ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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うーん幻の動物を狩りにいきたい


守護霊の呪文

 

 オスカーとエストが空き教室につくと、すでにクラーナ、チャーリー、レアの三人が部屋にいて、あとはトンクスだけのようだった。

 

「占い学はクソですね」

 

 クラーナが出し抜けにそういった。どうやらクラーナもトレローニー先生に絡まれたようだ。

 

「クラーナにはグリムが取り付いているらしいよ」

「グリムってビリウスおじさんが見たって言ってた犬のこと?」

「そうだよ、まあほんとにいるかは怪しいらしいけどね」

 

 エストとチャーリーがグリムについて話している。グリム…… オスカーもその名前は知っている。確か墓場に現れる犬のことで、見たら死んでしまうとかそんな感じだったはずだ。

 

「よかったな、俺のセストラルより強そうだ」

「なんで取り憑かれている悪霊みたいなので勝負しないといけないんですか?」

「悪霊を戦わせれば片方は生き残るんじゃないか?」

「それだと私が死んじゃうじゃないですか」

 

 確かに、実際に見たことのあるセストラルよりも、グリムの方が強そうではあるとオスカーも思った。

 

「エスト、さっき言ってた地図がどうのこうのをした方がいいんじゃないか?」

「あっ! そうなの、まだトンクスが来てないけど先に配っておくね」

 

 エストはカバンから数枚の羊皮紙を取り出した。何も書かれていない真っ白な羊皮紙だ。それをみんなに配って歩いた。

 

「これは…… なんですか? 羊皮紙?」

 

 レアが頭をひねりながら羊皮紙をひっくり返したり、日の光に透けさしたりしている。

 

「この状態だとただの羊皮紙なの、クラーナ、なんか呪文で秘密を暴けないかためしてくれる?」

「いいんですか? スペシアリス・レベリオ! 化けの皮剥がれよ! アパレシウム! 現れよ!」

 

 クラーナが羊皮紙に呪文を唱えたが、羊皮紙はただの羊皮紙のままだった。

 

「うん、この状態なら何も反応しないはずなの」

「それで、この羊皮紙はなんなのエスト? 忍び地図のコピー?」

 

 チャーリーが手で羊皮紙を弄びながらエストに尋ねた。

 

「うーんとね、教科書を出してくれる?」

 

 みんながそれぞれ違う教科書を取り出して、机の上に置く。変身術入門、魔法史、未来の霧を晴らす、幻の動物とその生息地…… 全部違う教科書だった。

 

「で、好きなページを選んでこの羊皮紙を差し込むの」

 エストが魔法史の教科書に羊皮紙を差し込むと、羊皮紙は最初から教科書の一部だったようにページをコピーして、教科書の一ページの振りをしている。横からでも悪人ラブロックだかボドロックだかの血生臭い歴史を途切れることなく読むことができている。

 

「教科書の一ページのふりをするってことですか?」

「まだあるの、オスカー、忍びの地図を開いてくれる?」

 

 オスカーはポケットから忍び地図を取り出した。そう言えば、オスカーはレアの前で忍びの地図を使ったことはあるが、ちゃんと説明したことは無い気がした。

 

「我、よからぬことをたくらむものなり」

 

 羊皮紙を縦横無尽にインクが駆け巡り、ホグワーツ全体の地図が表示される。すると、忍びの地図の動きに合わせてオスカー達の教科書にも地図が表示された。

 

「すごい…… これって教科書が地図になっちゃったんですか?」

 

 レアが自分の変身術入門を閉じたり、地図上で自分の名前を見つけたりしながら感心した風に言った。

 

「うーん、それは違うの、あくまで忍びの地図に合わせて教科書を変幻自在呪文で変えてるだけなの」

「忍びの地図本体が動いてないと写しは動かないってことですか?」

「そうなの、ホムンクルスの術をかけた羊皮紙を短期間に六枚も用意できそうになかったから、取りあえずこうしてみたの」

 

 オスカーも自分の未来の霧を晴らすに表示されている地図を手に取って見てみたが、忍びの地図と寸分違わぬもののようだった。

 

「これで、遅くなってもフィルチに会わずに寮に帰れるわけだ」

「一番必要なトンクスがいませんけどね」

「忍びの地図にもちょっとだけ仕掛けを加えたの」

 

 エストはそう言うと、羽ペンをローブのポケットから取り出して、忍びの地図に何かを書き足した。するとオスカーの持っていた教科書が少し熱くなり、地図の上にエストが書き足したであろう日時が表示されている。

 

「わっ…… ちょっと熱くなるんですね、これ」

「ほんとだね、何か書き足したらわかるわけだね」

 

