勇者王ガオガイガーR公式外伝第2章を投稿します。
拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。
2018/10/29
一部表現の誤りを訂正
♪ザン!♪(GGGのマーク)
Gアイランドシティ郊外の上空に突如出現した黒い穴。それはこの世界とパラレルワールドとを繋ぐゲートだった。
そこから現れた謎の敵、鉄人兵団を同じパラレルワールドの住人であるドラえもん達と共に退けた我らが勇者王達。
彼らは、情報を整理する為にエクセルベースへ帰還していた。
-EPISODE-8.3
【悪魔になったザンダクロス】(タイトルコール)
「さぁ皆、入って」
「えっと、失礼します…」
凱に先導され、メインオーダールームへ入っていくドラえもん達。そこで彼らを出迎えたのは、大河長官を始めとするメインオーダールームの面々だった。
「ようこそ! メインオーダールームへ!」
「あ、えっと…」
「「「「「よ、よろしくお願いします!!」」」」」
自分達を歓迎する大河の声に答え、一礼するドラえもん達5人。リルルも戸惑いながらそれに倣う。
「うむ、元気かつ礼儀正しくてよろしい!」
大河のそんな声を聞きながら、命やスワンに勧められて着席する6人。早速話し合いが始まった。
「じゃあ、ドラえもん君。早速で悪いけど、君達がなぜこの世界に来たのか…それを話してくれるかな?」
「はい」
正樹の問いに答え、これまでの大まかな経緯を話し始めるドラえもん。
「と、言う訳です…」
「ふむ、ドラえもん君達と鉄人兵団との関係はその…ピッポ君? 彼の事を除けば、俺達の世界で描かれている物語と大体同じだね…となると、気になるのは君たちを飲み込んだ黒い穴。その正体か…」
「それは多分…『超時空乱流」だと思います」
「超時空乱流…聞いた事のない現象ですね…」
聞き慣れない言葉に、首を傾げる紫苑。雷牙や猿頭寺達も言葉にこそ出さないが、同じ疑問を感じている。そんな面々を横目に、唯斗が正樹に小声で話しかける。
「正樹さん。超時空乱流ってもしかして…」
「あぁ、『のび太の日本誕生』に出てきた時空乱流。おそらくそれの親戚みたいなもんだろうね」
唯斗の問いに小声で答えながら、ドラえもんを見つめ、更なる説明を促す正樹。それに答えるようにドラえもんが再び口を開いた。
「僕達の元いた世界。その22世紀ではタイムマシンが発明されているので、時空に関する研究がかなり進んでいます。それによって明らかになった現象の1つに、時空間乱気流…通称、時空乱流というものがあります」
「時空間乱気流…響きからして、あまり良い物ではなさそうですね」
「はい、時空乱流は時空で発生する乱気流のような物で、ブラックホールのようにあらゆる物を吸い込んでしまいます。そして、それに吸い込まれた人や物は、別の場所や最悪別の時代へと飛ばされてしまいます。昔から言われている神隠しは、単なる失踪や誘拐、もしくはこの時空乱流のどれかで説明がつくそうです」
「なるほど…それでは、超時空乱流とはどのような現象なのですか? 何となく想像は出来ますが…」
「一言で言うと、時空乱流の強力版です。時空乱流を乱気流とするならば、超時空乱流は大型台風。そのあまりの強さの前に、吸い込まれた物は時間や空間だけじゃなく、次元まで飛び越えてしまうんです。22世紀でも事例は数えるほどしかありませんが、報告されています」
「…つまり君達は、その超時空乱流によって、この世界へと飛ばされてしまったという事か。むぅ…」
そう呟きながら腕組みをして考え込む雷牙。正樹や紫苑も同様に考え込んでいる。
「ねぇ、ドラえもん…気になってるんだけど…僕達、元の世界へ帰れるんだよね?」
それを見たのび太が尋ねるが、ドラえもんもばつの悪そうな顔で俯くばかり…。
「ま、まさか…帰る事が出来ないの?」
「………」
「そ、そんな!?」
