自然な動きだったので、突っ込むタイミングを逃してしまった。
訓練の帰りなのか、もう片方の手には方天画戟が握られている。
「・・・また、町に行く?」
「んー、それも良いけど・・・ちょっと訓練場に行きたいんだよな」
「・・・分かった。一緒に行く」
「おう」
そのままの状態で訓練場まで向かう俺と恋。
途中恋が俺の腕に頬ずりする以外は特に何事もなく訓練場までたどり着いた。
「えーと、セイバーいるかなー」
明日にでも稽古をつけて欲しいんだが・・・
「あ、ギル殿! どうかしたんですか!?」
そう言って、兵士が声をかけてくれる。
「いや、セイバーいないかなと思って」
「正刃ですか? ・・・そう言えば見ませんね」
「いや、知らないなら良いんだ。訓練を続け・・・っ!」
魔力反応! これは・・・
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「バーサーカー!?」
「・・・誰?」
「敵だよ。こんな白昼堂々と・・・! みんなは逃げろ! しばらく誰も近づけるな!」
「は、はいっ」
あれが何かを聞く前に、全員が逃げていった。
「恋も逃げろ」
「・・・やだ。恋も、戦う」
強く手を握ってくる恋を撫でながら、諭すように続ける。
「無理だって。いくら恋でも、バーサーカーには・・・英霊には、敵わない」
「・・・恋、いらない・・・?」
無垢な瞳でこちらを見上げてくる恋。・・・そんな目をしても・・・
「・・・ああもう! 分かったよ! じゃあ恋は俺が攻撃してるときに後ろから攻撃して気をひいてくれ。絶対に深追いするなよ?」
「・・・うん」
・・・意志が弱いなぁ、俺。
・・・
「ねーねー、おうち帰りたーい」
「ぼくもー。おかあさんのおてつだいしないと」
「あー、ちょっとだけ俺の仕事を手伝ってくれ。町の警邏を一緒にして欲しいんだよ」
頭を高速回転させて、何とか言葉を捻り出す。
聖杯戦争関係者と子供以外いない空間で警備も何もないが・・・
「けいら!? うんっ、わかったー!」
「おれも華蝶仮面みたいに町の平和を守るんだー」
「おぉ、そっかそっか。じゃあがんばらなきゃな」
途中で幾度か魔力を吸い取られていくが、動けないほどではない。
「ちっ、早めに片付けないと不味いな・・・」
魔力の反応は最初の地点から動いていないように感じるが、この隔離された場所が広いとは限らない。
いつこちらに戦闘が飛び火してくるのか分からないのだ。
最悪、令呪による後押しが必要になるかも知れない。
「・・・いや、むしろ今使うか・・・? くそ、ライダーの様子が分からないのは痛いな・・・!」
「ねーねー、なんか人がいないねー?」
「ほんとだー。なんでだろ?」
「・・・子供は良いなぁ、オイ」
ため息をつきながら移動を続ける多喜。何度か休憩を取っているが、そろそろ子ども達も何もないこの空間に飽きてきたようだ。
「おうちかえりたーい!」
「うぅ、ひっぐ、えっぐ」
空間の異常性に気付いた子ども達もいるらしく、数人は不安を感じて泣き始めてしまった。
「な、泣くなよ。こう言うときはどうしたら良いんだよ。ったく。ほ、ほらー、べろべろばー」
・・・
「これは・・・怪物・・・?」
「おいおい、ヴァンパイア、とか狼男、とか名前があるんだぜ。呼んでやれよな」
ライダーの外套から飛び出した多種多様な異形たちは、キャスターの出した大量のホムンクルスと精霊たちに対するように立ち並んでいた。
「本物とは違う、仮想の仮装だけどさ。それでも、ホムンクルスや精霊には対抗できるんだぜ?」
ランタンを取り出したライダーは、外套から飛び出した異形たちに号令をかける。
「今日は昼から祭りだ! お菓子をくれないこいつらに、洒落にならないイタズラしようぜ!」
「ちっ・・・ゆけ、ホムンクルス!」
人より異形の比率が大きくなった街中で、季節はずれのハロウィーンが始まった。
・・・
「なんだこの声・・・!」
