クリスマス、クリスマスが近づいていた。オスカーは去年、かなり印象深いクリスマスになってしまったのを感じていたので、なんとか今年は穏便なクリスマスを過ごしたかった。
それに去年はクリスマスプレゼントで延々と悩んでいたが、今年は何をするのかをはっきりと決めていたのが大きかった。
何度かマクゴナガル先生のところに行って、オスカーは変幻自在呪文やホムンクルスの術について聞いた。意外に思うほどマクゴナガル先生は親身に対応してくれていた。
「ドロホフ、あなたがどうしてこの様な術について理解を深めたいのかは聞きませんが、生徒が変身術について興味を持ち、実際に行動するのは喜ばしいことです」
「ありがとうございます。マクゴナガル先生」
「決闘トーナメントを楽しみにしています」
何か、完全にマクゴナガル先生に勘違いされている気がしたが、オスカーは考えない事にした。レアとの練習は続いてはいたものの、やはりレアと閉心術の相性は余り良くないようで、それにかかりきりになり他の練習はできてはいなかったからだ。
今日もマクゴナガル先生と話し終わって、五階の大鏡の裏で練習をする予定だったが時間的にも大して練習ができるとはオスカーは思ってはいなかった。閉心術の練習は体力も時間も大きく使う行為で、クリスマスも近かったし、オスカーもそんなにはやる必要は無いだろうと考えていた。
鏡の裏についてもまだレアは来ていなかったので、また魔法で灯りを灯すと、炎にゆられてオスカー自身が創ったドロホフ邸にあるそっくりの椅子が写しだされた。
オスカーはそれを見て、やっとクリスマスプレゼントに何を作るのかのイメージがついた。これまでずっとプレゼントがどういったことをするものなのかは考えついていたが、それをどんな外見にするのかを思いついてはいなかった。
「ペンス」
「お呼びですか? オスカーお坊ちゃま」
バチッという音がして、オスカーが恐らく生まれてから一番聞きなれているだろう声が響いた。相変わらず文句のつけようのないお辞儀姿だった。
「ペンス、えっと…… カメラ…… 母さんが…… 多分キングズリーから貰ったカメラってまだあるのか?」
「はい保管されています。承知いたしました。すぐにお持ちいたします」
オスカーは少し拍子抜けした。ドロホフ邸にはほとんど母親や父親、オスカー自身の写真は残っていなかったからだ。名前を知りもしない先祖の肖像画なんかはいくつもあったが、自分の知っている身内の写真をほとんど見たことは無かった。だからカメラももう無いのかと思ったのだ。
またしもべ妖精が現れる時特有の音がして、ペンスが現れた。ペンスの手には憂いの篩で見たのと同じ、古いがよく手入れされたカメラがあった。
「ありがとう。ペンス」
「ペンスめにはもったいないお言葉です。オスカーお坊ちゃま。それではまた何かございましたらお申しつけ下さい。クリスマスの準備はほぼできております」
そう言うとまた音をたてペンスは消えた。オスカーの手にはカメラがあったが、きっと母親から教えてもらったはずのカメラの撮り方をオスカーは覚えてはいなかった。しばらく、カメラの色んな所を押してみたり、写真を撮ってみたりしたが果たしてうまく使えているのか、正しい方法なのかの自信がオスカーには無かった。
そうこうしている間に結構な時間がたっていて、外出禁止の時間まであと一時間ちょっとくらいだろうとオスカーが考え始めたころ、やっとレアがやって来た。
「オスカー先輩、遅れてすいません…… カメラ?」
「大丈夫だけど…… ああカメラだな」
オスカーとカメラという組み合わせにピンとこないのか、少しレアは悩んでいるような微妙な顔をしていた。
「オスカー先輩は写真を撮るんですか?」
「いや今まで…… 多分ほとんど撮ったことは無いんだけど、ちょっと…… そうだな、みんな…… 去年劇をやったメンバーで写真を撮ろうかなって思って、家から持ってきてもらったんだ」
本当の写真の使い道をオスカーは言うわけにはいかなかったが、そのメンバーで写真を撮りたいというのは本当だった。
「ただ、俺はあんまりカメラの使い方とか上手くないし…… ああそうだった。現像の仕方とかも分からないんだよな」
「ちょっと見せて貰ってもいいですか?」
「ほら」
レアはカメラを持ってさっきのオスカーと同じようにいじったり、オスカーの方にカメラを向けてシャッターを押したりした。その後、なぜか頷いてからカメラをオスカーに返した。
「レイブンクローの友達に凄い魔法使いのカメラに詳しい子がいるんです。その子にちょっとカメラを教えて貰ったことがあるので、ボクも少しだけなら写真を撮れますし、それに現像もその子に頼めばやって貰えると思います」
「そうなのか? でもちょっと悪いしな……」
