勇者王ガオガイガーR第7章(第8話)を投稿します。
拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。
今回もPixiv掲載版から修正を行っております。
大まかな流れは変わりありませんが、一部登場人物などに変更があります。
2018/10/06
次回予告の修正を行いました。話の流れに変更はありません。
♪ザン!♪(GGGのマーク)
エクセルベース。宇宙防衛勇者隊GGGの本部であるこの海底基地には、様々な施設が存在している。
地下第三層に存在するトレーニングルームもその1つである。
ここにはありとあらゆるトレーニングを可能にする為、各種機材が揃えられているのだが、その豊富な機材を使って黙々とトレーニングに励む者達がいた。
「94…95…96…」
巨大なウェイトを何枚も取り付け、とても常人には持てない重さとなったバーベルを使い、黙々とベンチプレスに励む唯斗。
「97…98…99…100!!」
「お疲れ様、唯斗君」
規定の回数を終え、バーベルを降ろした唯斗に声をかけながら、タオルを差し出す凱。
「あ、ありがとうございます」
差し出されたタオルを受け取り、汗を拭きはじめる唯斗。
「1枚100kgのウェイトを左右10枚ずつ、2tにもなるバーベルを軽々と…大したもんだ」
「まだまだ、凱さんにはとても敵いませんよ」
「いや、このペースで鍛えていけば、俺なんてすぐに追い抜くさ。で、今日はどうする?」
「当然、挑戦させていただきます」
-EPISODE-07
【復活】(タイトルコール)
十数分後、トレーニングルームには護や戒道、正樹など多くのギャラリーが詰め掛けていた。中には仕事を何とかやりくりして迄見学に来る者や―
「今日までの対戦成績は、凱隊長の6戦6勝! だが皆さん知っての通り、長瀬隊員の実力も相当な物だ。番狂わせの可能性は十分にある。さぁ、張った張った!」
「…よし、凱隊長に1000円!」
「俺も凱隊長に1000円!」
「俺は…長瀬隊員に3000円!」
2人の勝敗で賭けを行なっている者達もいる。
そんなギャラリーの喧噪を尻目に、オープンフィンガーのグローブとヘッドギアを付け、リングに上がる2人。
「ルールはいつも通り、5分間の1ラウンド勝負。打撃、投げ、間接技、何でもありで、どのような形であろうと相手からダウンを奪った方の勝ちだ」
「はい、お願いします!」
2人は空手の試合前のように、相手へ頭を下げ、構えをとる。僅かな間を置いてゴングが鳴り、組手が始まった。
「先手必勝!」
先に動いたのは唯斗の方だ。
「ハッ!」
一気に間合いを詰め、鋭い左ジャブを5連続で繰り出す。だが、凱はそれをいとも簡単にいなし、5発目のジャブを弾くと同時にカウンターの右ストレートを放つ。
「ッ!」
顎狙いの一撃を避けきれないと判断した唯斗は、咄嗟に頭を動かし、その拳を額で受ける。
ガツッ!
鈍く大きな音をたてて、唯斗の体が僅かによろめく。凱はそのまま追撃をかけようとするが、一瞬早く唯斗が距離を取る。
「痛ったぁ…あぁ、顎に喰らってたら終わってた…」
額の痛みを振り払うように軽く頭を振り、構え直す唯斗。
「顎を打ち抜くつもりだったけど、よく受けたね唯斗君。良い反応だ」
「俺も、開始30秒で終わるつもりはありませんからね」
凱の言葉にそう返すと、唯斗は軽い爪先立ちの状態でリズムを取り、ステップを踏み始めた。そのまま凱の周囲を回り―
「ハッ!」
今度は、鋭い右の足刀蹴りを3連続で繰り出した。だが、凱はこの攻撃も容易くいなし―
「ハァッ!」
3発目の足刀蹴りに続けて唯斗が放った左の上段後ろ回し蹴りをスウェーバックで避け、カウンターの左を叩き込む!
パァン!
乾いた破裂音が響き、再度後退する唯斗。
「まだまだ!」
咄嗟に凱の拳を受けた事で、痺れの残る右掌を軽く振り、握り直す唯斗。そのまま、凱への攻撃を再開する為、三度間合いを詰め―
「ハァァッ!」
踏み込みと共に振りかぶった右拳を真正面から叩き込んだ。だが、その一撃は凱が顔の前に配置した左腕によって難なく受け止められ、それをきっかけに攻守が交代した。凱は素早く唯斗の拳を払い、右の手刀を放つ。
「なんの!」
唯斗の反応もまた素早いものだ。左腕でそれを受け止め、反撃の前蹴りを放つ。しかし、凱はそれを読んでいたかのように両腕を交差し、蹴りの出始めを抑える。
「なっ!」
そして次の瞬間、蹴りを抑えられた事で生じた僅かな隙を突き、凱は唯斗にお手本のような一本背負いを決めていた。それと同時に勝負の終わりを告げるゴングが鳴り響く。
「…また、勝てなかったか……」
リングに背中を打ち付けた痛みに顔をしかめながら、組み手と読みあい、2つの敗北の味を噛みしめる唯斗。
こうして、凱と唯斗の組手は終わりを迎えるのだった。
それから30分後。トレーニングルームと同じ地下第三層にある隊員専用の大食堂に凱達の姿はあった。
一度に300人以上が食事をできる巨大な食堂の一角に陣取り、注文した料理が次々と運ばれるのを待っていた訳だが―
「「「「「………」」」」」
なぜか、その場に座っている凱達の目は『点』になっていた。ただ1人唯斗を除いて…。
「えーと、注文…合ってるよな?」
「ああ…凱が大盛り牛丼の卵つきとサバの味噌煮、それと味噌汁。ミコッちゃんがきつねうどん、紫苑が天ざる、護君がミックスサンドとオレンジジュース。戒道君がカルボナーラ。俺が塩ラーメンと餃子。そして唯斗君が…」
そこまで言って正樹の言葉は止まった。唯斗の目の前に並ぶ料理を見て、喋る気が無くなったのだ。
ちなみに、唯斗の昼食は…特盛りのカツ丼と同じく特盛りの親子丼、大盛りのチャーシュー麺、コロッケが2人前に、メンチカツと野菜炒めがそれぞれ3人前…そして―
「お待たせしました。ショートケーキとレアチーズケーキ、それとティラミスにウーロン茶のジョッキです」
ウェイトレスが注文されていた最後の品々を唯斗の前に運び、全ての料理が揃った。
「いただきまーす!」
ウキウキした声と共に目の前の料理に箸を進める唯斗。その箸の動きは凄まじくも華麗で、大量の料理が瞬く間に消えていく。
「…お、俺達も食べようか?」
「そうだな…」
暫く唯斗の食事を呆然と見つめていた凱達だったが、正樹の言葉で我に帰り、食事を始めた。
「しかし…唯斗君」
「はい?」
正樹の言葉に顔を上げる唯斗。しかし、食べるという行為を止めはしない。
「いくら、強化された身体能力を維持する為とは言え…そんなに食べて太らないのか?」
「俺、元々痩せの大食いで太りにくい体質なんです。それに…」
「それに?」
