ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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原作だとスネイプ最後の場所


叫びの屋敷

 翌日はレイブンクロー寮のクィディッチ練習日だったので、全員が集まることができた。五人は空き教室で地図を広げて盛り上がっていた。

 

「昨日からずっと見てたんだけど、この地図は凄いの、これは多分、変幻自在呪文とホムンクルスの術なの」

「ホムンクルスの術? 変幻自在呪文? エストなんなのよその術は?」

「凄い高度な呪文で、少なくとも、イモリ、NEWT(ニュート)レベル以上の呪文なの」

「この悪戯仕掛人とかいう、ふざけた名前の奴らがそんな高度な呪文をですか?」

「うん、変幻自在呪文で多分一番有名なのは、死喰い人の腕の印で、ホムンクルスの術で有名なのは肖像画のはずなの」

 

 オスカーとクラーナは死喰い人の腕にある闇の印と同じ術ではないか? というエストの言動を受けて、少しだけ地図を見る目が胡乱になった。

 

「変幻自在呪文はロウェナ・レイブンクローが作った呪文だから、危ない呪文じゃないんだよ? でもこれはほんとに凄いの、魔法のレベルもそうだけど、いったいどうやってホグワーツの細部まで調べることができたんだろう?」

「そうだよね? 少なくとも、僕たちみたいな生徒だとこんな地図を作るような時間はないと思うんだよね」

 

 確かに生徒は夜歩き回ることはできないし、オスカーは放課後の自由時間だけでこの地図が作れるほどの時間が得られるとは思えなかった。

 

「透明になってたとか、トンクスみたいに先生に化けて校舎を夜に歩き回るくらいのことはしないとだめだろうな」

「トンクスみたいなのが四人もいたとは思いたくないですから、目くらまし呪文か透明マントですかね?」

「ちょっとなによそれ、それよりこの地図には一杯ホグワーツの外につながる道があるじゃない?」

 

 トンクスは地図の端の方にある、地図の道が途中で途切れている道を示した。確かにいくつかそういう道が示されており、いつも三年生以上がホグズミード村に行く道とは明らかに別の道である。

 

「これを使えば学校の外に出れるんですかね?」

「フィルチや先生方がどれくらい知ってるかだろうな、繋がってたとしてもバレたら終わりだしな」

「エスト、昨日の夜から今日の授業中までずっと地図を見てたんだけど、この四つの道はフィルチとミセス・ノリスが時々見に来てたの」

 

 エストが四つの道を示した。確かに今日の妖精の呪文の授業の間、エストは上の空で地図をずっと眺めていた。そのせいで、なぜかオスカーがエストの代わりにフリットウィック先生の前で魔法を実演することになってしまっていたのだった。オスカーはうまくできたと言うことでフリットウィック先生からヌルヌルヌガーを貰った。

 

「じゃあこの四つの道は使えないんだ。でも、他の道を使えばいつでもホグズミードに遊びに行けるってことだよね?」

「いいわね、それ」

「そんな頻繫にいっても仕方ないと思いますけどね、毎日、ホッグズヘッドでファイアウィスキーでも飲むんですか?」

 

 クラーナがあまり興味なさそうに言うと、トンクスが誰かをからかうときのいつもの顔をした。

 

「クラーナはオスカーとマダム・パディフットのお店に行くんでしょ?」

「なんですか? そのパディなんとかとかいう店は?」

「ええ!? クラーナ知らないの?」

 

 その後、トンクスの言っていた店が上級生のカップルのたまり場になっている店だと分かって、クラーナがトンクスに殴りかかったが、みんなが騒いでいる間もエストは地図のある部分をじっと見ていた。

 

「そこがどうかしたのか?」

「うーんとね、この道だけおかしいの、だってここには城が無いし、建物もないの」

 

 確かに忍びの地図が示している、残り三本の学外につながる道の一つは校庭の一か所を示していて、そこには何か建造物があるということも書かれていない。

 

「そこって暴れ柳がある場所じゃない?」

「暴れ柳ってあの、近づいたら殴りかかってくる木のことか?」

 

 オスカーは黒々として、近づくものすべてを攻撃するその木を一年の時に見たことがあった。たしか生徒が面白がって投げていた石を綺麗に打ち返しており、投げた生徒達はめでたく医務室行きになっていた記憶がある。

 

「そうだよ、とっても珍しい木なんだって、スプラウト先生が言ってたよ」

「じゃあその暴れ柳を燃やしでもしないとその道に行くことすらできないのか」

「スプラウト先生が珍しい植物っていうような植物を燃やしたら、下手したら退学じゃないですか?」

「じゃあこの道を使えないってことか……」

 

 つまり、実質的に使える道は二本で、その道もフィルチや先生方が知っている可能性も捨てきれないのだと、オスカーは思った。

 

「何か、何か方法があると思うの」

「方法?」

「そう、だってクリスマスの時の話覚えてる? トンクスのママが暴れ柳は私たちの時代に植えられたって言ってたの」

「叫びの屋敷のことを話してた時だっけ?」

 