「だ、大丈夫だと思います…… その、レイブンクローの三年生で決闘トーナメントにでてるのはボクだけなので、だいたいのことは言えば助けてくれるはずですし、それにボクは最近ずっとオスカー先輩に迷惑をかけ通しなので……」
なぜか少しレアの元気が無くなってしまったので、オスカーはこれは頼んだ方が良いのだろうと考えた。それに閉心術の練習はあまり上手くいって無かったので、ちょっと気分転換をしたいのもあった。
「じゃあレアに頼む。それに…… そうだな、あんまり時間も無いし、今すぐみんなを集めるか」
「は、はい‼‼ って…… 今すぐ? ですか?」
「うん。我、良からぬことをたくらむ者なり」
オスカーはポケットから忍び地図を取り出して開いた。変身術で作ったテーブルの上にそれを広げる。相変わらず、チャーリーとトンクスの名前は練習場にあり、エストとクラーナの名前は見つからなかった。ハグリッドの名前はハグリッドの小屋の中にあるのもオスカーは確認した。
羽ペンを取り出して、オスカーは忍びの地図に文字を書いた。
『ハグリッドの小屋に集合。緊急。オスカー』
自分のカバンから魔法薬学の教科書を取り出して、その文字が書かれていることをオスカーは確認した。レアも自分の変身術の教科書を取り出して確認しており、オスカーの字が地図と同じく現れていることを確認できた。
「取りあえず、チャーリーとトンクスを回収しにいくか」
「わ、分かりました」
オスカーとレアの二人は箒の練習場にいたチャーリーとトンクスの二人を回収し、その後、忍びの地図で八階にいきなり現れたエストとクラーナがハグリッドの部屋に向かうのが見えたので、四人もハグリッドの小屋に向かうことにした。
「で、オスカー、緊急ってなんなんだい?」
「まあ着いてから言う」
「いやにもったいぶるのね、ねえレア、教えてくれない?」
「えっ? お、オスカー先輩が言わないのならちょっと……」
ハグリッドの小屋に向かう道中で、オスカーは一年生の時に何度も何度もルーンスプールの世話の為にこの道中を行き来したことを思い出した。そのころと比べると随分みんな仲良くなれたのではないかとオスカーは考える。
「ほらやっぱりレアポイントをオスカーが稼いでるわ。すっかりオスカーのいいなりじゃないの」
「なんか人聞きの悪いことを言うなよ。それにレアのことを簡単に人に言われたことをやる性格なんて思ってると、全身金縛り呪文でやられる……」
「ちょ…… ちょっとオスカー先輩‼‼」
「へえ、レアは全身金縛り呪文が得意なんだ。決闘トーナメントでは気を付けないとね」
赤と緑のローブがハグリッドの小屋の前に立っているのが見え、それに小屋の中からハグリッドの巨体と黒い小さな影が出てくるのが見えた。ファングはわき目もふらずに小屋に近づいているオスカーの方へ向かってきているようだった。
「お、オスカー先輩、あ、ああいうのはな、内緒ですよ‼‼」
「全身金縛り呪文が使えるのはホントだろ? マッキノンの……」
「ダメ、ダメです‼‼ ほんとに死喰い人になっちゃいます‼‼」
「オスカーに言うとあんまりシャレにならないよね」
「死っていうより女じゃないの」
オスカーはファングの相手をしないといけなくなったので、他の人間の相手をしている暇が無くなった。相変わらずファングはオスカーをよだれだらけにすることに余念が無かったので、杖で浮遊させてずっとお腹をくすぐっていた。
「何なの? 緊急って?」
「そうですよ。結構急いで来たのになんか全然深刻そうじゃないじゃないですか」
「まあちょっと緊急なんだよ。ハグリッドにも入って貰いたかったし」
「おお、何か分からんが何でもやればええ」
エストとクラーナは二人とも仁王立ちで腕を組んでオスカー達を待っていた。オスカーは余り真剣に受け止めずにバックからカメラを取り出した。
「それカメラですか?」
「カメラなんか持ってたの? オスカー」
「結構古いわよねそれ? なんかレンズが二つあるし」
「納屋にあるパパのコレクションに何個か同じ様なのがあった気がするなあ」
「ああ、緊急の要件って言うのはこれなんだ」
四人の言葉を聞きながら、オスカーはあたりを見回してどっちを向いて撮ればいいのかを考え、ホグワーツの城をバックに撮れば一番構図が良いのではないかと思いついた。オスカーはレアにカメラを渡した。
「レア、城をバックに撮ればいいんじゃないか?」
「そうですね、ボクもそう思います」
「なんだ写真を撮るのか? いいカメラだな。オスカー」
「ありがとう。ハグリッド」
いつの間にか腕組みが解けているエストとクラーナはもちろん、他のみんなをオスカーは見回した。結局、ホグワーツに入るときに何も無かったオスカーが手に入れたのは今見渡しているみんなのはずだった。だからクリスマスプレゼントに入れるモノとして、これが一番良いのではないかと思ったのだ。
「緊急とか書いたけどほんとは何も無いんだ。ただちょっとカメラが出てきたからみんなで写真を撮ろうと思ったんだけど……」