「仮に太ったとしても1回フュージョンしたら、3kg位体重落ちるんで大丈夫です」
「なるほど…羨ましい体質だねぇ。あ、そういえば、ルナちゃんも大食いだけど太らないな」
「え、ルナさんもそういう体質なんですか?」
正樹の言葉についに箸を置く唯斗。
「お、唯斗君。ルナちゃんの名前に反応するとは…もしかして、ルナちゃんに惚れちゃったりとか?」
「そうじゃないですよ。ただ…」
「ただ?」
「…ちょっとイメージが湧かないだけです」
そう言うと唯斗は、残っていたカツ丼を一気にかきこみ、ケーキとウーロン茶を手早く胃に収めると―
「それに俺、恋愛とかまだ早いと思ってますし」
と言って席を立った。
「あ、唯斗君」
「凱さん、トレーニングルームにいますから、何かあったら呼んでください」
「あ、あぁ…」
凱は更に何かを言おうとしたが、何も言えずに唯斗を見送るだけだった。
「凱兄ちゃん…」
「どうした? 護」
「うん…唯斗さんの事なんだけど…」
「唯斗君がどうかしたのか?」
「唯斗さんって…器用だし、凄く良い人だと思うんだ…でも、何て言うか…」
「どこか、人と距離を置いている。自分の境界線の内側には踏み込ませない。そんなところがある…と、言いたいんだろ?」
「うん…」
凱の言葉に頷く護。それを見た凱はフッと溜息をつき―
「皆には話しておく必要があるな…唯斗君の過去を…」
と言い、一瞬の間を置いて話し出した。
「唯斗君は妹さんを失っているんだ…」
「妹さんを?」
「あぁ、自分の目の前でな…」
凱の口から出た事実に言葉を失う護達。だが、凱をあえてそれを無視し、話を続ける。
「元々、唯斗君は横浜の出身なんだ…」
「ちょ、ちょっと待った…横浜って、まさか……」
凱の口から出た『横浜』と言う地名に過敏に反応する正樹。命も声こそ出さないものの顔が真っ青になっている。
「そう…唯斗君も、EI-01落下の被害者なんだ」
ここまで言うと、凱は一旦言葉を切り―
「俺も父さんから聞いた話だから、全てを知っているわけじゃない…」
と前置きした上で、再び話し始めた。
「あの事件があった夜、唯斗君の御両親である長瀬敬介博士、織恵博士は、父さんと一緒に研究の真っ最中で、唯斗君と妹の響輝ちゃんは2人で留守番をしていたそうだ。そして2人が眠りについた深夜…」
「あの、忌まわしい事件が起きた…」
凱の言葉に続くように続くように呟く正樹。その顔は緊張感にあふれている。
「ああ…あの事件で横浜は、文字通り地獄になった…唯斗君の自宅周辺も火の海となり、その時たまたま起きていて1階にいた唯斗君は、寝ている響輝ちゃんを助けようと2階に向った…だが」
「だが?」
「唯斗君の目の前で、響輝ちゃんは炎に飲み込まれたんだ…」
「そんな…」
「じゃあ、響輝ちゃんはもう…」
「恐らく…な」
正樹の言葉に曖昧に答える凱。それを不審に思った正樹は―
「恐らく? 随分と歯切れの悪い言い方だね」
と、凱に詰め寄った。数秒の後、再び口を開く凱。
「…遺体が見つかってないんだ……」
「遺体が?」
「どういうこと? 炎に巻かれて…その、燃え尽き…ちゃった…って事?」
「それは有り得ません。通常の火災で発生する温度は、高くても精々800℃。こういう言い方は、問題があるかも知れませんが、人間が燃え尽きるには…温度が低すぎます」
護の言葉を即座に否定する紫苑。それに続くように凱が呟く。
「響輝ちゃんが炎に巻かれる寸前、唯斗君は見たそうだ…」
「見た? 何を?」
凱の言葉に疑問の声を上げる正樹。だが、正樹を初めその場の全員が気がついていた。誰もがそれが思い違いであることを望みながら…だが、その思いは凱の言葉で打ち砕かれてしまった。
「…パスダーを……」
凱が唯斗の過去を語っていたその頃、当の唯斗はトレーニングルームでサンドバッグを殴り続けていた。息もつかせぬ連打に300kg近い特注のサンドバッグが宙に浮く。
「………」
無言でサンドバッグを殴り続ける唯斗の心は、嵐のように荒れていた。
(あの時…俺が下へ降りてさえいなければ…)
目の前で妹を失った悲しみ―
(あの時…あと10秒、いや5秒でも早く響輝の元に行っていたら…)
妹を助けられなかった自分への苛立ち―
(あの時…俺が、俺がもっと強かったら!!)
例えようもない怒りと苛立ちと悲しみが唯斗の心をかき乱す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫びと共に放たれた一撃に、鎖が千切れたサンドバックは5m近く宙を舞い床に落下する。
「俺は…」
肩で息をしながらサンドバッグを見つめる唯斗。暫くの沈黙の後、再び口を開く。
「俺は…力を手に入れた。響輝、俺はお前を必ず助けだす……たとえ、この世界全てのゾンダーと戦う事になっても……」
その夜。勤務時間を終えた凱は、帰宅前に正樹の研究室へ立ち寄っていた。
「珍しいねぇ。凱がここに来るなんて」
そう言いながら、紅茶の入ったカップを凱に渡す正樹。
「ああ、ちょっとな…」
カップを受け取りながら口を開く凱。その表情はどこか冴えない。
「…唯斗君の事かな?」
「ああ…正樹、お前はどう思う?」
「どうって?」
「いや、月村正樹個人として見た場合、長瀬唯斗という人間はどう見える?」
「そうだねぇ…」
凱の質問に正樹は一瞬上を向き―
「まだ、出会って10日かそこらしか経ってない俺が言うのもどうかと思うけど…好感を持てる人間だと思うね…ただ」
「ただ?」
「こう、ピーンッと張り詰めた糸って言うか…余裕が有りそうだけど無いというか…とにかく、そんな感じがするねぇ」
「そうか…」
正樹の言葉が、まるで予想通りの言葉であるかのように頷く凱。
「どうやら、考えている事は同じみたいだね」
「ああ、唯斗君はゾンダー、機界生命体にさらわれた妹さんを助け出す。この思いで戦っている…」
「もしも、この思いが最悪の展開で裏切られたら…」
「その時、唯斗君は……」
この凱の呟きと共に黙り込む2人。そして暫しの沈黙の後―
「だけどさ、凱」
正樹が口を開いた。
「なんだ?」
「もし、唯斗君が倒れそうになったとしたら、俺達が支えれば良いんじゃないかな?」
「…そうだな」
正樹の言葉に頷いた凱は、紅茶を一気に飲み干し―
「そういえば、正樹」
と、話題を変える事にした。
「なんだ?」
「そういえば、明日だったよな…」
「あぁ、明日だね。迎えは仁君にお願いしているよ」
「お前が行かないとは…珍しいな」
「やる事があるんでねぇ」
そう言いながら背後の作業台を指差す正樹。
「それは?」
「これか? これはね」
