ドロホフ君とゆかいな仲間たち   作:ピューリタン

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タイトル考えるの疲れた


煙突飛行

「エスト、そろそろ離してくれないのか?」

 

 広間には時計がなかったので時間がオスカーには分からなかったが、随分な時間、エストに捕まっている気がした。

 オスカーがエストの頭越しに窓を見ると、クリスマスイブの夜は明けて、日が昇り始めているような明るさだった。

 すると、火がついていなかった暖炉にエメラルド色の炎が灯った。誰かがドロホフ邸の広間の暖炉へ煙突飛行してくる予兆だった。

 オスカーはその誰かが誰なのかは分かっていた。来ると言ってまだ来ていないのは一人だけ、クラーナだけだったからだ。

 

「エスト、クラーナが来るみたいだから離して……」

「嫌なの」

 

 オスカーは逃げられなかった。オスカーが体をひねったりしている間に暖炉の中に回転する人影が現れて、灰を髪から落としながらクラーナが現れた。

 オスカーにはクラーナがクリスマス前よりもやつれて見えた。夏休みの後にキングズクロス駅で会った時と同じように、目が疲れているように見えたのだ。

 クラーナは学校指定のトランクを引きずりながら歩こうとして、オスカーとエストを見つけ、目を点にした。

 

「な! なんですか!? 二人で抱き合って私を迎えてくれるとはずいぶんな歓迎ですね」

「ほら、クラーナが暖炉飛行で来たんだって」

「嫌なの、だって離したら、またクラーナとセーターの交換をし始めるに決まってるの」

「はあ!? なんでエストまでトンクスのあほの話を真に受けてるんですか?」

 

 クラーナはトランクを大きな音をたてて取り落とすくらい憤慨していたが、エストはクラーナの方を見もしないで、オスカーから離れなかった。

 

「だって、普通、グリフィンドール生が緑と銀でできた蛇の絵が描いてあるセーターなんて着ないもん」

「それは一年生のときだけでしょう!」

 

 なぜかお互いに顔を合わせもしないで言い争いを始めてしまったので、オスカーは途方に暮れた。

 

「ペンス! クラーナのトランクを……」

「結局一年生の時のクリスマスに何があったのか教えてくれないもん。だいたい今もお互いのイニシャルが入ったセーターを着てるの」

「なんなんですか! 喧嘩していたと思ったら抱き合ってるし、なんで抱き合った状態の人間に色々言われないといけないんですか! そもそもあのセーターはトンクスと双子の悪戯だって言ったじゃないですか!」

 

 ペンスはバチっという音とともに現れて、クラーナのトランクを消した後、広間の灯りと暖炉の炎を灯し、オスカーに視線を送った後、またバチっという音とともに消えた。オスカーは生まれて初めてペンスにお仕置きを許可した方がいい気がした。

 

「ほら、やっぱり一年生の時のクリスマスの事から話を逸らしたの」

「ほんとになんなんですか! 喧嘩売っているんですか? そもそも抱き合ってないで、私に話があるんならこっち見て話したらどうなんですか!」

「嫌なの」

「なんなんですか!!」

 

 クラーナは大きな足音を立てながらオスカーに向かって歩いてきた。オスカーは本当に途方にくれていた。そもそも、エストとクラーナが喧嘩したり言い争いするのをオスカーは見たことがなかった。だいたいそういうのはトンクスの領分だったからだ。

 クラーナの黒い眼はエストと同じ様にくまで縁どられていたが、最初に見た疲れではなく、怒りの方が色濃く見えているようだとオスカーは思った。

 

「クラーナ、朝飯は食べたの……」

「オスカーは黙っててください、私はエストに喧嘩を売られたんです」

 

 オスカーはエストにもクラーナにも自分の言葉が届かない様なのでお手上げ状態だった。

 

「抱き合ってるって言うんなら、クラーナだって、ファイア・ウィスキーの時に同じことをしてたの、それにやっぱりクリスマスの事を話そうとしないもん。どうせまたクリスマスプレゼントです! とか言ってごまかすに決まってるの」

