Fate/apocrypha La Divina Commedia   作:K-15

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第十二話 悪魔の力

 空中庭園の真上にまで迫ったヒポグリフ。

 地上に居た時にも感じていた事だが、その巨大な建造物の存在に獅子劫は舌を巻く。

 

「驚いたぜ……もう目と鼻の先だってのに細部はまだ米粒みたいに小さいな」

 

「何だマスター、ビビってるのか?」

 

「そんな訳ないだろ。もう聖杯戦争は大詰めなんだ。聖杯を手にして、終わらせる!」

 

 ヒポグリフに向かって来るのは強風だけでない。空中庭園に備えられた防衛装置が、強力な魔力をレーザーのように発射して来た。

 

「みんな、振り落とされないでよ!」

 

 アストルフォが風にかき消されないように叫ぶと無数のレーザーが四方から襲い掛かって来る。翼を羽ばたかせ右へ左へ動く。だが相手のレーザーは無尽蔵に、数えきれない数が向かって来る。その数にアストルフォも少し顔を歪ませた。

 

「う゛ぇ!? ちょっとマズいかも」

 

「もっと近付け、ライダー!」

 

 セイバーが叫ぶと赤雷が光り、接近するレーザーを撃ち落として行く。アストルフォはそれに応じ頷くと、ヒポグリフも翼を折り畳み空気抵抗を減らし空中庭園に目掛けて一気に詰め寄る。空気をかき分け、加速するヒポグリフ。

 全身の羽毛が激しく揺れながら弾丸のように突き抜けて行く。

 その中でセイバーは獅子劫の腕を掴むと剣を右手に取り向かって来るレーザーを振り払った。激しい閃光を撒き散らしながら刃はレーザーを撃ち落とす。

 

「突入するぞマスター! 一番乗りは俺達だ!」

 

「ここからか!?」

 

「おうとも! 気合い入れろよ!」

 

 ヒポグリフの背中から飛び降りる二人は重力に引かれて落ちて行く。それを見るダンテは隣のジャンヌに視線を向けた。

 

「こりゃデンジャラスガールに先を越されちまうな。どうするお嬢ちゃん?」

 

「今の私はルーラーです。見た目は変わりませんがレティシアではありません」

 

「そうかい? まぁ細かいことは気にすんな。俺達も行くとするか。エスコートは必要か、英雄様?」

 

「私は問題ありません。ですがダンテ、貴方は――」

 

 ジャンヌも隣のダンテに視線を向けるが、その時にはもう彼の姿は見当たらない。先に飛び降りたセイバー達の方を見れば、それに続いて赤いロングコートを風になびかせながら飛び降りるダンテの姿が。

 小さなため息をつくジャンヌ。

 

「全く……人の話は最後まで……アストルフォさん、私も空中庭園に乗り込みます。ご武運を!」

 

 ヒポグリフの足から手を離すジャンヌもまた重力に引かれて落ちて行く。

 重たい荷物が失くなり身軽になるヒポグリフ、その背中でアストルフォは夜空に視線を向けた。

 

「ボクもすぐに追い付くからね! それじゃ行こう、ヒポグリフ! このデッカイ要塞をぶっ潰すぞ! ようやく真名を思い出したんだもん。惜しげもなく全開で行くよ!」

 

 今宵は新月。空を見渡せど星々の輝きしか見る事は叶わない。この僅かな時間こそがアストルフォの真の能力が開花する。ハードカバーの書物を取り出し、真名を唱える事で秘められた宝具の力が発揮した。

 

「我が名はシャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ! いざ勝負!」

 

 庭園を囲むように配置された二十メートルを超える巨大な漆黒のプレートが複数、ヒポグリフとそれに乗るアストルフォに狙いを定めると強力な魔力の光弾を無数に発射した。

 夜空を流れる彗星の如く、迫る光弾に対してアストルフォはそれでも口元に笑みを浮かべている。

 

「今のボクは一味も二味も違うよ。我が心は月もなく……恐怖に震え、去れど断じて退きはしない。宝具開放、キャッサー・デ・ロジェスティラ!」

 

 アストルフォが宝具の真名を唱えると、手に持つ書物からページがちぎれ飛ぶ。それも一枚や二枚ではなく、数え切れない紙がヒポグリフの周囲に舞い上がる。しかしどれだけの数の紙がちぎれ飛ぼうとも書物のページは変わらずに存在していた。

 宝具キャッサー・デ・ロジェスティラはその力を発動させる。ちぎれ飛ぶ紙が太陽の輝きのように発光し、迫る光弾を受け止めた。

 大地を容易く砕くだけの威力を持つ空中庭園から発射された光弾。発光する紙はその全てを完全に無効化した。

 