凱の問いかけに正樹はウキウキとした顔で、作業台に乗せられたトランク、自らの発明品について説明を開始した。その日、凱の帰宅はいつもより2時間遅くなったという。
翌朝。羽田空港を出発する1台のスポーツセダン。その車中には、3人の男女の姿があった。
「C'etait un long voyage de 12 heures, c'etait un plaisir. Bienvenue au Japon mademoiselle Noir, mademoiselle shishiou[12時間の長旅、お疲れさまでした。日本へようこそ。Ms.ノワール、Ms.獅子王]」
運転席に座る男の名は
「早朝にも関わらず、迎えに来てくださってありがとうございます。Mr.綾瀬」
仁の流暢なフランス語による問いかけに、後部座席に座っていた2人の女性の内、パピヨン・ノワールは笑顔で答え―
「………フン」
ルネ・カーディフ・獅子王はつまらなさそうに鼻を鳴らし、窓の外を見つめていた。そんなルネの様子に、苦笑しながら呟く仁。
「正樹さんが迎えに来れなくて、ご機嫌斜めですね」
「なっ、ま、正樹は関係ない!」
直後、あまりにベタな反応を見せるルネ。
「あと15分もあれば、エクセルベースに到着します。もう少しだけ我慢してください」
そんなルネを宥めつつ車を走らせる仁。やがて車はGアイランドシティに入り、このまま何事もなくエクセルベースへ到着するだろう。車中の誰もがそう思った時、事件は起きた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
信号待ちで停止した車の近くに、突然中年男性が悲鳴と共に落ちてきた。地面に叩きつけられ、僅かな呻き声を残して動かなくなる男性。
「きゃぁぁぁっ!!」
瞬時に現場はパニックに包まれ、悲鳴が響く中、人々が蜘蛛の子を散らすように逃げ回る。
その状況にルネと仁は同時に、パピヨンもやや遅れて車の外へ飛び出した。
「………駄目です。もう、手の施しようが…」
男性の死亡を確認したパピヨンが悲しげに顔を伏せるのを尻目に、ルネは周囲の索敵、仁も索敵と並行しての警察及びGGGへの連絡を行い、そして―
「見つけた! 左の白い雑居ビル、その屋上!」
ルネが犯人らしき男を発見した。5階建ての雑居ビルの屋上に立つその男は、地面に倒れた男の死体を微笑を浮かべながら見つめ…そして、背中を向けて立ち去ろうとしている。
「逃がすか!」
「ルネ! 待って!」
パピヨンの制止の声を振り切り、ビルの屋上目掛けて一気にジャンプするルネ。立ち去ろうとした男の前に降り立ち、その進路を塞ぐ。
「アンタ、あんな真似してどういうつもり?」
「………ゲームの邪魔だ、そこを退け…」
男は陰湿な感じのする声でそう言うと、常人離れした跳躍力で後方へ跳んで、ルネと距離を取り―
「退かないのなら…お前も殺す」
蝗と人間を足したような怪人に変身した。そう、この男は新種だったのだ。それを見たルネも―
「イーク…イーップッ!!」
戦いに挑む為、凛々しい咆哮をあげた。直後、ルネの顔にサイバースコープが展開し、更にエネルギーアキュメーターが集束。同時に放熱機関であるインタークーラーコートが展開。戦闘形態が完成する。
「(こんな事になるなら、銃を預けたりするんじゃなかったよ!)ハァァァッ!!」
諸々の事情から手持ちの銃火器類を全て、別ルートで来日するポルコートに預けていた事に、内心舌打ちしながら目の前の新種に突撃するルネ。
バキィ!
直後、戦車の装甲板をも凹ませるパンチが新種の顔面に直撃。更に左右の連打をボディへ放ち―
「ハァァァッ!!」
渾身の力を込めた上段回し蹴りを、新種の右側頭部に叩き込んだ! だが―
「効かないなぁ…」
ルネの怒涛のラッシュを受けても、新種は平然としていた。多少の傷を負ってはいるが、それもすぐに再生していく。
「な…」
自分の攻撃がまったく通用していない事に愕然とするルネ。一旦距離を取ろうとするが、その為に生まれた僅かな隙を新種は見逃さない。
「ククッ…」
陰湿な笑みを浮かべながらルネに肉薄し、そのボディにパンチを叩き込む新種。強烈な衝撃にルネの体が『く』の字に曲がり―
「ぐ…ごほっ!」
口から大量の血が吐き出され、ルネの胸元を汚した。
「どうした…この程度で倒れられては、面白くないなぁ…」
そう言いながら、今度はルネの顔面を殴りつける新種。その一撃でサイバースコープは粉々に砕け散り、ルネの意識も一瞬遠のく。そのまま倒れそうになるが―
「この程度で終わりな訳…ないだろう?」
新種はそれを許さなかった。左手でルネの髪を掴んで、無理やり立たせると、残った右手でルネのボディを執拗に殴り始める。
そして、ボディへの打撃がちょうど10発を数えた時―
「終わり…だ」
半ば意識を失ったルネを一気に投げ飛ばした。ルネの体が一瞬宙に舞い、すぐに地上目掛けて落下を始める。
受身も取れない状態でこの高さから落下すれば、如何にサイボーグと言えどもただではすまない。
数秒後に聞こえるであろう断末魔を想像し、陰湿な笑みを浮かべながら、地上を見下ろす新種。だが―
「な、なんだと…」
その笑みは一瞬で消えうせた。地上にはいつの間にか白いマットが敷かれ、そこに落下した事でルネのダメージは最小限に抑えられていたのだ。
「護衛キットNo.16、高所落下時対応用瞬間展開式エアマット。これをトランクに積んでいて助かりました」
そう呟きながらルネの無事を確認し、安堵の表情を浮かべる仁。その様子を見た新種は―
「余計な事を…」
苛立ち混じりにそう吐き捨て、地上へ飛び降りた。すぐさまルネに止めを刺すべく動き出そうとするが、仁が立ち塞がる。
「女性に対しての狼藉…そこまでです。Ms.ノワール、Ms.獅子王をエクセルベースへ…あの外道は私が足止めします」
そう言いながら、ネットに横たわるルネを抱きかかえ、車内へ運ぶ仁。その動きには一部の隙もなく、新種も迂闊に手出しが出来ずにいる。
「了解しました。Mr.綾瀬、決して無理はしないように」
そう言い残すと最高速度で車を走らせ、エクセルベースへ直行するパピヨン。その場には仁と新種だけが残った。
「下等生物が…死にたいようだな」
「ご冗談を、貴方如きに殺されるほど弱くはありませんよ」
「貴様…栄光ある機界33新種が1つである、このバダスを侮辱するか!!」
仁の言葉に一瞬で激情し、咆哮と共に突進するバダス。仁は、その突進をかわすと―
「時間稼ぎ…させてもらいます!」
バダス目掛けて右腕を振るった。直後、右腕の延長線上で何かが煌き、バダスの体に絡みついたかと思うと、一瞬で縛り上げた!