多喜はようやく子供を落ち着かせた後、突然聞こえ始めた声に混乱していた。
しかし、次の瞬間、遠くを異形が跳んでいるのを見つけ、状況を把握する。
「ライダーの、宝具か・・・?」
「わーっ! 被り物のお兄さんだー!」
「ほんとだっ、おーい! おにいさーん!」
「おおっと。・・・はっ、人気だなぁおい」
多喜は自身の腕の令呪を見つめ
「俺も、やることはやらんとな」
爆発音が聞こえた後、令呪を発動した。
「ライダー、命じるぞ・・・『キャスターを全力で困らせてやれ』!」
手の甲にある令呪の一画が一瞬赤く光り、色を失う。
「ねーねー、あっちにお菓子くれるお兄さんがいるよー! 見に行こうよー!」
「でも、お兄さんみたいに顔を隠しているような人間は怪しくて危ない人だから近づくなって、お母さんいってたよー?」
「危なくないよー! お菓子をくれる、良い人だもん!」
「お、おいおい・・・。また騒ぐのかよ・・・勘弁してくれ」
再び子ども達を落ち着かせていると、多喜は異変に気付いた。
「・・・おー、そっか・・・」
「おじちゃん! お兄さんは危ない人じゃないよね?」
子供の質問に、多喜は何でもない風を装って、静かに答える。
「ん? ・・・ああ、危ない奴じゃねえぜ。
多喜の令呪が、光を失っていく。令呪の輪郭すら消え、パスすらも消えていく。
「そして多分・・・お前らみたいな子供にお菓子を配るのが喜びの、
泣き笑いのような奇妙な表情で、多喜は相棒が消え去ったことを悟った。
・・・
「ちっ!」
こいつ、やっぱり堅い・・・!
初っぱなから本気も本気、乖離剣で斬り掛かっているのだが、全く状況を打開できないまま、時間だけが経っていた。
恋もよくやってくれているのだが、流石に神秘のない武器では攻撃を当てても効果は薄いようだ。
バーサーカーは薙刀で牽制しつつ、弾幕を張るように刀をばらまいている。
すでに刀は幾つか鎧に当たっており、その時に出来た一瞬の硬直の所為で薙刀に当たりそうになった時は冷や汗が背中を伝った。
「・・・んっ。こいつ、強い・・・」
「恋っ、深追いはするなよ!」
先ほどからバーサーカーの背後から攻撃して気を引いてくれている恋だが、流石に疲れてきたらしい。
少しずつ苦しそうな息づかいが混ざり始めている。
「くそ、セイバーかライダーでもいれば・・・」
乖離剣の真名開放も考えたが、真名開放に必要なタメで出来る隙をカバーするのは恋では不可能だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「五月蠅いぞッ、バーサーカー!」
振り下ろされる薙刀を、
薙刀を受け止めた宝具はぎしりと悲鳴を上げたが、きちんと防げているようだ。
バーサーカーが薙刀を振り下ろして出来たその隙を逃さず、エアを横薙ぎに振るう。
決まった――――が、浅い!
「おおおおおおおおおおおおおっ!」
「ハアァッ!」
踏み込みが浅かったか、バーサーカーが斬られる瞬間に一歩退いたか・・・
どちらかは分からないが、エアはバーサーカーの胴を浅く斬りつけるだけに終わってしまった。
「ふっ・・・!」
そのままバーサーカーに反撃されそうになるが、恋が背後から思い切り方天画戟を叩き付け、気を逸らしてくれた。
その間にバーサーカーを倒すための作戦を頭の中で組み立て始める。
まず、バーサーカーに向けて
その後に刀を投擲されては、こちらは回避に専念しなくてはならなくなる。
更に、何度も攻防を繰り返して気付いたことがある。それは・・・薙刀は比較的簡単に防げるが、投擲される刀はかなり難しいということだ。
俺も武器を射出する宝具だから分かるが、線の攻撃は対応しやすいが、点である攻撃は速度が速くなればなる程対応が難しい。
だからといって一々盾の宝具を出していては一手遅れてしまうし、かといって乖離剣で弾けるかと言われれば不安を感じる。
あれ、なんかほとんど手詰まりっぽいぞ・・・?