「嘘だって言ってくれよ! ドラえもん!」
たちまちパニック状態に陥るのび太達。それを見た護が科学者勢に問いかける。
「雷牙博士、正樹さん、紫苑さん、なんとか皆を元の世界へ帰す事は出来ないんですか?」
だが、科学者勢の反応は芳しい物ではなかった。
「うむ…何しろこの世界では未だ例のない現象じゃからな…」
「その分野に詳しい学者でもいれば良いのですが、新生世界十大頭脳にも、U.S.Nメンバーにも心当たりは…」
雷牙の言葉に続くように頭を抱える紫苑。
「そんな…」
その時、正樹が静かに呟き始めた。
「まあ、次元の壁を突破する事自体は、決して不可能じゃないと思うんだ…」
その呟きに全員の視線が正樹に集中する。
「何か、方法があるんですか? 正樹さん!」
「凱…EI-25との戦い、覚えているよな?」
「あぁ…」
「EI-25とは奴の潜んでいた並列空間内で戦った訳だけど…凱、ESウインドウの存在すら確認されていなかった当時、どうやって並列空間に侵入した?」
「それは、ビッグボルフォッグが残してくれた並列空間の痕跡を…まさか!」
「そう、そのまさか。ディメンジョンプライヤーを使って、閉じてしまったあの黒い穴。パラレルワールドへのゲートをこじ開ける」
「なるほど!」
「ゲートを開く事が出来れば、あとは僕の道具を使って、何とか元の世界に戻れると思います」
「よかった! 僕達、元の世界に戻れるんだね!」
「ホント、冷や冷やしたぜ!」
大喜びののび太達。だが、正樹は深刻そうな顔で話を続けた。
「ただし…これには問題がある」
「問題…ですか?」
「あぁ、パラレルワールドへのゲートを開く。これは通常の空間修復なんかとは全く違う芸当だからね。難易度はもちろん、ブレイブガオガイガーとプライヤーズにかかる負担や、消費するエネルギーも桁違いに跳ね上がる。ブレイブガオガイガーのパワーをもってして、どれだけの時間ゲートを維持できるか…」
「正樹さん、多次元コンピューターを使ってシミュレートしてみました。データが少なすぎるので、全て仮定値での計算になりますが…」
「結果は?」
「ブレイブガオガイガーに搭載しているGSNEXT-RIDE4基を全てレベル10で稼動したとして…ゲートを開けていられるのは………9.24秒が限界です」
「……予想よりかなり短いな…」
「えぇ、機体負荷はともかく、エネルギーの消費が大きすぎます。もちろん、仮定値による計算なので、実際とは異なる可能性が高いですが…それでも、そう長い時間開けていられない事は間違いありません」
「10秒にも満たない時間、しかも1発勝負でゲートを通過…かなり難しいですね」
「一体どうすれば…」
皆が落胆する中、唯斗が何かを思いついたように顔を上げた。
「あの、何もブレイブガオガイガーだけにやらせなくてもいいんじゃないでしょうか? ネクストガオガイガーやガオガイガーRの力も合わせれば、何とかなるんじゃ…」
「力を合わせる…そうか、その手があった! 紫苑、3機のパワーを合わせた場合、ゲートを開ける時間はどのくらいになる?」
「少々お待ちを………出ました。38.81秒。維持できる時間が約4.2倍になりました」
「…開いたゲートへすぐに飛び込める保証はないし、もう少し余裕を持たせたい所だな…よし、ネオディビジョン艦も使おう。まずは朱雀王を」
「ネオジェイアークを使え」
正樹の言葉を遮るように響くJの声。全員の視線がJに集中する。
「…なんだ?」
「いや、まさかJさんから、それを言い出してくれるとは思ってなくて…」
「……私とて、場の空気くらいは読める」
「ごもっともです。紫苑、ネオジェイアークをプラスして再計算だ」
「今やってます………出ました。485.26秒です」
「よし! それだけの時間があれば、ドラえもん君達がゲートを潜るのに十分だ」
「それじゃあ正樹さん、早速ゲートを開く準備を!」