「ぬおっ!」
突然動きを封じられ、驚きを隠せないバダス。やがて、己を縛る物の正体に気がついた。
「わ、ワイヤーだと!」
「そう、太さ0.1mm、髪の毛並の太さですが、その強度は折り紙つき。たとえ北極熊が相手であろうと動きを封じる事ができます」
そう言いながら右腕に填めた腕時計から伸びたワイヤーを巧みに操り、バダスを締め上げる仁。
「この程度で…動きを止めたつもりかぁ!」
しかし、バダスが咆哮と共に力を込めると、四肢を拘束していた筈のワイヤーは次々と千切れ飛び、瞬く間にバダスは動きの自由を取り戻してしまう。
「雑魚が…死ねぇ!!」
そして、仁目掛けて再度突進するバダス。
「この程度…な訳がないでしょう!」
だが、それは仁の想定内だった。バダスの一撃を後方に跳んで回避しながら、懐から白いピンポン玉を取り出すと―
「ここからが本番です!」
それをバダスへ投げつけた。次の瞬間、バダスの至近距離で炸裂する大音響と閃光。ピンポン玉の正体は、小型の
「ぬぉっ!!」
突然の大音量と閃光に、視覚と聴覚を封じられるバダス。人間をはるかに凌駕する再生能力で、感覚の回復を図るが―
「その一瞬の隙が、命取りです!」
回復に要するホンの数秒。仁にはそれで十分だった。
懐から今度は青と赤のピンポン玉を取り出し、青い方をバダスに投げつける。次の瞬間、破裂したピンポン玉からぶちまけられた粘着剤がバダスの全身を覆い、その動きを封じる。そして、続けて投げられた赤いピンポン玉がバダスに命中した次の瞬間!
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
テルミット反応によって発生した数千度の炎がバダスの全身を包んだ。全身を激しく焼かれ、のた打ち回るバダス。いくら再生能力で回復するとはいえ、全身に大火傷を負って平気なわけがない。
そして、全身の再生を終え、バダスが立ち上がった時には、仁は姿を消していた。
「ど、どこだ…どこへ消えた!」
慌てて周囲を見渡すバダス。数秒後、背後の気配に気づいたバダスが後を振り向くと―
「遅いですよ」
そこには、やや大型のダーツを構えた仁の姿があった。バダスが動こうとするよりも速く放たれたダーツは、一直線にバダスの胸部へ突き刺さる。そして―
「ぐわぁ!!」
刺さったダーツが爆発し、苦悶の叫び声を上げるバダス。そこへ更に2本のダーツが連続で突き刺さり、爆発する。
「うぎゃぁぁぁっ!!」
右肩の一部と、左脇腹を吹き飛ばされ、またしてものた打ち回るバダス。だが、その体は徐々に再生していく。
(解ってはいましたが、この位の攻撃じゃ決定的なダメージは与えられませんね…)
再生していくバダスを眺めつつ、心の中で呟く仁。
(あと数分は時間を稼ぎたいところですが…)
スーツに仕込んでいるダーツや手投げ弾の残りを確認しつつ、次の手を考える仁。その時―
「無事か? 仁!!」
その声と共にGチェイサーを駆る凱と唯斗、Gストライカーを駆るルナが現場へ到着した。
「お早い到着、助かりましたよ。凱隊長」
安堵の溜息と共にそう呟く仁。その顔には余裕の笑みが浮かぶ。
「綾瀬さん、正樹さんからGクラステクターを預かってきました」
「ありがとうございます」
そして、唯斗からトランクを受け取ると仁は―
「はぁっ!」
声とともにトランクを一気に投げ上げる。上空を滞空するように回転するトランク。そして―
「着装!!」
仁の叫びに反応し、トランクが爆発したように展開すると、内蔵していた漆黒の装甲が一気に射出された。
射出された装甲は、仁へと向かい、その体に装着され―
「イークイップ!!」
その掛け声を合図として、装甲の各所からガスが抜け、身体に密着すると戦闘形態への移行を完了した。
「さぁて、こっちは準備万端だけど…どうする?」
ウィルブレードを抜き、その切っ先をバダスに向けてそう問いかける唯斗。そして―
「潔く降参してくれると…ありがたいんだけどねぇ」
続けて放たれたこの一言が、バダスの脳裏から『撤退』の2文字を掻き消した。
「…ゾンダーシード!!」
バダスの声と共にバダスの右腕から無数の黒い種子状の物体が凱達に向け撃ち出された。そして―
「出でよ…ゾンダーソルジャー!!」
その叫びと同時に物体がグネグネと蠢き、人型を形成していく。そう、ゾンダーソルジャーの出現である。その数およそ50。
「「「「「ゾォンダァァァァァ!!」」」」」
出現したゾンダーソルジャーは、天に向かって咆哮すると一斉に凱達目掛けて進行を始めた。
「あーらら、怒っちゃった」
「唯斗君、奴を怒らせる為に、わざとあんな事言ったね」
「…やっぱり、わかりました?」
「わかるさ。もっとも、あそこまで怒りを露にするとは思わなかったけどね」
「この前、バトラスとか名乗ってた新種が、簡単な挑発でキレたのを思い出したんです。奴ら、挑発に耐性がないみたいなんですよね」
「なるほど…それじゃあ、この程度の連中はさっさと片付けようか!」
「同感です!!」
唯斗のその声をきっかけに、ゾンダーソルジャーとの大乱戦が始まった。
凱達がゾンダーソルジャーの群れとバトルを開始したその頃、戦場から少し離れた地点に停車したGキャリアーの中では、正樹が戦況を見守りながら、キーボードを叩き続けていた。
2分割されたスクリーンは、戦況と同時に―
「…ずいぶん派手にやられたね。普通の人間だったら、軽く10回は死んでるよ……」
奥のベッドに横たわり、パピヨンの治療を受けているルネのダメージを映し出していた。
「まあ、今回はサイボーグである事が幸運だったかもな……ルネ」
「…うるさい」
正樹の声に反応するルネ。どうやら少し前から目覚めていたようだ。
「起きてたか…調子はどうだい? お姫様」
「良い訳ないだろ…」
正樹の軽口にふくれっ面で答えるルネ。そんな仕草に正樹は苦笑いを浮かべ―
「まあ、それだけ返せれば…大丈夫だな」
と、言うと再びキーボードに向おうとした。だが―
「お、おいルネ! 何する気だ!!」
ベッドから起き上がろうとするルネに仰天し、パピヨンと共に慌てて止めに入った。
「ルネ、そんな状態で何をする気ですか?」
「あいつに…借りを返すんだよ」
「借りを返すって…今のお前じゃ新種には対抗できないんだぞ。さっき解っただろう?」
「悔しいでしょうけど、今は傷を治す事が先決です」
「そんな事…関係ない」
「え?」
「あいつは…私のこの手で……倒す!!」
苦痛に顔を歪めながらも正樹とパピヨンに思いをぶつけるルネ。その言葉を聞き、暫し考え込む正樹。
「…どうしてもやるのか?」
「…ああ」
「………わかった。パピヨンさん、鎮痛剤の投与とGSジェネレイターの調整をお願いします」
意を決したかのように正樹は立ち上がり、パピヨンにルネへの投薬を頼みながら、近くに置いていたトランクを開いた。直後、真紅の輝きが室内を包む。
「これは?」
真紅の輝きの正体、メタルレッドの強化装甲に目を奪われるルネ。思わず正樹に問いかける。