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
・・・しばらく戦って思ったのだが、バーサーカーのマスターはどれだけの魔力を持っているのだろうか。
現界させるだけでかなりの魔力を持って行かれる
「令呪の助けもあるのかもな・・・ふんっ!」
バーサーカーの攻撃は、一撃一撃が地面を粉砕するほどの威力で、英雄王の筋力プラス乖離剣といえど押し負けそうだ。
・・・俺と恋が、逆の立場であればいいのだが。
恋は俺と打ち合って平気な程の膂力を持っているし、三国最強の武将の力は伊達じゃないだろう。
「おおおおおおおおおおおおおおお!」
「く、そっ・・・!」
・・・これだけの時間戦闘していれば、必然的に魔力は無くなっていく。
バーサーカーはマスターが何かしているのか、令呪のバックアップが有るのかこうして健在のようだが、俺とてサーヴァント。
月からの魔力供給と、保有魔力だけでは限界がある。・・・今から月を呼びに行くには余裕がない。
かといって一対一ではバーサーカーの暴力的な突進に耐えきれず俺が押し負けてしまうだろう。
・・・本来の持ち主、ギルガメッシュなら余裕でバーサーカーくらい倒すんだろうが、俺にそこまでの技量はない。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「っ! ・・・ふっ!」
二人を相手していてはきりがないと考えたのか、急にバーサーカーは反転し、恋を狙い始めた。
バーサーカーに似合わない器用さを発揮して、俺への牽制を行いながら恋へとその薙刀を振り下ろした。
恋は方天画檄で受け止めた物の、神秘の固まり、宝具には打ち勝てるはずもなく・・・方天画戟は、折れた。
「・・・!」
折れた瞬間、驚愕の表情を浮かべた恋は、バーサーカーによる張り手を食らって吹き飛んだ。
「恋ッ!」
「がっ、あ・・・!」
ごろごろと転がった恋は体を丸めて痛みに耐えているようだった。
更に恋へと追撃を加えようとするバーサーカーに宝具を撃ち出して足止めする。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
・・・俺の所為で、恋が・・・。
視界の端で立ち上がる恋が見えたが、方天画戟もなく、ほとんど満身創痍の彼女にはすでに戦う手段はないだろう。
「ま、だ・・・いける・・・」
苦しそうな顔をする彼女だが、戦意は微塵も失せていなかった。
何か、無いだろうか。この戦況を覆す、なにかが。
・・・恋が前衛を務めてくれれば俺もフォローに徹することが出来て勝率は跳ね上がるのだが・・・。
せめて、槍か何かを・・・。ああ、ゲイボルグの原典を爆破させなければ良かった・・・!
そこで、はたと気付く。なんでこんな事に頭が回らなかったのだろうかという位初歩的なことに。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!」
「
こちらに突進してくるバーサーカーの後方。ぼろぼろになりながらも立つ恋に向けて、
もちろん、恋を攻撃する意図で、ではない。・・・狙いは、恋の目の前の地面である。
それが恋の目の前に突き立ったのを確認する暇もなく、俺はバーサーカーと相対し、乖離剣を振り上げる。
・・・何とも情けないが、ぼろぼろの恋に頼るほか、俺には策がなかった。
宝物庫にあるかどうかすら謎だったが、『人が開発した』宝具である人造宝具も派生する前の原典扱いらしく、見つけることが出来た。
後は半人半機である彼と恋の間の差異がどのくらい影響するのかが不安だが・・・。
「エア、もう少しだけ踏ん張ってくれ!」
刀身に刻まれた紫色の紋様が細かく読み取れないくらいに高速回転し始めたエアを叩き付け、時間を稼ぐ。
恋があの宝具の担い手となり、その力を振るえるというのなら・・・それこそ、鬼に金棒である。
・・・
呂布奉先・・・恋は、目の前に突き立つ神秘の固まりを見て、疑問符を浮かべていた。
