ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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ダームストラングの船ってポートキーみたいなものなんだろうか


七変化

 スタージス・ポドモアは豊かな麦色の髪をした魔法使いだ。

 陽気そうな顔に違わず、授業や話す内容も陽気で明るく、授業自体にも人気があった。

 エストやクラーナの話では、かつて死喰い人と戦っていたダンブルドア傘下の組織の一員でもあったらしい。

 しかし、陽気で気がいいのも考え物だとオスカーは思った。

 

「やあやあ、エスト君にオスカー君、クラーナ君いらっしゃいな、君たちならいつでも歓迎だよ」

「スタージス、前に決闘のこと教えてくれてありがとうね、ちゃんとオスカーに勝てたよ!」

「おや…… それはまあ、オスカー君にはご愁傷様としか言いようがないね」

 

 スタージス・ポドモアは陽気に笑う。やはり、エストに決闘術を教えたのはポドモア先生に間違いないようだ。

 

「けど、教えてくれて良かったの? もしかして教えてくれたことをマクゴナガル先生とかに言ったらちょっと不味いことになる?」

「いやあ、まあ一年生の決闘の手伝いを校長の許可なしにやったとなるとちょっと問題になるかもしれないね、でもオスカー君もエスト君もケガはなかったんだろう?」

 

 少しだけ、ポドモア先生が目線をそらしたのをオスカーは見逃さなかった。

 

「やっぱりね、そんな危険な魔法を一年生に教えるのは問題になるみたい」

「そりゃ当然でしょう」

 

 そういってエストの顔をしたトンクスは鼻をつまんで、いつものトンクスの顔に戻る。

 

「君はハッフルパフのニンファドーラ君……?」

「ニンファドーラじゃなくて、トンクスと呼んでください。ということで、今度は私たちに無言呪文を教えて貰えますか? エストには内緒で」

「それはまた一体どういう……」

「簡単なことです、ポドモア先生。マクゴナガル先生達にはエストに決闘術を教えたことは言わないので、我々に無言呪文を教えてほしいということです」

「いやあ、それは、なんというか、さらに問題を増やしているだけというか……」

 

 ポドモア先生はオスカーに助けてくれと視線を投げてきたが、それを無視せざるを得なかった。笑っている二人の顔が怖かったのだ。

 

 

「いやあ、ポドモア先生を巻き込んだのは正解でしたね」

「本当ね、ポドモア先生が着いてきてくれるおかげで、ファッジをからかえなくなったのは残念だけど」

「まあ無言呪文のイメージが分かる人に教えて貰うっていうのは正解だったな」

 

 そう、それから三人はポドモア先生に無言呪文の個人教授をして貰っていたが、移動の際にもポドモア先生が随行してくれるので、ファッジを筆頭としたグリフィンドール生の襲撃を躱すことができていた。

 

「そう言って貰えるのは嬉しいけれども、君たちは本当に優秀だよ、この年で無言呪文のいくつかをマスターするとは」

 

 ポドモア先生は本当に感心しているようだった。ただ、オスカー達だけに教えるのがエストに悪いと思っているのか、授業ではさらに激しく点数を与えていた。

 

「僕も、ホグワーツの六年生の時には無言呪文にてこずったものだからね」

 

 オスカーが無言で放った赤い光線がアナグマを打ち抜くとアナグマはピクリとも動かなくなった。隣ではクラーナやトンクスが同様に光線を無言で出している。

 

「エスト君も含めて今年の一年生は本当に豊作だね」

 

 そういってうんうんと頷いている。

 

「ポドモア先生、そろそろルーンスプールを迎えにいく時間じゃないですか?」

「おっとそうだったね、あのサイズのルーンスプールを運ぶとなると並大抵のことじゃないからね」

「うーんと、じゃあオスカー君、僕と一緒にルーンスプールを輸送する人達を迎えに来てくれるかな? クラーナ君とトンクス君にはルーンスプールの方を船着き場へ向かわせるようにハグリッド達に言いに行ってくれるかな?」

「わかりました」

 

 クラーナとトンクスはそれを聞いてハグリッドの小屋へと向かった。

 ポドモア先生とオスカーは輸送のための魔法使いたちを迎えに正面玄関に向かう。

 

「知ってるかい? 今回はダンブルドア先生もルーンスプールを見に来るみたいだよ」

「ダンブルドア校長先生がですか?」

「ああ、今回のルーンスプールはホグワーツに紛れ込んだものをハグリッドが育てたことになってるからね、それにあのサイズのルーンスプールなんてイギリスではそうそうお目にかかれないよ」

 

 ダンブルドア校長からすれば全てお見通しということなのかとオスカーは考える。自分達のやっていること、必要の部屋で魔法の練習をしていることや、ポドモア先生に無言呪文を習っていることもダンブルドア校長からすれば全て見通していることなのかもしれない。

 オスカーはクラーナとみぞの鏡の前で出会ったダンブルドアの全て見通すような目が忘れられなかった。

 