「いいじゃないの、まあ去年の劇の衣装で撮った方が良かったかもしれなかったけど」
「まあ騎士団の写真みたいにはトンクスがいる以上なりそうにないし、いいと思います」
「それだとなんかちょっとドジで終わりそうだからダメかも」
三人は良く分からないことで笑っていたし、どうも今回の発案は結構上手くいったようだとオスカーは思った。
「レアが写真を撮るんだ? 写真ができたら貰えるのかな? オスカー?」
「ボクがレイブンクローの友達に現像してもらうことになってるので…… その後オスカー先輩から配って貰えるかと……」
「わっはっは。写真に写るのは久しぶりだな。俺なんかが写っていいのか? オスカー?」
「ハグリッド、写ってる人は多い方がいいと思うんだ。それに写真は後で配るよ。じゃあレア、日が沈むまでに撮ろう」
「分かりました…… 皆さんならんで貰えますか?」
ホグワーツの城をバックに六人は並んだ。レアはそれをカメラのレンズから覗いて、何度かうんうんと頷いた後、カメラに呪文をかけて空中に固定した。その後、オスカー達の方へ走ってきた。
「これでいつでも撮れるはずです…… フィルムに余裕があれば何枚か撮りますけど……」
「じゃあ何枚か撮っといてくれ」
「はいじゃあ、撮ります‼‼」
オスカーは空中に浮いたファングになめられながら何回かシャッターが押されているカメラになんとか笑顔を作ろうとした。今年は去年よりもまともなクリスマスが送れそうだとよだれだらけになりながら考えていた。
写真を撮った数日後、クリスマス前では最終になるレアとの練習で、オスカーがまた椅子に座って待っていると、ちょっと息を切らしたレアがやってきた。
「お、お待たせしましたオスカー先輩…… 写真もできました」
「ありがとう。レア」
レアは自分のカバンからオスカーが渡したカメラと封筒を取り出した。ただ、レアの表情が少し心配そうな顔なのがオスカーには気になった。
「あの…… フィルムを全部現像してもらったんですけど…… ハグリッドの小屋の前で撮った写真に加えて…… 違う写真も出てきたんです……」
「違う写真?」
オスカーには何の写真なのか余り検討がついていなかった。レアは少し申し訳なさげにオスカーに封筒を渡した。
「はい…… 多分、オスカー先輩とご家族の写真だと思うので入れておきました」
「ああ、ありがとう。なんかお金がかかったんなら言ってくれれば渡すよ」
「いえ、それは大丈夫です」
インセンディオを付けた燭台の灯りを頼りにオスカーは封筒を開けた。中には先日撮ったばかりのみんなの写真が十枚ほど入っていて、クリスマスプレゼントに使うには十分な数だった。それにみんな笑顔だった。
その写真の束の一番奥から出てきたのは…… オスカーにはどうしてレアが申し訳なさそうなのかが分かった。最後の写真は小さいオスカーと母親と…… 彼女が写っている写真だった。
トンボこそ写っていなかったが、場所はオスカーが何度も見たことのあるドロホフ邸近くの森に間違いなかったし、こっちに笑いかけてくる三人にオスカーは目を離すことができなかった。見ると心に決めて見る憂いの篩と違って、まるで不意打ちの様に見せられたその写真を見て、オスカーはどうしても目を離すことができなかった。
オスカーにはどれくらい自分がその写真を見ていたのか分からなかったが、やっと写真から目を離すことができた時、みんなや自分がホグワーツの城をバックに笑っている写真とその写真が同時に視野に入った。
どうしても、レアが目の前にいると分かっているのにオスカーには表情をコントロールすることも、閉心術の様に心をコントロールすることができなかった。
写真を撮った事すら覚えていないことが激しく心の中で暴れている気がした。口から血が出るほど歯を嚙みしめていたし、写真を握っていた手が白くなるほどだった。森の中でこれから何が起こるかも知らずに笑っている自分の顔と、ホグワーツでのんきに笑っている自分の顔を見比べて、オスカーは全く自分が後悔も進歩もしていないし、それをあり得ないほど思い知らされている気がしたのだ。
「オスカー先輩…… あの…… 大丈夫ですか?」
「ああ、ごめん……」
果たしてレアの閉心術の相手をしているのが自分で良いのか、それにいつになったら名前や記憶を取り戻すことができるのか、クリスマス前だと言うのに誰かをきちんと祝福できる状態になれるのか、オスカーにはその自信が無かった。
ベッドの上でオスカーは悩んでいた。本当に悩んでいた。オスカーにとってホグワーツに入ってからのクリスマスは色んな事があった。みぞの鏡であったり、セーターが書き換わったり、エストとクラーナが喧嘩したりと本当に色々あったのだ。
しかし、今度の悩みはそれらを全部組み合わせたモノの様にオスカーは感じていた。何せ、もう三時間以上オスカーはベッドの上で悩んでいるのだ。
