ぐだ子のぐだぐだ旅   作:魂魄せんむ

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 この小説には、近鉄沿線市町村に対する作者の偏見が含まれておりますが、悪意はございませんのでご了承ください。


第7話 気づけば奈良じゃなかった。

 生駒駅に戻ってきた私は、けいはんな線に乗ることにした。

 特に行きたい場所はないが、せっかくのフリーきっぷだ。時間があるなら乗ればいい。

 近鉄けいはんな線は大阪市営地下鉄中央線と相互直通運転をしており、また電気を車両に取り入れる方式も、他の近鉄各線がパンタグラフで集電するのに対し、唯一けいはんな線のみサードレールといわれる第3のレールから集電する第三軌条方式を採用している。これは地下鉄に合わせたためである。

 学研奈良登美ヶ丘(がっけんならとみがおか)行きの列車が入ってきた。車両は大阪市営地下鉄中央線の緑のものだった。

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 ドアが開くと、客がゾロゾロと降りてくる。

 私が乗り込むと、すぐにドアは閉まってしまった。

 列車は眩しい陽射しの中を走る。しかし、その陽射しは途端に消えてしまった。別に地下を走っているわけではない。

 これもけいはんな線の特徴なのだが、やたらとトンネルが多い。しかも長い。駅もまた半分がトンネル内で、明るい日光はなかなか見えない。

 10分ほどで終点の学研奈良登美ヶ丘に到着する。駅からほど近い場所にはイオンモールが見えた。

 私はすぐに折り返しのコスモスクエア行きに乗る。

 車両は近鉄のものだった。近鉄の車両には白い車体に青や黄色のラインがはいっており、それはなんだか異質な存在だと私は思った。

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 新石切までの長いトンネルを抜け、やっとまともにひなたが当たるようになったと思えば、高速道路に沿って走るため、また車内が若干暗くなる。

 地下鉄線との境界駅である、長田(ながた)駅に着くと、私は一旦改札を抜けた。ここから先はフリーきっぷが使えないため、ICカードに持ち替える。

 今から向かうのは鶴橋(つるはし)である。鶴橋までは近鉄ではなく、他社線を使う。

 再び改札を通りホームに下りると、列車はもう来ていた。

 3駅ほど走り、途中の森ノ宮(もりのみや)でJR大阪環状線に乗り換える。

 最近古い車両が引退したばかりで、やってきたのは新型でピカピカのものだった。

 車内には大きなディスプレイがドア上と連結部分に設置されており、日本語の他にも英語、ハングル、中国語で案内が流れる。つり革も黄色の大きなもので太いのでとても握りやすかった。

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 鶴橋まではすぐなので私は座席には座らなかった。

 鶴橋に着くと、近鉄の乗り換え改札はすぐ目の前だった。

 そういえば、おなかがすいてきたような…。

 ホームの時計を見ると、時間は12時を回っていた。

 とりあえず、近鉄の改札を通る。すると、コンコースに1軒の飲食店を見つけた。

 私は吸い込まれるように、その店に入っていった。

 その店はうどんやそば、はたまた中華を取り扱っていた。

 私は券売機でうどんのセットの食券を買い、店員に手渡した。かわりに番号札を受け取る。

 札を貰ったあと、私は窓近くのカウンター席に腰を下ろした。

 窓からは、改札口が見える。

 しばらくすると私の番号が呼ばれた。

 取りに行き、ついでに水をコップに注ぐ。

 うどんからはホカホカと湯気が立っていた。

 うどんに鶏飯が付いているこのセットは、500円出せばお釣りが帰ってくるので、コスパが良い。

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 箸をとり、うどんをすする。

 名古屋の濃い出汁とは違い、関西特有の薄い出汁はただ薄いだけではなく、そこにはしっかりと素材の旨味が詰まっていた。

 鶏飯もどちらかといえば薄味だが、変にうどんの旨味を邪魔しないので、ぴったりだ。

 私は5分ほどで食べ終わると食器を返却し、また新たなホームへと向かった。

 

 奈良線はいかにも通勤路線といった感じだ。しばらくはまちの中の高架線を進んでいく。

 やがてわたしの乗る快速急行は東花園(ひがしはなぞの)駅を通過する。

 東花園はラグビーで有名だ。しかし、それ以外何かあると問われれば、何もないかも知れない。

 東花園を過ぎると、少し傾斜が多くなりカーブが増える。石切(いしきり)からは長いトンネルに入り、抜ければ生駒である。

 私は流れていく景色をなんとなく眺めていた。都会から少し離れ、丘の上の住宅街を通るこの列車は決して行楽路線ではないと思った。

 大和西大寺を過ぎ、列車は平城京跡(へいじょうきゅうせき)の中を走る。

 かつての都を東西にぶった切って走る奈良線は異様だ。何故このようになったのかは知らないが、歴史には興味がある。

 終点の近鉄奈良駅は地下にあった。

 改札から続くコンコースには、柿の葉寿司だの大仏プリンだのという店が並んでいる。

 地上に出ると、そこは観光客で溢れかえっていた。

 さすが奈良の中心部といった感じだ。特に中国からの観光客が非常に目立つ。

 昨日のようなどこか寂しげな雰囲気は微塵も感じなかった。

 私は駅からほど近い場所にある、奈良交通のきっぷ売り場へ足を運んだ。そこで1日乗車券を買い求める。

 奈良交通の1日乗車券は所定の区間ならば500円で乗り放題という大変お得だ。東大寺(とうだいじ)春日大社(かすがたいしゃ)、平城京跡、唐招提寺(とうしょうだいじ)といった主要な観光地もしっかりとカバーしている。しかし、法隆寺(ほうりゅうじ)だけは行けないようになっている。法隆寺へは、拡大版の1日乗車券が有効だ。

 いつもは2つに折り畳んだ紙製の乗車券が渡されるのだが、私が受け取ったのは木片だった。紫色の紐が通してあり、首からかけられるようになっている。

「あの、これは…?」

 私が困惑しながら尋ねると、係員は笑って、

「今は数量限定で木簡(もっかん)を型どったものになっとるんです」

 と、若干関西弁が混じったイントネーションで答えた。

 なるほど、木簡か。たしかに言われて見れば見えなくもない。

 木簡とは、奈良時代の今で言う手紙のようなものである。木の板を紐で繋ぎ合わせ、そこに筆で文章が書かれている。

 有名なもので言えば、聖徳太子(しょうとくたいし)厩戸皇子(うまやどのおうじ))が(ずい)の皇帝に送ったものである。きっと読者のみなさんも歴史の授業で習っているだろう。

 乗車券の真ん中には、紫色の文字で今日の日付が刻印されている。

 私は首に紐を通すと、早速バス停に向かった。




 毎度どうも。魂魄せんむです。
気づけば7話目ですね。早いですね。
 では、また次回もお楽しみに!
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