「だから、顔を見て話せって言ってるじゃないですか!」

 

 クラーナは直接、エストをオスカーから引き離そうとしたが、エストは永久粘着呪文をかけられた様に離れなかった。オスカーは二人の力で体のあちこちが痛かった。

 

「ゲロを吐いてごまかしてたけど、あの時、お返しですとか言ってたの覚えてるもん」

「本気で喧嘩売ってるみたいですね、もう遠慮しません!」

 

 オスカーは二人がいつもの状態ではないと思った。もうオスカーのローブやセーターはめちゃめちゃになっていたし、クラーナはエストの髪の毛を引っ張ってでも引き離そうとしていたが、エストはそれでも離れなかった。

 すると広間の扉が開かれた。二人は大声で言い争っていたので誰か起きたのだろうとオスカーは思った。

 

「いくらクリスマスだからって、朝から騒ぎすぎじゃないの? いくら私でも起きちゃうわ…… ちょっとほんとに喧嘩してるじゃないの」

 

 トンクスだった。オスカーは最悪の人選だと思った。

 

「クラーナの姉貴の声が聞こえるけど、来てたの?」

「プレゼントに貰ったゾンコの商品のお礼を言わないと……」

 

 フレッド・ジョージだった。オスカーは絶望した。

 

「あらあら、朝から元気なのね」

 

 トンクス先生だった。オスカーはどんどん火に油が注がれている気がした。

 

「離れろって、言ってるじゃないですか!」

「嫌なの! 絶対離れないもん!」

 

 オスカーは絶対に体中があざや爪痕だらけになっているだろうと思った。二人がオスカーのいろんな場所を掴んだり、引っ張ったり、爪をたてたりするのをオスカーは黙って耐えていた。

 

「ちょっとオスカー、ほんとに修羅場ってどうするのよ」

「いやなんでもいいから二人を離してくれ、話が通じないんだ」

 

 オスカーはオスカーが思っていたよりもトンクスに話が通じそうなので助けを求めた。

 

「エストが喧嘩してるの初めて見たんだけど」

「俺も、怒ったら怖いけど絶対喧嘩しないと思ってた」

 

 フレッド・ジョージは何故か感慨深げに見るだけで、オスカーの助けになりそうになかった。

 

「あらあら、いいわね、一人の男を巡って、スリザリンとグリフィンドールが勝負するわけね」

 

 オスカーはトンクス先生が一番役に立たないと思った。

 

「ちょっと流石にやめなさいよ、みんな起きちゃうわよ」

「トンクスは黙ってて!!」

「トンクスは黙ってください!!」

 

 トンクスは信じられないという顔でオスカーの方を見たが、その顔をしたいのはオスカーの方だった。

 

「オスカー、ほんとに何をやったのよ……」

「だから早く、二人を引き離して……」

 

 するとついにクラーナはオスカーからエストを引き離した。しかし、二人はその勢いのままドロホフ邸の埃一つない石畳を転がっていった。

 

「やっと顔を見せましたね、さあなんで私に喧嘩を売ってきたんですか? オスカーとイチャイチャしてるのを邪魔されて嫌だったんですか?」

「クリスマスプレゼントなの」

「こいつ!」

 

 オスカーはトンクスの百倍くらいエストはクラーナを怒らせるのが上手いと思った。二人は押し合ったり、お互いの手足に関節技のようなものをかけ合い、何度もお互いにマウントを取り合いながら転がっていった。

 

「邪魔されたくなかったんなら、あんな暖炉の目の前じゃなくて、どっちかの部屋でイチャイチャしてれば良かったんですよ!!」

「だからクラーナへのクリスマスプレゼントなの」

「もうほんとに許しません!!」

 

 ついにお互いの手が出そうになったので、オスカーとトンクスは二人を引き離そうとしたが、先にトンクス先生が杖を振った。二人は空中に浮かばされて、強制的に引き離された。浮かび上がった時に、クラーナのローブのポケットから何か名札のようなものがこぼれ落ちた。

 

