「では出発するぞ」
「あれ? 江戸川君はどうしたんだい?」
「ヤツは置いてきた。これからの探索に着いてこれそうにないんでな」
あの騒動の後に、ハーマイオニーが江戸川の応急手当をしたのだが、それでも重症である事に変わりはなく、大事をとってこの家に一人残していく事になったのだ。
沙耶としては、江戸川がいなくなったことを喜びながらも、自宅(仮)に一人江戸川が居続ける不快感という矛盾した感情を抱く事になった。
「幸いというべきか、一日休めば回復すると変態木偶自身が自己診断したようだし、放っておいても構わないだろう」
「で、結局どこに向かうの?」
「とりあえずは以前勤めていたという大学へ向かう」
「そこにフミノリがいるの?」
「知らん。痴呆教授の痴呆が進んでいなければ他の選択肢もあっただろうが……全く、揃いも揃って役立たずばかりだな、おい」
「ハハハ、面目ないネ。まさか呆けが進んでいたとは私自身驚いているよ」
守谷教授を痴呆教授と呼ぶ理由としては、文則が向かいそうな場所を守谷教授が思い出せなかったからだ。
それどころか、どういった経緯・媒体を用いて教授が文則に呼び出されたかという質問にすら答えられなかった。
まるで記憶を思い出す行為において
沙耶にしても何も思い付く事がなく、どこに向かうべきなのか、手がかりが全くない状態であった。
故に一行はかつて文則が勤めていた杜或大学へと向かう事にした。
大学に文則がいる可能性は低いが、今ある情報でフミノリが行きそうな場所で思い当たるのがここしかない以上、一縷の望みに賭けるしかなかった。
そうして車で移動する事数十分ほどで、一行は杜或大学へと到着した。
安藤やハーマイオニーにとっては母校、守谷にとっては職場であるので、どこに何があるかというのは大体把握している。なのでこの場での行動方針を立てるのも容易い。
「まずは守衛に話を聞くぞ。今のフミノリ氏は部外者である以上、守衛が仕事をしない無能な給料泥棒でもない限り覚えてないなどということはあるまい」
そう、今のご時世、学生や教師でもない部外者は何の手続きもなしに大学構内へ入れないものだ。それは沙耶のような大学に関わりのない人物はもちろんの事、安藤やハーマイオニーのようなOB・OGも無断で侵入する事はできない。それは、かつてこの大学に所属していた文則であっても例外ではない。
簡単な手続きであっても、大学の出入り口にある守衛辺りにでも入構許可を取る必要がある。
なのでまず文則がこの大学に来ているのならどうしても立ち寄らざるを得ない場所である守衛室に向かおうと集団の最後尾から付いていこうと守谷教授も歩き出して――――
――――誰かが守谷教授の手を掴み、彼だけをその場に引き留めてきた。
一体誰が……そう思って守谷教授が振り返ると、そこで自身の手を掴んできたのは銀の長髪を携えた
守谷教授はその少女を見た時に、一瞬既視感に捕らわれたが、その正体が何なのかわからず、その感覚は次第に消えていった。
「いやー、ようやく遭遇できましたね。ずっと機会を伺ってたのに中々ひとりにならないどころか家からでて来ないんですもん。お話的にどうなんですか、それ? 探索者失格ですよ」
その少女の言葉を聞いてからハッとなって教授は振り返ると、そこにいたはずの同行者たちの姿がなくなっていた。おそらく守谷教授が足を止めた事に気付くことなくそのまま目的地へと向かっていったのだろう。
目的地はわかっているのではぐれたとしても合流は難しくないが、この少女が何故己だけを引き留めたのか、教授は気になった。
「私に用があるみたいだが……私はキミを何と呼べばいいのかな?」
「私は……ナイアとでも呼んでください。今はそう名乗っていますので」
――――そう名乗っている。まるで偽名であるかのようにも思える言い方であるが、そこに突っ込んでも時間の無駄だろうと割り切り、守谷教授は要件を聞くことにした。