「唯斗君、俺もそうしたい気持ちはやまやまだが、今すぐには無理だ。各調整作業に早くても…10日はかかる。それに鉄人兵団の事だってあるしね」
「あ、それもそうですね…」
「でも、これで望みが出てきました。皆さん、申し訳ありませんが、準備が整うまでこの世界でご厄介になってもよろしいですか?」
「もちろんだとも、こちらとしても大歓迎だよ」
ドラえもんの言葉を笑顔で肯定する大河。それを聞き、唯斗が手を上げる。
「あの…ドラえもん君達、俺の家に泊まってもらうって…駄目ですか?」
「唯斗君の家に?」
「ええ、エクセルベースの仮眠室で10日も寝泊りしてもらうって訳にはいかないだろうし、俺1人暮らしで、空いてる部屋もあるからどうかな? って…思ったんですけど」
「ふむ、たしかに殺風景な仮眠室で寝泊りしてもらうのは、申し訳ないな…」
「Gアイランドシティのホテルを手配する手もあるが、何かあった時に動き辛いし…ドラえもん君達が良ければ、良いんじゃないかな?」
「そこまでしていただけるなら、ありがたくお言葉に甘えます。皆も良いよね?」
「うん!」
「断る理由なんてあるわけないだろ」
「それじゃあ長瀬さん。僕達、ご厄介になります」
「唯斗でいいよ。じゃあ、改めてよろしく」
ガッチリと握手を交わすドラえもんと唯斗。世界の違う者達が友情を結んだ瞬間だった。
「♪~」
鼻歌交じりに台所で包丁を振るう唯斗。エクセルベースでのやり取りの後、ドラえもん達と共に自宅へ戻った唯斗は、早速台所に向かい夕飯の準備をしていた。
「あの、唯斗さん、何かお手伝いを…」
「いいよいいよ。皆はお客さんなんだから、ゆっくり休んでて」
手伝いを名乗り出た静香にそう言いながら、唯斗はテキパキと調理を進めていき―
「お待たせー!」
唯斗の声と共に食卓へ運ばれてくる2つの土鍋。
「夜はまだ少し冷えるからね。シチュー鍋にしてみました」
そう言いながら、食卓に置かれた卓上コンロに土鍋をセットする唯斗。コンロの火を点けると土鍋からグツグツと音が聞こえ始める。
「よし、もう良いかな」
頃合を見て、土鍋の蓋を開けると湯気と共に食欲を誘う香りが周囲に漂う。
「うわぁ、美味しそう…」
「具は鶏もも肉と鮭のぶつ切り、ウインナー、ジャガイモ、玉葱、ほうれん草に人参ってところかな。おかわりはたっぷり用意しているから、たくさん食べてね。それでは…いただきます」
「「「「「いただきまーす!」」」」」
食前の挨拶をきちんと済ませ、食事を開始するドラえもん達。
「おいしーい!」
「ホント、すごく美味しいです。唯斗さん」
「男の我流料理だけど、喜んでくれて何よりだよ」
のび太達の感想に謙遜しながらも、どこか嬉しそうな唯斗だったが―
「………」
「リルルちゃん…もしかして、口に合わなかった?」
器に取った鶏肉を一口食べて、不思議な顔をしているリルルに気がつき、その表情がわずかに曇った。口に合わなかったか?と不安になる唯斗だったが―
「いえ、そうじゃないんです……その…『美味しい』って、何ですか?」
リルルの言葉は、唯斗の想像を超えていた。
「どういう…意味かな?」
「有機物をエネルギーに変換するシステムを搭載しているから、こうやって食事も出来るし、味覚センサーで味を感じる事も出来るんです。でも、のび太君達の言う『美味しい』という言葉の意味がわからなくて…」
そう言って俯くリルル。唯斗は少しの間考え込み…。
「これは…正樹さんに相談してみるか」
助っ人を頼む事にした。
「こんばんは~」
それから約20分後、唯斗宅へやって来る正樹、ルネ、グラナートの3人。
「いらっしゃい、正樹さん、ルネさん、グラナートちゃん」
「唯斗さん、本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「あ、これはご丁寧に…ホント、すみません正樹さん。色々とお忙しいのに」
