ハリー・ポッターと隻眼の少女   作:シャロン

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杖選び

 

 

ミラージュside

 

 

グリンゴッツ銀行でハリーの使う必要な額をおろし、私は持ってきていたお金を換金したけど、どうやらかなりの大金だったらしく新たに金庫を作らされる羽目になった。

 

それからホグワーツで使う教科書類や鍋、動物ーハグリット曰くフクロウかヒキガエル、ネズミの三択らしいーを買い漁る。当然私はフクロウを買った。カエルとかネズミとかあり得ないし。なにより可愛くない。

 

そしてこれが私の今回の買い出しの本命である『魔法の杖』を買いにいく。ハグリットに案内された店は外観が少し古ぼけていて、看板には『オリバンダーの店 紀元前382年創業高級杖メーカー』と書かれていた。

 

 

店の中は無数の箱が天井高くまで積み重なり、所々で埃を被っている。店の中には誰もいなかったが、ハリーが「すみません」と言うと店の奥から梯子に乗って一人の老人がやって来た。

 

 

「いらっしゃい、坊っちゃん、それにお嬢ちゃん。私が店主のオリバンダーです。」

 

「杖を買いに来たんですけど」

 

「解っていますとも、ではさっそく杖を選びましょう。杖腕はどちらで?」

 

「杖腕?」

 

「利き腕のことですよ」

 

「両方なんですけど、よく使うのは右、いえ左ですね」

 

「ではお手を拝借。失礼しますね」

 

 

そう言ってオリバンダーさん、は私の肩から指先にかけてメジャーで測ったり、しわしわの指先で触りながら採寸を始めた。これが意味もない行為だったらこの爺、あとでぶん殴ってやる。

 

そして採寸を終えたオリバンダーさんは、近くにある箱を引っ張り出して蓋を開ける。

 

 

「ここにある杖は一つ一つが強力な魔力を持った芯を使っております。ユニコーンの鬣、不死鳥の羽根、ドラゴンの心臓の琴線です。しかし、それらは名前が同じでもそれぞれが少し違いを持つのです。故に同じ杖はありません。さらに、杖は持ち主を選び、忠誠を誓います。その杖の持ち主でない者がその杖を使っても、決して十二分な力を出すことなど出来ないのです」

 

 

なるほど。いかに杖が強力な力を持っていても、杖に選ばれなければその真価を発揮できない。杖にも意識があるのかどうかは知らないけど、杖の力を十二分に発揮したければ杖からの忠誠心を得なければならない。逆に杖からの忠誠心がなければ、その魔法使いはいかに優秀であろうと真価を発揮できない、ということか。

 

 

「檜に不死鳥の羽根、24cm、軽くしなやか」

 

 

杖を受け取り軽く振ってみる。なにも起きないし。

 

 

「合わんようですな。では………こちらを。楠にドラゴンの心臓の琴線、頑固」

 

 

杖を受け取って軽く振る。こんどは近くの山積みしてある箱がバタバタと倒れた。

 

 

「いかんですな。ではではこれは?白木にユニコーンの鬣。固くしなやか」

 

 

杖を受け取って軽く振る。白いユリが杖先から咲くが、力なく床に落ちた。

 

 

「うーむ。これも合わんですな。いやはや難しい」

 

 

それから何本か試したけど、どれも合わないらしく私の前で杖をとっかえひっかえする。いい加減早くしてくれと思う反面、やはり私に合う杖など無いのか。と、落胆してしまいそうになる。

 

ハリーは飽きてきたのか、店の外にあるクディッチ専門店の方をチラチラ見ている。

 

 

ウンウンと頭を悩ませているオリバンダーさんが、少し可哀想になってきた。仕方ない。ここまで来たら使うしかないか。

 

 

「あの、オリバンダーさん?」

 

「なんですかな?」

 

「私が杖を選んでもいいですか?」

 

「それは……なにか気になるものがおありで?」

 

「はい」

 

 

そう言って、私は手に持つ朱色の杖を床にコン、と当てて呪文を唱える。出来れば使いたくなかったけど仕方ない。ハグリットは店の外だし、ハリーには適当なこと言っておけば大丈夫だろう。

 

 

「我が呼び声に応えしモノよ、汝の求めしモノが来た。我は光を纏うモノ。我は闇を打ち払うモノ。我が声に応えしモノよ、その姿、我が眼前に顕れたまえ!」

 

 

今度は力強く朱色の杖を床に打ち付ける。すると、店の奥からガタガタと桁ましく音が鳴り響く。ハリーとオリバンダーさんはそれに驚くが、オリバンダーさんは店の奥へと消えていくと、一つの黒い箱を持って帰ってきた。

 

 

「まさか、この杖をあなたを選ぶとは…」

 

「ミラージュ、さっきのは?」

 

「気にしないでハリー。ただのおまじないだから」

 

「お嬢ちゃん、なぜこの杖が気になったので?」

 

「んー、なんとなく?」

 

「この杖に使われているのは、黒檀に不死鳥の羽根、しなやかだがクセが強い。いままでこの杖に選ばれた者は一人もいません」

 

「一人も…」

 

「では、こちらを」

 

 

差し出された真っ黒な杖。見るからに禍々しい雰囲気を持つ杖を、受け取り軽く振ってみる。すると、辺り一面にこれまた真っ黒なクロユリが咲き乱れた。それを見たオリバンダーさんは少しばかり驚いた表情をするけど、すぐさま眉間にしわをよせて頭を悩ませる。

 

 

「なんと…この杖に選ばれてしまうとは…しかし…どうしたものか…」

 

「ダメなんですか?」

 

「いえ。むしろこの杖があなたには一番合うでしょう。ですが…」

 

「ではこれで」

 

「よろしいので?」

 

「はい。私もこの杖が気に入りましたから」

 

「……分かりました」

 

 

杖の代金を支払って、私は手に入れた杖を懐に入れる。次にハリーの杖の選定が始まったけど、私以上にオリバンダーさんは悩んで色んな杖をとっかえひっかえしていたけど、ようやく納得のいく杖が見つかったらしい。

 

杖の選定が終わった私たちは、私が最初に来た場所『漏れ鍋』へとハグリット引率のもと向かい、そこでハリーとは入学式までのお別れとなった。

 

 

うん、あの呪文の事はなんとか誤魔化せた。それにこの左目の事も聞いてこなかったし、いまのところは大丈夫。問題はどうやって『賢者の石』を手に入れるか。ホグワーツで管理するなら、あの『アルバス・ダンブルドア』の目を掻い潜ってやらなければならない。どうしようかな……?

 

 

それにしてもクロユリの花か。なんか嫌な予感しかしないんだよね。確か花言葉は『愛』と『呪い』、だったっけ?個人的にはもっと縁起のいいモノが良かったんだけど。

 

 

 

 






クロユリ綺麗ですよね。自分は好きです。

さて、次はようやく組分けです。ミラージュどこにしようかな?


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