「ナイア君、だね。それで私に何の用かな? 連れが先に行ってしまったので追いかけたいんだが」
「ではまどろっこしいのもなんなんで、単刀直入に用件をいいますね」
「――――あの出来損ないの沙耶を引き渡してください」
出来損ないの沙耶……『出来損ない』の意味はわからないが、『沙耶』というのは先程まで同行していた旧友の妻の事なのは間違いないだろう。しかしこの言い方であればまるで『沙耶』が物であると言っているように聞こえる。
少なくとも守谷教授はこれだけでは判断のしようがないと、ナイアと名乗った少女からさらに詳しい話を聞きだそうと試みることにした。
「私は彼女の同行者に過ぎないし、そもそも彼女は物ではないのにその物言いはどうかと思うのだが……」
「え? 何言ってるんですか? あれはモノですよ。沙耶という人間を模したただの肉塊にすぎません。つまらない罪悪感なんてこれっぽっちも感じる必要はないですから」
守谷教授には目の前のナイアが何を言っているのかわからなかった。
いや、意味がわからないわけではない。おそらくあの沙耶は真っ当な人間ではないという事だろう。
彼も沙耶の腕が歪な肉塊に変形した所は目撃している。記憶は上手く思い出せないが、しかし少なくともまだ文則と交流があった頃の彼女はそんな芸当はできなかったはずだ。
だがそれでも沙耶がただのモノであるというナイアの言い分は理解できなかった。
いや、そもそもとして自身に彼女の所有権などありはしないのだから渡せと言われてもどうしようもないのだが……というのが守谷教授の本音であった。
それを知ってか知らずか、ナイアは守谷教授を説得するためか、さらなる持論を展開する。
「その顔、あんまり信じてないですね。ならアレが最初どういう状態だったか教えてあげますよ。アレはフミノリさんが最初に作った作品で、最初は人の姿すらしてない肉塊で、あまりのショックで文則さんが私に処理を頼んできたくらいですよ。私も引き取りはしたものの場所取るはフミノリフミノリうるさいはで山に捨てたんですけど、まさかそこから自力で可愛らしい外見に変形して山を下りてくるなんて予想外でしたよ。これも愛のなせる業とでも言うんですかねぇ……出来損ないの偽物なのには変わりないのにね」
今の話を聞いた守谷教授は、文則やナイアにとってあの沙耶が失敗作であるという事は理解できた。
しかし本当に出来損ないの偽物であるのだとしたら、果たして自力でかつての姿を取り戻すことができるのだろうか?
人の姿すら取れなかった彼女がかつての姿を取り戻す事ができるようになるほどの文則への愛を、果たして偽物であると断ずることができるだろうか?
今なお文則の妻として、夫を愛し求めるあの沙耶を、果たして『偽物』と言えるのだろうか……?
そんな事を考えていた守谷教授の表情を、沙耶に対しての同情を抱いていると勘違いしたのか、ナイアはさらに警告とも聞こえる言葉を口にする。
「ああ、馬鹿な同情心とかで私と敵対するなんてことは思わない方がいいですよ。沙耶に同情を抱いて私と敵対を選んだ探索者パーティーが全滅したお話もありましたしね」
「しかし……」
「ああ! そういえば貴方、厄介なワンちゃんに狙われてるんでしたね。それなら報酬の前払いに私が何とかしてあげましょう」
守谷教授の手の甲に刻まれた紋様を目にして思い出したかのようにそう言った少女が守谷教授の眼前に掌を広げる。
すると、突如として教授の視界が暗転――――――――
◆◆◆◆◆◆◆
………………したかと思えば、すぐさま意識が覚醒した。
感覚的には一瞬の事であり、周囲の様子や時計などから判断できる実際の時間もそこまで多くの差異は存在しないようだ。せいぜい立ち眩み程度と言えるだろう。
「――――はい、これで貴方はあのワンちゃんから狙われなくなりました。これでダイスロールに怯えることなく思う存分探索できますね」
