ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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二人目の魔女

 

 オスカーはそのままグラウンドへ突っ込もうとしたが両脇のチャーリーとクラーナに止められた。二人が少しオスカーを落ち着かして、グラウンドへ降りる階段からエストが落ちたと思われる場所へ向かった。

 

「ブラッジャーの…… ご… 誤打により、プ… プルウェット選手が墜落しましたが、スニッチはハッフルパフのシーカー、スタンプ選手が取得しました。試合終了です」

 

 オスカーが雪をかき分けて進んでいる上空でレアの声が響いていた。魔法も使わずに進もうとするオスカーを見かねてか、クラーナが通り道にある雪を溶かして道をつくった。

 

「最後にニンファドーラ選手…… トンクス選手がゴールしたので、試合結果は百六十対八十でハッフルパフの勝利です」

 

 三人がエストの元につくと、フーチ先生が魔法で造った担架の上にエストをのせて医務室へと運ぶところだった。

 エストが落ちたと思わしき場所は雪が少し赤くなっていた。オスカーが何も言えないでいるとクラーナが切り出した。

 

「フーチ先生、エストは大丈夫なんですか?」

「うーん、私は癒者じゃないからなんとも言えないけどね、息はしているから大丈夫だと思うよ」

 

 エストの周りに青い顔をしたスリザリンのクィディッチチームが降りてきた。その後ろからハッフルパフのチームも降りてくる。

 

「ただ、頭を打ってるかもしれないから早くポピーに見て貰わないとね、この娘ときたら杖を握りしめているのに何も魔法を使わなかったみたいだからね」

 

 担架の上のエストは右手で杖を握りしめていて、額からは血が流れていた。

 何も言わずに突っ立っているオスカーの隣にトンクスがやってきた。トンクスの顔色はスリザリンチームの面々よりも青く、オスカーが見たことのあるテッドの黒い髪とほとんど同じ髪色だった。

 

「ほら、あとの見舞いは医務室でするんだね、ここだとけが人もあんた達も凍えてしまうだろう」

 

 フーチ先生が杖を振るとエストの担架が動き出した。クラーナが担架の進む方向へ道をつくった。

 ハッフルパフチームのメンバーはトンクスの肩を叩いて、励ましの言葉をかけてハッフルパフのスタンドの方へ向かった。

 オスカー達とスリザリンチームは無言のまま担架と一緒に医務室へと向かった。

 

「こんな猛吹雪の中クィディッチなんて! ほんとに狂気の沙汰だわ!」

 

 マダム・ポンフリーはエストの姿を見るやいなや大声でそう言い、ベッドの上にエストを優しくおろした。その後杖を何度か振って、うんうんと頷いた。

 

「多分、この娘は今日は起きないでしょう。それに少なくとも今晩は安静にしてないといけません。可能ならば今週一杯はここにいるべきでしょう。さあ貴方達も談話室に戻りなさい。体を温めないと貴方達も体を壊しますよ」

 

 そう言ってカーテンをシャーっと閉めて、オスカー達を追い出しにかかった。

 

「マダム・ポンフリー、エストは大丈夫なんですか? フーチ先生は多分大丈夫だって言ってたんですけど」

 

 また全員が喋らなくなったのでクラーナが質問した。

 

「ええ、大丈夫ですとも、幸いどこかに血がたまっていることもなさそうですし、落ちた時のショックと疲労で寝込んでいるだけでしょう。しかし、特別措置の学生にクィディッチをさせるなんて…… こんなことはミスター・クラウ…… 以来だわ…… この子は女の子なのに……」

 

 マダム・ポンフリーは最初のうちは答えてくれたが、あとは誰かへの愚痴へ変わっていった。

 オスカー達は医務室の外へでた。オスカーとトンクス、エストにブラッジャーを打ち込んでしまったビーターの一人は扉の前から動こうとしなかったが、クラーナとキャプテンがため息をついて三人を無理やり引っ張った。

 

「こんなとこで一晩中待つつもりですか? マダム・ポンフリーは大丈夫だって言ったでしょう? だいたいトンクスのローブは雪でびしょびしょでしょう! さっさと着替えないとほんとに風邪をひきますよ」

 

