ミラージュside
久しぶりに夢を見た気がする。とう様とかあ様と一緒に何気ない日常を過ごした、とても幸せな日々の夢。思い出しただけでも、少し泣きそうになるけど、それを我慢してとりあえず起き上がって時刻を確認する。時刻は午前5時。朝食までにだいぶ時間がある。
私はローブを羽織り、とう様の形見である朱色の杖を持ってそっと部屋を出る。その時に物音を立てず、一緒の部屋で眠っているグリーングラスを起こさないように、慎重に。
ホグワーツの朝はだいぶ冷え込むらしく、ローブに寝間着代わりにの着物だけでは肌寒い。でも、いまから動くし大丈夫だろう。とりあえず鍛錬が出来そうな場所を探して、城の廊下を歩き回る。ようやく、落ち着いて鍛錬が出来そうな場所を見つけることができたのは、寮を出てから30分ほど歩いてからだった。空はまだ薄暗いけど、そのうち明るくなる。でも、まずは準備をしないと。
地面に適当な円を描いて、それを中心に錬成陣を書き上げる。その真ん中に手頃な石を置いて、準備完了。朱色の杖を傍らに置いて、両手を合わせたあと、錬成陣に掌の当てる。すると、パチパチという音と共に石が細長い棒状に姿を変える。やってみたかったんだよねーコレ。日本の漫画でこんな事してたの見て憧れてたんだよねー。
棒状になった石を拾い上げて、適当に振ってみる。うん、こんなモノかな。それを空高く放り投げて、傍らに置いてある杖を足でヒョイっと放り上げ左手でキャッチして、逆手で杖の柄を握って目を閉じ意識を集中する。そして、感覚を頼りに石が落ちて来るのを感じ取って間合いに入った瞬間。杖を抜刀して石を斬る。ゆっくりと目を開けると、足元には2つに分かれた棒状の石が落ちてある。うん、この感覚もいつも通り。あとは石を元に戻して、終了っと。
朝の鍛錬はいつもこれだけ。残りの時間はこの左眼の扱いに使う。とう様とかあ様曰く、この左眼は『魔眼』で、しかも2つの能力があるらしく、非常に強大な故、いつもは『魔眼封じ』の眼帯(かあ様特製)を付けている。その2つの能力は『狂気』と『歪曲』。日によって効果が変わるけど、大体これだけが出来る。コントロール出来れば、自分の意思で特定の能力を使用出来るらしいけど、私にはまだできない。鍛錬を沢山積んではいるけど、未だに1つの能力を引き出して使用しようとすると、眼に溜まった魔力が暴走してしまう。だから、鍛錬の残りの時間はこの『魔眼』の魔力をコントロールすることにしている。
さて、とりあえず眼帯を外して左眼に魔力を回して、うわ。もう気持ち悪くなってきた。魔力の回りが早いの何の。さすが魔法学校、魔力が満ち満ちていてなにより。もう少し抑えよう。うんよし、だいぶ落ち着いた。ゆっくりと左眼を開くと視えるのは普通の景色。試しに近くの樹に視線を向けて魔力を込めると、その樹は簡単に捻じ切れた。今日は『
これでよし。左眼に眼帯をつけて、杖で地面を3回叩いて、捻じ切れた樹を見た目だけ元に戻す。そこまでして、ふと背後に気配を感じて杖の柄を逆手に握って振り向く。そこには、白い髭を蓄え、キラキラ透き通る青い瞳の老人、ダンブルドア校長がニコニコしながら立っていた。
「おはようございます、校長先生」
「おはよう。それにしても見事な魔法じゃ。君の年頃でそれ程の魔法を扱える者はおらんじゃろ」
「魔法じゃありません。錬金術の応用です」
「ほう。じゃがワシの知る錬金術とは、ちと違うように見えたがの」
「校長先生ならご存知の筈ですよね?『ホーエンハイム』の家に伝わるオリジナルの錬金術がある事を」
「確かに、しかしこの目で見るのは初めてでの。まさか破壊された樹を元どおりに戻す事ができるとは、思わなんだ」
「見た目だけです。あの樹はもう死んでいますよ」
「そうか。それはすまなかった」
「……校長先生。私に何か用ですか?」
「なに、城を散歩しておったら君が一人でいるのを見かけたのでな。何をしておるのか興味が湧いただげじゃ」
「日課なんです、コレが」
何が言いたいんだろうこのジジ…校長先生は。恐らく左眼を使用しているのは見ていないと思う。だが、私が『錬金魔術』を使っているところは確実に見られてるし、この杖が仕込み刀だということもバレてるかもしれない。しかもよりにもよって今日は『歪曲』が発動するから『狂気』に落とすこともできない。どこまでバレてる?
