大阪•鶴橋。日が暮れた後も賑やかなまち。
ところどころに焼肉屋のネオン看板が見え、派手に光っている。
駅から続く昔ながらの商店街には様々な店が並び、なかには店先でおっちゃん達が酒を片手に談笑しているところもある。
そろそろお腹が空いてきた私は、グルメを求めて商店街を彷徨った。
あちこち彷徨った末にたどり着いたのは商店街に入ってすぐのところ、駅からほど近いタコ焼き屋だった。
店自体はとても小さいが、イートインスペースがあり、そこでも2人の男が酒を飲んでいた。もちろん、肴はタコ焼きだ。
鉄板でおっちゃんとおばちゃんが慣れた手つきでコロコロとタコ焼きを作っていく。
「すみません、タコ焼き10個入りを1つ」
私が注文すると、おっちゃんたちは「あいよ」と、手際よく白い容器にタコ焼きを詰めていく。
ホカホカのタコ焼きにドロっとしたソースをつけ、そこにマヨネーズをたっぷりとかける。極めつけに、ごっそりと削り節をかければ完成だ。
「ほな、おおきに」
タコ焼きが入ったビニール袋を渡しながら、おばちゃんはそう言った。
私は近鉄に乗り、鶴橋から1駅の上本町にやってきた。
駅直結の近鉄百貨店に入り、目当ての店を探す。するとデパ地下の一角に、一際行列ができている店を見つけた。
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もう閉店に近い時間だったが、まだ10人ほどが並んでいた。
私も並び、順番を待つ。
本日最後の豚まんが蒸しあがったのか、途中から列の流れが早くなった。
私は2個入りを買い、急いで駅に引き返した。
気がつけば、もう特急がやってくる時間だった。
アーバンライナーは大阪難波と名古屋を結ぶ、近鉄を代表する特急列車だ。
停車駅が少なく、一部を除けば大阪上本町、鶴橋、津、終点 名古屋だけだ。
現在、アーバンライナーPlusとアーバンライナーNextの2種類が存在するが、所要時間などあまり大きな違いはない。
名阪直通特急自体の歴史は長く、近鉄が私鉄で初めて有料特急を走らせたことに始まる。2017年で70周年という節目を迎え、現在は大阪難波〜名古屋間を約2時間で結ぶ。
20:02発のアーバンライナーはPlusの方だった。
私は1号車に乗り込んだ。
1号車は他の車両と違い、デラックスカーと呼ばれている。料金もレギュラーシートに比べると500円ほど高い。
座席は2人掛けの4列シートではなく、1人掛けの3列独立シートで、コンセントが完備されている。また、座席が広く、前後との幅もゆとりがある。さらにテーブルが大きいため、非常に快適だ。
その快適さゆえに、500円高くとも利用する人は多い。
座席に座ると、一度に全身の力が抜けた。あとはもう名古屋に帰るだけだ。
列車が動き出す。地上に出れば、直に鶴橋のまちのネオン看板が見える。会社帰りのおっちゃんたちが歩く姿が見える。
鶴橋を出れば、この列車は津までとまらない。
列車はすぐに発車し、スピードを上げる。気がつけば、スピードは120キロにも達していた。
…それにしても美味しそうな匂い。
どこからか、タコ焼きのソースやホカホカの豚まんから漂う香りは私の空腹を刺激する。
肘掛けの蓋を開けテーブルを出すと、買ってきたものを広げた。
私が買ったタコ焼きと豚まんはまだ温かった。
割り箸を割って、タコ焼きを口に運ぶ。
口に入れた瞬間に広がるのはドロっとした独特のソースの味と、削り節の香り。火傷になりそうながらも、箸を持つ手が止まらない。
あっという間に平らげてしまい、続けて豚まんを食す。
蒸しあがったばかりの豚まんはまた格別だ。もうたまらない。
一通り大阪のグルメを楽しんだ私は、満腹になると強烈な睡魔に襲われた。
「…先輩、このタコヤキというものは美味しいですね」
「…ブタマンというのもなかなかいけます」
「先輩はズルいです。こんな美味しいものを教えてくれないなんて」
「今度の旅は私も連れて行ってくださいね、先輩」
…聞き覚えのある声がする。
…マシュが呼んでいる。
「…きゃくさま」
えっ?
私が目を開くと、そこにマシュの姿はなく、代わりに車掌さんの姿があった。
「終点の名古屋です。この列車は車庫に入るので、お急ぎ願います」
「あっ、ハイ」
夢…か。いや、夢というより幻聴か。多分疲れてるんだなぁ…。
私は重い身体を支えながら、列車を後にした。
作者の魂魄です。
奈良の北編もついに終わり、いよいよ伊勢編に入っていきます!と言っても、伊勢編はすぐに終わりそうですけどね。
次回もお楽しみに!