「いやいや、ちょうど3人で食事休憩に入る所だったからね。まさに渡りに船。後で唯斗君の手料理、たっぷり食べさせてもらうよ」
「もう、俺なんかの料理でよかったら、いくらでも食べてってください。ドラえもん君達もリルルちゃんの事が解決するまで待つ。って言ってますし、一緒に鍋を突付きましょう」
「よし、それじゃ始めようか…唯斗君の話で大体の見当はついているんだ」
そんな会話を交わしながら、リルルへ手招きする正樹。
「なんでしょうか…」
「うん、1つ質問するから、それに答えてくれるかな?」
「はい…」
「リルルちゃんが食事をした回数は、今日の分も入れて今までで何回かな?」
「……これが初めてです」
「…やっぱりね。唯斗君、原因がわかったよ」
「何が原因なんですか? 正樹さん」
答えを知りたがる唯斗を制しつつ、椅子に座る正樹。そしてドラえもん達の顔を見回し、ゆっくりと話し始めた。
「リルルちゃんが『美味しい』という事を理解できない原因は…簡単に言えば『味覚の経験値不足』だ」
「味覚の…」
「経験値不足…」
「そう、皆も経験ないかな? 初めて食べた食べ物が、今までに味わったことのない味で、戸惑った事」
「あ、あります」
「リルルちゃんの状態にもそれが当てはまる。甘いとか辛いとか、味を情報として知ってはいても、実際に食事をした経験がないから、何を食べても戸惑ってしまう訳だよ」
「なるほど…じゃあ、味覚の経験値を高めていけば良いわけですね」
「そういう事。色々な味の食べ物を食べていくのが確実なんだけど、それじゃ時間がかかりすぎるから…今回はちょっと裏技使うよ」
そう言いながら自前のノートパソコンを起動する正樹。
「実はピギーちゃんの2号機を開発中でね。その子には必要に応じて料理人になってもらう予定なんだけど…そのデータをリルルちゃんに移植する」
リルルの左手中指にケーブルを繋げ、データをインストールする正樹。待つ事10秒弱。
「これでよしっと…リルルちゃん、早速だけど何か食べてみてくれるかな?」
「あ、じゃあ鍋を温めなおしますね」
早速コンロに火を点ける唯斗。5分もしないうちに土鍋からグツグツと音が聞こえ始める。
「はい、リルルちゃん」
鍋の具を器に取り、リルルに渡す唯斗。器を受け取ったリルルは、先程と同じように鶏肉を一口。
「…どうかな?」
リルルの反応を固唾を飲んで見守る唯斗達。
「まだ、よくわかりません。でも…これをもっと食べたい。そんな気がします」
「よし! 成功! それが『美味しい』って事だよ。リルルちゃん」
「これが…『美味しい』……」
正樹の言葉に器に盛られた鶏肉や野菜をまじまじと見つめるリルル。
「まぁ、まだ実感が薄いかもしれないけど、じきになれるからね」
「じゃあ、リルルちゃんの件も解決したし、皆で食べましょう!」
「ああ、食べよう!」
正樹の声が響く中、人数分の器と箸が改めて用意される。
「あ、ルネさんとグラナートちゃんは、フォークとスプーンの方が良いですか?」
「いや、chopsticksでいいよ。練習しているから」
「私も大丈夫です」
「ドラえもん、チョップスティックって何?」
「英語で箸の事だよ」
そんな会話が交わされる中、2度目のいただきますが部屋に響き、食事が始まった。
「うん、美味い。唯斗君、良い腕してるね」
「ありがとうございます。あ、このスープに軽くトーストしたフランスパン漬して食べてみてください。美味いですよ」
「どれどれ……たしかに、こりゃ絶品だ」
スープの滲みたフランスパンを一口齧り、その味に笑みがこぼれる正樹。それを他の皆も正樹の真似をして、一様に破顔する。
そして、リルルも感じ始めたばかりの『美味しい』という感情にどこか戸惑いながらも、箸を止める事はない。
大量に用意されていた鍋の具とフランスパンはどんどん減っていき、ついには殆ど全てが各人の胃袋に収められた。
「あぁ、美味かった…」