 確かにオスカーもドロホフ邸でトンクス先生がそんなことをいっていたのを覚えていた。

 

「言ってましたね、じゃあその時に危険なんで、その道を使わないように暴れ柳を植えたんですかね?」

「だったら道を壊したり、埋めちゃえばいいと思うな、エスト達は魔法使いだし、ダンブルドア校長ができないとは思えないの」

 

 エストの言う通り、この道を使えないようにするだけなら道を壊してしまえばいいことだ。つまり、暴れ柳を植えたということは、何らかの方法で道を使うことができ、そのための暴れ柳だということなのか? オスカーはそんなにして使わせたくない道の先に何があるのか好奇心が湧いた。

 

「じゃあ、暴れ柳を傷つけずに止める方法があるってこと?」

「そうですね、そういう方法があるんならこの道を使うことができますし、この道の先に行ければ、なんで植えたのか理由も分かりますね」

「こういう時は図書館なの」

 

 

 五人は図書館に行って、暴れ柳について調べることにした。マダム・ピンスは大人数で押しかけたオスカー達を白い目で見ていた。オスカーはちょっとでも騒いだら追い出されるだろうなと思った。

 北大西洋の危険な植物、人食い植物、新世界の魔法植物、船を食べる植物、色んな植物図鑑を見ると、世の中にはおぞましい植物がいくらでもあることが分かった。人間を消化したり、操り人形にしたりと、オスカーはルーンスプールは大して魔法界では危険な生き物じゃないんじゃないかと思い始めていた。

 

「あったよ、暴れ柳だ」

 

 チャーリーが一つの本を掲げて、オスカー達を呼んだ。そこには確かに暴れ柳の生息地や生態が書かれていた。オスカーは絶対に将来何があっても、この暴れ柳の生息地に入ることはしないようにしようと思った。

 

「体の一部分に何かが触れると硬直する。ですか?」

「つまり、暴れ柳のどこかを触れば止めることができるってことなのか」

「一部分って、なんか全然具体的じゃないわね」

「まあ、僕たち魔法使いだしどうにかなるんじゃないかな?」

「とにかくどこかに何かを当てればいいんだよね? 簡単なの」

 

 

 

 五人は図書館を後にして、足早に暴れ柳に向かった。五人とも暴れ柳の向こうには何があるのか気になっていた。五人がついても暴れ柳はいつも通りにただ佇んでいた。

 

「サーペンラームス‼‼ 枝よ出でよ‼‼」

 

 エストが杖を振って、たくさんの枝を呼び出した。二百本くらいはあるだろうか?

 

「オバグノ‼‼ 襲え‼‼」

 

 その枝が、暴れ柳の上から順番に突き刺さっていった。暴れ柳は荒れ狂ってその枝を打ち落とそうとしたが、数が多いのでどんどん幹に突き刺さっていく。

 

「サーペンラームス ‼‼ 枝よ出でよ‼‼」

「オバグノ‼‼ 襲え‼‼」

 

 さらに枝を呼び出して、暴れ柳に突き刺していき、もう暴れ柳はハリネズミのような有様になりつつあった。

 

「ちょっと、暴れ柳が可哀想になってきたわ」

「ほんとですね、エストと決闘するときはハリネズミにされるのを覚悟しないとダメみたいですね」

「あんなに刺されたたら、マダム・ポンフリーでも直せないんじゃないかな?」

「もう…… 後で消すから平気なの」

 

 そうこう言っている間に、暴れ柳の根っこに近い部分まで、枝が突き刺さり始め、オスカー達の身長でも手で触れるようなこぶの部分に枝が突き刺さると暴れ柳は抵抗をやめた。

 

「止まった。あのこぶがその部分なのかな?」

「死んだふりだと怖いですね、あのぶっとい枝にやられたら一撃ですよ」

「もっかい動き出すまでどれくらいあるのか見とくか」

 

 そして、十分ほどたつと暴れ柳はまた暴れ狂い始めた。枝が刺さっているのが嫌なのだろうか? エストがピンポイントでこぶに枝を当てるとまた動かなくなった。

 五人は大理石のように葉っぱ一つ揺らさない暴れ柳に近づいた。暴れ柳の根本には地下に続いているであろう穴があった。

 

「エバネスコ 消えよ」

 

 エストが唱えると突き刺った枝は消えていった。少しだけ枝が刺さった後が縞模様のように残っていた。オスカー達は滑り落ちるように、傾斜のあるトンネルの中に入っていった。

 

「「ルーモス」」

 

 五人はそれぞれ杖灯りと灯して、トンネルを進んでいった。トンネルは下向きに傾斜しているようにオスカーには思えた。

 

「どこにつながっているんですかね?」

 

 隣にいたクラーナが目を輝かせながら訪ねた。冒険するのが楽しいらしい。

 

「ホッグズ・ヘッドとかか? ウィーズリーおばさんが話をするのが嫌なくらい、変な奴らが集まってるんだろ?」

「確かにそうですけど、違法なもののやりとりをダンブルドアが許すとは思えませんね」

「じゃあなにか隠してるのかしら? ほら、髪飾りとか、グリフィンドールの剣とか」

 