 教科書を同じように持っていた二人にも熱は確認できたようだった。

 

「そうなの、で、消したいときは杖を向ければそれで終わりなの」

 

 エストが杖を振ると忍びの地図に書き足された内容はスッと消え、それに合わせてみんなの教科書の表示も消えた。

 

「でね、忍びの地図をオスカーかクラーナが持っていればいいと思うの、二人はクィディッチチームがないから、一番来やすいと思うし」

「普通にオスカーが持っていればいいんじゃないですか? 一番使いなれてそうですし、まあフィルチにマークされてるのはいただけませんけど」

「マークされているのは俺のせいじゃないと思うんだけどな」

 

 オスカーは明らかにフィルチにマークされていた。どうも書類を燃やして証拠を隠滅したことがばれているらしい。

 

「いかがわしい計画もそこまでよ、神妙にするのね」

 

 トンクスが教室のドアを音を立てて開けながら言った。しかし、あんまり勢いよく開けたのでドアは跳ね返って閉まってしまった。オスカーは年々トンクスのドジがひどくなっている気がした。

 

「なんなんですか騒がしいですね」

 

 クラーナがドアを杖で勢いよく開けると、風船ガムのようなピンク色の髪をしたトンクスと新入生の挨拶で見た、闇の魔術に対する防衛術の先生、エルファイアス・ドージ先生がニコニコしながら立っていた。オスカーは反射的に忍びの地図をローブに閉まった。

 

「ふっふっふ…… 守護霊の呪文はすっごっく難しいって、エストもクラーナも言ってたでしょ? だから、おじいちゃん先生を連れてきたわけよ」

 

 オスカーは最近、トンクスの髪の色が彼女の感情を大まかに表していることに気付いた。風船ガムのようなショッキングピンクはオスカーの推理ではそうとうなご機嫌状態だった。

 どうもトンクスは一年の時のポドモア先生の先例にならって、ドージ先生を連れてきたらしい。オスカーはエストの言っていた通りに、ドージ先生がほんとにドジなら、ドジが二乗でとんでもないことになるなと思った。

 

「やあやあ、私はエルファイアス・ドージだ。トンクス君以外の授業はまだだろうから、自己紹介をさせて貰おう」

 

 ドージ先生が高いぜえぜえと聞こえる声でそう言った。

 

「君たちのことはトンクス君やアルバスから聞いている。ウィーズリー君、ムーディ君、マッキノン君、プルウェット君、ドロホフ君だね? トンクス君からは守護霊の呪文を教えて欲しいということと、もう一つお願いを受けている」

 

 ドージ先生は先生から見て左側から、オスカー達を見回した。そして、どうもトンクスがまだ何か企んでいるようだとオスカーにも分かった。ショッキングピンクの髪にニヤニヤした顔をしている時は、注意した方がいいとオスカーには分かっていた。

 

「守護霊の呪文を使うには幸せな記憶がいるんでしょ? それに今日の授業でケトルバーン先生に会ってピンときたのよ」

 

 トンクスがみんなの前にでてそう言った。髪の色がピンクからどこか赤くなりつつあった。

 

「ケトルバーン先生が守護霊の呪文と何か関係があるんですか? あの先生は魔法生物飼学の先生でしょう?」

 

 クラーナはピンとこないようだったが、オスカー達、WADA(魔法演劇アカデミー)に行ったメンバーはトンクスが何がいいたいのかだいたい分かっていた。

 トンクスはクラーナに向けて分かっていないとばかりに指を振った。

 

「クラーナが見損ねたWADAの演目はなんだったと思う?」

「はあ? 劇の演目ですか? バビティ兎ちゃんとか汚れたヤギのブツブツ君ですか?」

「センスがないわねクラーナ、私たちが見たのは豊かな幸運の泉よ」

 

 一瞬、空き教室には沈黙が流れた。

 

「はっきり言って全く話の流れが読めないですよ、トンクス」

 

 クラーナは分からないとばかりに首を振った。オスカーにはトンクスがなにをいいたくて、なにがしたいのかだいたい分かっていた。

 

「だから簡単な話よ、豊かな幸運の泉で最後の試練を破るのは幸せな記憶でしょ? 守護霊の呪文に必要なのも幸せの記憶じゃないの、つまりそういうことよ」

「劇に守護霊の呪文を使うってことですか? あんまり努力するべき場所じゃないと思いますけど……」

「違うわよ、守護霊の呪文を覚えて、劇も私達でやって、最後にカッコよく守護霊の呪文を決めるわけよ」

 