 他のスリザリンチームとチャーリーが無理やり三人を連れていった。オスカーの脳裏にはベッドに運ばれた後もずっとエストの手に握りしめられていた杖が焼き付いていた。

 

 

 オスカーはどうやってスリザリン寮に戻って、寝室で寝たのかあまり思い出せなかった。少なくともほとんど眠れていなかった気がした。

 朝日か昇るか昇らないくらいの時間に起きてオスカーは医務室へ向かった。窓から見える外の天気は昨日の猛吹雪がウソのような晴れ模様だった。医務室の扉には鍵がかかっていないようだった。

 医務室の中は朝焼けの色で赤く染まっていた。マダム・ポンフリーはどこかに行っていて、少なくとも姿は見えなかった。昨日、エストが寝かされたベッドへとオスカーは向かった。

 

「エスト、起きてるか?」

「オスカー? うん、起きてるよ」

 

 カーテンを開くと、パジャマ姿のエストがベッドの上に座っていた。いつもローブに隠れて見えない首から下げられているものがあらわになっていた。

 金の鎖でエストの首に下げられているそれは、複雑な金細工の中にはめ込まれた、ガラス細工の砂時計だった。

 

「オスカー、心配しなくても、体は別に大丈夫みたいだってマダム・ポンフリーは言ってたの、それより試合はどうなったの?」

 

 オスカーは少し言い返したい気分になったが、試合の結果をそのまま伝えることにした。

 

「試合は最後にトンクスが得点して、スタンプがスニッチをとったから、八十点差でハッフルパフの勝ちだ」

 

 それを聞くとエストはまだ右手に持っていた杖を握りしめた。

 

「そうなんだ。初めて負けちゃった」

 

 エストはクィディッチの試合前の夜よりも疲れた顔でオスカーにそう言った。オスカーはそれを見て、エストに色々言いたい気分が抑えられなくなっていた。

 

「なあ、クィディッチ、魔法、劇の練習、取ってる授業、どれでもいいけどちょっと休んだ方がいいんじゃないのか」

「え? でもクィディッチはエストがいないと練習にならないし、守護霊の呪文もまだできてないし、劇もまだ練習しはじめたばっかりだし、授業はせっかくマクゴナガル先生が魔法省に頼んで特別措置を取り付けて貰ったし……」

 

 オスカーは自分が怒っていることにやっと気付いた。オスカーはエストが特別措置だと呼んでいる砂時計を窓から投げ捨てたい気分だった。

 

「特別措置があってもエストの体が二つになったりしないだろ? どうみても色々やりすぎだろ」

「体が二つには…… でも、昔はスリザリンのクラウチさんって人がクィディッチチームをやりながら、特別措置を取り付けてもらってイモリ試験で十二科目パスしたって先生方が言ってたもん」

 

 オスカーが少し強い口調でエストにそう言うと、エストは少し困惑した顔になったが、即座に言い返してきた。オスカーはエストの目線が段々鋭くなってきていると思った。

 

「エストはそのクラウチさんって人じゃないし、その人は他に守護霊の呪文や劇の練習なんてやってなかったんじゃないのか」

「そうかもしれないけど、疲れてクィディッチで負けたわけじゃないし、昨日だって吹雪じゃなかったら勝ってたはずだもん」

 

 二人はここが医務室なのを忘れて、大声で言い合っていた。オスカーはクィディッチの試合とエストが言ったことで、フーチ先生が落ちる自分の体に呪文をかけもせずに杖を握りしめていたと言っていたことを思いだした。

 

「そういうことじゃなくて…… もっと自分のことを考えろって言ってるんだ! エストは魔法やクィディッチができるかもしれないけど、特別に体が丈夫だとか、特別疲れないってわけじゃないだろ!」

 

 オスカーがそう言い放つとエストは唇をかみしめて泣きそうな顔になった。オスカーは自分が言い過ぎたことに気付いた。

 

「エストは…… エストは…… ずっと自分のこと考えてるのに…… なんでそんなこと言うの! オスカーはわかってくれてると思ってたのに!」

 

 エストは涙を流しながら医務室からパジャマ姿で出ていってしまった。オスカーはどうすればいいのか分からずにその場に立ちつくしていた。

 医務室の扉がもう一度開かれたがそこにいたのはエストではなく、トンクスだった。

 