今目前で狂戦士と打ち合っている彼・・・アーチャーがこちらに寄越した武器だからただの武器ではないはず。
だが、自分の体の状況を鑑みて・・・そんな武器を振るえる自信は、今の恋にはなかった。
・・・自然と、視線はバーサーカーと戦っているアーチャーへと向かう。
「・・・ぎる」
視線の先には、険しい顔をしながら狂戦士と打ち合う彼の姿。
いつも町へ一緒に行くときの優しい笑顔とは違い、訓練で打ち合っている時ですら見せない必死の表情で戦う彼を見て、少女は決意した。
「・・・ぎるを、助ける・・・!」
体の痛みを無視して、目の前に突き立つ武器の柄に手を伸ばす。
柄を掴んだ瞬間・・・体中を力が巡った。
それと同時に、武器の使い方が直接脳に送られたように理解できた。
これは自分の武器。そう思ってしまうほどに・・・一生を共に生きたかのように、手に馴染む。
「
体にあった傷が、癒えていく。
これは、
持ち主が握っている限り、空気中の魔力を吸収して持ち主の傷を治すという自動発動の機能。
半人半機の呂布でないためにランクは落ちていて、怪我の回復力促進程度になっているが、それでも人間には破格の能力。
「
恋はこちらに背中を向けているバーサーカーに向けて疾走する。
その途中、矛形態での機能を発動させる。持ち主の筋力ステータスを1ランクアップさせ、相手の防御行動に対して有利な判定を受けられるスキルだ。
恋がある程度近づいたところでバーサーカーに気付かれた。
バーサーカーはアーチャーに薙刀をぶつけると、それを防いだアーチャーごと振り抜いた。
「ぐっ、うっ・・・!?」
空中へと投げ出されたアーチャーは城壁へとめりこみ、地面に落ちた。
その間にバーサーカーは恋に対して迎撃体勢を整え、振るわれた矛を薙刀で防ぐ。
「ふ、んっ・・・!」
声と共に振り下ろされる
恋の一撃を防ぐために構えた薙刀に叩き付けられた矛は、先ほどの機能によって防御に対して有利な判定を受けられるようになっている。
バーサーカーの防御を打ち崩した恋は矛を引き戻し、隙だらけのバーサーカーに高速の突きを放つ。
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
しかし、流石は英霊と言ったところか。
バーサーカーは防御を崩された瞬間に二撃目を避けようと動き始めていたらしく、その突きを後ろに飛び退いて避けた。
その距離はお互いの武器の間合いより遠く離れた物だった。
・・・しかし、恋が持つ
五つの形態を持つこの宝具には・・・
「
・・・そんな状況に応じた形態も、ちゃんとある。
矛から弓矢へと形態を変えた
常人では引く事すら出来ない弓を引き絞り、狙いを定める。
「貫く・・・!」
その言葉と共に放たれた矢は、高速でバーサーカーへと迫る。
矢を弾こうと薙刀を突き出すバーサーカー。
しかし、矢の威力の方が高かったのか、僅かに軌道を逸らすのみとなり、そのまま矢は突き進み・・・バーサーカーの肩を貫いた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
バーサーカーを貫いた矢は消え去り、恋の手元へと戻る。
その隙を逃さないように、恋は矢を放つと同時に走っていた。
手元に矢が戻ってくると同時に
「はっ!」
袈裟に振り下ろされた矛は、バーサーカーの胴を切り裂いた。
血液という魔力を吹き出したバーサーカーだが、スキルによって未だ戦闘は可能。
しかし、そんな事を知らない恋は此処まで切り裂けば動けないだろうという思考の下、気を緩めてしまった。
「お、おおお・・・おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
切り裂かれた部分から血を吹き出したまま、バーサーカーは最速の攻撃手段・・・すなわち、手刀を振り下ろした。
恋がそれに気付いたときにはもう遅く・・・防ぐ手だてもないまま接近する手刀を眺めるように見ていたその時。
「
横から伸びてきた鎖が、その手刀を止めた。