「えへへッ、どんなもんだい! ボクもまだ聖杯を諦めた訳じゃないからね。このままこの要塞をぶっ潰して良いとこ取りしちゃうぞ。行くよヒポグリフ!」

 

 手綱を握るアストルフォはヒポグリフを加速させ、空中庭園を囲む漆黒のプレート目掛けて一直線に突き進む。

 発動した宝具により守られている今のアストルフォはどんな攻撃も寄せ付けない。光弾を弾きながら、プレートにぶつかって行くヒポグリフはそのまま防衛装置を破壊した。

 

「まずは一つ。このまま全部やっちゃうぞ!」

 

///

 

 庭園内へと潜入するのはセイバーとそのマスターである獅子劫。何事もなく着地したセイバーは獅子劫の体を持ち上げ地に足を着けさせる。

 

「着いたぜ、マスター」

 

「パラシュートもなしに空を飛ぶのは流石にこたえるな……」

 

「何情けないこと言ってんだよ。さぁ、聖杯を奪いに行くぜ」

 

「あぁ、行く――」

 

 ここは敵の本拠地、侵入者をそのままにしておく事など有り得ない。一息すら付かせる暇など与えず、鋭い矢の一撃が獅子劫の心臓部目掛けて飛ぶ。

 しかしそれを見逃すセイバーではなく、瞬時に前に出ると向かって来る矢に白銀の大剣を振り下ろした。

 

「少し前までは味方だった筈なんだがな。昨日の味方は今日の敵か」

 

「私には私の願望がある。貴様に聖杯は渡さん。だがそれ以上に……」

 

 怒気を孕むアーチャーの視線は空を見上げ、握る弓で無数の矢を放つ。空気を引き裂きながら飛ぶ矢だが、星明りとは違う激しい閃光と轟音が響き、矢は空中で破壊されていく。

 そして真っ赤な影が庭園内にまで到達すると、目を見開くアーチャーの眼が血走る。

 

「待っていたぞ、この時を……ダンテェェェッ!」

 

「そう吠えるな、耳が痛くなっちまう」

 

「貴様のような悪魔と語る舌は持たん! ここで殺すッ!」

 

 ゆっくりと歩を進めるダンテに対してアーチャーはすかさず矢を射る。右手のアイボリーの銃口を向けトリガーに指を掛けるが、上空から降りて来た彼女の一振りが矢を弾き飛ばす。

 続けて現れたのは旗を持つ聖処女、ジャンヌ・ダルク。

 

「弓を引きなさい、アーチャー!」

 

「お前は……あの男が言っていたルーラーか」

 

「天草四郎はルールに反して大聖杯の力を行使しようとしています。そうなれば――」

 

「知っている。だがそれは私が望む世界……子ども達が皆愛される世界……それが叶うのならば!」

 

「アーチャー……貴方は……」

 

 ジャンヌの言葉は彼女に届かない。それを察するダンテは彼女の肩に手を置く。

 

「狙いは俺なんだろ? お嬢ちゃんは先に行きな」

 

「ダンテ……ですが……」

 

「時間はそんなに掛からないさ。それより聖杯の方がヤバいんだろ? 間に合わなくなっても知らねぇぞ」

 

 数秒思考するジャンヌだが頷くと最後に隣に立つダンテに視線を向けた。

 

「わかりました。それと同じことを何度も言わせないで下さい。今の私はレティシアではありません」

 

「英雄様だろ?」

 

「ここは任せます。セイバーとそのマスター、私達は奥に進みますよ」

 

 言うとジャンヌはこの場から走り出し、セイバーと獅子劫もチラリとダンテの姿を最後に見るとジャンヌの後に続いた。

 残されるダンテとアーチャー、二人の視線が交わる。

 

「それじゃ……時間もないしさっさとおっ始めるとするか」

 

「悪魔め……私は貴様のような人間を決して許さない! そのせいでどれだけの子ども達が傷付いたと思っている! こんな悲劇はもう繰り返させない。だから私は聖杯を手に入れる! 貴様のように心を持たぬ悪魔は、私の全てを使ってでも排除する!」

 

「なるほど。まぁ、こっちとしても全力で来てくれねぇとつまんないからな。ぶっ潰させて貰うぜ、英雄様?」

 

「私は悪魔などに負けはしない……」

 

 アーチャーは懐に手を伸ばすとある物を手にした。それは禍々しい雰囲気を纏う猪の皮。彼女を見るダンテの眼つきも変わるが、止める間もなくアーチャーは猪の皮を自身の体内へと吸収させた。

 

「おい、止めろ!」

 

「悪魔を殺す! その為ならば私はッ! アグリオス・メタモローゼ!」

 

「ッ!? やりやがった……」

 

