ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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そろそろシリアス・ブラック


決闘クラブ

 暴れ柳の下を通って叫びの屋敷の中に入ってから二週間ほどたった。忍びの地図に書かれていた地図の残り二つの抜け道、大鏡の後ろの道と魔女のこぶから入れる道はどうもフィルチも知っていない道のようで、オスカー達は今度みんなで行く計画を立てていた。

 エストとオスカーが玄関ホールを歩いていると、興奮した顔で、クラーナとチャーリーが張り紙の前で二人を手招きしていた。

 

「決闘クラブが始まるらしいよ」

「決闘クラブ? 去年必要の部屋でやったようなのと同じってことなの?」

「ええ、誰か先生が主催してやってくれるみたいですね、これでやっと合法的にトンクスをボコボコにして、遺灰をマッチ箱に入れてトンクス先生に渡すことができます」

「アズカバン行きだろそれ」

「トンクスの日頃の行いを考えれば、ウィゼンガモット大法廷も私を無罪にするでしょう」

 

 クラーナは日頃のトンクスへのうっぷんを晴らしたくて仕方ないようだ。掲示されている羊皮紙には、今晩から決闘クラブを行うことが、ダンブルドアの許可サイン付きで示されている。

 

「オスカーは行くの?」

「まあ面白そうだし、クラーナが暴走して、決闘クラブに来てる人たち全員、セストラルが見えるようになっても困るだろ」

「僕はセストラル見てみたいけどね」

「なんですか、それだと私がヌンドゥかドラゴンみたいじゃないですか」

「じゃあエストも行こうかな」

 

 決闘クラブにはみな乗り気のようだ。去年の必要の部屋の練習やエストの実力を考えれば、決闘クラブでもオスカー達は上位の実力を示せるだろうとオスカーは思った。

 

「そう言えば、叫びの屋敷ですけど、最近はゴーストの噂がなくなったらしいですよ」

「なくなった?」

「ええ、夏休みが終わってから噂があったのに、クリスマスの後くらいから、ぴったり止んだらしいですけど」

「僕たちが行く前だし、関係はないのかな?」

「まあ、あの部屋の惨状を考えると、そのゴーストがいないほうがいいだろうな」

 

 オスカー達は、叫びの屋敷と髪飾りの探索が終わってから、特に目新しいやることもなかったので、乗り気で決闘クラブが開催される大広間に集まった。

 大広間は夕食時と打って変わって、壁に沿って金色のビロードに覆われたステージが出現していた。天井は黒色の布で覆われ、いつもの空は見えない。蝋燭で照らされたステージがまさに決闘を行う場所として、煌々と光っていた。

 オスカーは必要の部屋のステージほどではないが、十分に決闘の場所としてふさわしいステージだと思った。

 四寮の生徒ほとんどが来ているようで、大広間は人で一杯だった。

 

「誰がおしえるのかな?」

 

 トンクスが楽しみそうに言った。

 

「フリットウィック先生かもしれないの、スタージスがあの先生は実は決闘チャンピオンだったって言ってたの」

「ええっ!? あのサイズで?」

「トンクス、決闘の身長は関係ないですよ、むしろ小さい方が呪文が当たりにくくて有利です」

「そりゃあクラーナは小さいけど、フリットウィック先生のイメージと合わないというか……」

 

 確かにトンクスの言う通り、クラーナに呪文を当てるより、ハグリッドに呪文を当てる方がオスカーには簡単に思えた。

 

「なんですか、小さいって! 今日という今日はトンクスをボコボコにしてやりますよ」

「じゃあ、私が勝ったら、去年のクリスマスにオスカーと何があったか教えてね」

「教えないですよ、私に得るものが全くないですから」

「あれ? クラーナびびってるの?」

「こいつ!! いいでしょう、なんでも賭けてやりますよ‼‼ 私が勝ったら、そのクソ変化を一か月禁止です」

 

 二人は売り言葉に買い言葉でオスカーには一言も言わずに、なにやらクリスマスのことを賭けようとしていた。

 

「二人は楽しそうだね、けどほんとに誰がおしえるのかな?」

「まあフリットウィック先生やマクゴナガル先生は結構な年だし、スネイプ先生とかなんじゃないのか?」

 

