文字数少なくて2本いっしょに載せてしまっています。
Er trägt eine Brille.(彼は眼鏡をかけている
彼の眼鏡をふと、かけてみたくなった。
私の体に腕を絡ませていた彼は、既にその意識を夢魔の元に旅出させていたので私はそこから簡単に抜け出る事出来た。
彼はその腕の置き場が無くなると寝返りを打ち、反対を向いてしまった。
枕もとにあったそれをそっと手に取った。
いつも彼のしている眼鏡。コンタクトレンズなど無いこの時代で、魔力のない彼にはこの眼鏡だけが視力の補正をしてくれていた。
自分の顔に近づけてかけてみた。それはぶかぶかで、つるは耳にかからない。度は強くレンズ越しの先の景色は歪んでいて、ほんの少し覗いただけなのにぐらぐらして気分が悪くなった。
こんなにも彼は目が悪かったのか。
それを意識をした事は無かったのだ。
そういえば、彼は朝になるとを私を見て、眉間に皺を寄せていたのは、怒っているからではなく見えていない所為なのかと、やっと理解した。
怒っているのかと聞いても「いや」と彼は憮然に答えるばかりだったから。
彼がまた寝返りを打ち、こちらを向き直したので眼鏡をあった場所にそっと戻した。
それを覗くと彼はとても疲れている顔をしていて切れ長の目の下にはクマが出来ていた。それなのに、少しでも時間ができればこうして私を抱いていた。
彼には「無理をして欲しくは無い」と、言葉で伝えた事もあったのだが、「無理では無い。君とは、会いたい時には会えないから。」と言われてしまえば私は彼を責めらず、彼を受け入れてしまっていた。
とても少ない時間の逢瀬を楽しんだ後、彼はすぐに意識を失うように眠りについた。
夢魔の悪夢にうなされているのか、時折小さな声が聞こえた。
ただの寝言だと言ってしまえばそれまでだが、時折私の名を呼ぶので返事を返した。
そんな私の声が聞こえているのだろうか?
返事をすると険しいその表情が、和らいでいく。こんな風に彼が少しでも楽になるなら私は幾らでもそれに答えよう。
彼は寝ていてもその眉間に皺を寄せていたので、そこを指で押さえて皺を伸ばした。
「癖になってしまいますよ」と。
私は彼の腕の中に戻り、目を閉じた。
朝になると、また険しい表情で私の存在を確認するのだろう。
彼の名を呼べばその表情は和らぐのだろうか。
私はいつも彼が名を呼ぶのを待っていた。
明日は私から彼の名を呼んでみよう。
そうすれば私が彼の側にいる事を伝えられる。
彼はきっと笑って私を抱きしめる。
……………
胃腸の日
ことっ、と音のした方へ視線を向けると年端もいかぬ幼女がこちらを心配そうに見ていた。
机の上に置かれた小さな小瓶。
「貴方は無理をし過ぎです。」
そう言われ、小さな手で白い粒とコップに入った水を渡された。私は素直にそれを受け取り、口に放り込む。
薬を飲む事には慣れてしまっていて、水が無くとも飲みこむが出来てしまうのだが、わざわざ用意してくれたそれで口へ流し込んだ。
ふぅと息をつくと彼女も安心したのか、先程までの険しい表情が柔らかくかわる。
「心配をかけてすまない。」
私を蝕むこの胃痛は、仕事の負担によるものだとは分かっている。このところは更に激務が続いてますます酷くなっている気がする。
彼女に気を使わせてしまうのは、この私の不徳だ。命の危険の無い後方にいる私はこの程度の事位どうということはない。小さな彼女が前線で背負っている重荷に比べたら………。
私の前に立ってこちらを見ている彼女。触れたい。私はこの手を伸ばした。
「少しはお休みになってください。」
優しく響くその言葉と共にその小さな体を抱き締める。彼女は少し驚いた様な表情で私を聖母の様に抱きしめる。
「エーリッヒ、貴方はこの帝国に無くてはならない方です。」
お側におります。
彼女がいれば私はこの悲惨な世界でも生きていけるだろう。
私の大切な…小さな。
妖精で悪魔な幼女。
2018年初投稿です。
今年もよろしくお願いします。
Twitter様でしたので、短くてすみません。