ターレル(レルター)まとめ   作:たまたま(pixiv共通)

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帝国のラスト捏造ターレルです。
バッドエンドです。
性描写あります


ヴァルハラで

帝国は敗戦の足音が近づきこの帝都は戦場となっていた。

本部の高官達は裁かれるのを待つだけであったが現場の兵士達は市街戦を繰り返していた。

 

そんな中、第203航空魔導大隊。既に定数を割り大隊の形も成してはいないが奮戦をしている。その大隊を率いるのは「白銀」ターニャ・デクレチャフ。

幼い頃より前線で戦う最古参の魔導士官は今もその絶大なる魔力を振るい戦っていた。

彼女しか使えないエレニウム95式魔導宝珠で

大きく敵を後退させ、魔力が尽き、彼女が後退すると敵が前進と、日々、一進一退を繰り返していた。

 

そんな状況の中、辞令を渡す為に参謀本部に彼女を呼び出す。ここが未だに無事なのは彼女の働きがあってこそである。

出頭した彼女はそれを事務的に受け取ると

自嘲めかしくにふっと息を吐いた。

 

「「閣下」と呼ばれる立場に憧れはありましたがこんな時でないとそれになれなかったとは」「何とも言いようがありません。」

准将への昇進の辞令である。

「慎んでお受けいたします。」

 

彼女は既に10代半ばを過ぎている年齢のはずだがその姿は幼女のまま成長をしていない。

「これは最後のご褒美という事でしょうか?」

「そうなるな。」

敗戦直前、私達に未来はない。戦って死ぬか。戦犯として死ぬか。待っているのはどちらかしかない。それでも戦う彼女。

何故こんな状況にあって未だに冷静なのだろうか?

 

「冷静だな」

心の中の疑問が漏れてしまった。

「私は軍人ですから、命令に従うのみです」

「そうか」

彼女は出会った頃からなにも変わらない。

軍令に忠実で献身的。

彼女が懸案した通りに戦争を終えていれば

結果はもっと違ったのだろう。

彼女はその見た目や過激とも思われる言動とは裏腹に、いつも母国の未来を憂い、案じていた。

愚かしい事に、その言葉に帝国は耳を傾けなかったのである。

 

「夢はついに叶いませんでしたがね」

彼女が呟く。

夢?そんな物があったのか?

常に現実のみを見ているその姿しか知らない。

 

疑問符を頭に浮かばせた私に、

「エリート出世で後方勤務ですよ。お恥ずかしながら。」

「出世は出来ましたが、、」

少し遠い目をして語る彼女。

 

そう言えば後方勤務への異動希望を何度か出していた事があった事を思い出す。

それは前線で戦いたいが為のパフォーマンスとして誰もが見ていた。本心であったのか、、

確かにそれはもう叶わぬ夢だ。

彼女の事を正確に分かりえた者などあったのであろうか。この私も含めて。

「そうか、、、」

 

だがそんな彼女に私はこの命令を下さなければならない。

「貴官には帝都の防衛の総指揮を取ってもらいたい。」

今朝、指揮官が死んだのでその代わりだ。

もう現場を動かせる様な士官の生き残りも少ない。203の大隊の部隊は生き残っている方だ。

彼女に手塩にかけて育てられ、常に前線で帝国の最精鋭として戦ってきたことだけはある。

 

「了解しました。」

お手本のような敬礼をし、目の前から去ろうとする彼女の手を私は咄嗟に掴んでしまった。

「レルゲン閣下、まだ何か?」

振り返り、私を見つめてくる彼女の碧眼の

美しさは変わらなかった。

 

私はそのまま彼女を壁に押し付け身動きを取れなくしてしまった。彼女を見つめる。

いつも透き通る様な白い肌は煤けていて戦場の激しさを感じた。

 

「エーリッヒ?」

ファーストネームで呼ばれる。幾度か体を重ねる事はあっても彼女は恋人ではなかった。

お互いの事を良く知っている様で知らなかった。そんな関係であった2人。

 

頭の高さを彼女に合わせて膝をつく。

「君を行かせたくない」

一瞬驚いた顔を私に見せたがすぐにいつもの鉄面皮に戻る。

「今更ですか?貴方が命令をしたのに。」

そう、今更だ。

私はこの生まれ育った帝国を救えなかった事よりも今迄彼女にきちんと愛を伝え、愛さなかった事に後悔をしていたのだ。

 

「ターニャ」名前を呼び、彼女の唇を奪う。

抵抗をされるが程なく受け入られた。

「済まない」

唇を離し謝る。

「何故お謝りに?」嫌味だろうか。

だが私は後悔の為に素直に答える。

「君をきちんと愛さなかった。」

 

ふぅと彼女が小さく息を吐く

「貴方には立場や色々背負っていた物がありました。それは私が壊して良いものではなく、それは正しかったのです。」

 

貴族の出自で将来が有望であった士官と孤児院で育ち前線で戦う魔道士官の幼女。その組み合わせは側から見れば異常に見えたであろう。

もし2人が恋人ともなればスキャンダルでは済まない話題になった事は間違いない。

しかし、そんな心配はすでに徒労に終わっている。今はもう誰も2人の邪魔をする物は無い。

 

だが、

「もう行かなければ、、、」

私を振り解こうとする。

「私が行かなければ、ここはすぐにでも陥てしまいます。」

さほど遠くない所から砲弾の音が絶え間なく聞こえてくる。参謀本部が陥ちればこの戦争は終わり、彼女の命も尽きることになる。

私の命で彼女を助ける事が出来たらどんなにかよかっただろう。

逃がすチャンスはあった。だがそれを私はしなかったのだ。最後まで側にいる為に。彼女の命を奪うのは私なのだ。

 

「ターニャ」

名前を呼び、床に彼女を押し倒す。

私はそのまま強引に軍服を剥がし彼女を抱いた。

 

…………

 

「一緒に死ぬおつもりですか?」

事が終わっても表情を崩さない彼女に問われた。

「貴方に少しでも長く生きて欲しくて戦っていたのに」

私の返事を待たずターニャは軍服を整え、

「出ます」と

私を置いて飛び出していってしまった。

 

「愛している」その言葉を伝える事が出来なかった。

私は残していた最後のタバコに火を付け、帰りをひたすらに待っていた。

だが、彼女をこの手で2度と抱く事は出来なかった。帝都の空からターニャは墜ちた。

 

「白銀」を失った帝国軍は脆く、程なくして帝都は陥落。帝国は無条件降伏の宣言を行った。

私は敗戦国の高級士官として戦争の責任を取る為に死刑台へと登る。

 

「ターニャ、「愛している。」ヴァルハラで私と共に、、」

 

多くの国を巻き込んだ世界大戦は長くの戦いを経てようやく終焉を迎えた。




軍人なので本来なら銃殺刑となりますが、
話しの都合上絞首刑になってしまっています。

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