「ああ、あの一団だろうね、なんとはるばるアフリカはブルキナファソからやってきた人までいるらしい」

 

 確かに玄関ホールにはホグワーツやイギリスの魔法族が集まるダイアゴン横丁等では見ないような恰好をした集団がいた。

 なんというか、部族? とでも言った方がいいのか、羽根飾りが沢山ついた服装に顔にはいくつものタトゥーがあった。

 

「おおこれはオスカーとスタージスじゃな、ご苦労様じゃ、今、ルーンスプールを輸送する方たちには話をしたところじゃ」

 

 オスカーとポドモア先生の背後から声がする。さっきオスカーが思い浮かべた通りの眼をしたアルバス・ダンブルドアが立っていた。

 

「では船着き場の方にいこうかの、ミスター・ラブグッド」

 

 そう言うと、輸送団の代表者らしき人がダンブルドアに向けて一礼した。ダンブルドアが歩き出した為、そこにいた全員は付き従って歩き始めた。

 

「オスカーとはクリスマス以来じゃな」

「夕食や昼食を含めなければそうなりますね」

 

 ダンブルドアは何が面白いのか微笑んだ。

 

「そうじゃの、しかし、あの時はクラーナと友人になったようじゃが、なんとも君の周りには面白い人の輪があるようじゃ」

「人の輪? ですか」

 

 ダンブルドアの声は何か羨ましそうな声色だった。

 

「そうじゃ、ホグワーツでは寮ごとの結束は固いが、寮を越えた結束となると数えるほどしかないものなのじゃ」

 

 オスカーはハグリッドの小屋からルーンスプールを移動させているであろう、エスト、クラーナ、チャーリー、トンクスの四人の顔を思い浮かべた。

 

「お互いの頭を攻撃し合うルーンスプールの世話が、三つの寮の五人を引き合わせるとはなんとも不思議なものじゃ」

 

 やっぱり、ダンブルドアにはルーンスプールの世話をしていることも最初から筒抜けだったのではとオスカーは思う。

 そうこう話している間に、一団は城を抜けて、船着き場が見える校庭を歩いていた。

 しかし、シャー!! という何かものものしい叫び声が聞こえ、魔法の光線が行きかっているのが見えた。

 

「アン、カド、イグ、ダメ‼‼」

「いかん!! アン、カド、イグ!! どぅどぅ!!」

 

 エストとハグリッドのなだめる声が聞こえるが、二人が収めようとしていたルーンスプールはわき目も降らずにグリフィンドール生徒と思わしき一団に向かって行った。

 

「ひぃいいいい!! なんでルーンスプールが俺らに向かってくるんだ。こっちにくるな、ステューピファイ!!」

「ダメだ!! 逃げろ!!」

「おい、お前ら俺を置いて逃げるんじゃねえ!!」

 

 グリフィンドールの生徒は散発的に失神呪文をルーンスプールに向かって撃っているが、当たってもルーンスプールは気にすることもなく突っ込んでいく。

 

「ダンブルドア!!」

「スタージス、これは少しやっかいごとのようじゃの」

 

 そう言って、ダンブルドアが杖を振るとルーンスプールの巨体は文字通りに浮かびあがった。

 ルーンスプールは浮かびあがりながらも、グリフィンドールの生徒に噛みつこうと牙を向けていた。

 オスカーとダンブルドアの一団がルーンスプールの傍へと近づくと、グリフィンドールの生徒はちりぢりに逃げ、腰を抜かした大柄な上級生、ルーファス・ファッジが残されていて、さらにルーンスプールをなだめるエストとハグリッド、チャーリー、そして何か唖然とした顔をしているクラーナとトンクスがいた。

 ルーンスプールは三人になだめられながらも怒りが収まらないのか、ファッジに向かって首を向けようとしている。

 

「いったいなにをしでかしてここまでルーンスプールを怒らしたのかの」

「ダ、ダンブルドア校長!? ああ、あのルーンスプールが俺に襲い掛かってきたんです!!」

 

 ファッジが腰を抜かしながらも弁明を始める。

 

「ルーンスプールは蛇の一種だからもともとは臆病で、よほどのことをしなければあのように我を忘れて襲いかかるようなことはない」

 

 ルーンスプールを輸送するためにやってきた一団の代表者らしき人、ミスター・ラブグッドが言った。杖を抜きながらも冷静にルーンスプールを眺めている。

 

「多分、ファッジ先輩の呪文がエストに当たりかけたので、それが引き金になったんだと思います」

 

 チャーリーが説明する。確かにルーンスプールのエストへの懐き方は格別だったので、もしエストに危害を加えるようなモノがあるのなら、ルーンスプールがあんなに怒り狂うのも無理はないとオスカーは思う。

 

「エストというのはあのルーンスプールを傍でなだめている女の子のことかな?」

 

 ミスター・ラブグッドがチャーリーに聞く。

 

「はい、ルーンスプールは彼女に一番なついていたので……」

「ほう、あそこまでルーンスプールの信頼を勝ち得るとは、類まれな魔法生物の才があると言わざるを得ないな」

 