クリスマスプレゼントを開けて、今年はウィーズリーおばさんからのプレゼントが手編みの手袋に変わっており、もうセーターで悩まなくてもいいと思った後の出来事だった。
すでに朝食の時間は終わって、もう昼食の時間になろうかという時間になってもオスカーは悩んでいた。正直、どうしたらいいのか分からなかった。
すると、オスカーの部屋がノックされた。
「オスカー、入るわよ」
入ってきたのはトンクスだったので、オスカーは一息ついた。
「やっぱり起きてるじゃないの。一体朝食も食べないで何してるのよ」
「何って…… ああ、メリークリスマス、トンクス。クリスマスで最初に会うのがトンクスなのは初めてだな」
「メリークリスマス…… なるほどね」
ベッドに座っていたオスカーの横にトンクスは割り込んで来た。それだけで枕元に置いてあった時計や本がトンクスに吹っ飛ばされて床に転がった。いい加減、トンクスが動くだけで何か引っ掛けたり、壊れたりするのは慣れっこだったのでオスカーは何も言わなかった。
問題なのは二人が座っているベッドに広げられているセーターだった。
一枚は緑色の糸に銀色の糸で見事にセストラルが描かれていた。今にも飛び立ちそうなセストラルは尻尾の毛が二股に分かれている所が印象的だった。
もう一枚は赤色の糸に銀色の糸でトンボが描かれていて、印象的なのはトンボが斜めを向いておらず、セーターの首元の方、真っすぐに上に向かって描かれている所だった。
「詰んだわねオスカー。緑がエストで、赤がクラーナでしょ? でも蛇じゃないのね」
「蛇?」
「だってスリザリンの象徴は蛇でしょう? クラーナのはオスカーの守護霊だから分かるけど…… これセストラルよね? 何でセストラルなのよ?」
「それは…… 多分、俺とエストの杖の芯がセストラルの尻尾だからだろ」
オスカーが二股に分かれたセストラルの尻尾の毛を示して言った。トンクスの髪の毛はご機嫌な時専用のショッキングピンクだった。
「ヒュー!!!! オスカー想われてるじゃないの」
「あのなあ…… 絶対これ夏休みにトンクスが手編みがどうとか言ったせいだろ、あと毎年俺とクラーナのセーターに悪戯するからこんな事になってるんだぞ」
オスカーには想われているというよりもそっちの要素の方が大きく感じた。多分、二人が毎年、毎年ウィーズリーおばさんのセーターに悪戯されているのを見るのが嫌なのだろうと思ったのだ。事実、最初の年はオスカーのセーターをクラーナが着ていただけでエストは大騒ぎしていたし、次の年もその次の年も二人は大騒ぎしていたからだ。
「いいじゃない。ママが言ってたのはこれだったのね、私はこういうの得意じゃないから教えてあげられる人を探してたってわけね、エストはチャーリーのママだろうし」
「クラーナがトンクス先生に、エストがウィーズリーおばさんに手編みを教わってたってことか? 確かに何か時々夏休みに二人組になってたな……」
オスカーは夏休みも学校に入ってからも二人と喋っていたはずだったが、全くこうなるとは予想できていなかった。
「どうしろって言うんだ……」
「どっちか着ればいいじゃないの」
さも当然と言う顔のトンクスの顔を見て、オスカーはため息をついた。正直、オスカーは去年のクリスマスの一件が割とトラウマになっていた。あの時、二人共疲れていたとは言え、あそこまで喧嘩すると思っていなかったのだ。今回のセーターもクリスマスというのが手伝って大きな火種になるのではないかと考え、二人がいるであろう広間に行くに行けなくなっていたのだ。
「ああそうだ、トンクス、あの良く分からない本ありがとうな。なんだったか…… えっと、魔女の真実の姿を見る? 真実薬が無くても見える魔女の心の姿…… ギルデロイ・ロックハート監修…… うわ‼ なんだこれ、八ガリオンもするのか」
オスカーはトンクスから貰った良く分からない本を見て驚愕した。ビラには監修者らしき、イケメンだが何か胡散臭い魔法使いが真っ白な歯を見せてこちらに笑いかけている。そしてその後ろには定価八ガリオンと書かれていたのだ。
「そうよ。一番面白い…… じゃない、オスカーのためになりそうな本を買ってきたのよ。ちなみにこれをホグズミードの本屋で買ったら、ハッフルパフの友達に気が狂ったのかと思われたわ」
「俺も気が狂ってるのかと思った。べゾアール石があったらトンクスの口に無理やりねじ込むとこだ」
ペラペラとめくったが見た感じ、ためになることは書かれておらず、延々と監修者の自慢が書かれているようにしか見えなかった。オスカーにはこの本に八ガリオン出す価値がとてもあるとは思えなかった。チャドリー・キャノンズの優勝にかける八ガリオンと同じくらい価値が無さそうだった。
しかし、なぜかトンクスはちょっとだけニヤニヤしていたので、この本にも何か意味があるのだろうかとオスカーは思った。ただ、ここで杖を使うことはできず、呪文で確認することはできなかった。