彼女が自身に何をしたのか、それはわからなかったが、ナイアはこちらが理解するかどうかなどどうでもいいようで、一仕事が終わったとばかりに背伸びをした。
「という事で、この住所に廃ビルがありますので、そこに明日の昼頃にあの出来損ないを連れてきてくださいね」
待ってますからと、守谷教授に住所の書かれた紙を渡してきたナイアは、その場から立ち去っていった。
守谷教授はそれを止める事も声を掛けることもできず、どうするべきかに悩み、その場で立ち尽くしていた。
◆◆◆◆◆◆◆
一方、守谷教授とはぐれていた安藤達は守衛へと文則が来ていないか確認をしていた。
「こ、この男は……!!」
文則の写真を見せると、守衛は驚いたような、ハッとしたような表情を浮かべ、真剣な表情でわなわなと身体を震わしていた。
これは何か知っているのではと安藤は矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「見たんだな? いつ頃だ? 彼は何の用で大学に……」
「――――見てないですねぇ」
「…………」
その安藤の質問をぶった切る形で守衛は真顔でそう言い切った。先程までの反応はなんだったのかと言わんばかりの真顔だった。
その思わせぶりなその回答に安藤は思わずイラっとしてしまったのは仕方ないだろう。
「おい、どこに行っていた痴呆教授。無駄足とはいえ人が働いている時に暢気に呆けおって」
「ああ、すまない。ちょっと人に捕まっていてね。だけど収穫はあったよ」
「ほう、どんな成果だ? 呆けで忘れる前にさっさと教えろ」
「酷くないかい? まあいい。じゃあ順を追って説明するよ。まず――――」
空振りの上に守衛に煽られて苛立っている安藤達と合流した守谷教授は、先程までのナイアと名乗る美少女との話を安藤達に伝えた。
それを聞いた安藤たちの反応はというと……
「……明らかに罠だろう」
「あ、やっぱりそう思う?」
「というか私明日仕事なんだけど……」
「知るか木偶女。というか勝手に仕事に行けばいいだろうが部外者め」
「今の所何の手掛かりもない以上、私は誘いを受けるべきだと思うが、どう思うかね?」
「手がかりがないのは確かだが、罠とわかっている誘いにわざわざ踏み入るくらいなら、一度別方面から探ってみるべきじゃないか?」
「別の方面って?」
「他のオカルト染みた事件……例えば『血の池事件』。これにフミノリ氏が関わっている可能性はないか?」
文則がオカルト方面の研究に没頭しているのであれば、こういったオカルト染みた事件に関わっている可能性もあるだろう。
そう思っての発言だったのだが、それは沙耶によって完全に否定された。
「ああ、多分それは食事の下手なスワンプマンの仕業だよ」
「スワンプマン……確かフミノリ氏の資料にあった……」
ここでもまた『スワンプマン』という存在が浮上する。
文則の研究日誌にも記述があった、彼の研究の根幹部分とも言える存在だが、その具体的な全貌は不明のままであった。
「結局、スワンプマンとは何だ? 人間の形態をとる何かだとは推測できるが……」
「そうだね。あ……丁度いいかな。あそこを見て」
沙耶が指で指し示した先にいたのは、薄暗く細い裏路地へと入っていった小さな男の子と、それを追いかけて裏路地に入ろうとしている母親らしき女性だった。
「こらマー君、どこに行くの? 危ないからこっち戻って――――」
女性が子供を追って裏路地へ足を踏み入れ、こちらから姿が見えなくなった瞬間、甲高い女性の断末魔の叫びのような声が一瞬聞こえてきたかと思えば、それを掻き消すように、ぐちょり、ぐちょりと、何か瑞々しいものを頬張るような音が響いてくる。
「――――来なさい。もう、好奇心旺盛なんだから」
そして何事もなかったかのように親子は裏路地から出てきた。その様子からは、先程聞こえた音から考えられる猟奇的な出来事が起きたとは思えなかった。
先程聞こえた猟奇的な音は空耳だったのか……そう思いたい一行の考えは沙耶の解説によって否定される。