 ルーンスプールはファッジへの興味がなくなったのか、空中に浮いている自分の体に戸惑いながらも、エストとハグリッドが与えるネズミを食らっていた。

 

「ダンブルドア先生!! アン・カド・イグは何も悪くないんで、もし何か罰をうけるんならアン・カド・イグじゃなくて、俺を罰して下せえ!! 止めれなかった俺が悪いんだ!!」

 

 ハグリッドが涙目になってダンブルドアに言った。

 

「ハグリッド、ここにいる皆は誰もそこの主人を守ろうとしたルーンスプールに罰を下そうなどとは考えておらぬよ」

 

 ダンブルドアが優しく言った。

 

「さて、そもそもルーンスプールを怒らす原因になった、ミス・プルウェットに呪文が飛んでくるようなことがなぜ起きたのかを理解する必要があると思うのじゃが」

 

 ダンブルドアのその青い瞳がキラキラと輝き、黙っているクラーナとトンクスの方を見た。

 

「わしは、ミス・ムーディとミス・トンクスがその理由を知っていると思うのじゃがどうかの?」

 

 クラーナとトンクスがお互いの顔を見合わせ、ファッジ先輩、ダンブルドア先生、そしてオスカーの顔を順番に見た。

 

「私がオスカーの顔を真似ていたのが悪いんだと思います」

 

 トンクスがおずおずと言った。

 

「いえ、トンクスがオスカーの顔を真似ていたのは本当ですが、オスカーを真似ていたトンクスにちょっかいをかけてきたファッジ先輩を私が小馬鹿にしたのが悪かったです」

 

 オスカーは二人の言動を聞くだけで、オスカーの顔に変化したトンクスとクラーナがいつものようにファッジ先輩をやり込めようとしたであろうことが想像できた。

 その後に運悪く、ルーンスプールを船着き場に運ぼうとしていたエストの傍に呪文が飛んで行ったのだろう。

 

「なるほどのう、ミスター・ファッジがミスター・ドロホフといささか大規模な鬼ごっこをしておることは知っておったが、そこに類まれなるミス・トンクスの七変化の才能が加わった結果ということかの」

 

 ダンブルドアの眼がキラリとファッジ先輩を見つめる。ファッジ先輩は見られただけで肩をすくめた。

 

「ミスター・ファッジ、これは君の親御さんや親愛なるコーネリウスに連絡をしなければならない案件かもしれんのう。ヴォルデモートの配下の者ならともかく、その子供やましてや学友に危害を加えることがあったとなれば、ミリセントの退任の件で忙しくしておるコーネリウスは深く悲しむじゃろうな」

 

 ダンブルドアが具体的に何を言っているのかは分からなかったが、ファッジ先輩の顔色はまるでマンティコアの尻尾の針で刺されたような色になっていた。

 

「ミス・トンクスやミス・ムーディも上級生で遊ぶのはほどほどにするように」

 

 クラーナとトンクスが壊れたかくれん防止器のように顎を激しく上下させた。ダンブルドアはまた子供のように微笑んだ。

 

「さて、では皆、船着き場に向かおうかとしようかの」

 

 ダンブルドアの指示に従って一団は動き出した。ルーンスプールはすでに地面に下げられており、傍にエストとハグリッドがついている。さらになぜか腰を抜かしていたファッジ先輩もついて来ていた。ファッジ先輩は何か吸魂鬼にキスをされた後のような、魂の抜けた顔をしていた。

 船着き場はオスカーの記憶では、小舟がいくつか入れるくらいの場所だったと思ったのだが、なぜか巨大な帆船が鎮座していた。

 

「これならルーンスプールも無理なくブルキナファソまで旅行できそうじゃの」

 

 確かにハグリッドの小屋が百個は入りそうな船だった。

 

「では申し訳ないが、ルーンスプールにお別れをしてくれるかの?」

 

 ダンブルドアがエストとハグリッドを見て言った。

 

「長旅だから、エサのネズミもたくさんミスター・ラブグッドに渡したし、ブランデーも渡しといたからな」

 

 ハグリッドの声は涙と鼻水でぐもっていた。

 

「俺は絶対、アン・カド・イグのことを忘れないからな」

 

 ハグリッドは本当に悲しそうだった。

 

「エストもアン・カド・イグのこと忘れないから、アン・カド・イグもエストのこと忘れないでね?」

 

 エストがルーンスプールの頭それぞれにキスをした。

 

「ではミスター・ラブグッドお願いできるかの?」

「ええ、ダンブルドア」

 

 ルーンスプールは帆船に乗せられていった。船に乗せられる間、ルーンスプールの視線は三本の頭全てがエストの方を向いていた。

 帆船が回転して渦の中に消えていく間、さっきの怒りに狂ったうなり声とは違う、悲しい声が響いていた。オスカーには渦が完全に消えた後も悲しげなシューシューという声が聞こえる気がした。

 

 

 

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