「オスカー? エストが泣きながら飛び出していったんだけど…… ちょっとオスカーも大丈夫なの?」

 

 オスカーは今自分がどんな顔をしているのかわからなかった。どうして、倒れたエストを責めることを言って、泣かしてしまったのか分からなかった。

 

「なぜ早朝の医務室で大声で騒いでいるんですか! 安静が必要だと言ったでしょう!」

 

 マダム・ポンフリーがオスカーたちの大声を聞きつけてやってきたようだった。オスカーは自分が情けなく、トンクスにも、マダム・ポンフリーにもエストが飛び出していってしまった理由を話せる気がしなかった。

 

 

 

 その日からオスカーとエストは冷戦状態だった。お互い一緒に行動こそしていたが、必要な時しか喋らなかった。

 オスカーはエストにどうやって謝ったらいいのか分からなかった。それにエストはクィディッチの練習こそ年内はなかったが、未だに全部の授業に出席しているようだったし、守護霊の呪文の練習も劇の練習も最後までやっていた。オスカーはそれを見るたびに怒りが湧いてくるのだった。

 

「ねえレアもオスカーのうちに呼ぶのよね?」

 

 トンクスがオスカーとエストの放っている空気に耐えられないとばかりにそう言った。レアはさきほどほとんど守護霊を形にしていて、得意げになっているところだった。

 

「え? ああ…… そう言えば何も言って無いな」

 

 オスカーはエストのことで頭が一杯で、クリスマスが直前に迫っていることにトンクスがそう言ったことで初めて気づいた。

 

「やっぱり言って無いのね、レア、クリスマスにオスカーのうちに行くわよね? 他のメンツは強制参加だから」

「オスカー先輩のお家ですか?」

 

 トンクスはエストが落ちてからいつもに増してハイテンションになっている気がオスカーはした。

 

「うん、去年もやったんだけど、オスカーの家でクリスマスパーティーをしないかって思ってるんだ。去年はハグリッドが大きなクリスマスツリーを持ってきてくれたしね」

 

 チャーリーがすかさず説明にはいった。オスカーとエストは黙ったままだった。

 

「そうですね、レイブンクローの友達はみんな家族のところに帰るらしくて、ボクはホグワーツに残ろうと思ってたんですけど、行ってもいいなら行きたいです」

「じゃあ決まりね、オスカー、ちゃんとペンスに言っておいてよ、あと糖蜜パイも」

 

 いつもはうるさいトンクスの声も今のオスカーにはありがたかった。

 

「トンクスがデブへの道をひた走るのはどうでもいいですけど、私はクリスマス直前までいけないと思いますよ」

「はあ? なによそれ、オスカーとセーターの交換しないの?」

 

 トンクスはまるで意味が分からないという口調でクラーナに言った。

 

「そもそもなんでセーターを交換するのが前提になっているんですか! アラスターおじさんとちょっと用事があるんで、クリスマス休暇の最初の方はいけないってだけですよ」

「なんてこと…… クリスマスの楽しみがまた一つ減ったわ」

 

 トンクスがショックを受けたような顔をした。オスカーはそろそろあの冗談を止めて欲しかった。今年も去年ウィーズリーおばさんから貰ったセーターを着ているが、イニシャルがクラーナのものになったままだった。

 

「ということで明日のホグズミードはクリスマスプレゼントを買いにいくわよ、レアも秘密の通路から来る?」

「それはちょっと遠慮しておきます……」

 

 レアが引き気味にそう答えた。オスカーはよくよく考えるとホッグズ・ヘッドはホグズミードにあるので、レアはホグズミードにすでに行っているようなものだと思った。それにあの通路なら絶対にフィルチにばれない気がした。

 

 

 ホグズミードに行ってもやっぱりエストとオスカーはお互いに何も喋らなかった。前回はホッグズ・ヘッドと叫びの屋敷で時間を全部使ってしまったので、今回は三本の箒やゾンコの悪戯専門店、ハニーデュークスといった普通の場所を周ることにしていた。