「そう言ってもらえると作ったかいがあります。でも、まだ終わりじゃないんですよね」
「え?」
「鍋にはシメがつき物でしょう? 今準備しますから」
そう言って、台所に向かう唯斗。戻ってきた彼の両手には、冷やご飯とスパゲッティが…。
「ゆ、唯斗君! ま、まさか!」
「えぇ、鍋が2つあるんでシメも2種類です」
「それは反則だ…」
正樹の声を聞きながら、片方の鍋に冷やご飯を入れる唯斗。具材の旨味が溶け込んだスープをご飯が吸い、極上のリゾットに変わっていく。
そして、もう片方の鍋はスープを少し煮詰め、硬めに茹でたスパゲティを投入。麺全体にスープを絡ませていけば、これまた極上のクリームソーススパゲティに早変わり。
「よし、仕上げだ」
2つの鍋にたっぷりの粉チーズを加え、粗挽きの黒胡椒で味を調える。最後にパセリのみじん切りを振ればシメの2品完成である。
「美味い!」
「美味しーい!」
リゾットとスパゲティに感激の声を上げる正樹達。一方、無言でリゾットやスパゲティを食べるルネ達。
見事な対比であるが、それぞれの心にある思いは『唯斗君(さん)の料理は美味い』で共通していた。
暗い部屋の中、目を覚ます唯斗。時計を見れば時間は午前5時。
「5時間くらいは眠れたかな…」
ベッドの上で軽く伸びをしながら呟く唯斗。夕食を終え、正樹達が帰ってからもドラえもん達とアニメの鑑賞会やゲームで大いに盛り上がり、床に着いたのは午前0時を少し過ぎた頃だった。
「さて、起きるか」
ベッドから抜け出て寝巻きを脱ぎ、トレーニングウェアに着替えると、まだ眠っているであろうドラえもん達を起こさないようにゆっくりと階段を下りていく。
「水でも飲んでいくかな」
そんな事を呟きながらリビングへ入る唯斗。そこには―
「あれ、リルルちゃん」
電気の消えたリビングでソファーに座っているリルルの姿があった。
「あ、唯斗さん…」
「おはよう、もう起きてたんだ。早いね」
「いえ、私は…その、睡眠を取る必要が殆どないから…」
「あぁ、なるほど…ちょっと待ってて、紅茶でも入れてくるから」
そう言って、台所へ向かう唯斗。5分ほどで淹れたての紅茶の入ったティーカップや砂糖などを載せた盆を手に戻ってくる。
「はい、砂糖は自分で適当に入れてね」
「あ、ありがとうございます」
ティーカップを受け取り、紅茶を一口飲むリルル。少しの間沈黙が場を支配し、唯斗が口を開いた。
「リルルちゃん…やっぱり、ピッポ…じゃないジュド君が心配?」
「……どうして、そう思うんですか?」
「だって、ピッポ君はリルルちゃんにとって大切な存在なんでしょう? 聞いたよ、自分の部品を使ってピッポ君を修理した事があるって」
「それは、ただの気まぐれで…」
「気まぐれ…か。でも、今はそうやって心配してるよね? やっぱり、ジュド君の事が大切なんだよ」
「大切…心配…まだ、よくわかりません…」
「そっか、まぁ…すぐに解るようになるよ。昨日の夕ご飯で『美味しい』って意味を知ったようにね」
そう言うと紅茶を一気に飲み干し、立ち上がる唯斗。
「さて、じゃあ俺はちょっと走ってくるから」
「走ってくる…今からですか?」
「あぁ、この8年間、雨の日風の日平日休日関係なく、毎日走っているのが密かな自慢だったりするのだよ」
少しおどけた感じでリルルの問いに答え、玄関へ向かう唯斗。靴を履き、手足に重りを付けると家の前で軽く準備運動をする、
「どの位走るんですか?」
「うーん、最近は25kmくらいかな。時間は40分くらいで…じゃあ、帰ったら朝御飯の準備するから」
「あ、唯斗さん…」
「なに?」
「あ、その…いってらっしゃい」
「いってきます」
リルルに見送られ、走り出す唯斗。徐々に走るスピードを上げ、原付バイク並かそれ以上のスピードで早朝のGアイランドシティを疾走する。
それから約1時間後。
「♪~」