 五人が人込みと同じように騒ぎ合っているとステージの上に二人の人影が現れた。柔らかそうな栗色の髪と見慣れている寮監のシャンプーをつけているのかも怪しいドロドロの髪の毛が見えた。トンクス先生とスネイプ先生だ。

「ソノーラス‼‼ 響け‼‼」

 

 トンクス先生が自分ののどに杖を当てて呪文を唱えた。

 

「あれ、ママじゃん」

「よかったですね、ママに末期の姿を見て貰えますよ」

「私が勝ったら、絶対教えてよクラーナ」

「私に二言はありません」

 

 さっきの呪文は声を拡大する呪文だったのか、トンクス先生の声は大広間中に響き渡った。

 

「みんな静かにしてね、声は聞こえるでしょう? 私のいたころは決闘クラブを毎週やってたんだけど、今はあんまりやってないみたいだから校長先生に頼んだのは正解だったみたいね、ああ、このクラブではセブルスと私が一応監督するから、あと先生が二人とも、スリザリンだからってひいきとかはしないから大丈夫よ」

 

 トンクス先生がそう言うと広間に笑いの波が起こった。スネイプ先生は普通にスリザリンをひいきするが、トンクス先生の前では不可能だろう。闇の魔術に対する防衛術の授業を受けた生徒達は言われなくてもそれを十分に理解していた。後ろのスネイプ先生は何か諦めたような表情をしている。トンクス先生に無理やり引っ張り出されたのだろうとオスカーは思った。

 

「じゃあ今から、私とセブルスで見本を見せるわね、一年生は決闘を見たこともないって子もいるだろうからね」

 

 そう言うと、トンクス先生が杖を振って青い泡でステージを包んだ後、トンクス先生とスネイプ先生はステージの両端に立ってお互いにお辞儀した。二人は杖を相手に向けて正眼に構えた。

 

「この後、三つ数えたら決闘の開始よ」

 

 大広間に集まった何百という視線は二人に集まった。

 

「一…… 二…… 三……」

 

 スネイプ先生が先に叫んだ。

 

「エクスペリアームス‼‼ 武器よ去れ‼‼」

 

 紅の閃光がトンクス先生に突き刺さるかと思ったが、トンクス先生は半身ずらしただけでそれを躱して叫ぶ。

 

「インペディメンタ‼‼ 妨害せよ‼‼」

 

 今度はトンクス先生の杖から閃光が迸り、スネイプ先生を襲う。

 

「プロテゴ‼‼ 護れ‼‼」

 

 しかし、スネイプ先生の盾の呪文ではじかれ、青色の保護呪文の泡に当たって消えた。

 生徒達から歓声が上がった。二人は杖を下ろして、ステージからこちら側を見た。

 

「まあこんな感じね、先生同士で殺しあってもしかたないでしょう? セブルスありがとう」

 

 トンクス先生がそう言うとスネイプ先生はステージの上から降りた。

 

「じゃあ今度は生徒でモデルになってもらおうかしら? 低学年がいいわね、みんなが分かる呪文でやってもらった方が、決闘がどんな形で行われるか分かりやすいでしょう?」

 

 しかし、誰も低学年の生徒は手を上げなかった。そのため、トンクス先生はステージの上から見回した。すると先生はこっちの方に目をつけた気がした。

 

「ミス・プルウェット、お願いできるかしら?」

 

 トンクス先生がエストを指名した。周りにいる生徒がエストの方を見て、ステージまでの道を開けた。エストは困ったような顔でオスカーの方を見た後、ステージへと進んでいった。

 

「ありがとう、ミス・プルウェット、えーとじゃあ、二年生か一年生でミス・プルウェットと決闘したい子はいるかしら? 美人さんよ?」

 

 しかし、手は上がりそうになかった。オスカーは最もだと思った。美人かどうかは置いておいても、魔法の腕でエストに挑もうなんて生徒が二年生にはいると思えなかったからだ。またトンクス先生が困った顔をして、オスカー達の方を見た。

 

「じゃあ、ミス・ムー……?」

 