「だいたい喧嘩してたのはなんだったんですか! あれですか気を引くためですか!」

「クラーナはいっつもずるいの! いっつもいつの間にか仲良くなってるもん!」

「ほら、流石にやめないとダメでしょ? 二人とも可愛い顔が台無しになってるわよ」

 

 トンクス先生の呪文に捉えられても、二人は空中で言い争いを続けていた。ジョージがクラーナの落とし物を拾ってオスカーに渡してきた。

 

「ここはオスカーの兄貴がガツンと決めるべきところじゃないの?」

「確かに、こう俺のために争うんじゃない的な?」

 

 フレッド・ジョージは調子の良いことを言っていたが、オスカーの見たところ二人の喧嘩にビビっているようだった。オスカーも正直なところビビっていた。二人が杖を持っていたら、オスカーの体はマッチ箱に入れられるくらい小さくなっていたかもしれないとオスカーは思った。

 オスカーは名札のようなものに書かれた文字を読んだ。名札には聖マンゴ魔法疾患病院・解除不可能性呪い・特別隔離病棟・入室許可証と書かれており、本人の欄にクラーナのサインが、保護者の欄にマッドアイのサイン、許可者、担当癒者の欄にもオスカーの知らないだれかのサインがあった。オスカーの読んだ面の裏には入室する場所にいる誰かの詳細が書いてあるようだった。しかし、誰かの見舞いにクラーナが使っているモノならば、オスカーは余り立ち入るべきではない気がしたので視線を外した。

 それから随分と二人は浮かびながら言い争っていたが、流石に疲れたのか段々静かになっていった。

 

「オスカー、ほんとに何があったのよ、正直、二人があんなになると思ってなかったんだけど、あの二人がぶちぎれるなんてそうそうないわよ」

「いや…… 俺もそう思うんだけど…… まあ二人共疲れてそうではあったけど……」

 

 トンクス先生は二人が静かになったのを見計らってゆっくりとおろした。

 

「エビスキー 癒えよ! ほら、二人とも魔女なら魔女らしく杖がある時に決闘するのよ? 決闘の仕方は教えたでしょう?」

 

 オスカーはトンクス先生の方が、トンクスよりやっかいな気がしていた。それに二人の傷を癒していたが、実際のところオスカーの方が重傷だった。

 

「ここでどっちを慰めに行くのかは重要だと思うね、我が弟、ジョージ」

「ああ我が兄、フレッド、これはガリオン金貨よりも重要だ」

 

 フレッド・ジョージが何やら言っていたがオスカーは無視して、とりあえずクラーナの落とし物を届けることにした。オスカーはまだ体中が痛かったがクラーナに近寄った。

 

「なんですか? オスカーはエストとイチャコラしてればいいんじゃないですか? せっかくのクリスマスなんですから」

「いや、これ落としただろ」

 

 オスカーが許可証をクラーナに差し出すと、クラーナはオスカーが見たことのない表情をした。オスカーはその表情がクラーナに全く似合っていないと思った。オスカーにはクラーナが酷く怖がっているように見えた。

 

「読んだんですか?」

「え? 聖マンゴのお見舞いにいるなんかじゃないのか?」

 

 クラーナはオスカーの眼をはっきりと見つめたが、オスカーはクラーナの視線がいつもの強気なモノではない気がした。

 

「わかりました…… じゃあ寝室を借りますね、昨日はあんまり寝れなかったですし、もう疲れました」

「去年使ってた部屋をペンスが用意してるはずだけど……」

「ありがとうございます。じゃあオスカー、メリークリスマスです」

「ああ、メリークリスマス、クラーナ」

 

 クラーナはそう言うなり、扉に向かって歩いていった。オスカーにはクラーナの後ろ姿がひどく疲れて見えた。よれよれになったローブの端から見える、クラーナのセーターに描かれているライオンが伸びてしまって、疲れているように見えたのもあるかもしれなかった。

 オスカーはエストの方へ目線を移して、エストがまだおかんむりなのに気付いた。エストはこっちの方を見て、口を膨らましているように見えた。オスカーはエストにつけて貰った時計を使いたい気分になった。

 