25kmのランニングをジャスト40分で終わらせて帰宅した唯斗は、シャワーでサッと汗を流すと台所に立ち、鼻歌交じりに朝食の準備をしていた。
鍋に胡麻油を引き、半月切りにした大根と人参、笹掻きにした牛蒡、石突きを取り、小分けにしたシメジ、一口大に千切り、下茹でした蒟蒻を入れて炒める。
具材に油が回った所で、昆布と鰹の合わせ出汁を注ぎ、灰汁を取りながら暫し煮込む。
「さて、今のうちに鮭を…」
冷蔵庫を開き、タッパーを取り出す。蓋を開けば中に入っているのは、ガーゼに包まれ白味噌ベースの漬け地に漬け込まれた鮭の切り身。
ガスコンロのグリルに火を点け、漬け地から取り出した鮭の切り身を並べて、焦がさないように焼いていく。
「うーん…焼き魚と汁物だけじゃ、ちょっと寂しいな…よし、冷奴もつけるか」
木綿豆腐を等分に切り、1つずつ皿に盛る。薬味として小口切りの葱 、みじん切りの大葉、すりおろした生姜、鰹節を用意する。
この頃になると、眠っていたドラえもん達も起きだし、着替えや洗顔を済ませて食卓に着き始める。
「おはよう! よく眠れた?」
「はい、グッスリ眠れました」
「それは良かった。もうすぐ朝ご飯出来るからね」
そう言って調理の仕上げに入る唯斗。醤油と塩、酒で汁物の味付けを行い、ざく切りにした小松菜を入れて一煮立ち。
「…よし、OK」
最後にもう一度味の確認を行い、コンロの火を消して汁椀に盛っていく。
「はい、お待たせ」
炊き立てのご飯、具沢山の汁物、鮭の西京焼き、冷奴。唯斗特製の朝ご飯がドラえもん達の前に並べられる。
「では…いただきます」
「「「「「いただきまーす!」」」」」
食前の挨拶をきちんと済ませ、食事を開始するドラえもん達。
「おいしーい!」
「ホント、すごく美味しいです。唯斗さん」
「喜んでくれて何よりだよ。いっぱいおかわりしてね」
ドラえもん達の声にそう答えながら、2杯目になる山盛りの丼飯を胃袋に収めていく唯斗。朝から凄まじい食欲である。
「さて、鉄人兵団のせいで学校休みになったし…今日はどうしようか?」
朝食を終え、食器を洗いながらドラえもん達に問う唯斗。
「このまま家でノンビリするのも良いし、Gアイランドシティを散策するってのもありだと思うよ」
「そうですね…唯斗さん、実は考えている事が―」
唯斗の問いに答えようとするドラえもんの声をGコマンダーのアラームが遮る。メインオーダールームからの通信だ。
「ちょっとごめんね。はい、長瀬です」
Gコマンダーを手に取り、アラームに応答する唯斗。
『おはよう、長瀬君』
「あ、ルナさん。おはようございます」
『朝からごめんなさいね。早速だけど、ドラえもん君達は近くにいる?』
「ええ、全員すぐ近くにいますが…」
『ちょうど良かったわ、悪いけどすぐにメインオーダールームまで来てくれないかしら』
「事件ですか?」
『えぇ、詳しくはメインオーダールームで』
「わかりました。すぐに行きます!」
通信を終えると唯斗は、Gコマンダーをポケットに仕舞い、ドラえもん達の方を向くと―
「何か、事件が起きたみたい。すぐにメインオーダールームへ来てくれって」
ルナからの通信を簡潔に伝えた。
「事件…鉄人兵団ですか?」
「詳しい事はまだわからない。とにかくメインオーダールームへ急ごう!」
「遅くなりました!」
それから約15分後。声と共に勢いよくメインオーダールームへ飛び込む唯斗。ドラえもん達もその後に続く。そして、その声に振り返る正樹。
「あぁ、唯斗君、ドラえもん君達も、アレを見てくれ」
正樹の声にメインスクリーンに視線を送ると、そこに映し出されているのは1体の巨大ロボットと蝶を模した形状の飛行物体。
「な、何ですか? あれ!」
「20分前に埠頭へ飛来した。巨大ロボットは全高30m、悪趣味な外見だって事以外の情報及び目的は不明。ただ、ロボットも飛行物体も一向に動きを見せない。まぁ、何か考えが有っての事だとは思うんだけどね」