「日課とな?」
「はい。毎朝毎晩欠かさずにやってきましたので、ホグワーツに来ても欠かさずやりたいと思っています」
「ほう。それは良い事じゃ。それじゃワシはこれで」
そう言ってジジ…校長先生はゆっくりと私の前から消えていった。なにがしたかったんだあのジジィ。長生きしすぎてボケたか?ま、いっか。さて、鍛錬はこれくらいにして朝食食べに行こう。お腹空いたなー。
寮に戻って、制服に着替えて、グリーングラスと一緒に朝食を食べに行き、変身術、歴史の授業を受けたけど、あんまり面白くなかった。変身術は錬金術でも出来そうだし、歴史は興味ない。あとは呪文学と魔法薬学に期待するしかないか。
魔法薬学の授業は辛気臭い地下牢で行われるらしい。グリフィンドールと一緒に。ハリーやウィーズリーに会うの久しぶりな気がするなー。とか思ってたけど、教室に入るなりハリーとマルフォイがまたなんかやってた。飽きないなー。
「なにやってんの?」
「別になにも」
「ホーエンハイム、君には関係ないだろ?」
「そだね。でも目の前で友達と同じ寮の人が争ってたら止めない?」
「友達?なるほど、ポッター。どうりで強気なわけだ。いざという時はホーエンハイムが助けてくれるんだからな?」
「黙れマルフォイ」
「いいよなポッターは。とても頼りになる友達がいてさ」
「黙れマルーー」
「口だけは達者なアンタには言われたくないなね。親が偉いってだけで弱いアンタが、調子にのらないでよ?」
「あんまりバカにするなよホーエンハイム。ボクがその気になれば君なんかー」
「無理無理。魔法もロクに使えないアンタが、私に敵うわけないじゃん」
「試してみるか?」
「いいわよ。なんだったら今すぐに始める?すぐにアンタの首が胴とオサラバするとおもうけど」
「いいだろう、受けてたーー」
「馬鹿騒ぎはその辺にしたまえ。さっさと席につけ、さもなくば減点だぞ?」
私が逆手に杖を握ると同時に、いつのまにか後ろに立っていたスネイプ先生が私の襟首を掴んで、後ろに引っ張る。ってか痛い痛い、首が締まる。
マルフォイとハリーが渋々席に座るが、私はスネイプ先生に引っ張られ、教卓の一番前に座らされる。
「さて、この授業では魔法薬調剤の絶妙な化学と繊細な芸術を学ぶ。馬鹿の1つ覚えのように杖などは振らん。これを魔法と思うのが疑問に感じる者が多いかもしれん。が、最もそんな事を感じるのは、この授業を理解出来ぬ愚か者だけだ。諸君にこの授業を真に理解することは期待などしてはおらん。私が教えるのは名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、地獄の窯にさえ蓋をする方法である。もっとも、吾輩がこれまでに教えてきたウスノロよりマシならの話だがな」
うわぁ。いきなりぶっ込んできやがったぞこの根暗教師。どんだけ魔法薬学好きなんだよコイツ。まぁ教科書見る限り繊細な作業が求められるってのはわかるけど。
「そこでだ、ポッター!!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
「わかりません」
ハリーがおずおずと答えると、スネイプ先生は口角を釣り上げ軽く笑うと同時に、軽口を叩く。グレンジャーが精一杯に挙手してアピールするけど知らんぷり。どんだけ捻くれてるんだあの教師…
「では、ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、何処を探すかね?」
「わかりません」
ハリーが答えるとまた口角を釣り上げ軽く笑う。そしてグレンジャーも懲りずに精一杯挙手する。その光景の何が面白いのか、マルフォイたち数人のスリザリン生が笑い始める。純血の一族って、根性ひん曲がってるのかな?
「有名なだけでは話にならんな。ではホーエンハイム!答えてみろ」
「…はい?」
「先程の吾輩が出した問題を答えてみろ」
教室が静寂に包まれる。マジかこの根暗教師。んなもの知るか!私はほんの数日前まで魔法界になんの関わりもなかったんだよ!とか言いたいけどぐっと我慢する。でもベアゾール石だけは分かるんだよなー。前に使ったし。
「アスフォデルの球根はわかりません。ベアゾール石は恐らく山羊の胃の中から見つける事が出来ます。そしてベアゾール石は主に解毒薬としての効果がある。かと思いますけど…」
「ふん、及第点だな。さて、何故先程の回答をメモに取らん?」
静寂に包まれていた教室が一気に何かを書く音に支配された。
もうヤダこの学校。私の事になるとみんな何かに怯えるみたいにだんまりするし。私が何をしたっていうんだ…
次回、飛行訓練。
ミラージュ空飛べるかな…