「オスカー、クラーナの機嫌は直ったみたいだけど、エストも相当あれなんだけど」

「フレッド、これは何点だと思う?」

「俺では点数を測れない…… ここからの展開が大事だと思うね」

「オスカー君が一番傷だらけじゃないの、羨ましいわね、傷だらけにしても欲しいと思われてるなんて」

 

 トンクス先生がオスカーの傷を癒してくれたが、オスカーはもう相当に疲れていた。そもそもオスカーは昨日からろくに寝れていなかった。それに外野がものすごくうるさかった。

 

「エスト、なんであんなクラーナを怒らせたんだ?」

「クリスマスプレゼントだもん」

 

 オスカーが尋ねてもエストはプイっと横を向いてそう言うだけだった。オスカーは流石にちょっと怒りたくなってきた。

 

「クラーナは疲れてたみたいだし、クリスマスだろ?」

「だって、クラーナは怒らせないと絶対本当のことを言わないもん」

 

 エストは少しバツが悪そうにオスカーに答えた。確かにクラーナは怒らせるといつも何か言葉を滑らせる気がオスカーもしていた。

 

「じゃあ、クラーナに何か聞きたいことがあってわざと怒らせたのか?」

「む…… そうじゃないけど…… クラーナは絶対本当のことを言わないんだもん。守護霊の呪文がなんでできないのか相談した時も…… 動物もどきのことを聞いた時も……」

 

 オスカーもエストがオスカーと喧嘩しているときに、何か守護霊の呪文のことでクラーナと話合っているのは知っていた。しかし、本当のことを言わないとは一体何なのかオスカーには良く分からなかった。

 

「良くわからないけど、流石に今回のはエストが悪いだろ、どう考えても怒らそうとしてたし、クラーナが起きたら謝れよ」

 

 オスカーがそう言うと、エストはオスカーから視線を外した。

 

「クリスマスプレゼントだろ」

「ううううううう…… 分かったの」

 

 エストはそれを聞いてしぶしぶ謝るのを約束した。オスカーも大分疲れていて、正直、寝室に戻って寝たかった。だいたい届いているはずのクリスマスプレゼントの確認すらしていなかった。

 

「見たかジョージ、怒れるエストを鎮圧したぞ」

「ああフレッド、純血キラーの二つ名は伊達じゃない」

 

 オスカーはフレッド・ジョージに構う元気はなかった。

 

「オスカー君は気を付けないと、いつの間にか朝食に愛の妙薬が入っているかもしれないわよ?」

 

 トンクス先生が悪戯っぽくそう言ったが、オスカーはそれを聞いてますます疲れた気がした。

 

「やるじゃないのオスカー、チャーリーやレアも呼んだ方がいいかしら?」

 

 オスカーはとにかく寝ることに決めた。

 

 

 オスカーは自分の部屋で目を覚ました。起きると首筋に痛みが走った気がした。部屋にあった鏡を見ると、トンクス先生が治しそこねたのか恐らくクラーナがエストを無理やり引き離したときにできた爪痕がまだ残っていた。それにエストに首にかけられた逆転時計がオスカーの胸元でゆっくりとガラス細工の中の砂を落としていた。

 オスカーは寝る前の、エストとのことや、エストとクラーナの喧嘩が現実だということを感じた。そして、足元に小高く積まれたプレゼントを見て、やっとクリスマスが来た気がした。

 ウィーズリーおばさんからきた包みをあけてオスカーは今年の分のセーターを取り出した。念入りにイニシャルも見たが、今度はちゃんとオスカーのイニシャルになっていた。

 オスカーはすっかり伸びてしまったセーターを脱いで、新しいセーターに着替えた。他の包みを開けてみると、なんとキングズリーからのプレゼントは日刊預言者新聞の一年分の定期購読権の権利書というものだった。一緒についていた手紙にはリータ・スキータには気を付けるようにと書かれていた。オスカーはちょっと伝えられるのが遅いと思った。

 他にも、ロンとジニーからお手製の蛇の形をしたお菓子が届いていたり、チャーリーからセストラルの動く人形が届いていたりした。クラーナからのプレゼントは金色のくねくねしたアンテナ、小型の秘密発見器だった。