「これは?」
「Gクラステクター・セイバータイプ。さっき最終調整を終えたばかりだけど、こんな事もあろうかと持ってきておいた。ルネが使用する事を前提に、策敵能力と火器管制能力を重視した設計にしてる。それからこれが―」
そう言うと正樹は作業台にかけられたカバーを一気に取り去った。姿を現す数々の武器。
「俺からのもう1つのプレゼント『ウィルスナイパー』シリーズさ」
正樹の口から紡がれる新たな武器の説明を聞きながらも、じっと自分のGクラステクター、そしてウィルスナイパーを見つめるルネ。その目は勝利を確信しているかのように強く輝いていた。
一方、凱達とゾンダーソルジャーとの大乱戦は、終盤を迎えていた。
「ファイア!」
声と共にウィルブラスターを3点バーストで撃ちまくり、前方のゾンダーソルジャーを次々と倒していくルナ。
物言わぬスクラップと化したゾンダーソルジャーは、どれも額、喉笛、鳩尾の3ヶ所を寸分の狂いなく撃ち抜かれていた。
「Hit rate 100%. It is splendid[命中率100%、お見事です]」
「ありがとう、ウィルブラスター」
ウィルブラスターの言葉に笑顔で応えるルナ。その時―
「ゾォンダァァァァァ!!」
1体のゾンダーソルジャーが、ルナの背後から攻撃を仕掛けてきた。振り下ろされたブレードは、無防備なルナの背中を大きく斬り裂くかに思われた。
だが、そのブレードはルナを斬り裂く事はなかった。ルナは背後からの攻撃をまるで見えているかのように回避すると―
「後から攻撃してくるなんて、紳士的とは言えないわね!」
流れるような動きでロングコートに仕込んでいたクナイを抜き、投げつけた。クナイは見事なコントロールで、ゾンダーソルジャーの頭部に突き刺さり―
「Bomb♪」
ルナの声と同時に爆発。頭部を失ったゾンダーソルジャーは地面に崩れ落ちた。
「行くぜ行くぜ行くぜぇ!」
そんな声と共に、ウィルブレードを振り上げ、敵集団目掛けて真正面から突撃する唯斗。
「はぁぁぁっ!!」
袈裟斬り、右薙、そして唐竹。目にも止まらぬ3連斬で、目の前にいたゾンダーソルジャー3体を一気に斬り捨てるが―
「ゾォンダァァァァァ!!」
攻撃後の隙を突こうと、1体のゾンダーソルジャーが背後から襲い掛かってきた。唯斗は咄嗟にウィルブレードを逆手に持ち替え―
「甘い!」
気配を頼りに背後へ突き立てた!!
「ゾ、ンダァ…」
腹部を貫かれ、オイルを血のように噴き出しながら崩れ落ちるゾンダーソルジャー。その光景に、周囲のゾンダーソルジャーは一斉にマシンガンでの攻撃に切り替えようとするが―
「させるかよ! ウィルブレード! バイパーフォーム!!」
「System change[システムチェンジ]」
それよりも早く、唯斗が動いた。バイパーフォームに変形したウィルブレードで放つ渾身の一撃を―
「
咆哮と共に前方の敵集団目掛けて繰り出した!! 強烈な斬撃は攻撃範囲内にある物全てを薙ぎ払い、多くのゾンダーソルジャーを一瞬で物言わぬスクラップへと変えた。
「Seven defeating. It is splendid[7体撃破。お見事です]」
「ああ、我ながら良い攻撃だった」
「My Master. There is one question[マスター。1つ質問が]」
「なんだい?」
「What is the cheer ahead?[先程の掛け声は一体?]」
「ああ、特に意味はないよ。その場のノリで言ってみただけ…カッコいいだろ?」
「I have not understood the concept yet. However, if my master is good, I think it is good then[私はまだその概念を理解できません。しかし、マスターが良いのなら、私もそれで良いと思います]」
「そっか、じゃあこれからも使っていくから」
「Roger. It registers as a proper noun[了解。固有名詞として登録します]」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
ウィルマチェットを手に、気合いと共に突進する凱。立ち塞がるゾンダーソルジャーを次々と切り捨てていく。
「ゾォンダァァァァァ!!」
少し離れた場所にいたゾンダーソルジャー達は狂ったように左腕のマシンガンを乱射する。だが!
「甘い!」
凱は華麗な空中前転で弾丸の嵐をあっさりとかわし、反対方向に着地すると再び突進した。
「ゾォンダァァァァァ!!」
ゾンダーソルジャーもすぐさま反転し、再びマシンガンを乱射する。
「無駄だって言ってるだろう!!」
だが、凱は声と共にウィルマチェットで自身に直撃する弾道の弾丸のみを弾きながら、さらに接近。そしてゾンダーソルジャーの元へとたどり着いた瞬間!
「はぁぁぁっ!!」
袈裟切りで1体、更に返す刀でもう1体を切り倒した。そして3体目には―
「でやぁっ!!」
強烈な飛び回し蹴りを叩き込んだ!!
「ゾ、ンダァ…」
顔面を蹴り砕かれ、無様に吹き飛ぶゾンダーソルジャー。数秒後、何かが潰れるような音と共に頭から地面へと落下し、そのまま動かなくなった。
「隊長達…ノリにノッていますね……」
凱達の猛進撃を横目に呟く仁。そこへ1体のゾンダーソルジャーが突進してきた。
「来ましたか…」
仁は両太股のホルスターに収められた自らの得物を抜き、構える仁。その得物は一対のトンファーだ。
「ウィルブレイカー、その威力…試させてもらいます」
突進してくるゾンダーソルジャーに対し、自らも突進する仁。そのスピードは凱や唯斗に劣らない。
「ゾォンダァァァァァ!!」
眼前に迫るゾンダーソルジャーのブレードを紙一重で避け―
「はぁっ!!」
ウィルブレイカーでゾンダーソルジャーの顔面を打ち砕く。その動きには一切の無駄がない。そして―
「私のカードは、これだけではありませんよ」
そう言った刃が無造作に腕を振るうと、彼の周囲にいるゾンダーソルジャーが1体、また1体と細切れになり倒れていく。
ゾンダーソルジャーも装備しているブレードや、マシンガンで攻撃しようとするのだが―
「甘いですよ」
ブレードもマシンガンも、攻撃しようとした瞬間にはバラバラになっていた。そして、ゾンダーソルジャーの体に何かが巻きついた。バダスの動きを止める時に使った極細のワイヤーだ。
「これで終わりです」
次の瞬間、ゾンダーソルジャーは文字通りバラバラになり、その機能を停止した。
「なんなんだ…こいつらは……」
ゾンダーソルジャーが次々と倒されていく目の前の光景をバダスは受け入れる事が出来なかった。地球人を脆弱な存在と信じて疑わない彼にとって、凱達の強さはあまりに『異常』だったのだ。
「今の内に…逃げたほうが良さそうだ」
そう呟き、その場から背を向けるバダス。
「ああ! 逃げる気かよ! てめぇ!!」
背後から唯斗の怒声が響くが、無視して逃走しようと飛び上がった。その時!!