「スワンプマンはあんな風に二人きりになった時に人を捕食してその人に成り代わるの。本当なら血痕なんて残らないんだけど、捕食が下手な個体だと食べ残しが出ちゃう事もあるんだよ」
「成る程……」
「そういえばいつのまにか何匹かスワンプマンが逃げ出していたと日誌にもあったね」
つまり、血の池事件の真相は捕食の下手なスワンプマンによる食べ残しである。
血痕の被害者を探しても、その人間に成り代わったスワンプマンがいるために被害者が出てくることはない。
「……ちょっと待て。あのガキはあの母親を自分の意思で食ったのか? 腹が減って我慢が効かなくなった、みたいな事で」
「それは違うよ。あれはスワンプマンにとって無意識の行動だから。本人の意思がどうこうってものじゃないよ」
「つまり呼吸と同じようなものだと?」
「ちょっと違うかな? どういえばいいんだろう……? あの捕食はスワンプマン自身の意思は一切介在してないの。本能というか……意識があってもなくても心臓が動いているのに近いのかな?」
生物の心臓の動きが意識だけでオンオフできないように、スワンプマンの捕食行為も意識的にオンオフできるようなものではない。
つまり、『第三者の目のない場所』で『人間と二人きりになる』という条件を果たせば、スワンプマン本人の意識外で捕食行動が為されるという事だ。さらに当のスワンプマン自身すら相手を捕食して仲間を増やしていると知覚出来ていない。何らかの要因で知覚した所で対策を練る事は本人にもできない。
「……厄介だな。本人に自覚なく突発的に捕食していく……隣を通り過ぎたヤツがいきなり襲ってくるなどゾッとしない」
「でも捕食されても意識は捕食された人と同じだよ」
「それでもそれとは別に大本は死んでいるだろうが。俺はそんな突発的な死と隣り合わせの生活など御免被るぞ」
「私は意識が連続しているのなら問題はないとは思うが……まあ君の考え方を否定はしないよ。それよりも今はどう行動するか、だよ」
「……だったな。脇道に逸れてしまったが……どうするべきか」
道筋を示すためだと思われた謎の一つが然したる成果を残す事もなく解決してしまい、文則への道筋がナイアの甘言しかなくなってしまった。
今の沙耶たちが取れる手は最早ナイアのあからさまな誘いに乗る事しかない状態であるが、ナイアとの約束の時間まで一日弱という時間がある。
ハーマイオニーは仕事の都合で離脱してしまうが、江戸川が復活することを考えれば戦力的には問題ないだろう。
戦力としては沙耶がいれば問題ないのだが、その沙耶に対抗あるいは無力化する手段を罠にかけようというナイアが持っていないとは思えない。
何があっても対応できるように入念に準備を整えなければ……という場面で、安藤が口を開いた。
「一つ提案がある」
「何だね?」
「その指定された廃ビル、今から行かないか?」
「……は?」
「……その発想はなかった」
「それ最高。貴方、フミノリの次に素敵だわ」
「しかし、向こうは明日の昼に来いと言っていたんだけど、いいのかね……?」
「住所はわかっているんだし早いに越したことはないだろう。それにわざわざ相手の思惑に乗ってやる必要もない」
「そうだね。泥棒猫は早めに駆除しなきゃ」
「違う。そうじゃない」
一先ず今から指定された住所に向かう事に対して、反対意見は出てこなかった。
◆◆◆◆◆◆◆
件の住所にある廃ビルの前には荷物を中に運び込む運送業者たちの姿があった。
「ハーイ、お渡しした図面通りにお願いしますねー! あ、そっちの荷物は割れ物なんで注意してくださいねー」
そして彼らに指示を出している例の銀髪の美少女ナイアもそこにいた。
「アレがナイアとやらか……一先ずアイツに気付かれないように中に忍び込みたいが……」
「巧くいくかね? 何なら私が彼女の気を引いておく方がいいかな?」
「でも中からフミノリのニオイはしないよ」