 いつもなら楽しめるはずのハニーデュークスの甘い匂いや色とりどりのお菓子も、臭い玉やクソ爆弾といったフレッド・ジョージが喜びそうな悪戯グッズもオスカーは楽しむことができなかった。

 オスカーはエストへどう謝ったらいいのか相変わらず分からなかったし、エストへのクリスマスプレゼントも思い浮かばなかった。

 オスカーはそれが自分がエストのことをわかっていないと思い知らされているようでたまらなく嫌だった。

 オスカーとエストが一緒にいると微妙な空気が他の三人にも伝染しているようだった。このままでは三本の箒でバタービールを飲んでも余り楽しくないだろうなとオスカーは思った。

 

「うーん…… もう、わかったわ、ちょっとオスカーを借りてくから、みんなは三本の箒でバタービールを飲んどいて」

 

 トンクスが唐突にそう言った。三本の箒はもう目の前にあるのにだ。

 

「はあ? どこ行くんですか?」

「クラーナが絶対に行きもしない場所よ、ほらオスカー行くわよ」

 

 トンクスはオスカーの腕をとってそのまま脇道に連れ込んだ。脇道には洒落た小さな喫茶店があった。看板にはマダム・パディフィットの店とある。

 

「ほら、ここよ」

 

 トンクスに連れられて入ると、店内はフリルとリボンで飾り立てられていた。オスカーはフリルで一杯の服を着たまね妖怪のエストを思い出した。

 

「あそこに座りましょうよ」

 

 トンクスは一番端のテーブルを指して、二人でそのテーブルに座った。隣のテーブルでは先日にスニッチをとったハッフルパフのシーカー、スタンプが栗色の髪の女の子と一緒に座っていた。スタンプはトンクスとオスカーを見ると驚いた顔をして、トンクスの方に手を振った。

 

「うちのシーカーはスニッチは中々取れないのに女の子を捕まえるのは上手いのよね」

 

 トンクスがオスカーの耳元でそう言った。オスカーが店内を見回すとカップルだらけで、みんなキスをしたり、手と手を絡み合うように、俗に恋人つなぎと言われるようなつなぎ方でつないでいた。

 

「お二人さん、注文は何にするのかしら?」

 

 艶やかな黒髪の、ハグリッドを二回り位小さくしたような体を持つ女性が話しかけてきた。オスカーはこの人物がマダム・パディフィットなのだろうと思った。

 

「じゃあ、コーヒーを二つお願いするわ」

 

 トンクスが注文した。オスカーは隣のテーブルの二人がキスをし始めたので気まずい気分になった。

 

「で? せっかく女の子とカップル御用達のお店に来たのに、頭の中はエストのことで一杯のオスカーおぼっちゃまは結局どうして喧嘩してるのかしら?」

 

 オスカーはトンクスの顔と髪色を見た。トンクスの眼は真剣で髪色は紫と言ったところだった。オスカーはトンクスが面白半分で聞いているわけではないことがわかった。

 多分、エストが落ちたことに責任を感じているのだとオスカーは思った。

 オスカーは正直なところ、もうエストにどうしたらいいのか分からなかったので、ありのままトンクスに医務室で何があったのか喋ってみることにした。

 

「ああ…… なるほどね、エスト第一主義のオスカーがエストと喧嘩するなんてって思ってたけどそういうことなのね」

 

 オスカーが話し終わるとトンクスは額を抑えてウンウン唸っていた。

 

「もう、お前のことが心配だ! 俺のために休めええええええって言えばいいんじゃないかしら」

 

 オスカーはトンクスが真顔でそんなことを言ったので、コーヒーをむせ込んだ。

 トンクスは心底失礼なやつとでも言いたげな視線でオスカーを見た。

 

「今のが冗談だとしても、ちょうどクリスマスだし、俺がプレゼントだあああああってやれば喧嘩は終わると思うんだけど」

 

 オスカーにはさっきとの違いがさっぱりわからなかった。

 

「分かってないって顔ね、つまり、オスカーが何考えて言ったのかエストに言えばいいって言ってるのよ、私にはオスカーがエストを理解できないとかしようとしてないようには見えないって言ってるのよ、わかる?」

 

