ブオオオオオオオ!!!!!
アクセルを限界まで回して、最大加速で<奴ら>の群れに突っ込む。この轟音に殆どの<奴ら>の標的が小室達からそがれた。そして、バイクのハンドルと車体を真横に倒すと、そのバイクを足場にして俺は大きく飛んだ。操縦者を失ったバイクは勢いはそのまま、<奴ら>に群れに回転しながら突っ込んでいった。数十匹の<奴ら>がバイクに飛ばされ、群れの中ほどでバイクは停止した。
間髪入れず、頭のスイッチを切り替えて空中にいる状態でベレッタを抜き、その銃口から放たれた銃弾が一弾一弾別々の<奴ら>の頭を打ち抜く。
ガガガガガガ!!!
「おい! 荷物持ってさっさとワイヤー越えろ! 戦い難い!!」
「あ、綾部……ああ、わかった!! みんな早くワイヤーを超えるぞ!!」
小室達の手前で着地すると、怒鳴るように指示を飛ばす。小室の指示でみんな我に返り、平野と毒島先輩の援護を受けながら、荷物をワイヤーの向こう側に放り投げている。宮本は怪我をしているのか小室が、それと幼い赤髪の少女と犬を鞠川先生が先にワイヤーを超えさせていた。
あとは、荷物と小室達を全て向こう側に送るのに数分といったところと結論付けて、空になったベレッタM12の弾倉を入れ替える。
「ん?」
ふと視線を上に向けると、壁の上の民家に大きめのオイルタンクがある事に気が付いた。目を凝らすと、メーターはほぼ満タン。そして、道のど真ん中には俺が先ほどまで乗っていたバイクが『ガソリンが漏れている状態で』倒れている。そして、背には超特大の火力がセット済みで背負っている。
そこで、俺は最後の仕上げをどうするのかを決めた。そのためには小室達がワイヤーの向こう側に退避した後でなければ作戦が実行できない。だから、俺は時間稼ぎをするために、壁上に上って、小室達から引き離すように銃声を鳴らし続けた。
「小室! あとどれ位だ! 指で知らせろ!!」
わざと大声を上げて<奴ら>の注意を俺に引き付けるように促した。小室はその意図に気が付いたようでちゃんと指で知らせてきた。指を一本だけ立てて。
「OKだ!! 平野、毒島先輩!! ここはもういいですから小室達を手伝ってください!!」
俺がそう叫ぶと、二人とも頷いて戦闘をやめ小室達と荷物運びを手伝った。
しかし、銃器と銃弾、それにあのハンヴィーどうやって手に入れたのか。それに、平野はうまく<奴ら>にヘッドショットを決めていた。学校でも思ったが平野は思いの外、実銃の扱いに詳しいようだ。これはこれからいい戦力になりそうだ。
二人が協力に加わったことで、一分もかからずにすべての荷物を向こう側に移せたようだ。小室が大きく手を振って俺に合図を送っている。俺は民家のオイルタンクを家から切断し壁上に固定。そして、サバイバルナイフで新たな『落とし口』を作ると、独特の石油の臭いと共に真下どんどん落ちていき、<奴ら>に浴びせたり、地面に広がったり、バイクのガソリンと混ざったりと道路は油まみれとなった。
小室達はすでにワイヤーの向こう側に超えており、あとは俺を待っているだけだった。それに答えるように、俺は最後の一撃―――手榴弾を小室達と反対方向な投げ、爆音で<奴ら>を遠ざけた。その隙に壁上から降り、素早くハンヴィーの上に乗り移った。
だが、すぐさまワイヤーを超えることはせず、背負っている物―――RPG26を肩に担ぐような形で構え、照準をバイクへと向けた。
「あ、綾部……ま、さか―――」
「そのまさか」
不安そうな小室の問いにとびっきり満面のニヤリ顔で、俺はRPG26の引き金を引き絞った。
その後、巨大な爆発、爆音、爆炎、爆風が起こり、その辺り一帯は一日中燃え上がったと、救助に来た高城の実家―――国粋右翼の方に後ほど聞かされた。
「希里ありすです。おとといお兄ちゃんたちにたすけてもらって、おともだちになったの。あ、こっちはいっしょにたすけてもらったジークだよ」
「わん!!」
「ああ、よろしく。俺は綾部 恭二。好きに呼んでもらっていいよ」
「じゃあ、あやちゃ―――」
「すみません俺が悪かったからそれだけはやめてください」
「え? ん~じゃあ、キョウちゃん!」
「まぁ、それならまだマシか。うんそれでいいよ」
春にしては異様に暑い(少しは俺の撃ったRPG26の)所為で日差しを鬱陶しく思いながらも、赤髪の少女―――希里ありすと自己紹介をしていた。
客観的に見れば何とも馬鹿らしい会話だが俺としては至極真面目に接しているので、俺は笑えない。子供には接する機会がないと言うにも等しい状態だったため、接し方を図りかねていた状況でこの騒動だ。正直俺に子供ができるまでその機会はないだろうと踏んでいたのだが、想定外というものはやはり厄介なものだ。
今俺がいるここは高城沙耶の実家・国粋右翼の首領(ドン)の屋敷にいた。あのRPG26を撃った日から一日をここで過ごしていて、休息としては緩みすぎな穏やかな日常をこの敷地内で過ごしていた。だが、やはり人々の不安は拭いきれないのか、ここにいる人間はどこか不安を隠しきれない状態で、でも必死に表装だけは平穏を保っていた。
「ありす。小室達の所に行っておいで、俺はこれから用事があるからね」
「ようじ? ありすもてつだうよ?」
「ありがとう。でも、一人じゃないとできないことだからね。小室達の所でお話ししておいで」
「うん! いこ、ジーク!」
「わん!!」
アリスを屋敷の方へ向かわせて、俺は装備の最終チェックを行った。必要なものが全て揃っていると確認すると、俺は静かに歩き出した。
そこに、あの道路で回収したハンヴィーが置かれている倉庫から、高城と平野が出てくるのを視界の端に捉えた。高城と平野も俺の姿を捉えて、こちらに向かってきた。
「綾部。これからみんなで話したいことがあるんだけど…」
「話される内容は分かっている。だから、俺はお前たちの決定に従うと言っておく。じゃあな」
「ちょ、ちょっと―――」
「悪いが、これは任務だ。お前らの話を蔑ろにするつもりはないが、『その状態』でまともな結論が出るとも思えないからな」
「!! そう……あなたやっぱり軍人ね。私たちより落ちついている」
「場慣れしているだけだ。それじゃな」
そういうと、俺は早々にその場を離れた。高城の話を断った俺を見ている平野が内心怒っているのを感じたから。
予定では、あの武器が到着してからのつもりだったが、やはり武器と交換するようにヘリで送った方が良いと踏んで予定を早めることにした。
「やはり…厄介だな~。想定外は」