おバカに憑依した現代人   作:疾走する人

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追放

皆さんは、アニメの主人公をバカな奴だと思ったことはないだろうか?

 

反論もあるだろうが、俺はバカだと思う。

 

例えば、「魔法科高校の劣等生」の中に出てくる司波達也。

 

「四葉の一員だとバレないようにしながらも妹の司波深雪を守る」というのが彼のやるべきことであり、彼自身の唯一の望み。

 

だが、そんな目的があるにも関わらず、普通の一課生として入ればただの美人な女子として捉えられるはずだった深雪に入試で総合一位にさせ、本人も入試で筆記テスト一位になって生徒会長に目を付けられ、挙句の果てには横浜騒動で自分が戦略級魔法師だとバレるところまで行っている。

 

例えば、「インフィニット・ストラトス」の織斑一夏。

 

ヒロインの一人であるセシリア・オルコットと言い合いになった時、「ハンデなんてものは戦いの中にいらない」などと言っておきながら、その直後に「俺がハンデをつけてやろうか?」などと矛盾したことを堂々と言っている。

 

例えば、「Fate/stay night」の衛宮士郎。

 

聖杯戦争を勝ち抜いて平和を手にするのが願いなのに、自分の力が覚醒すらしていないような状況で自分自身が戦いの場に立った。

 

そんなこんなで、主人公たちはみんな真性のバカだと思うわけだ。

 

それで、なぜこんなことを話しているかというと……。

 

 

「なんだ、こんなこともできないのか、情けない。」

 

「それでも黒鉄一族か!」

 

「一族から追い出した方が良いのでは?」

 

「全くだ!」

 

そんなおバカな主人公達の中でも特におバカな主人公、黒鉄一輝になってしまったからだ。

 

なんでそんなことになってしまったのかはいつか思い出すとして、黒鉄一輝はトコトンおバカなのだ。

 

黒鉄一輝。「落第騎士の英雄譚」の主人公であるキャラクターであり、剣を数分打ち合わせるだけで相手の剣技を模倣でき、多くの武術を習い、自身の少ない魔力を一分間で全て消費させる技「一刀修羅」を開発し、努力のみによって高みへと登った騎士。

 

ここだけ聞くと、黒鉄一輝という人物は勤勉な人間だと思うだろう。

 

だが、俺にはそれがバカなことにしか思えなかった。

 

黒鉄一輝の一番の強みは、剣技である。と、俺は思うのだ。

 

「落第騎士の英雄譚」の中では「固有霊装」と言われる武器を使って戦うのが主流で、大体の固有霊装は刀の形をしていて、それは黒鉄一輝の物も例外ではない。

 

つまり、戦いの場において、黒鉄一輝が使うのは正直剣技だけで十分なのだ。

 

それなのに、多くの武術を学ぶ、などという戦闘には決して使わないようなことをバカみたいに続け、挙句の果てには自分の弱点である魔力をなんとかしよう、などと考え始めたのである。

 

魔力を何とかすることは、魔力が全てを決めるような世界の中では必要なものに思えるかもしれない。

 

だが、思い出して欲しい。

 

他のアニメの中では、剣技のみでアホみたいな強さを手に入れた人間も大勢いるのだ。

 

某型月世界の剣技のみで第二魔法に到達した新撰組の人斬りやNOUMIN然り、一瞬で九回斬撃を放つ、なんてことをやってのける某人斬り抜刀斎然り、剣を振り回しただけで斬撃の竜巻ができる三刀流剣士然り、木刀一本で真剣を叩き斬った銀髪の万屋然り。

 

「落第騎士の英雄譚」も、それらと同じアニメワールド。

 

そんな感じのことができないことはないはずなのだ。

 

そんな事を思いついたのが四歳の時。

 

俺はそれから多くの道場を巡って様々な剣技を見続け、原作の黒鉄一輝と同じように模倣剣技(ブレイドスティール)を身に着けた。

 

その後もただひたすらに剣にのめり込み続けて、道場に行くことができない日はただひたすらに剣を振り続けた。

 

その結果、とりあえず平行世界から一つ斬撃を呼び込めるようになりました(白目)。

 

まあ、そんなこんなで日に日に剣技を上達させて来ていたのだが、ここに来て黒鉄一輝としての問題に初めてぶち当たってしまった。

 

きっかけは、昨日の夜にいつもと同じように庭で剣を振っていたときのこと。

 

黒鉄本家に来ていた分家のところの息子が、俺が剣を振っているのを見て一通りバカにして、それでも俺が無視して剣を振っているものだから、逆ギレして俺に決闘を申し込んできたのだ。

 

まあ、当然剣の才能の鬼とも言える俺に勝てるわけもなく、そいつは惨敗して泣いて帰っていったのだが、その後がダメだった。

 

その翌日、つまり今日の朝にソイツの親が一族会議みたいな場所で、俺についてあることないこと吹き込み続けたのだ。

 

それで、魔力量がほとんどなくて、発言権のない俺には当然反論の余地なんてものは一切なく、そして今に至るわけだ。

 

「もう我慢ならん!」

 

「魔力がないが、本家の子ということで見逃してきてやっていたが、本家の子である、という権力を使ってウチの息子を無理矢理負かすとは!」

 

「追放だ!」

 

「ご当主、決断を!」

 

一族会議の中、他の大人たちが喚いている中でたった一人だけ静かに目を瞑っている男性、黒鉄本家の当主、つまり俺の親父が静かに目を開いた。

 

「静かにしろ。」

 

その一言で騒がしかった室内が一斉に静まり返った。

 

さすがは黒鉄の当主、主人公のお父さんだ。覇気が違うぜ。

 

俺がそんな事を考えている間にも、父さん(仮)は重々しく言った。

 

「本日より、黒鉄一輝は黒鉄家から追放とする。」

 

「おお!」

 

「ザマアミロ!」

 

「静粛に!」

 

父さん(仮)の言葉で再び騒がしくなった室内が再び静まり返る。

 

「黒鉄一輝は追放、黒鉄家への一切の干渉を禁止するが、それは黒鉄家も同じだ。黒鉄家は、これから一切の黒鉄一輝への干渉を禁止する。」

 

「おお、本格的に関係を斬り捨てる、と言うことですな!」

 

「さすがはご当主!」

 

大人たちは自分の都合のいいように解釈しているが、おそらくこれは父さん(仮)の精一杯の優しさ、というやつだろう。

 

おそらく、黒鉄家の中には俺をウザく思っているやつもいるし、黒鉄家から追い出されたらおそらくそいつらにリンチにされるだろう。それを回避するために父さん(仮)は俺と黒鉄家を相互不干渉にしたのだろう。

 

ありがとう、父さん(仮)。

 

俺が今十歳だから十年しか一緒にいなかったが、それでもアンタが俺を気遣ってくれることはハッキリと伝わってくるよ。

 

「はい。そのご処分、謹んでお受けいたします。」

 

内心で父さん(仮)に感謝しながら俺は頭を下げる。

 

さあ、これで俺を縛りつづけてきた黒鉄との縁は切れた。

 

これからどこに行こうか。

 

だが、どこに行っても不幸になることはないだろう。

 

俺の剣が進む道は、無敵なのだから。

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