 オスカーも何かを隠しているのは確かだと思ったが、それが果たしてモノかどうかは怪しいと思った。

 

「うーん、でもそれならなんで行き来できるようにするのかな? 封印しちゃって、ドラゴンにでも守らせればいいんじゃないかな、グリンゴッツみたいに」

「というか、もし宝があるのなら、ダンブルドア先生の部屋だと思うの、だってダンブルドア先生は一番凄い魔法使いなんだし」

 

 確かに、こんな二年生の生徒達で入れるような場所に貴重な宝を隠すとはオスカーには思えなかった。世界一強いかもしれないアルバス・ダンブルドアの手元に置くのが一番安全だろう。

 さらに進むと今度はトンネルは大きく蛇行して、上向きに傾斜し始めた。

 

「そう言えば、もうそろそろ地図の外側にでてるのか?」

「あっそうなの、えーと、われ、よからぬことをたくらむものなり!」

 

 五人がエストの手元にある地図を見ると、すでに五人の名前はホグワーツのどこにもなかった。つまり、ここはホグワーツの外側だということなのだろう。

 

「悪戯仕掛人たちもここまでしか案内してくれないってことですか」

「いよいよ秘密が見られるわけね」

 

 五人はさらに捻じ曲がる道を期待を込めた足取りで進んだ。一瞬前の道が見えなくなるほどゆがんだ道だったが、五人は埃っぽい部屋にたどりついた。

 

「部屋? なの?」

「部屋ですね、やけに埃っぽいですけど」

 

 窓という窓全てに板が打ち付けられており、外は全く見えないし、外からの光も全く入ってこない部屋だった。何部屋かあるようだったが、家具という家具は全て打ち壊され、扉は壊れてぶら下がっていた。壁紙などはほとんどはがれきっている。その破壊痕はなにか、鋭い爪や牙で行ったような跡がついている気がした。

 

「ここってもしかして、叫びの屋敷の中なんじゃない?」

 

 トンクスは打ち付けられて開かないドアを見てそう言った。確かに、トンクスの父親のテッドは叫びの屋敷の周りをまわって、ドアが全て打ち付けられて入れないのにゾッとしたと言っていた。

 

「ホグズミードに繋がってるなら、叫びの屋敷でもおかしくないな、というかこの家のなかからしてそうなんだろうな」

「じゃあ、イギリス一荒々しいゴーストが部屋の中をこんなにめちゃめちゃにしたの?」

 

 しかし、オスカーにはその荒々しいゴーストの仕業のようには思えなかった。オスカーの知っているゴーストは、ポルターガイストのピーブズを除いて物理的にはほとんど何もできないはずなのだ。それに、爪や牙があるゴーストなんてオスカーは聞いたことがなかった。

 

「あれ、二階がありますね、この家」

 

 クラーナが階段を見つけていた。オスカーはその階段に厚い埃が溜まっていることが見るだけで分かったが、クラーナや自分達が進んでいない場所にも埃が溜まっていない場所があるようにオスカーには見えた。

 

「クラーナ、だれか俺たち以外にも埃の上を歩いてたみたいだな、それも最近」

「うわ、ほんとですね、誰か来てますね」

 

 明らかに二人分の足跡のように思えた。一つの足跡は大人の男のように思える大きさで、もう一つは女性か子供だろうか? ずいぶんと大きさが違うとオスカーは思った。

 

「なんか二階のほうが、ゴーストの仕業っぽいですね」

「そうなの、なんか一階はガオーって吠えそうなやつが暴れたみたいな感じだったけど、二階は……」

 

 そう、二階は破壊の毛色が違うようにオスカーには思えた。一階の破壊跡が物理的に引っかいたり、噛みついたり、蹴り飛ばしたりしたように見えるのに対して、いや二階にもそういった跡は見えるのだが、その後からなにかもっと別な力で、削られたり、吹き飛ばされたり、消されたりしたように思えたのだ。

 

「どんな怪物が暴れたらこんなことになるんだろう? 僕、結構色んな動物を知ってるつもりだけど、こんな跡を残せる動物なんて、想像もつかないな」

「少なくとも、幻の動物とその生息地には載ってそうにないわね」

 

 魔法生物飼学のケトルバーン先生やハグリッドは怪物の扱いが得意だとはオスカーは聞いたこともあるし、実際に世話をしているのも去年見たが、オスカーはこんな跡を残せる動物を制御できるとはちょっと思えなかった。

 

「あれ? これバタービールの瓶じゃないですか? 前に談話室の宴会で見ましたよ」

「ほんとだね、誰かここで飲んだのかな?」

 

 そこには上部分だけが削り取られたバタービールの瓶が転がっていた。この部分だけ消失させた様に見える。オスカーは少なくともこの部屋をこのようにした何かと会うのは得策ではないと頭のどこかが告げている気がした。

 


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