手刀だけではなく、鎖は更に拘束するようにバーサーカーに絡まる。
「俺のこと忘れてたか? バーサーカー」
「ぎる・・・」
壁に背中を預けて座り込むぼろぼろのアーチャーを見て、恋は思わず呟きをもらしてしまう。
そんな恋に、アーチャーは苦笑して
「悪いな、恋。此処までやらせちゃって。・・・これで抑えられるのは少しの間だ。トドメを」
こくりと頷き、矛を振り上げる。
・・・が、それを振り下ろすより早く、バーサーカーは鎖の拘束より抜け出した。
しかし、その為に出来た圧倒的な隙は恋の振り下ろしを防ぐことも避けることも出来ない致命的な物だった。
だが、その身に矛が当たる直前――――。
「・・・ち、霊体化か・・・」
その巨体は、見えなくなっていた。
少しの間警戒しながら周りを見渡す二人だったが、完全に気配がないことを確認すると武器を降ろした。
「・・・恋、ありがとな」
「・・・ん。別に良い。いつもぎるには助けられてるから」
「そうかぁ?」
アーチャーの言葉にこくこくと静かに頷いた恋はアーチャーの目をまっすぐに見据えて口を開く。
「町に一緒に行ってくれたり、セキト達と仲良くしてくれる。・・・とっても、優しい」
「そっか。・・・なら、素直に受け取っておくかな」
自身の頭を撫でる手をくすぐったそうに受け入れる恋は、頬を少しだけ染めて、ほほえんだ。
・・・
「・・・そだ。これ、返す」
そう言って恋が俺に差し出したのは、
「・・・いや、恋に持ってて欲しい。またあいつが攻めてきたとき、恋にも英霊に対する攻撃手段を持ってて欲しいから」
それに、方天画戟折れちゃったろ? と言うと、恋はわかった、と頷いた。
・・・さて、次はセイバーとライダーだな。
これだけ魔力を使った戦闘をしていて何故セイバーとライダーがこちらに来なかったのか。
何か、こちらにこれないような事態に陥ってしまったのだろうか・・・?
焦らないように気を付けながら、俺は恋を連れて城内へと戻っていった。
「ぎる、どうしたの?」
自然と強ばった顔になってしまっていたのか、俺の顔をのぞき込んだ恋がそう聞いてくる。
「・・・ん、ちょっとセイバーとライダーが心配になってね」
「・・・そう」
「ああ」
そう答えて曲がり角を曲がった瞬間、目の前に広がったのは、筋肉。
危うくぶつかりそうになったが・・・危ないなぁ、この二人は。
「ぶつかりそうだったじゃないか、貂蝉、卑弥呼」
「うっふぅん。ワタシとしてはぁ、バッチコーイ! なんだけどぉん」
「・・・ふーっ、ふーっ!」
おお、恋が威嚇してる・・・。こんな険しい顔した恋、戦闘中でも中々見れないぞ・・・。
「まぁ、そんなことよりオヌシら。先ほどの戦闘についてだが・・・」
「そんなことて・・・」
俺のツッコミを無視して切り出された卑弥呼の話は、簡単に纏めると以下のような物だった。
まず、俺とバーサーカーの戦闘にセイバー達が駆けつけられなかったのは、以前と同じく空間を隔離していたから。
万が一間違って一般の兵や住み込みの侍女が入ってくると危険だと判断したからだそうだ。
「・・・成る程、それならセイバー達がこっちに来なかった理由が分かった」
・・・というか、バーサーカー相手に俺と恋だけって何考えてるんだこの
まぁ、最優先事項は一般の人間達に対する秘匿なんだろうが・・・今回ばかりは拙かったぞ。
そんなことを思いながら貂蝉を睨むように見つめると、くねっ、としなをつくった貂蝉。
「んもぅ。ワタシのことをそんなに熱く見つめちゃ・・・イヤンっ」
・・・おっと危ない。乖離剣を抜きかけた。
深呼吸で落ち着いた後、貂蝉達に別れを告げ、説明するためにセイバー達を探す。
恋には月の所へ行って貰い、先ほど起こったことの簡単な説明と、響がいればアサシンにセイバー達を見なかったかと確認して貰うことに。
・・・俺、
・・・
「(対英霊戦の)戦力が増えるよ!やったねギルちゃん!」「おいやめろ」
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