スクリーンを睨みながら、静かに呟く正樹。その時、命が声を上げた。
「長官! エクセルベースに向けて、正体不明の怪電波が発信されています! これは…通信のようです!」
「何!? 卯都木君、通信回線を開いてくれ!」
「はい!」
すぐさま、通信回線が開かれ、ボンデージファッションに身を包み、バタフライマスクで素顔を隠した女性がスクリーンに映し出される。
「ごきげんよう、GGGの皆さん。私はバイオネットの高級幹部、マティーニと申します」
「バイオネットの高級幹部だって!?」
「データベースの検索完了。マティーニ、本名、年齢、国籍など一切不明。殺人、爆弾テロなど31件の罪状で国際手配されています」
「それで、そのバイオネットの高級幹部さんがわざわざ何の用なのかな? こっちはおたくらに付き合ってられるほど、暇じゃないんだよね」
不快感を隠そうともしない正樹の声に、マティーニは不敵な笑みを浮かべ―
「私の用件はただ1つ。勇者王との決闘です!」
高らかにそう宣言した。
「け、決闘!?」
「おいおい、マジかよ…」
文字通り予想外なマティーニの発言に、驚きを隠せないメインオーダールームの面々。
「30分待ちます。もしも時間内に勇者王が現れなければ、このバイオネット最新にして最強の兵器『Bカイゼル』で、Gアイランドシティを無差別攻撃します! 犠牲を出したくなければ、この申し出受けていただきましょう!」
その言葉を最後に通信は途切れ、スクリーンには砂嵐が走るばかりになった。
「決闘だと…一方的にふざけた事を!」
「しかも、よりによってブレイブガオガイガーとネクストガオガイガーが定期メンテナンスの真っ最中に仕掛けてくるなんて…作業終了までどんなに急いでも2時間は必要です」
「ブレイブとネクストは…じゃあ、ガオガイガーRは動けるんですね。だったら俺が行きます! あんな奴ら、正面から迎え撃って叩き潰してやる!」
「待ってください唯斗君。バイオネットが、決闘を申し込む…これは何か裏があるに決まっています」
「あぁ、何か罠が仕掛けられていると考えた方が良い」
「もう1つの可能性もあるよ…あのBカイゼルとかいうロボットの力に絶対的な自信がある…っていうね」
血気に逸る唯斗を止める紫苑達。だが、唯斗は止まらない。
「それは百も承知です。でも、このままあれを放っておいたら、Gアイランドシティが攻撃される。出るしかありませんよ。罠なんか正面から叩き潰してやります!」
「…よかろう。ガオガイガーR、出撃承認!」
「了解!」
「それじゃあ、僕達も行きます! 秘密道具でサポートを!」
大河に出撃を願うドラえもん達。だが、それを唯斗が止める。
「ドラえもん君達は残っていてくれ。鉄人兵団が動きを見せるかもしれないからね」
「……わかりました」
「それじゃあ…長瀬唯斗、出撃します!」
その声と共にメインオーダールームを後にする唯斗。同時に牛山達が声を上げる。
「こちら整備部牛山! 玄武王内部にて、長瀬特別隊員のリュシフェルガオーへのフュージョン完了と同時に、ガオガイガーRへの合体作業に入る! 担当スタッフは準備急げ!」
「参謀部の月村です。ディバイディングドライバーの裏技運用、テストも兼ねて実行するので、こちらも準備をお願いします」
「裏技運用?」
正樹の言葉に首を傾げるドラえもん達。
「なぁに、大した事じゃないんだけどね…」
そんなドラえもん達に不敵な笑みを浮かべる正樹。この男がこういう顔をする時は、必ず何か企んでいる時である。
それから約10分後。
「時間まであと15分。そろそろ姿を見せる頃ですわね」
埠頭の隅で微動だにしないBカイゼルを眼下に見ながら、不敵に微笑むマティーニ。その時―
「マティーニ様! レーダーに反応! これは…勇者王です!」
配下の声が飛行物体のブリッジに響く。直後、スクリーンに映し出されるのは、白き勇者王ガオガイガーR!
