数十秒経った後、佐々木さんは口を開いた。
「お主、頭おかしいんじゃないのか?」
いや、農民なのにいちいちござる口調使ってるアンタには言われたかねーよ!
と心の中でツッコミを入れる。
決して口には出さない。
口に出したら、佐々木さんのメンタルが壊れる気がするからな。佐々木さんって、どことなくメンタル弱そうな見た目だし。
俺がそんな失礼なことを考えているとも露知らず、佐々木さんは真面目な顔で続ける。
「確かにそういうことを考える年頃なのはわかる。拙者も十四歳の頃は同じようなことを考えてたからな。だが、むやみにそういうことを言うもんじゃないぞ?幕府に捕まる可能性だって無くはないんだからな?」
どことなく優しい目で俺を見て静かに諭す佐々木さん。
中二病にかかっている時期があったのか。
そんなことを考えながらも俺は佐々木さんの言葉を否定する。
流石に、中二病患者だと思われるのはイヤだ。
「いや、別に妄想でもなくて、本当のことなんですって!」
「ほぅ…。それでは、証拠は?」
佐々木さんは相変わらず可哀想なものを見る目で俺を見てくる。
おのれ、そこまで俺を中二病患者に仕立て上げたいか。
「佐々木さん、どこで俺のことを見つけたんですか?」
「ああ、山の中だとも。」
「空気が温かいし、今って夏なんですよね?」
「ああ、そうだが?」
佐々木さんの答えを聞いて実感する。
やはり、俺はタイムトラベルしてきたのか。
まず、季節。俺がさっきまでいたのは冬だったのに、季いきなり季節が夏になるわけがない。
そして、場所だ。俺がぶっ倒れたであろう場所は、平原。なのに、山の中で倒れていたところを発見された、ということはやはり場所も時間も違うところに移動してしまったのだろう。なぜかは知らんが。
だが、それをどうやって佐々木さんに説明するか。
そこが踏ん張りどころ、というやつだろう。
さて、頑張って見ますか。
「佐々木さん、倒れている俺を見つけて、その後この小屋まで来たってことは、俺の体に触れましたよね?」
「おうとも、体に触れずに人を持ち上げるような器用な真似はできんさ。」
体に触れずに人を持ち上げるようなことは器用とは言わない気がするんですがそれは。
そんなツッコミを心の中で入れながらも俺は続けて口を開く。
「俺の体、冷たくありませんでしたか?」
そう。俺は確かに体を温めるために剣を振り続けていたけれども、それだけで冷気を全て弾けるわけがないのだ。
「ああ、冷たかったな。」
佐々木さんの言葉を聞いて俺は心の中で笑う。
よし、俺の勝ちだ。
「普通に過ごしていれば、冷たくなることなんてありえなくないですか?」
「いや、そうでもないぞ。この山の中には川があるからな。体を冷やすくらいできるさ。」
「いや、でも、川に入るだけじゃあ俺が倒れてた時みたいに冷たくはならないはずなんじゃないですか?」
「む、それは確かに。」
「そういうところから考えると、俺が来たのはとても冷たいところ、ということ。」
「そうだな。」
「だけど、今は夏だから、そんな場所は存在しない。」
「ああ。」
「しかも、佐々木さんが俺を見つけたとき、俺、かなり汗をかいてませんでしたか?」
「ああ、そうだったな。」
「本来は存在するはずのない場所から来ていて、しかも、その場所は汗をたくさんかくほど運動しても体が完全には温まらないほどの場所。
つまり、強引かもしれませんが、俺は本来ありえない場所、つまり未来から来た、ということにはなりませんか?」
「そう言われると…。」
よっしゃ、論破〜!
そんなことを考えながら畳み掛ける。
「これで納得してもらえました?」
「あぁ…。ということは、本当に未来から来たのか?」
「だから、そう言ってるじゃないですか。」
佐々木さんのボケッとした顔が印象的だった。