 トンクスの言葉をオスカーはなんとかかみ砕こうとした。しかし、トンクスの言う通りにするのは凄く難しいことのように思えた。

 ただ、トンクスに話したことで、話す前よりもエストの問題が少しだけ解決可能なものに近づいているような気がした。

 それに、オスカーは自分も辛い所があるはずなのに、レアやエスト、そしてオスカーのために動いてくれているトンクスが少し心配だった。

 

「ああ、ちょっと考えてみる…… トンクスは大丈夫なのか?」

「へ? 私?」

 

 オスカーの発言にトンクスは目を丸くした。

 

「いや別に大丈夫ならいいんだけど、レアのことがあった時とか、エストが落ちた時からトンクスのテンションもおかしいから」

 

 オスカーがそう言うと、トンクスは髪色をショッキングピンクにして笑い出した。

 

「オスカー、あなたあほでしょ、今はエストのことを考えとけばいいのよ」

 

 トンクスは本当に愉快そうだった。オスカーはいつものトンクスに戻ったようで、自分の気分も少し明るくなった気がした。

 

「そんなに他の女の子のこと考えたいなら、誰かの顔に変身してキスしてあげてもいいわよ、ここでキスすれば一週間で噂がホグワーツ中に広まるはずだから」

 

 そう言ってトンクスはなぜかクラーナの顔に変身して、オスカーの手を取ろうとしてきた。オスカーは椅子に座って逃げられる範囲で必死に避けた。

 二人がテーブルをはさんで奇妙な攻防を繰り広げていると隣のスタンプが何かをこっちに差し出していた。

 

「ほら、これ君らとスリザリンのシーカーのことが載ってるよ」

 

 スタンプはそう言ってオスカーに日刊預言者新聞を渡し、女の子と恋人つなぎのまま店から出て行った。

 トンクスがオスカーの手からひったくって新聞を読んだ。

 

「なによこれ…… このリータ・スキータとかいう記者、本当に糞野郎ね」

 

 トンクスの髪色が真っ赤になっていた。オスカーは嫌な予感がした。

 

「ほら、オスカーも読んじゃった方がいいと思うわ、どうせ新聞に載ったらあっという間に広まるんだし」

 

 オスカーは新聞の写真に写っている人物が誰なのかすぐに分かった。ギデオンとフェービアン・プルウェットだ。オスカーは父が報道されるのと同時に二人の顔写真が掲載されるので、その顔を良く知っていた。知らなくても、エストやモリーおばさんの顔からすぐに気づいただろう。

 記事の内容はまたしても劇のことで、何年も前に危険だという理由で廃止されたのに復活させるのは校長の横暴だと数人の理事が訴えているという記事だ。

 その中で今度はアルシーダ役をエストがやるということが書かれている。

 そして驚くべきことにエストの出生についてとエストの杖とオスカーの杖の関係が書かれているようだった。なんでも、エストの出生記録から考えるとエストの母親の命日や病気の進行具合と整合性が取れない、エストは本当にプルウェット家の人間なのか怪しいという記事で、またしても匿名の聖マンゴの癒者の証言とのことだった。

 さらにアントニン・ドロホフと死喰い人たちがギデオン・フェービアン両名を殺害し、家も完膚なきまでに破壊したことや、エストの持っている杖がアントニン・ドロホフの息子の杖と兄弟杖であると書かれている。

記事は最後に上記のことからエストは悪い魔法使いに家を破壊され、杖すら悪い魔法使いと関係があり、まさにアルシーダにふさわしい魔女だと書かれているのだ。

 オスカーは沸々と怒りが湧きあがってくるのが分かった。そもそもどうやってエストと自分の杖のことを知ったのか? あの杖のことを知っているのは、オスカー、エスト、クラーナ、レア、そしてダンブルドア先生、マクゴナガル先生、オリバンダー老人だけのはずだった。

 オスカーにはその誰もがリータ・スキータなる人物に口を滑らせるとは思えなかった。

 

「ちょっとオスカー大丈夫なの? すごい怖い顔してるわよ」

 

 オスカーが前を見るとトンクスの髪色は話始めたときと同じ、紫色に戻っていた。

 オスカーはこんな記事を書かれているのにエストに謝ることすらできない自分が、トンクスに心配されている自分が嫌だった。

 

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