ダダダン!
「ぐはっ!!」
胸部に強い衝撃を受け、バダスは地面に叩きつけられた。
「な、なんだ…今のは……」
起き上がりながら衝撃を受けた方向を睨むバダス。そこにいたのは―
「凄い威力だね…これ」
右手に持った大型ハンドガンを感心しながら見つめるルネだった。その体はGクラステクター・セイバータイプに包まれ、背後にはGキャリアーが控えている。
「死にぞこないが…何をしに来た?」
「決まってるだろ…あんたに借りを返しに来た。それだけさ」
「ククク…死に来るとはいい度胸だ。そんな鎧など粉々に破壊してやる!!」
陰湿な笑みを浮かべながらルネに突進するバダス。だが、ルネは―
「さっきの私とは…違うんだよ!!」
大型ハンドガンを瞬時に構え直し―
ダダダダダダダダダダン!
フルオートで発砲した。無数の弾丸がバダスに襲いかかる。
「馬鹿め! そんな物、我が肉体に吸収すれば良いだけの事!!」
そう言いながら自ら弾丸に突っ込んでいくバダス。だが、彼はとんでもない勘違いをしていた。ルネの持つ武器が『ただの』武器であると…
「ぐはぁぁぁぁぁっ!!」
今度は全身に銃弾を浴び、先程以上の苦悶の叫びを上げるバダス。そこへ―
ドグォン!
先程とは異なる大口径の弾丸が襲いかかった!
「ぐほぁ!」
大口径弾の直撃を受け、吹き飛ぶバダス。地面を数回転がり立ち上がったその体には、無数の弾痕が刻まれている。しかもその傷跡がいっこうに再生しない。
「な、何故だ! なぜ再生しない…何故吸収できない……」
全身を襲う凄まじい痛みに苦しみながら声を絞り出すバダス。それに対しルネは―
「あんたって…もしかして馬鹿? 私がわざわざ普通の武器使うと思ってたの?」
と、嘲った。
「この『ウィルスナイパー02』は、上下2つの銃口から口径の異なる2種類の弾丸を発射できる複合拳銃。もちろん、使用する弾丸はGパワーをコーティングした特製の逸品…あんたらにとっては文字通り『銀の弾丸』さ…」
そう言うとルネは、ウィルスナイパー02を左太股のホルスターに収納すると―
「そして、こっちがウィルスナイパー01。こっちの威力も味わってもらうよ」
右太股のホルスターから、大型のブレードと大口径リボルバーが一体化した複合兵器『ウィルスナイパー01』を抜き、ゆっくりとバダスへと近づいていく。
「調子に乗るなよ…この下等生物がぁ!!」
そんなルネの姿を余裕と受け取ったのか、怒りに表情を歪ませながら突撃するバダス。次の瞬間、強烈な一撃がルネの頭部へ振り下ろされる!だが―
ズバッ!
その腕がルネへと届く事はなかった。圧倒的なスピードで振り上げられたウィルスナイパー01のブレードが、バダスの腕を切断したのだ。
切断されたバダスの右腕が、血ならぬオイルの尾を引いて宙に飛ぶ。
「ギャァァァァァ!!」
右腕を斬り落とされた痛みに絶叫するバダス。その隙を見逃さなかったルネは、手にしていたウィルスナイパー01の先端をバダスの腹部に押し付けた。直後―
ズババババババババババババババッ!!
「みぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
全身を焼き尽くすかのような高圧電流に、悲鳴を上げるバダス。更にルネは容赦なくウィルスナイパー01の引き金を引く。
ドグォン!ドグォン!ドグォン!
銃口から大口径弾が放たれる度に、バダスの体には風穴が開き、そこから体内の生体マシンやオイルが噴出していく。
「あ、が、ぐぁ…」
声にならない声を搾り出しながら、ヨロヨロと後ずさるバダス。その姿に、数十分前まで見る事が出来た余裕は、微塵も感じられない。
そこへ、ウィルスナイパー01をホルスターに収めたルネが―
「さっきの借り…まだ返しきれてないよ!!」
強烈なボディブローをバダスに叩き込んだ。強烈な衝撃にバダスの体が『く』の字に曲がる。
「まだまだぁ!!」
ルネのラッシュは止まらない。バダスの腹に、顔面に、強烈なパンチやキックを叩き込んでいく。そして―
「でやぁ!!」
渾身の右ストレートをバダスに叩き込んだ!!
「グハァァァッ!!」
パンチを顔面にまともに受け、吹き飛ぶバダス。地面を転がりながらも何とか立ち上がるが―
「か、下等生物相手に、ここ…までの、ダ、ダメージを受けるとは…」
それがやっとで、もはや動く事もできない。それを見たルネは、両足のホルスターからウィルスナイパー01と02を抜き―
「くらいな!!」
引き金を引いた。
ダダダダダダダダダダン!
ドグォン!ドグォン!ドグォン!
2つの銃が同時に火を噴き、無数の弾丸がバダス目掛けて発射された。瞬く間に全身を蜂の巣にされるバダス。
「こ、こんな筈では―」
そこでバダスの言葉は途切れ、爆発四散した。ルネの完全勝利である。
「凄いですね。あれが『
ルネの戦いぶりを感心しながら見つめる唯斗。だが、次の瞬間―
「バダス…ゲームオーバー」
何処からともなく響く冷たい呟き。その直後。
「この声は…機界33新種、ローゼス!!」
唯斗の声に答えるように姿を現すローゼス。
「………プログラム再構成…破壊モードに移行」
そう言って左腕を天に掲げるローゼス。次の瞬間、空間が切り裂かれ、そこからバダスを巨大化したようなロボット。そして新種核が出現した。
新種核は残骸と化したバダスの元へと向かい、バダスの残骸を吸収した!!