だが、ガオガイガーRの様子はいつもと異なっていた。その左腕に装着されているのは―
「まさかあれは…ディバイディングドライバー!」
「うぉぉぉぉぉっ!」
マティーニが驚きの声を上げる中、左腕にディバイディングドライバーを装着したガオガイガーRは、一気に急上昇。
「いっくぜぇ!」
高空で体を反転させ、今度は地表に向かって急降下した。
「ディバイディング! ドライバー!!」
地面に突き立てられた先端から光が迸り、瞬く間に直径数km、高さ数百mの巨大な戦闘フィールドが形成されていく。
「アレスティングフィールド固定!」
「レプリションフィールド、安定!」
「戦闘フィールド形成完了。ガオガイガーR、DDモード解除。戦闘モードに入ります」
「よし、ディバイディングドライバーの裏技運用…とりあえず成功かな」
「まさか、ガオガイガーRがディバイディングドライバーを使うなんて…」
「ブレイブとRは、パーツの62%と規格が殆ど共通だからね。ちょっと改造すれば、こういう裏技が可能なのだよ」
スクリーンを見つめながら、のび太の声にそう答える正樹。スクリーンはフィールドに降り立ったガオガイガーRを映し出していた。
「Bカイゼルにスクラップにされる。その為にやって来た貴方の勇気に敬意を表します。白き勇者王」
「あいにく、こっちはスクラップになるつもりはないね。逆にその不細工なロボットをスクラップにしてやるよ」
「バイオネットの兵器として相応しい姿に改造したBカイゼルを不細工とは…やはり、凡人には天才の考えは理解できないようですね」
「生憎だが、お前の考えなんか理解したく…って、改造? 改造だと?」
マティーニの発した『改造』と言う言葉に反応する唯斗。僅かな違和感はすぐに大きな疑問へと変わっていく。
「おい! バイオネット最新最強の機体とか言っていたのに、なんで改造なんて言葉を使った!」
「そ、それは…」
唯斗の言葉に動揺するマティーニ。必死に平静を保とうとするが、焦りの色は隠しきれない。
「どうやら、何か隠しているようだな…上等だ、そいつぶちのめして謎を暴いてやる!」
その声と共にBカイゼルへ向かっていくガオガイガーR。
「はぁぁぁっ!」
懐に飛び込むと同時に放った鉄拳が、Bカイゼルを吹き飛ばした。派手に土煙を上げ、地面に倒れるBカイゼル。
「って、おいおい、最新最強でこの程度かよ?」
あまりにあっさりと吹き飛んだBカイゼルに拍子抜けの唯斗。その声に反応したのかは解らないが―
「………」
無言で立ち上がるBカイゼル。同時に全身の装甲にヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていく。
「なっ…まじかよ……」
趣味の悪いカラーリングが施された装甲の下に隠されていたBカイゼルの真の姿を見て絶句する唯斗。
「あ、あれは!」
「ザ、ザンダクロス!?」
「う、うそだろ!?」
メインオーダールームで戦いを見守っていたドラえもん達、そして正樹も思わず声を上げていた。それを見た命が声をかける。
「皆、一体どうしたの!?」
「あ、あれは…僕達のロボットです…」
「何ですって!?」
「僕達と一緒に戦っていたロボット、名前はザンダクロスと言います…」
「ジュド…」
呆然とした表情で名前を呟くリルル。混乱の中、ただ時間だけが過ぎていった…。
君達に最新情報を公開しよう!!
バイオネットの操り人形となったザンダクロスのパワーに苦戦する勇者王。
辛うじてその挑戦を退けたGGGは、奪還作戦を決行!
作戦に挑むは、最強のドリームチーム!
果たして彼らは、大切な友人を取り戻す事が出来るのか!
勇者王ガオガイガーR公式外伝
ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団~はばたけ 天使たち~AnotherStory
-EPISODE8.4-
『ザンダクロス奪還作戦』
次回もこのURLにネオ・ファイナルフュージョン承認!!
これが勝利の鍵だ!!
『名刀“電光丸”』
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