「でも今年のオスカーのやつはセンスあったわ。一枚だけ出てきた時には果たし状でも入れたのかと思ったけど。それにあの写真はこのために撮ってたのね」
「それは良かったけど、なんだよ果たし状ってもっとましな例えあっただろ」
トンクスはカエルチョコレートのカードとほとんど同じ外見のカードを持っていた。あほな事を言ってはいたが、なんだかんだカードを持っているトンクスは楽しそうだったので、オスカーは間違ってはいなかったようだと安心した。
「だって、オスカーが手紙で私に告白してくるわけないじゃないの。だったら、果たし状か絶縁状か…… いいとこ吠えメールね」
「俺はどういう存在なんだよ」
何が悲しくてクリスマスに吠えメールを送らなければならないのか。オスカーは少なくともそんな人間になりたくなかったし、周りの皆がそうなって欲しくは無かった。
「まあほんとにこれはセンスあるわ。今年はオスカーとクラーナのセーターに何もしなかったからゆっくり起きたんだけど、そしたらプレゼントにこれが入ってたからオスカーを探しに広間に行ったのに、扉の外でフレッドとジョージが私にエストとクラーナが朝から同じ場所に座ってそわそわしてるって言ってたのよ。それに一向にオスカーが来ないって、だから広間に入らずにオスカーの部屋に来たのよ」
「えーっと…… まあ気に入ってくれたんならなによりだ。みんな同じデザインだけどな」
つまりトンクスは他のみんなに挨拶する前にオスカーの部屋にやって来たらしかった。プレゼントを気にいって貰えたのは嬉しかったが、トンクスがからかうためにやって来たのは明白だった。
オスカーは自分の分のカードを取り出した。カエルチョコレートの偉人が描かれている場所にはオスカー達の写真が、下の説明文にはカードの効果とみんなの名前が書かれている。
「誰かがヤバくなったら熱くなるんでしょ? それとヤバイ人の名前が赤くなるって書いてあるわ」
「まあまだ誰もヤバくなってないから分からないけどな」
トンクスはカードを大事そうに持っていて、その後持ってきた自分のポシェットの中にしまったようだった。
「それで? まあ来年はさらにややこしくするために…… 私が贈らなくてもレアにセーターを送って貰えばいいとして、とっととどっちか着なさいよ」
「いやもう去年のやつを着たままの方が」
「いいからその前のやつ脱ぎなさいよ」
トンクスは無理やりオスカーが着ていた前にウィーズリーおばさんから貰ったセーターを脱がそうとした。オスカーはベッドに広げてあるセーターを巻き込むわけにはいかなかったし、なんだかんだトンクスを力で振り払うわけにもいかなかった。髪の毛や姿は安定しなかったが、オスカーはあくまで男の子でトンクスは女の子だったからだ。
「ほらいい加減観念した方がいいわ。一回、火の雨が降れば地面が固まるわ」
「固まるわけないだろ」
狭いスペースでオスカーのセーターを掴んで離さないトンクスからオスカーはなんとか遠ざかろうとした。するとまたオスカーの部屋がノックされた。
「オスカー、入るの」
「入りますよ、オスカー」
オスカーにはこのあとどうなるのかだいたい分かった気がした。オスカーは絶対にトンクスと同じベッドにいるのは二度とやらない方がいいと二人が入る前から考えていた。
文字通り二人は部屋の中を見て、目を見開いて完全に二秒ほど停止していた。オスカーとトンクスも停止していた。
「なっ…… なっ…… なっああ!! まさかふ…… 二人共起きて来ないと思ったら、も、もしかして、昨日の夜からずっと一緒にいたんじゃないですか?‼」
「えええええええええ!! そ、そうなの!? でも確かに昨日二人共同じくらいの時間に居なくなったの」
オスカーはトンクスのドジが完全に自分にも移り始めているとしか思えなかった。しかもハッフルパフの寮でやったことをドロホフ邸でも再現していて、全く進歩がみられない自分が情けなくなってきた。
「そんなわけないでしょ!! なんで毎回こうなるのよ、誰かがタイミング考えてるんじゃないでしょうね!!」
「じゃあどう説明するんですか!! 二人共、起きて来ないと思ったらオスカーの部屋のベッドで盛ってるじゃないですか!!」
「そうなの!! オスカーの服ははだけてるし、トンクスの髪の毛だって真っ赤なの!! こんなの現行犯以外の何物でもないの!! 大体トンクスには前科があるもん!!」
「セーターだけだし、トンクスの髪の毛は今ので赤くなったんだろ……」
「ああ、もう何なの!! あなた達が二人そろってセーターなんか贈るからじゃないの!! 何よ盛ってるって!! あなた達の方がよっぽどいつも盛ってるじゃないの!!」
なんと今度は全員怒っている様でオスカーには手の付けようが無かった。そもそもオスカーは今年のクリスマスは一度もベッドから動いていないのに災難に巻き込まれていて、もはや自分に安息の地などないのではないかと考え始めていた。