「エビル…フュージョン」
ローゼスの声が冷たく響き渡り、バダスの残骸を吸収した新種核は巨大ロボットの元へ飛び、ロボットと一体化した。
「…破壊と混沌の使者よ。この地に災厄をもたらしたまえ…」
そう言いながらローゼスは空間に溶け込み、そして消えた。
凱達はローゼスが完全に姿を消したことを確認すると、すぐさま―
「来いっ! ブレイブガオーッ!!」
「リュシフェルガオー! スクランブル!!」
と、各自のマシンを召還した。
凱達が各自のマシンを召還してから数分後。
ディバイディングドライバーによって作られた戦闘フィールド内には、ブレイブ、ネクスト、Rの3大勇者王とバダス、そして50体近いゾンダーレギオンが降り立っていた。
「敵さんも数揃えましたね…」
バダスの周囲で無数に蠢くゾンダーレギオンを見ながら、溜息混じりに呟く唯斗。そこへ聞こえてくる正樹からの通信。
『それじゃあ、唯斗君と護君で雑魚の群れの対応をお願いするよ』
「はい!」
「了解です!」
『凱は、雑魚には構わず、一直線にZN-04に向かってくれ』
「わかった!」
『雑魚掃除が片付いたら、唯斗君達も凱の援護を頼む』
「「はい!」」
「よし、2人とも行くぞ!!」
凱の声をきっかけに、3体の勇者王は勇者達はゾンダーレギオンの群れ、そしてバダスへと突進した。
「ブロウクン! ファントォームッ!!」
「反中間子砲…発射!!」
ガオガイガーRが放つ必殺の鉄拳と、ネクストガオガイガーの背面に装備された連装キャノン砲。この2つによる息もつかせぬ攻撃で、周囲に群がるゾンダーレギオンを1体、また1体とスクラップに変えていく。
だが、ゾンダーレギオンもやられてばかりではない。残ったゾンダーレギオンは1ヶ所に集結し、その形を崩したかと思うと1つに纏まり、次の瞬間には合体ゾンダーレギオンに変化した。
「ゾォォォンダァァァァァー!!」
ガオガイガーRやネクストガオガイガーの3倍以上の巨体となり、邪悪な咆哮を響かせる合体ゾンダーレギオン。
「この前と同じかよ! 少しは独創性って奴を見せやがれっ!!」
合体ゾンダーレギオンの姿に悪態をつく唯斗。だが、合体ゾンダーレギオンはそんな事お構いなしに全身から触手を放ち、2体に襲いかかった!
「そんな攻撃!!」
「当たってたまるかよ!!」
しかし、鈍重な合体ゾンダーレギオンの攻撃が、高い機動性を持つこの2体に当たる筈もなく、全て回避されてしまう。そして―
「時間が勿体無いからな…さっさと終らせてやるぜ!」
触手を全て回避された合体ゾンダーレギオンが、再攻撃を繰り出そうと触手を回収するその隙を突いて、ガオガイガーRが動いた!
「ファントムリング! プラス!」
胸部より射出したファントムリングを右腕に装着すると、そのまま合体ゾンダーレギオンの懐へと飛び込み―
「ブロウクン! ファントォームッ!!」
アッパーカットのモーションから右腕を射出した。
光輝く黄金の流星となった右腕は、攻撃の為にバリアを解除していた合体ゾンダーレギオンの顎を一瞬で打ち砕き、その巨体を宙に浮かせる。
「まだまだぁ!」
ガオガイガーRの猛攻は止まらない。左腕を高速回転させ、旋風を纏うと―
「旋風強襲!! ストーム! トォルネェェェドッ!!」
咆哮と共に、それを解き放った。
旋風は瞬時に竜巻へと変わり、合体ゾンダーレギオンを直撃。一気に上空へと運んでいく。そして、最高高度に到達した所で、唯斗が叫んだ。
「護君! 今だ!!」
「は、はい! 全武装展開、マルチロック!」
その声に答えてネクストガオガイガーの全武装を展開する護。そして―
「いっけぇぇぇっ!!」
次の瞬間、それらが一気に放たれた。無数の火線に全身を貫かれ、爆発する合体ゾンダーレギオン。
「勇者王2体がかりで相手してやったんだ。地獄で自慢しな……なんてね」
ジョークめかした唯斗の決め台詞は、先程までの凄まじい攻撃の後では薄ら寒く聞こえるのであった。
ゾンダーレギオンとの戦いが終わりを迎えた頃、バダスの戦いも終盤を迎えようとしていた。
「………」
「………」
無言で睨み合うブレイブガオガイガーとバダス。一見、拳を交えていないようだが、ブレイブガオガイガーが無傷なのに対し、バダスは全身傷だらけである。
「シャァァァッ!!」
声をあげながら、ブレイブガオガイガーへ突進し、突きのラッシュを繰り出すバダス。そのスピードはすさまじく、2本しかないバダスの腕が10本以上に見えるほどだ。だが―
「………」
ブレイブガオガイガーは、突きのラッシュをその場から動く事無く、両手だけを使って全て捌いていく。そして―
「はぁっ!」
「ぐほぁ!」
カウンターで放たれたブレイブガオガイガーの鉄拳を顔面に受け、無様に吹き飛ぶバダス。地面を転がりながらも体勢を立て直し―
「喰らえっ!」
その2つの目から反撃の怪光線を放つ。
「プロテクトウォール!」
だが、その怪光線もブレイブガオガイガーの展開した防壁に阻まれ―
「はぁぁぁ…はぁっ!!」
凱の気合と共に弾き返される。
「うぎゃぁぁぁっ!!」
弾き返された怪光線が直撃し、再度吹き飛ぶバダス。先程からこの繰り返しだ。バダスの攻撃は全て捌かれるか、弾き返され、ダメージだけが蓄積していく。
(下等生物に、ここまでの屈辱を味合わされるとは…)
心の中でそう呟きながら、バダスが再度立ち上がるとそこには―
「凱さん、雑魚掃除が終わったんで、手伝いに来ました」
ガオガイガーRとネクストガオガイガーが、ブレイブガオガイガーに合流していた。
「ぬ、ぐぐぐ…」
顔にハッキリと焦りの色が浮かぶバダス。ブレイブガオガイガー1体でここまで苦戦していたというのに、更に2体の勇者王が加わっては、更なる苦戦は確実だ。
(な、なんとかこの場を切り抜けなければ…)
この状況を切り抜けようと、自身の頭脳を総動員するバダス。しかし―
「何考えてるか知らないけど、お前が俺達に勝つ確率なんて、西から昇った太陽が、東に沈む位ありえないんだから、潔く降伏すれば?」
唯斗が発したこの一言が、またしてもバダスから正常な判断力を奪った。
「………許さん…」
「ん?」
「貴様らだけは…貴様らだけは…潰す…どんな手を使ってでも叩き潰してやる!」
憤怒の表情を浮かべ、全身からエネルギーを漲らせながら、声を荒げるバダス。そして―
「螺子1本、オイル1滴残さず…消滅させてやるぅぅぅっ!!」
天へ向けてバダスが吼えた次の瞬間、上空にESウインドウが発生した!!
「ESウインドウ!?」
「地上で開くなんて、無茶苦茶な事しやがって!」
「あそこから…何が出てくる…」
徐々に大きさを増していくESウインドウを睨みながら、いつでも次の行動に移れるよう構える3体の勇者王。そして、ESウインドウの拡大が頂点に達したその時!
