ぐだ子のぐだぐだ旅   作:魂魄せんむ

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 この小説は、全て作者の実体験を元に書かれています。なお、列車のダイヤなどは2017年7月当時のものです。


関東編
第1話 富士山と横浜と


 2017年7月30日午前6時30分。私は名古屋(なごや)駅の新幹線ホームにいた。

 

 

 事の発端はある日、私が呟いた一言から始まった。

 私は毎日、種火の周回をしては、綺羅星(きらぼし)のようなサーヴァント達のレベルを上げるという地味な作業に没頭していた。しかし、それが30何回という回数にもなると、流石に私もウンザリしてくる。

 ようするに、気分転換がしたかったのだ。

 気分転換に旅行はうってつけだ。しばしの間、カルデアのことを忘れて、存分に羽をのばそうと考えていた。

 私は早速そのことをロマニに伝えに行った。

 

「ロマン居るー?」

 

「ああ、居るよ。何せ手が離せないほど忙しいからね」

 

 壁際の机の上から、ロマニはゆっくりと顔を上げた。

 

「もしかして寝てた?」

 

「いや〜、徹夜しちゃってね…」

 

「そんなに仕事ありましたっけ?」

 

「失礼だな〜、まるで僕が何もやってないみたいじゃないか」

 

 やってないことはないけど…、と私は思ったが口に出すのはやめた。

 

「で、用件はなんだい?」

 

 ロマニは寝癖がついた頭を掻きながら私を見た。

 

「旅行に行くので、少しの間カルデアを留守にするということを伝えに来たんです」

 

「へぇ〜、旅行かぁ。どこに行くんだい?」

 

「それがまだ決まってなくて…」

 

「決まってないなら、東京(とうきょう)横浜(よこはま)あたりはどうかな?オリンピックが開催されたとか歴史上ではそうなってるから、僕は気になっててさぁ」

 

「じゃあ、そこ行ってきます」

 

「決めるの早くない!?」

 

 そう、私は決めるのがとても早い。おかげで戦闘中とかは何かとスムーズに進むわけだが。

 

「そういえば、1人で行くのかい?」

 

 ロマニが私にそう尋ねた。

 

「ええ、今のところは」

 

「たまにはマシュと2人で行ってきなよ。マシュ、最近リフレッシュできてないみたいでね。昨日も夜中に寝れないとかで睡眠薬を貰いに来たから」

 

「じゃあ、あとで誘ってみます」

 

「うん、行っておいで。他の人たちには僕から伝えておくから。お土産よろしくね〜」

 

「ありがとう、ロマン」

 

 このあとマシュを誘ったら、「いいんですか!?」と目を輝かせながら誘いにのってくれた。

 

 

※※※

 

 

 そして今に至る。

 

「先輩、私を誘ったくださってありがとうございます」

 

「お礼なんかいいよ。たまには私もマシュと2人きりで過ごしていたいし」

 

 私がそう言うと、マシュは頬を赤らめた。

 可愛いなぁ、マシュは純粋で。

 

「先輩。私、生まれて初めて新幹線なるものを乗るんです。楽しみです。先輩は乗ったことあるんですか?」

 

「あるよー。マシュは知らないかな?東京の隣には夢の国があるんだよ」

 

「夢の国…、ですか?」

 

「うん、そこに行くときに乗ったかな。また今度連れてってあげるね」

 

 私の言葉に反応してくれるマシュは本当に可愛い。私の横で子供のようにはしゃいでいる。

 

 しばらくして放送が流れると、16両編成の列車がホームに入線してきた。6時41分発 のぞみ268号東京行きだ。白い車体に青のラインが映える。

 ホームドアが開くと、私たちは7号車から乗り込んだ。

 

 

※※※

 

 

「先輩、あれ見てください、あれ。富士山(ふじさん)です!」

 

 私は、マシュの元気な声で起こされた。寝ていたのか。どこから寝ていたのかは知らない。やっぱ朝早くは苦手だなぁ。

 

「ほら、富士山ですよ。とってもキレイに見えます」

 

 窓の外を見ると、大きな山が堂々とすわっていた。雲ひとつない空に向かって頂きをのばすその山の姿は、初めて見た。季節はもう夏なので山頂の雪は溶けていた。

 この立派な姿を見ると、静岡(しずおか)県民と山梨(やまなし)県民が取り合うのも、何だか分かる気がした。

 

 新幹線は7時58分に新横浜(しんよこはま)に到着した。

 私たちはこの駅で降りると、乗り換え改札を通り、JR横浜線に乗った。今思えば、新横浜駅は乗り換え以外に使ったことがない。

 