「あれでしょう!! クリスマスの夜、みんながいる中で二人でいる背徳感みたいなのがあるんでしょう!!」
「いくら温厚なハッフルパフでも怒る時は怒るわよ!! 何なのよその背徳感って!!」
「ハッフルパフの寮ではもうやりにくいし、スリザリンの寮には入れないからオスカーのお家でやるなんて、段々と賢くなってるの」
「杖は魔法を使えなくてもしばいたり突くことくらいはできるのよ!! あんた達いい加減にしなさいよ!!」
オスカーにはどうして自分のカードが熱くもならず、自分の名前が赤くならないのかが分からなかった。自分のかけた呪文は失敗したのだろうか? 何度かカードを確認したが、熱くもなかったし、名前の色も変わらなかった。つまり命に係わる災難ではないという事だった。
「これよ、これ!! あなた達が二人そろってこんなの贈るからよ!! どっちかを着させようとしてあんな状態になってたのよ!!」
トンクスはベッドの上に立って、二枚のセーターを二人の前に突き出した。二人はその二枚のセーターを見て、それからオスカーの顔を、その後お互いに顔を見合わせた。
「なんで赤なの?」
「は? なんですか?」
「だから、何で赤なの? スリザリンの色は緑に銀だもん。トンボはオスカーの守護霊だからわかるの。なんで赤を使ったの?」
「えっと…… それは……」
クラーナは声を詰まらせて、オスカーの方を困った顔で見た。しかし、エストがその後何も言わずに真顔でクラーナの方を見ていたのに耐えられなくなったからか、喋り始めた。
「オスカーは…… 組み分けの時にグリフィンドールかスリザリンで組み分け帽子が迷ったって言ってましたから、グリフィンドールの赤とスリザリンの銀色にしてみたらどうかなって思ったんです」
「そうなの?」
「何それ初めて聞いたわ」
エストとトンクスがオスカーの方を見たので、オスカーは答えざるを得なかった。
「それはホントだ」
オスカーがそう言うと、しばらくエストもトンクスもクラーナが編んだはずのセーターを見ており、その間クラーナは落ち着かないようで、二人とオスカーの方を交互に見ていた。
「へえ、てっきり二人共自分の寮の色をセーターの色にしたと思ってたけど違うのね」
「違うの」
「違いますよ」
トンクスに関わることだけ二人は息が合うようだった。正直、オスカーはこの災難続きのクリスマスをなんとか終わらせたかった。そもそもオスカーは朝食さえ食べていなかったのに昼食の時間が近づいていた。
「エスト達のセーターは…… まあなんでも…… 良くは無いけど、なんでトンクスはオスカーの部屋にいたの? アロホモラが要らなかったからコロポータスしてたわけじゃないでしょ?」
「そうですよ!! トンクスは一度も広間に来なかったじゃないですか、スコージファイを使ってないって言うなら、朝起きて直接この部屋に来たってことですか?」
「ほんとになんで今日そんなに言ってくるのよ!! どっちも使ってないし、ハッフルパフ寮でも使ってないわよ!! 二人もオスカーからカードを貰ってるんでしょ? 私はこれ貰ったからオスカーに何か言おうと思って広間に行ったけど居なかったから、この部屋に来たのよ!! それなのになんなのよ!! 二人のどっちかが直接、セーターはどうだったの? セーターはどうでした? って聞きに来てればあんなキャンキャン騒がなくても良かったのよ!!」
トンクスはオスカーが贈ったカードを取り出して、相変わらず髪を真っ赤に染めて怒っていた。相当頭にきているらしかった。ただ、オスカーにはどうにもできなかったし、多分、自分はお礼を言いに来ただけなのに、どうしてこんなに言われないといけないのかについてトンクスは怒っているのだろうとあたりをつけた。
「そんなに怒らなくてもいいでしょう!! キャンキャンって何ですか!!」
「そうなの!! 二人でいた理由にはなってないし、だいたいトンクスが怒る理由なんてないもん!!」
「クリスマスだしそんなにみんな怒らなくてもいいだろ……」
「もういいわよ。どうせオスカーはセーターを交互に着るんでしょ? じゃあ別に今日着なくてもいいわ。お腹減ったし行くわよ」
「え? おい…… トンクス?」
オスカーはそのままトンクスに連れられて、前のセーターのまま部屋から連れ出された。部屋の外にはフレッド・ジョージとレア、トンクス先生がいてトンクスに連れられてでてきたオスカーを意外そうな目で見ていた。
「フレッド、これはとんでもないことになったんじゃないかな?」
「ああジョージ、掛け金は元返しだ」
「せめぎ合ってる状態だと他がその間に成長してくるのよね」
好き勝手なことを言う三人をトンクスが睨んだ。三人では無く、後ろにいたレアがちょっとビビっている様だった。
「トンクス先生、レア、フレッド・ジョージ、メリークリスマス」