 恐らく、トンクス先生がクラーナを呼び出そうとしていたところで、誰かがステージに上がった。短い金髪が蝋燭の火を浴びて光った、オスカーはその人物を知っていた。

 

「あら、ミス・マッキノンが引き受けてくれるみたいね、ありがたいわ」

 

 ステージに上がったのはレア・マッキノンだった。オスカーは違和感を覚えた。少なくとも前に会った際にレアは自信を失い、おどおどしていたし、あの状態の人物が誰も出ようとしない決闘のステージに出るとは思えなかったからだ。

 オスカーの眼にはレアが自信満々に見えた。全校生徒の視線が集まっているにもかかわらず動じていない、その顔には何か笑みすら見えるようだ。

 ステージの上にスネイプ先生が上がり、なにやらトンクス先生と話している。スネイプ先生は時々、レアの方を向いて、何か困惑した顔をしながら話している。

 

「マッキノンのハンバーグができあがりそうですね、私がエストと二年生最強を賭けて戦ってもよかったんですけど」

 

 いつの間にかトンクスと話していたはずのクラーナが横に来ていた。

 

「流石にそんな本気でやらないだろ、マッキノンは一年生だしな」

「まあそうでしょうけど、マッキノンとは意外ですよね」

「俺もそう思ってた」

 

 トンクス先生とスネイプ先生の話は終わったようだ。スネイプ先生はどこか心配そうにレアを見ているが、レアの方はスネイプ先生に見向きもせず、エストの方を見つめていた。

 

「じゃあ、ミス・プルウェットとミス・マッキノンにやってもらうわ、さっき見たと思うけど、呪文がどこかに飛んでも大丈夫よ、保護呪文があるからみんなのとこには飛んでいかないわ、危なくなったら、私かセブルスが止めに入るからね、二人ともお辞儀して」

 

 トンクス先生の言葉を受けて、二人はさっきの先生二人と同じようにステージの両端に立ってお辞儀をした。

 

「行くわよ、一…… 二…… 三……‼」

 

 三とトンクス先生が言い終わった瞬間、レアの杖から赤色の閃光がエストに放たれた。速攻の無言呪文だったが、エストは無言で盾の呪文を展開して弾いた。

 

「無言呪文ですか!? マッキノンの成績が悪いとかいうのはなんの冗談だったんですかね?」

 

 オスカーも驚愕していた。少なくともオスカー達は先生をつけてやっと無言呪文を覚えることができたし、無言呪文を使えるようになった際にはポドモア先生は本当に驚いていたからだ。一年生で無言呪文を使えるというのは驚愕すべきことに違いなかった。

 今度はエストが無言で呪文を幾本も唱えた。青や赤色の閃光がレアを襲うがそのすべてを杖も振らずに避けて見せた。

 ステージ後ろのトンクス先生は感心している顔をしていたが、スネイプ先生の方はレアの方をみて、驚愕したような顔をしていた。オスカーは何かがおかしいと思った。

 

「短期間で成績が悪いやつが無言呪文を使えるようになるのか?」

 

 ステージ上では二人が無言で呪文を撃ちあっていた。色とりどりの光線が二人の間を行き交っていたがオスカーにはエストの方が押されているように見えた。エストは盾の呪文で弾いているがレアの方は体を動かすだけで避けていた。

 エストに幾回か呪文は当たりかけていて、オスカーは自分の杖を握っている手が湿ってきたのを感じた。

 危ないところを何回かエストが切り抜けたところで、オスカーは杖腕が誰かの手で押さえられているのを感じた。クラーナがいつのまにか杖を上げようとしていたオスカーの腕をつかんでいた。こっちを見て首を横に振っている。

 オスカーはどうやらエストが押されている決闘を見て、杖を無意識に使おうとしていたらしい。

 

「ああ、ごめん……」

 

 正面からだと分が悪いと感じたのか、エストはついに岩や盾を召喚し始めた。呪文の射線上に岩が置かれ、視線を遮った。レアが呪文で岩を粉々に砕こうとしたが、先に岩陰から呪文が飛んできて、当たりかけたがそれをレアは恐らく盾の呪文で防いだ。