「そういえば、今からどこに行くんですか、先輩?」

 

横須賀(よこすか)

 

 私の答えを聞いて、マシュはキョトンとしている。ああ、そうか。マシュは日本のことはあまり知らなかったか。

 

「横須賀はね、海軍のまちなんだよ」

 

「海軍…、ですか?」

 

「うん」

 

「あの…、ドレイクさんとか、いませんよね?」

 

「マシュ、ドレイクは海賊。横須賀にいるのは海軍。役割が違う」

 

 マシュは気づいたのか、頬を赤らめた。

 

「そうですよね!私うっかりしてました。まさか極東の国のヨコスカというまちが野蛮なところだったら、先輩は行かないですもんね」

 

 先輩は、ということは、誰かそんな野蛮なところに連れて行く奴が思い当たるのか?マシュの言動は偶に意味深だ。

 

 横浜線のホームに降りると、ちょうど乗る列車がやってきた。東神奈川(ひがしかながわ)行きの普通列車だ。

 ラッシュ時間帯にも重なって、車内はごった返していた。

 

「マシュ、乗れる?」

 

「はい、なんとか…」

 

 私とマシュはお尻でグイグイ押し、なんとか扉が閉まるまで車内に入った。

 列車はゆっくりと動き出した。

 途中、大口(おおぐち)菊名(きくな)でドアが開く度に、私たちはホームに降りなければならない。終点の東神奈川まではすぐなのに、どっと疲れた気がした。

 

 列車の終点、東神奈川駅に着くと、ホームは人で溢れかえった。もともとホームが狭いためか、向かい側に停まっている列車に乗り換えることすら困難だった。

 やっとの思いで列車に乗ると、後ろでドアが閉まる音がした。

 

『次は、横浜。横浜です』

 

 車内放送がそう告げた。

 よかった。間違えずに乗れたようだ。

 実は、東神奈川駅は初見殺しの罠が仕掛けられていることがある。

 東神奈川行きの列車のほとんどは、横浜方面の京浜東北(けいひんとうほく)線へ乗り換えられるような設定になっている。東神奈川駅のホームで、到着した横浜線の向かい側に京浜東北線の横浜方面行きが停車しているのだ。

 しかし、一部の列車は違うホームに入るときがある。その場合、到着した横浜線の向かい側のホームに停まっているのは、川崎(かわさき)方面へ行く京浜東北線なのだ。何も知らずに、車掌の放送もロクに聞かずに乗り換えると、横浜とは逆方向に連れて行かれるのだ。

 私は、はじめて1人で横浜に行ったときに、嵌められた。

 

 ドアが開くと、そこは都会の空気で満たされていた。

 横浜駅に着くと、目的を達成したような感覚に襲われるが、あくまでも目的地は横須賀だ。ここからさらに南下する。

 階段を降りて、一旦改札を出た。そして、京浜急行(けいひんきゅうこう)の改札を目指す。

 横浜駅には、日本でも珍しい6社もの鉄道会社が乗り入れている。

 JR東日本、京浜急行、東急(とうきゅう)電鉄、相模(さがみ)鉄道、横浜高速鉄道、横浜市営地下鉄が1つの駅に集中しているので、それなりに駅の構造も複雑だ。

 京浜急行の改札口は、JRの改札口からそんなに離れてないので、極度の方向音痴でもなければ迷うこともないだろう。

 改札口を抜けてホームに上がると、やはりそこは人でいっぱいだった。

 京浜急行の横浜駅は路線内屈指のターミナルだが、ホームは2面2線しかない。1日に何万人と利用する駅としては規模が小さすぎるのだ。しかし、ここで全ての列車を捌ききるという。

 列車が入線してきた。普通・浦賀(うらが)行きだ。これには、私たちは乗らないので見送った。

 普通列車が発車してすぐに、私たちが乗る列車、快特・久里浜(くりはま)行きがやってきた。

 2扉の車両は座席が全て2人掛け、クロスシートの豪華仕様だ。これが特別料金無しで乗れるのはありがたい。

 横浜で、品川(しながわ)方面から乗ってきた客はほとんど降りたので、座席にはすんなりと座れた。

 

「これで横須賀に行くのですか?」

 

 マシュが私に聞いた。

 

「そうだよ。あっという間に着いちゃうからね」

 

 間もなくドアが閉まった。そして、列車は横須賀へ向けて走り出した。




 どうも作者の魂魄せんむです。
 久しぶりに旅の小説を書いてみました。理由は前まで連載していた小説が煮詰まってしまったからです。またそっちの方は追々復活させようと思います。とりあえず、筆休めということで。
 また次回もお楽しみに!
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