ナイアに気付かれないようにまずビルの中を調べるたい安藤と守谷教授は沙耶に意見を聞く事で勝手に暴走しないようにしながらどう行動するか画策していた。
今回の目的はカチコミなどではなくあくまで調査だ。文則の手がかりがあれば相手の目の前で罠に踏み入る必要はなくなるし、文則の手がかりがなくとも相手の用意している罠がどんなものかわかればそれを無力化する対抗策を練られる。
故にナイアに見つからないようにする事が肝心で、それには沙耶を飛び出さないように注意する事が何より重要であると考えていたからである。
――――その考えが誤りであったとこの後気付かされることになる。
一緒に来ていたハーマイオニーも銀髪の美少女ナイアの姿を目にした。すると途端にハーマイオニーの様子が変化した。
作戦を立てている三人に目もくれずに、今すぐにでも銀髪の女に殴りかからんとする勢いで彼女の前に出て行こうとしたのだ。
それに気付いた安藤と守谷の二人は咄嗟にハーマイオニーを物理的に引き留める。口で止まるとは思えない程の勢いだったからこその行動だったのだが――――――――二人の想定はそれでも甘かった。
「――――あんた、こんな所で何してるのよ!!」
身体が動かないとなれば口が出る。少し考えればわかる事だったが、いきなりの事でその発想が浮かばなかった彼らに口を塞ぐという発想が浮かぶはずもなかった。
(貴様、何故口を塞がなかった!?)
(わかるはずがないだろう!?)
身長の関係から口には手が届かない故に教授に任せるしかなかった安藤の責める気持ちはわかるが、しかし教授の言い分ももっともである。
『今から隠密行動しようぜ!』と作戦会議をしている最中に、まさか大声で自身の居場所をバラすなんて誰も思わない。
「えー、うるさいですねー誰ですか?」
どんな理由があるか全くわからないが、今のハーマイオニーの行動でナイアにこちらの存在が完全に認識されてしまったのは間違いなかった。こちらを見て、彼女の目に入ってきたのは、彼女が要求していた沙耶の姿であった。
「あー、誰かと思えば出来損ない……ってええええええ!? 何で沙耶の出来損ないがここにいるんですか!? 明日の昼って私言いましたよね!?」
予想外の出来事だったのか、想像以上に驚きのあまり大声を上げて教授に向けて責めるような口調で怒鳴りかけるが、守谷教授は開き直ったかのように朗らかに笑いかけた。
「ははは、愛する者同士の再会は早い方がいいと思ってネ。来ちゃった♪」
「来ちゃった♪ じゃ、ないですよー! まだ準備出来てないじゃないですかーヤダー! しかも花子までいるし……!」
花子と呼ばれたハーマイオニーを厄介そうな表情で見ながら頭を抱えるナイアに対して、沙耶は一歩前に進んで近付き、彼女に対して口を開いた。
「貴女が泥棒猫ね……フミノリはどこ?」
潰すべき泥棒猫だという確信と、文則への執着の込められたその言葉に、慌てふためいていたナイアの口から笑い声が漏れ出す。それは決して喜びや面白いといった感情から来るものではなく、どうしようもない苛立ち・怒りから来るものなのだと、傍から見ている者も理解できた。
「ふ、ふふ……初めてですよ……ここまで私を虚仮にしてくれたお馬鹿さん達は……!」
そう言ってナイアは自身の敵の姿を改めて見渡す。
案内役として選ばれた守谷は笑みを浮かべたまま懐から煙草を取り出していた。
狙われている沙耶は好戦的な笑みを浮かべて自然体で佇んでいた。
何か因縁があるようなハーマイオニーは興奮冷めやらぬ様子で今にも飛び掛からんとタイミングを計っていた。
そして互いに面識のない安藤は内心混乱しすぎて全然口を挟めないと傍観者に徹していた。
「――――絶対に許さんぞムシケラ共! じわじわとなぶり殺しにしてくれる! …………あ、荷物の運び込みは続けてくださいねー」
その配達業者への指示が終わると共に、戦闘が始まった。
次回の更新は、11月30日の23時を予定しています。