一方、逸色ビルの万屋鳥屋。
「うーん、分かったわ」
「あ、本当?!お姉ちゃん」
「話してみるものだな」
包帯をぐるぐる巻きにされた茶色の天然パーマの女性がうなりながらも一応賛成する。
彼女はここの女主人、東宮ひかる。かの有名なトーグーエレクトロニクスの会長の娘、現社長の姪だ。
包帯でぐるぐる巻きなのは知り合いの家で
『つか、何でそんなもん必要なんだよ』
奥の鳥かごから声がする。籠の中には紅白の注連縄をつけたカラスの人形が入っていた。
この鴉人形はガーゴイル、普段はガー助の愛称で呼ばれる錬金術で作られた自動人形だ。
「ウチの教室、それはそれは廃墟みたいになってるからさー」
「それでこんな特殊なもの欲しがったのね」
「ああ、本気でどうしようかと思ったぜ」
「可愛い妹の頼みよ。応えないわけないじゃない」
「ちなみにお兄ちゃんが来たら?」
「もっと無理難題でもやるわよ」
ひかるはずいぶんと弟に甘いらしい。
「明久の方がどうにかできそうだがな」
「なによ?」
「明久の方が学問の使い手としては上、と言いたいんだ」
「………悔しいけど認めざるを得ないわ」
ちょっと悔しそうな顔をするひかる。そう、明久はひかるの実の弟なのだ。姉がやっていた錬金術に興味を示し、めきめきと上達、しかも偶然知った古科学や魔術も齧っており、独自の理論を作り上げている。天才と言うのはこういうものかもしれない。
ちなみに名前は母方の親戚筋であった明奈や明葉の二人にあやかってつけられた。吉井家に色々な事情ができ、明奈と明葉は東宮家に引き取られ。戸籍上は「東宮」の苗字になっているのだが、昔、明久が誘拐されたことを教訓に学校では「吉井」を名乗ることになっているのだ。
『にしてもよー。おかしくねーか? 去年見たときはそこまでボロボロじゃないんだろ?』
「なんだよねー。ガー助、今度来てくれる?」
「だな。俺は見えざる水銀は見えないし」
錬金術師の端くれのはずの雄二だが、見えざる水銀を視覚するのがどうにも不得手らしい。ひかるの理論を借りた
「それにしてもあるのかしら? 部屋をボロボロにする機械なんて」
そんなもの役に立つはずがない。
「あったら凄いよね。とりあえずありがとうね、お姉ちゃん」
明奈が掃除機のようなものを持って立ち上がろうとするが、雄二がそれをひったくって代わりに持ち出て行った。
「あー」
「いいんじゃないの? あれ、結構重いんだしあいつに持たせておけば」
「そんなわけにはいかないよ。提案者ぼくだし。じゃあね!」
ばたばたと出て行った明奈を見送りつつひかるがぼそり。
「あれじゃあ、気が付いてないわね」