ぐだ子のぐだぐだ旅   作:魂魄せんむ

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 この小説には、近鉄沿線市町村に対する作者の偏見が含まれる場合がありますが、悪意は全くございませんので、ご了承ください。


第10話 近鉄鈴鹿線はあの鈴鹿御前とは関係ない

 昼の名古屋駅は賑やかだ。ここ2日間は朝早かったから忘れていたが、名古屋駅は終着駅(ターミナル)なのだ。たくさんの人が近鉄に乗って、それぞれの場所へ行く。

 私はいつも通りの3番線から急行に乗る。13:21発の急行 五十鈴川(いすずがわ)行きは6両編成で、車内は座席が空いてぐらい混雑しており、百貨店の紙袋を下げたマダムの姿が目立つ。

 つり革を握り、ぼんやりと外を見る。窓からは、特急列車が停まっているのが見える。

 特徴のある近鉄特有の発車ベルが鳴り、扉が閉まる。ガタンという音とともに列車はゆっくりと動き出した。名古屋駅独特のポイントを渡り、地下から地上に出る。車窓から見える風景は、もう見慣れたものだ。

 急行は蟹江(かにえ)弥富(やとみ)桑名(くわな)を過ぎ、列車はどんどん南下していく。四日市(よっかいち)を過ぎれば、混雑していた車内には少しの余裕ができてくる。

 四日市は日本最大の工業地帯である、中京工業地帯(ちゅうきょうこうぎょうちたい)に含まれており、石油コンビナートやガスの丸いタンクなどを車窓から見ることができる。

 塩浜(しおはま)を出れば、次は伊勢若松(いせわかまつ)だ。先程の工業地帯とは変わって、民家が多くなってくる。

 伊勢若松は近鉄鈴鹿(すずか)線との乗り換え駅である。

 鈴鹿といえば、F1のイメージが強い。鈴鹿サーキットは世界的にも有名なサーキットだ。子ども向けの遊具もあり、F1好きだけでなくちびっ子達も楽しめる場所となっている。逆にFGOが好きな読者のみんなは気づいたと思うが、鈴鹿のまちはあの鈴鹿山の(ふもと)にあるのだ。鈴鹿山といえば、鈴鹿御前(すずかごぜん)が有名だ。

 鈴鹿御前は鈴鹿山を根城とした舞姫だ。恋人であった坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)と共に鬼退治を行ったとされている。絶世の美女とされており、当時は天女や鬼などと言われた。しかし、彼女は第四天魔王の愛娘であった。地上に来たのは、日本を魔国にするためであり、父親である第四天魔王から人間を滅ぼすよう使命を授かっていた。最終的には、恋人であった坂上田村麻呂の手によって倒されてしまう。まさに悲恋の天女とも言えるのだが、何故かうちのカルデアにやってきたのは、狐耳を生やしたJKだった。彼女曰く、JKが美の最先端であるらしい。

 しかし、そんな鈴鹿御前と近鉄鈴鹿線は全くと言っていいほど無関係である。鈴鹿線の終点は、伊勢若松から4つ先の平田町(ひらたちょう)で鈴鹿山は結構遠い。

 では、何故鈴鹿御前について書いたか?そんなの、文字数稼ぎに決まっているじゃないか。

 

 伊勢若松を過ぎ、しばらく走れば津である。

 津は三重県の県庁所在地だが、あまりイメージがつかない。そう、津というまちは地味なのだ。

 まちの人口でいえば、四日市の方が多いし、これといった観光スポットもない。私自身も車内から見えた駅の案内板を見て、津城の存在を知ったぐらいだ。

 名物は餃子だが、やはり餃子が名物のまちといえば、栃木(とちぎ)県の宇都宮(うつのみや)だとか静岡(しずおか)県の浜松(はままつ)が有名だ。

 津には何もない。名古屋も何もないが、それ以上に何もない。

 人だけがやたらと多く、乗客のほとんどが津で降りた。

 私はまだまだ先を往く。やがて2日間お世話になった伊勢中川(いせなかがわ)を過ぎ、松阪(まつさか)に着く。私はそこで降りることにした。

 松阪駅は、近鉄とJRとの共同駅舎である。南口はJRのホームを通らなければならない。

【挿絵表示】

 

 時間は14時過ぎだった。ちょうど、JRのホームに立ち食いの店があったので、私はランチをそこでとることにした。

 のれんをくぐり、ガラス戸を引くと、割烹着姿のおじさんが出てきた。

 何を頼もうか迷ったが、最終的には伊勢うどんと和牛肉うどんに絞られ、結局和牛肉うどんを注文した。

 480円の和牛肉うどんはすぐに出てきた。美味しそうな匂いが、ホームに漂う。

【挿絵表示】

 

 割り箸を割って、麺をすする。和牛の肉汁の旨味がつゆによく合っている。牛肉と青ネギだけのシンプルな具材だが、出汁の味を邪魔せず、丼鉢のなかのもの全てが一体となって美しいハーモニーを奏でているようだった。それだけでも十分美味しいのだが、聞こえてくる客の話し声や駅の放送、気動車のディーゼルエンジン音がまた旅情を感じさせ、より一層うどんを美味しくする。これもまた旅の醍醐味だ。

 つゆまで飲み干し、余すことなくうどんを味わった私は、また近鉄のホームに折り返すのだった。




 作者の魂魄せんむです。
 さて、今回は何故か鈴鹿御前がメインのようになってしまいましたが、私は和牛肉うどんの方をメインにしたかったんですよ。
 和牛肉うどんを売ってるのは松阪駅のJRのホームにある「汽笛亭」というお店なんですが、実は今年の春に閉店してしまいます…。食べてみたいと思った方は、お早めに。
 それでは、また次回のあとがきでお会いしましょー!
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