 時計を見るとちょうどお昼過ぎだったので、オスカーはペンスが昼食を用意しているのを期待して、広間へと向かった。

 

「わかりました。エストがイチャイチャしてるのを妨害した私が悪かったですよ、ごめんなさい」

「わかったの、ほんとの事言わないクラーナをからかったのが悪かったの、ごめんなさい」

 

 オスカーが広間に入るとちょうどエストとクラーナがなにやらお互いに謝りあっているようだった。オスカーは二人が本当にお互いに申し訳ないと思っているのかは疑問だと思った。

 

「あらオスカー、家主がこんな時間まで寝てていいの?」

 

 トンクスがニヤニヤしながらオスカーにそう言った。なぜか後ろのフレッド・ジョージも笑っていた。

 

「オスカー、メリークリスマス、朝は大変だったみたいだね」

「チャーリー、メリークリスマス、セストラルありがとうな」

 

 なぜかチャーリーも笑っているようだった。オスカーはエストとクラーナのやり取りを面白がっているのだと思った。

 

「オスカー、先輩…… それ……」

「オスカーはクラーナとお揃いなの?」

「え? ジニー? お揃いって何が?」

 

 レアがおそるおそるといった感じで、ジニーは楽しそうな顔でオスカーのローブの間を指で指した。

 オスカーがハッとして、ローブを脱いでセーターを見ると、なぜかさっき見た緑と銀の蛇柄ではなく、緑と赤が半々で、銀の蛇と金の獅子がいるデザインに変わっていた。さらにイニシャルの部分までクラーナのモノに変わっていた。

 

「はあ!? さっき見た時は普通だったのに……」

 

 オスカーがトンクスとフレッド・ジョージを見ると腹を抱えて笑っていた。オスカーは昨日から溜まっていた疲れと怒りが寝たことで解消されたと思っていたが、一瞬で復活した気がした。

 

「ああああああああ! やっぱり! セーター! もう! 謝らなければ良かったの!」

「ちょっと、これ、なんですか!? 時間経過の変身呪文!? なんでこんな悪戯に高度なことを!!」

 

 そこからはオスカーはどっと疲れた気がして、もうみんなが騒ぐのを見つめるだけだった。いつの間にか傍にいたペンスに昼食を用意して貰って、食べながら大騒ぎを見つめていた。

 

「ペンス、なんであの時、一瞬で消えたんだ?」

「このペンス、ドロホフ家の屋敷しもべとして、オスカーおぼっちゃまが女性の方とご一緒の時にお邪魔になるようなことは致しません」

 

 そう言うとペンスは完璧なお辞儀をして消えた。オスカーはもっと疲れた気がした。クラーナがトンクスを追い回しているのが見えた。オスカーは良く大暴れしたあとなのにあんなに動ける元気があるなと思った。

 

「ねえオスカー、ホグワーツに戻ったら、忍びの地図を貸してくれる?」

「忍びの地図? いいけどどうしたんだ?」

「ちょっとね、キングズリーにいいことを聞いたの、もしかしたら、すごく珍しい動物を捕まえられるかもしれないの」

 

 オスカーがキングズリーの方を見ると、なぜかこっちに向かってウィンクをしてきた。いったい何をエストに吹き込んだのだろうか? オスカーは最近のエストのぶっ飛んだ行動を見ていると少し不安だった。

 

「珍しい動物? 確かに忍びの地図にミセス・ノリスはのってるけど、動物なんだったらチャーリーかハグリッドに協力して貰ったほうがいいんじゃないのか?」

「うーんとね、多分、それじゃだめなの、魔法生物飼育学じゃでてこない感じの生き物なの」

 

 エストの眼はまだ少しクマで縁どられていたが、何か楽しいことを考えている眼だったのでオスカーは心配しないでも良さそうだと思った。

 オスカーは疲れてはいたが、大騒ぎしているみんなや楽しそうな顔をしているエストを見て、やっとクリスマスらしく幸せになりつつあると思った。

 


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