 クラーナは完全にこいつはバカだという冷めた目でトンクスを見ていた。トンクスの髪の毛はあんまりにもクラーナの反応が悪いせいか、ショッキングピンクから紫色に染まりつつあった。

 

「あの…… トンクス先輩、ホグワーツでは劇は禁止じゃないんですか? ボク、去年読んだ、改訂ホグワーツの歴史でそう書いてあったのを覚えてるんですけど……」

「さすがレイブンクロー、本を読み漁っている寮なだけなことはあるわね、レア、でも禁止したのはディペット校長で、今の校長はダンブルドア先生よ」

 

 なぜかレイブンクローを小馬鹿にしながら、トンクスが言った。オスカーは未だにハッフルパフだけ、特別功労賞をもらい損ねたことをトンクスが根に持っているのではないかと思った。トンクスの髪色はショッキングピンクに戻り始めていた。

 

「そして、このおじいちゃん先生こと、ドージ先生はダンブルドア先生の親友でもあり、ウィゼンガモットの一員でもあるすごい人よ、つまりこの先生に言ってもらえばケトルバーン先生が大講堂を全焼させたこともチャラってことよ」

 

 みんなの注目がドージ先生の方に集まった。なるほど、確かにダンブルドア先生の親友で偉い立場の人から説得してもらえれば、ホグワーツで劇をすることも可能なのかもしれない。そういう点でオスカーからみても、ドージ先生はおあつらえ向きの存在の様に思えた。

 

「トンクス、劇をするのはおもしろそうだと思うけど、エスト達だけでやるの? 豊かな幸運の泉はそんなに登場人物は多くないけど、演出とか大道具とかエスト達だけじゃできないと思うんだけど?」

「大丈夫よ、エスト、大道具とか動物とかはすでにケトルバーン先生とハグリッドにお願いしてきたし、演出も時々、WADAで教えていたチョーリー先生からふくろう便を貰えるようにおじいちゃん先生に掛け合ってもらってるわ」

 

 まだ今学期の授業は始まったばかりのはずなのだが、トンクスはどうやって短時間でこれほど手を回したのだろうか? オスカーは色々不思議だった。

 

「いいね、それ、大講堂でやらなければ肥らせ呪文を使った、アッシュワインダーだって使えそうだし…… 三年生じゃ触らして貰えない魔法生物もケトルバーン先生やハグリッドと一緒なら……」

 

 チャーリーは劇ではなく、魔法生物の方にしか興味がなさそうだった。

 

「実は昼に私からアルバスに話をしたんだが、彼もこの話には乗り気なようだから、君たちがやりたいのなら話を進めて貰いたい。私やアルバスの学生の頃は演劇は盛んだったからね、ホグワーツで学生の活動が活発になるのは喜ばしいことだ」

 

 なるほど、ダンブルドア先生が後ろにいるのだろう。オスカーはトンクスの思い付きがなぜこんなに具体性を持っているのかだいたい理解できた気がした。

 

「ということよ、クラーナ、どう? やる気になった?」

「なんで私に聞くんですか? そんなにやりたいならやればいいと思いますけど……」

 

 トンクスの髪色がまたショッキングピンクから赤になりつつあった。ちょっと興奮しているということだとオスカーは判定を下した。多分トンクスはクラーナになにか言いたいことをこれから言うのだろう。

 

「そりゃ重要なのは劇の配役でしょ? 私はクラーナがアマータ役をやればいいと思うのよ」

「は? はあああ!? な、なんで私がアマータなんですか? 別にここにいるメンバーでやりたいんなら、あなたでもエストでもレアでもいいでしょう?」

 

 クラーナはみんなに同意を求めるように周りを見回した。オスカーは豊かな幸運の泉をWADAで見終わった時から、トンクスはこのことをずっと考えていたのだろうなと思った。

 

「ぷっ…… 確かにこのメンバーでアマータをやるんならクラーナかもしれないね」

「確かにイメージはあってると思うの」

「ボ…… ボクもこのメンバーで選ぶのならクラーナ先輩かなあと思います……」

 

 チャーリーが半笑いで同意を示し、エストとレアも同意しているようだった。クラーナが助けを求める様にオスカーの方を見てきたが、オスカーは黙秘することにした。

 

「な…… なんなんですか!? もう…… 絶対おかしいでしょう!」

「はい、というわけでヘタレ騎士、ラックレス卿はオスカーがよろしくね」

「なんでだよ」

「そうですよ、死喰い人の息子がマグルの騎士とか絶対におかしいでしょう!」

 

 案の定、オスカーは自分にも火の粉が降りかかってきたと思った。クラーナの言う通り、オスカーは自分ほどマグルの騎士に似つかわしい存在はないだろうと思った。

 