「メリークリスマスです。オスカー先輩」
「あんたバカじゃないの、とっとと広間に行くわよ」
ずんずん進みながら廊下に置いてある良く分からない彫像やカーペットの端、鎧、壺なんかに足を引っかけそうになるトンクスをちょっと誘導しながらオスカーは広間に向かっていた。エストとクラーナは追いかけてはこなかった。
「トンクス、クリスマスなんだしそんなに怒らなくてもいいだろ。二人も置いて来ちゃったし…… メリークリスマスもプレゼントの礼も言えてない……」
「うるさいわよ。だいたいなんでオスカーが怒ってないのよ。カードの意味ないじゃないの」
「え? なんで俺が……」
「あのね…… もういいわ。決闘トーナメントで誰かに当たったら絶対名前を赤くしてやるんだから」
二人が広間に入るとさっき部屋の近くにいた人達以外全員がもう起きている様だった。ジニーとロンが入って来た二人を見て、近づいてきた。
「エストとクラーナはどっちが勝ったの?」
「二人とも負けたのよ」
ジニーはそう言うトンクスの顔を不思議そうな顔で見た。ロンの方は一体何の話をしているのかまったくわかっていなさそうだった。
「メリークリスマス、ロン、ジニー」
「メリークリスマス、オスカー、チャドリー・キャノンズの選手名鑑ありがとう……」
ロンはちょっと恥ずかしそうにもごもご言った。オスカーはエストとチャーリーからロンがチャドリー・キャノンズのファンであることを聞いていたので、それを贈ったのだった。ただエストといい、ロンといい、あんな絶対負けるチームの応援をどうしてできるのかは疑問だった。
オスカーとトンクスが机につくと同時に料理が机に現れた。その後二人の真正面にそわそわした顔のテッドが座りに来たのだった。
「パパうるさいわ」
「まだ何も喋ってないだろうドーラ。というか何があったんだ? アンドロメダは今年はもっと面白くなると言って、オスカー君の部屋に行って帰ってこないんだが……」
「だからうるさいって言ってるのよ」
トンクスはテッドに全く取り合う気が無さそうだった。テッドが困った顔でオスカーの方を見てきたが、オスカーももう何がなにやら分からなかった。
「オスカー君…… えーと、エストちゃんとクラーナちゃんはどこに行ってしまったんだい?」
「二人は…… まだいるんなら俺の部屋にいると思います」
テッドは眉を寄せて、必死に状況を理解しようとしている様だったが、当事者の一人のオスカーもそもそもどういう状況になっているのか理解できていなかった。
「うーんと、もうお昼の時間だし二人は他のみんなと一緒に食べないのかな?」
「いいのよ。エストとクラーナは自分の事ばっかりだし、練習だって秘密にするって言うし、そのくせはっきり言わないし…… とにかく待つ必要はないわ」
荒々しい手つきでシチューを食べるトンクスは髪の毛は赤く、やはりまだ怒っているようだった。ときどき思いっきりシチューにスプーンを入れるせいでオスカーの方にシチューが飛んできていた。オスカーとテッドはそんなトンクスを見て顔を見合わせた。テッドはトンクスに聞こえない様にオスカーの耳の傍で喋った。
「ドーラは相当怒ってるみたいだね。僕が誕生日プレゼントを置き忘れた時以来かな? こんなに怒ってるのを見たのは。オスカー君、なんで怒ってるのかわかるかい?」
「そんなことしたんですか…… いや、なんとなく怒ってる理由は分かるんですけど……あそこまで怒る…… うーん」
オスカーは自分が贈ったカードが原因なのではないかと考えていたが、それにしてもここまで怒っている理由は良く分からなかった。
「オスカー、メリークリスマス。カードありがとう。それにしても今年はエストVSクラーナは無かったんだよね? さっきまで二人はここにいたし」
「ああチャーリー、メリークリスマス。万眼鏡のクィディッチ対応レンズありがとうな。まあ、エストとクラーナは喧嘩してないかな」
オスカーはチャーリーと喋りながら横目でトンクスを見た。トンクスはもうシチューを食べ終わった様だった。まだやっぱり髪の毛は赤みがかっていた。
「トンクスはなんで怒ってるの?」
「いやはっきりとは……」
「怒ってないわよ」
「いやドーラはどう見ても怒ってるよ」
「怒ってない」
少しトンクスは意固地になっているようだった。オスカーにはこれに対する解決策はあんまり浮かんではこなかった。そもそもトンクスがなぜ怒っているのかが分からないと解決のしようが無かったからだ。
「ちょっと二人が言いたいことがあるみたいだよ」
聞けばすぐにわかる人を安心させるような深い声が聞こえた。いつの間にか後ろにキングズリーがいるようだった。それにウィーズリー夫妻や他のウィーズリーの兄弟、さっきオスカーの部屋の前にいた四人も広間に戻ってきていた。そしてオスカーの部屋にいたはずの二人もだった。