「あれは!」
「ゾンダーキャッスル…」
「マジかよ…」
ESウインドウから姿を現したのは、ゾンダーキャッスルだった。はるか外宇宙から並列空間を通り、ゆっくりと、だが確実にこちら側の空間への移動を完了していく。
「ヒャハハハハハッ! 見たか! この機界城を使って、貴様らまとめて…いや、この街全てを灰に変えてやる! そうすれば、俺の勝ちだ! ヒャーハッハッハッハッ!!」
狂ったように笑いながら、勝利を確信するバダス。だが―
〈…バダス〉
「ド、ドラグス…」
脳裏にその声が響いた瞬間、その笑みは凍りついた。同時に、九分九厘こちら側への移動を完了していたゾンダーキャッスルが、ビデオを巻き戻すように向こう側の空間へと帰っていく。
「ゾンダーキャッスルが…退いていく…」
突然の事態に、呆然とゾンダーキャッスルを見送る事しか出来ない凱達。同じようにバダスも―
〈バダス…ゲームのルールを破るなんて、どういうつもりだい?〉
脳裏に響くドラグスの声に、その動きを縛られていた。
「る、ルール違反なのは…ひゃ、百も承知…だが、こうしなければ、こ、この戦いには―」
〈勝てない…そう言いたいのかい?〉
「そ、そうだ…ルール違反のペナルティは必ず受ける。だから、頼む…見逃してくれ…」
心底怯えた表情で、脳裏に響くドラグスの声へ懇願するバダス。だが―
〈………駄目だね〉
「ど、ドラグス!!」
ドラグスは、その懇願を一蹴した。その宣告に絶望の声を上げるバダス。次の瞬間、龍と人を組み合わせた外見の巨大ロボットが、バダスの目前に現れ―
「ルール違反は、死をもって償って貰うよ」
その声と共に突き出した右手から膨大なエネルギー波を放った。
「ど、ドラ―」
エネルギー波に飲み込まれ、文字通り一瞬で蒸発するバダス。
「な…」
「一体どうなってるの…」
「アイツも、新種って解釈で良いんです…よね?」
目の前で起きた予想外の展開に、またしても呆然となる凱達。すると―
「はじめまして、GGGの勇者達。僕は機界四騎士筆頭ドラグス。以後、お見知りおきを」
ドラグス自らが名乗りを上げ、気取った仕草で深々と頭を下げた。それに反応し、咄嗟に構える3体の勇者王。
「ああ、勘違いしないで。僕がここに現れたのは君達と戦う為じゃない。ルール違反をしたバダスに、ペナルティを与えに来た…ただ、それだけさ」
「ルール違反!? どういう意味だ!!」
「そのままの意味さ。僕達機界33新種は、機界昇華を行う際にあるゲームをする。その星に住む知的生命体を標的にした…この星の言い方に合わせるなら、殺人ゲームをね」
「な…」
ドラグスの言葉に絶句する凱達。それを尻目にドラグスは話し続ける。
「そのゲームを一定回数クリアした者は完全体となり、その星全体にゾンダー胞子を撃ち込んで、機界昇華を完了する」
「ゲームの内容は、プレイヤーの裁量で自由に決められるんだけど…機界城を直接、星の地表に送り込んで、無差別攻撃する…そんなのは禁じ手にしているのさ」
「…一応聞いておく。禁じ手にしている理由は?」
「簡単だよ。面白くないからさ。そんなやり方は機界城に埋め込まれている
「てめぇ…」
ドラグスの言葉に怒り心頭といった様子の唯斗。今にもドラグス目掛けて飛び掛りそうな雰囲気だ。
「おっと、長話をしてしまったね。そろそろ消えさせてもらうよ」
そう言うが早いか、ローゼス同様空間に溶け込むようにして姿を消し始めるドラグス。次の瞬間―
「僕の順番はまだまだ先だ。楽しいゲームが出来る事を期待しているよ」
そんな言葉とバダスの新種核を残し、ドラグスは完全に消え去った。
「…機界四騎士筆頭ドラグス…底が見えない、恐ろしい奴だ…」
「……どんな奴だろうと倒すだけです…」
「唯斗さん…」
「改めて解りました…ゾンダーは絶対に倒さなくちゃいけない敵だって事が…」
ディバイディングフィールドに転がっていた新種核を掴み、そう呟く唯斗。そこへ浄解モードの戒道が飛来し―
「テンペルム! ムンドゥース…インフィニ…トゥーム…レディーレ!!」
浄解の呪文を唱え、新種核を石板へと変える。こうして、予想外の展開を迎えながらも、バダスとの戦いは終わりを告げた。
戦闘終了後、ルネは紫苑とパピヨンの手によって半ば強制的に入院させられていた。バダスとの戦いで受けた傷が思いのほか、重症だった為だ。
「まったく、こんな状態で戦闘に参加するなんて…正気の沙汰とは思えませんね」
カルテに目を通しながら、半ばお説教するようにルネへ話しかける紫苑。
「だから、悪かったって言ってるだろ…」
そんな紫苑の話にウンザリした様子のルネ。既にこんなやり取りが15分以上続いているのだから無理もない。
「いいえ! 今回という今回は言わせてもらいます」
だが、紫苑はまだまだ辞めるつもりはないようだ。ルネが長期戦を覚悟したその時―
「ルネ!」
メディカルルームのドアが開き、残務整理を終えた正樹が駆け込んできた。少し遅れてグラナートも歩いて入室する。
「正樹さん…メディカルルームでは静かに―」
そう言いかけて、紫苑は口を閉じた。正樹に注意しても無駄だと思った事と、久しぶりであろう親子の時間を邪魔してはいけないと思ったからだ。
カルテをデスクに置き、そっとメディカルルームを後にする紫苑。
そのまま、一息つこうと食堂へと向かうのであった。
君達に最新情報を公開しよう!!
平和な街を地獄へと変える魔弾。
それは新たな殺人ゲームの幕開けだった。
空を自在に翔る新種を迎え撃つ我らがGGG!
命を弄ぶ悪魔に正義の鉄槌を叩き込め!!
勇者王ガオガイガーR -EPISODE08-
『飛翔』
次回もこのURLにネオ・ファイナルフュージョン承認!!
これが勝利の鍵だ!!
『ポルコート・ヌーヴォー』
勇者王ガオガイガーR用語辞典
第8回『
2010年3月に、謎の敏腕プロデューサー『
『
勧善懲悪をメインに押し出しながらも、深い人間ドラマや謎解き、ギャグ等が絶妙なバランスで融合しており、放送開始直後から『燃えて笑って感動できる奇跡のアニメ』と、老若男女を問わず大ヒット。平均視聴率47.2%、最高視聴率53.2%を記録する怪物番組となった。
また、同年7月には劇場版が公開され、その年の興行成績1位を獲得。OPテーマ『奇跡の魔法(歌:田村ゆかり&水樹奈々)』、EDテーマ『Brave Magic(歌:JAMProject featuring 奥井雅美)』、更にはDVDやなりきり玩具、フィギュアなどの関連商品も脅威的な売り上げを記録し、社会全体に大きな経済効果をうんでいる。
2011年3月からは続編の『
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
誤字・脱字の報告、ツッコミ、感想などお寄せいただければ幸いです。