「じゃあ、オスカーとチャーリーでどっちの方が運が無さそうだと思うのよ?」

 

 オスカーはそれこそなんだそれはと思った。確かにラックレス卿は不幸の騎士とか言われているが、運が無さそうだから選ばれるというのは意味が分からなかった。

 

「うーん、なるほど……」

「確かにそういう選び方をするならオスカーかもしれないの」

「な…… なるほど……」

 

 オスカーはメンバー全員から運が無さそうだと思われていることにちょっとショックを受けた。魔法薬の教科書に書いてあった幸運薬とかいう、胡散臭そうな薬が頭の中に浮かび始めた。

 

「まあほんとはオスカーとクラーナはクィディッチチームに入ってないしね、メインの配役は二人の方がいいと思うのよ」

「最初からそう言えばいいじゃないですか!」

 

 なぜ、運がないと全員から思われていることを気づかされなければならなかったのか、オスカーはやっぱり、トンクスの口を永久粘着呪文でくっつけた方がいいと思い始めていた。

 

「ほかの役はどうするの? トンクス?」

「そうね、私としてはアシャをレアが、アルシーダがエストかなと思ってたんだけど、どうかしら?」

「なんで言い始めたあなたがなんの役もやらないんですか?」

 

 クラーナは配役を押し付けられて、ちょっと顔を赤くしながらトンクスに聞いた。オスカーも言い始めたトンクスが何もやらないというのはあまり納得できなかった。

 

「うーんとね、私は七変化だから誰の代役でもできると思うのよ、だから私以外の人に役を振り分けておいて、その人が練習にこれなくなったら私が代役を務めようと思ってたんだけど、だめかしら?」

 

 オスカーはトンクスらしからぬ、知的な発言だと思った。それにこの劇に関してトンクスはそうとう考えていたように思えた。トンクスとドージ先生のドジ×ドジで知的になってしまったのだろうか? オスカーはちょっと二人に失礼なことが頭の中に浮かんだ。

 

「エストはそれでいいと思うの、それなら無理なく練習できそうだし」

「ボクも理にかなっていると思います」

「二人がいいんならそれで決まりなんじゃない? 僕は大道具とイモムシの準備をしようかな?」

 

 オスカーはクラーナと顔を見合わせた。二人とも互いが微妙な顔をしているのに気付いた。トンクスの手のひらで踊らされたような気分だったからだ。

 

「おや、決まったのかな? できれば慎重に配役を決めた方がいいと私は思う。前回、大講堂が炎上した理由はアッシュワインダーだけではなく、三人の魔女役の生徒達がラックレス卿を巡って、劇の最中に決闘を始めたことだったからね」

 

 オスカーはあんまりエストとクラーナが決闘しているのは想像したくなかった。少なくとも同学年で止められる人がいない気がしたからだ。オスカーが止めに入っても五体満足で帰ってこれる気がしなかった。

 

「やったわ、これで決まりね、練習する場所はおじいちゃん先生かケトルバーン先生に取って貰えるし、あとはダンブルドア先生が理事会に掛け合ってOKを貰えれば完璧よ」

「分かりました。やればいんでしょう。でも、いったいいつ上演するのを目標にするんですか?」

 

 クラーナが諦めたという顔でトンクスに聞いた。確かに、守護霊の呪文を覚えるのは相当難しそうだし、それに並行して劇の練習をするというのはかなり時間がかかるのではないだろうか? それに配役のあるエストはただでさえクィディッチチームに入っていて、授業を全部とっているのだ。

 

「期末テストの勉強が始まる前の春くらいを目標にすればいいと思うんだけど、どうかしら? あの時期ならクィディッチの試合もないし、外でやっても寒くないと思うのよ」

「まあいいんじゃないか? どれくらい守護霊の呪文を覚えるのが難しいかわからないしな」

 

 オスカーもそれなら、みんなに対する負担が軽くなるのではないかと思った。

 

「あっレアはごめんね? ほんとは魔法の練習をするだけだったはずよね?」

「大丈夫です。劇をするのは面白そうですし、ボクはクィディッチをやっていませんから、魔法の練習をする時間はあると思います」

「ありがとうねレア」

 

 トンクスとレア、エストは期待を込めた楽しそうな顔、チャーリーはぶつぶつなんの魔法生物をだせるのか教科書をめくって楽しそうな顔、クラーナはどこかしてやられたという顔だった。オスカーはみんなでやることがあるのというのは楽しみだったが、トンクスの発案だったので、最後に変なオチがついてしまわないか、ちょっとだけ心配だった。

 

 

 

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