「なんで二人がセーターを着てるのよ」
トンクスの髪色がやって来た二人を見てようやく赤くなくなった。エストとクラーナの二人はなぜかお互いにオスカーに贈ったはずのセーターを着ていた。確かにエストが赤色、クラーナが緑色のセーターを着ているのはオスカーからするとかなり違和感があった。よく一年生の時、クラーナは緑色のセーターを着ていたと思わざるを得なかった。
「だってトンクスがバカみたいに怒るからじゃないですか、なんか空気悪いですし」
「セーターを着てる理由になってないでしょ。だいたいそんな事したらそのプレゼントの意味ないじゃないの」
「だから着てきたの。結構オスカーのサイズ大きいの」
「当たり前でしょ。そもそも一回同じサイズの作ってるんだからそんなの最初から分かってるじゃない……」
トンクスは額を手で押さえて首を振った。オスカーからするとトンクスらしからぬ知的な行動に見えた。何かいつもと三人の関係が逆転しているような気がした。
「まあとにかく今日はエストのセーターを着てますよ。トンクスが言いたいのはこういう事なんじゃないですか?」
「エストもクラーナのセーターを今日一日は着とくの。スリザリン生が赤い服を着るって結構面白いし、色って色んな意味があるよね」
「あのね…… あんたたちいつかそれじゃすまなくなると思うけど…… まあいいわ。クリスマスなのに怒ってた私が悪かったわ」
何とか丸く収まったようだった。オスカーはちょっと一息ついて、今、広間に全員が集まっていることに気付いた。
「今、みんな集まってるし写真撮らないか?」
「オスカー、あんたがだいたいの原因…… でも写真は撮りたいわね」
「ペンス、カメラを持ってきてくれ」
オスカーがそう言った瞬間にカメラを持ったペンスが現れた。この展開を予想していたのではないかという早さだった。
「オスカーお坊ちゃま。恐縮ではありますが、ペンスめは奥様からしゃったーの押しかたを教えていただいたことがありますので、ペンスにお任せいただければと」
「ダメだ。ペンス。お前も写真に入るんだ。えっと…… みんなで写真を撮ろうと思うんですけど…… 誰か魔法でシャッターを押して貰えますか?」
「じゃあ僕がやろう。それにしても二眼カメラって珍しいね、オスカー君」
トンクスをなだめることもできず、相手にされることもなかったテッドが進み出てくれた。
「これは二眼カメラというのかい? オスカー君、テッド? 私もいくつか持っているんだが、いったいこれはどういう仕組みで……」
「アーサー、それは撮った後に聞いてちょうだい。それにいくつか持っていると言うのも後で聞かして貰いたいわ」
ウィーズリーおじさんはあっという間にウィーズリーおばさんに引っ張られて消えていったので、写真はどうにか撮れそうだった。一行はハグリッドが今年も送ってくれた大きなクリスマスツリーとタペストリーをバックにして写真を撮ることにした。
「そうね、オスカー君の隣が重要になってくるわよ」
「オスカーの隣はペンスを置いとけばいいのよ」
ちょっかいをかけようとするトンクス先生にトンクスが返していて、やっぱり今日のトンクスは一味違うようだとオスカーも思わざるを得なかった。
「その様なことは余りに身に余る行為で……」
「ペンス。写真を撮るときに隣にいることを命じる」
「承りました……」
オスカーが余り屋敷しもべに命じることはしたくなかったが、今回ばかりはせざるを得なかった。ペンスは目をうるうるさせて、今にも泣きそうだった。
「パース、ちょっと手伝ってくれ」
「我らがホグワーツの優等生のパースに手伝って貰えれば一発だ」
「え? 一体何を……」
フレッド・ジョージとパーシーは何か後ろでやっている様だったが、それに注意を向ける前にオスカーは後ろにいたビルに肩を叩かれた。
「なるほどね、オスカー達がやっぱり決闘トーナメントで上がってくるんじゃないかな。他の寮同士でこんなに色々できてる人たちは聞いたこと無いからね。でもオスカー、ちょっとそろそろ色々考えないと…… 仲が良いのも、不味いことになるんじゃないかな?」
「えっと…… ちょっと考えてみるかな?」
ビルの言っていることをオスカーは余り理解できている気がしなかったし、何よりもうそろそろシャッターが押されそうだった。オスカーの隣は結局ペンスとキングズリーだった。
「じゃあシャッター押すよ。三、二、一……」
「ちょっと、パース、押しちゃダメなの!!!!」
「わわ、なんですか!!!! フレッド!!!!」
「なんで私まで押すのよ!!!!」
パーシーとフレッド・ジョージがそれぞれエスト、クラーナ、トンクスをオスカーに向けてシャッターと同時に押したせいで、オスカーは玉突き事故の様に前に押し出されてしまい、そのまま写真を撮られてしまった。
オスカーは何か朝から写真まで、今年のクリスマスは、ずっと振り回されている気がしてならなかった。