 今度は攻勢が逆転した。さっきまで盾の呪文も使わずに呪文を避けていたレアはエストが見えなくなった途端に呪文を避けれなくなった。

 エストは無言で召喚物を展開し、さらに岩陰から呪文を雨あられと浴びせ始めた。ついにレアはステージ上に倒れ、そこにエストの赤い失神光線が命中するかと思った。

 スネイプ先生が出てきて、エストの失神光線を無言で弾いた。トンクス先生もステージ上にでていた。なにやら二人を褒めているようだ。

 

「今の…… エストが見えているときは呪文を避けていた……? まさか一年生が? いくらなんでもおかしい……」

 

 オスカーの手を捕まえていたクラーナは隣でなにかを呟いていた。良く聞こえなかったが何かがおかしいと言っていた。オスカーも先ほどの決闘には何か違和感があった。

 

「はい、素晴らしい決闘でした。一年生と二年生が無言呪文を使うとはね、先生ちょっと授業のレベルを考え直さないといけないかもしれないわ、ミス・プルウェット、ミス・マッキノンに拍手を‼」

 

 トンクス先生がそう言うと大広間は拍手に包まれた。ステージ上にはまだ二人がいたが、レアは何か、魔法の道具を見つけた時のエストのような、魔法生物を見つけた時のチャーリーのようなそんな表情でエストの方を見つめていた。

 

「ええ‼‼ ちょっとなんでオスカーとクラーナは手を繋いでるの? エストがステージに上がった間にやるとは、凄いわね」

「二人とも仲いいね」

 

 オスカーとクラーナがさっと手を離した。

 

「これは、オスカーがエストが心配で杖を上げようとしてたんです。だから手を掴んでただけです」

「その通りだ」

 

 トンクスはニヤニヤが止まらないようだった。後ろの方からエストがこっちに戻ってくるのが見えた。見た感じはケガがなさそうなのでオスカーは一息ついた。

 

「エスト、お疲れ様。凄かったよ」

「チャーリー、ありがとうなの、レアは凄かったの全然呪文が当たらなかったの」

「エスト、オスカーとクラーナが手を繋いで貴方を応援してたわよ」

 

 ニヤニヤしながらトンクスはそう言った。これは本当に面倒くさいことになったとオスカーは思った。決闘でトンクスをマッチ箱に入れるくらい小さくするのも名案かもしれないと思ったほどだった。

 

「ええっ!? やっぱり二人はクリスマスみたいな感じなの‼?」

「だから、オスカーがエストを心配して杖を上げようとしてたのを止めただけって言ってるじゃないですか‼‼ やっぱりトンクスはここで終わらせます‼‼」

「ちょっと事実を言っただけじゃないの、何よ終わらすって」

「その減らず口を叩けないように、口を永久粘着呪文でくっつけてやります‼‼」

 

 その後、トンクス先生は二人ペアになって練習するように言い、クラーナがトンクスにこれでもかというくらいに呪文をかけ始めて、二人は大広間全体を使って鬼ごっこを始めてしまい、オスカー達はそれを止めないといけなかった。

 そのせいで、寮に帰るころには五人共、疲労困憊の状態であったし、その中でもエストはなおさら疲れていたので、オスカーは決闘を見た時の違和感をエストに尋ねることができなかった。

 

 

 

 

 決闘クラブの翌日、授業がなく、グリフィンドールとハッフルパフの試合が行われる日、オスカーとエストが朝食を大広間で食べているとふくろうが二人の前に降り立った。二人にふくろうが来るのは、大抵ウィーズリー家のエロールかドロホフ邸で飼っているローガンというふくろうくらいだったので、二人は見慣れないふくろうが来たと思った。

 ふくろうが渡した便せんにはエストレヤ・プルウェット様宛だった。エストがその便せんを開くと見慣れない字でこう書かれていた。

 

 

 エストレヤ・プルウェット様。もし、失われた髪飾りについて知りたいのならば早急に叫びの屋敷まで来られたし。もしも先生方にこの内容を伝えたのならば、髪飾りは永遠に失われたままだと理解されたい。

 

 

 差出人には創設者の後継者と書かれている。オスカーはエストと顔を見合わせた。オスカーの頭の中ではエストが呪文に当たりそうになっていた時よりも、遥かに大きな嫌な予感が発せられていた。

 

 

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