ハリー・ポッターと隻眼の少女   作:シャロン

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箒が欲しい

 

 

ミラージュside

 

 

朝食を食べている時に、ニコラス・フラメスの研究書を手に入れて、その解読に頭を悩ませている私の元にさらに頭を悩ませる問題が飛び込んできた。クディッチの件だ。『賢者の石』を手に入れる方法や研究書の解読をするのにすっかり忘れていたけど、そういえば私もクディッチの選抜に選ばれたんだった。

 

それを思い出したきっかけは、ハリーがふくろう便で『ニンバス2000』を送られてきてはしゃいでいるところを目撃してしまったのだ。しかもそれをグリフィンドール寮の連中が自分の事のように喜んでいる様を目の前で見せつけられて、マルフォイが不機嫌になっているのを横目に、私は鞄から『箒大全集』なる本を取り出して、自分に合った競技用の箒を選ぶことにした。

 

ページをパラパラとめくっていきながら、ぼんやりと眺めていると隣からマルフォイがやれこの箒がいいだの、この箒はダメだとうるさいから殴って黙らせた。相変わらずうるさいなまったく。

 

 

「ミラージュ、なに読んでるの?」

 

「箒選び…」

 

「箒…?あぁ、クディッチのやつ?」

 

 

マルフォイを殴って黙らせたあと、少ししてダフネが隣にから不思議そうに覗き込んできた。

 

 

「そうそう…めちゃめんどくさい」

 

「相変わらずやる気なし?」

 

「ないない。興味もなんにもないし」

 

「そういえばミラージュはどこのポジションにつくの?」

 

「なんだっけ…あのスニッチ?を取る役」

 

「シーカーなの!?ほんとに!?」

 

 

ダフネがとてもびっくりした顔で大声で叫んだ。そしたらスリザリン寮の全員から、一斉に視線を浴びる。そんなに珍しいのかな?

 

 

「ダフネ、そのシーカーってやつってそんなに凄いの?」

 

「凄いよ!シーカーっていったらクディッチのスーパースターだよ!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

 

珍しくダフネが興奮してる…クディッチってのは魔法界ではかなりメジャーなものなのかな?その辺に関しては調べてないから、よくわかんない、ってか興味なかったし。隣でダフネがキラキラした顔でクディッチについて色々話してるのを半分くらい流しながら聴きつつ、私は本をパラパラとめくって箒を選ぶことにした。

 

パラパラとページをめくっていく中で、ふと気になる箒を見つけた。

 

『ムーントリマー』1901年製造。細いトネリコの柄を持ち、当時では速度、高度共に最高峰の性能を持つ。現在製造中止。

 

と書かれていた説明文と箒の写真を見て、私は本を持って勢いよく席を立ち、職員テーブルに座って朝食を食べているスネイプ先生の元に走っていく。そして、机に本をバンッと置いて先ほどの箒を指差して、

 

 

「先生!この箒欲しい!!」

 

 

と、叫んだ。突然の事にスネイプ先生は驚きながらも、私の顔と指差された箒を交互に見て軽くため息をついた。

 

 

「なぜ吾輩にそれを言うのだ?」

 

「いや、だってスリザリンの担当だし、顧問だし」

 

「吾輩にそれを買えと?」

 

「ダメですか?」

 

 

上目遣いで目をウルウルさせ、可愛くお願いしてみる。すると、スネイプ先生は額に青筋を立てて、次の瞬間には私の額にチョップを食らわせてきた。

 

 

「あいたっ!?」

 

「自分で買うのだな」

 

「いや、ホグワーツ出れるなら買いに行きますけど…」

 

「業者にでも発注するがいい」

 

「いや、製造中止って書いてますし」

 

「なら諦めろ」

 

「じゃあクディッチ選抜降ります」

 

「それはできん」

 

「じゃあ買ってください」

 

「自分で買え」

 

「ホグワーツから出られるなら買います」

 

「業者に発注しろ」

 

「製造中止って書いてますし」

 

「なら諦めろ」

 

「なら選抜降ります」

 

「それはできん」

 

「なら買ってください」

 

「自分で買え」

 

「……箒くらい買えよケチ」

 

 

私の悪口が聞こえたのか、スネイプ先生がまた額にチョップを食らわせてきた。痛い…

 

 

「…まったく。学校で貸し出ししているヤツでも使え」

 

「可愛くないからヤです」

 

「フリント!!ホーエンハイムが練習に付き合って欲しいそうだ。行ってこい!」

 

「イエスボス!!」

 

「いや待って今から授業があぁぁぁあぁ!!!」

 

「安心しろ、ほかの先生方には吾輩から伝えておいてやる」

 

「ふざけんな根暗教師!!まだ朝食も食べてないのにー!!」

 

「さぁ行くぞホーエンハイム!」

 

「なんでコイツこんなにキラキラ輝いた顔してんのよーー!?」

 

 

フリントに首根っこを掴まれてズルズルと引きずられながら、大広間から連れ出され、お昼まで私はフリントと一緒にひたすらシーカーの練習をさせられる羽目になりました。あの根暗教師絶対許さん…

 

 

ようやく解放された私は、大広間には向かわず自室に向かい、部屋に入って敷かれていた布団にバタンと倒れ込んだ。疲れた…このまま午後の授業まサボって寝ようかな?うんそうしよう。午後の授業にはあのめちゃくちゃ臭いクィレルの授業あるし。よしサボり決定だ。そう思ってローブを脱いで、ハンガーに掛けてふと気付いた。ちゃぶ台の上にとても大きな包みが無造作に置いてあったのだ。

 

なんだこれ?誰かのイタズラ…なわけ無いか。特にこれといった怪しい感じも無いし、なんだろう…

 

恐る恐る包みを開けてみると、そこには私が今朝本で見つけて根暗教師に買えとおねだりした箒『ムーントリマー』が鎮座していた。

 

 

「え?なんで?マジ?もしかしてあの根暗の仕業?」

 

 

箒を手に持ってみると、一枚の羊皮紙がヒラヒラと床に落ちた。それを拾い上げて読んでみると、そこには、

 

『これでもし優勝を逃せば罰則では済まんぞ。byスネイプ』

 

と書いてあった。

 

 

ちょっとやる気出てきたかも。私は箒を持って自室を飛び出し、いつも鍛錬している場所まで走っていった。

 

 

 




箒を手に入れたミラージュはご機嫌です。多少の事なら怒りません。(マルフォイを除く)

次はクディッチの試合です

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