 アーチャーの中からドス黒い魔力が爆発的に溢れ出る。同時に彼女の体にも変化が現れた。瞳は獣のように、髪の毛も灰色に変わる。両手足には鋭い鉤爪。体に装備する防具も黒い剛毛に変化し、その姿は人間の物では失くなってしまう。

 女神アルテミスが地上を罰するべく送り込んだ魔獣カリュドンの皮。その皮を取り込んだ者に魔獣の力を与える呪いの宝具。

 内側から溢れ出るドス黒い魔力、怒りと殺意、それは――

 

「ダンテ! 貴様を殺す! 私の全てを使ってでも貴様は必ずッ!」

 

「オイオイ……それが英雄様の力か? そんなのは英雄でも何でもない」

 

 

 

第十二話 悪魔の力

 

 

 

 地を蹴り弓を引くアーチャー。放たれる矢もドス黒い魔力を帯びており、攻撃力として見ただけでも相当な物になっている。だがダンテはリベリオンを構えると真正面からコレを受け止めた。振り下ろす刃は漆黒の矢を全て斬り落とす。

 

「美人の顔が台無しだぜ?」

 

「殺す……殺してやる……殺してやる……コロシテヤル!」

 

「こりゃあ残念だ。もう英雄様でも、人間でもなくなったか」

 

「それは貴様だ! 人間の姿をした悪魔め! 私の理想を叶える為、子ども達の無念を晴らす為、悪魔は殺すッ!」

 

 再び弓を引くアーチャー。無数の漆黒の矢が放たれ、ダンテも握るリベリオンを振り回す。音を突き破る速度で迫る矢。振り回されるリベリオンは全てを切り払い、どれだけの矢を受けてもヒビ所か傷すら付かない。

 リベリオンを肩に担ぎ、ダンテは相手に向かって挑発する。

 

「どうした、もう終わりか? こんなんじゃ悪魔を殺すには力不足だな」

 

「貴様を殺す! 殺さなくてはならない! 私が望む世界に悪魔など入らせぬ! タウロポロスッ!」

 

 弓を力一杯、引きちぎれるのではないかと言うくらい引くアーチャーは漆黒の弓を更にドス黒く染めて空に目掛けて矢を放った。雲に穴を開けて突き抜ける矢。

 そして空を漆黒に染め上げると上空から無数の矢が雨の如く降り注ぐ。それもダンテに目掛けて一直線に。

 見上げるダンテはリベリオンを背負うとアーチャー目掛けて全力で走り出す。瞬間、今まで立っていた場所に漆黒の矢が数え切れない程突き刺さる。

 

「見た目は派手だが……悪いが今は急いでるからな。遊んではやれねぇぞ」

 

 エボニー・アンド・アイボリーを構えるダンテは走りながらトリガーを連続して引く。発射される弾丸は庭園内の柱へ撃ち込まれ、白い砂埃が舞うと柱は自重に耐え切れず根本から倒れる。

 視線を変えもう一本の柱にも弾を撃ち込む。

 二本の巨大な柱が倒れ、その影に隠れるように走るダンテ。だが漆黒の弓は石で作られた柱など障害にならない。数秒後には柱は粉々に砕け散り、舞い上がる砂煙で視界が効かなくなる。

 瞬間、煙の中から光る物が飛来した。反応するアーチャーは左手の鉤爪で迫る物体を振り払い、甲高い金属音と火花が飛び散る。

 

「小賢しい! 上だな!」

 

「弾丸の雨を浴びな!」

 

 アーチャーの更に上空へと一瞬の内に飛び上がったダンテはこのまま一方的に攻撃されてばかりではない。重力に引かれ落下しながらも体を回転させトリガーを引きまくる。マシンガンのように発射される大口径の弾丸。

 だが宝具により強化されたアーチャーも負けてはいない。鋭い眼光を向け弓を引くと、ダンテに負けない程の矢を放つ。強化された矢は弾丸など簡単に弾き飛ばし、再びダンテに襲い掛かる。

 

「当たるかよ」

 

 ダンテは体をよじりながら両手の銃をホルスターに戻し手を伸ばす。ついさっきアーチャーが鉤爪で弾き飛ばした物体を手に取った。リベリオンを持つと空中で振り回し漆黒の矢を斬り落とす。そしてそのまま自重と重力を合わせ、真下のアーチャーの頭部目掛けて刃を振り下ろした。

 

「チッ……すばしっこい奴だ」

 

「悪魔……悪魔ぁぁぁッ!」

 

「そう叫ばなくても聞こえてるよ」

 

「死ねェェェッ!」

 

 その場から飛び退き攻撃を避けるアーチャー。獣のような雄叫びを上げ、ダンテに詰め寄ると次は両手の鉤爪で連続攻撃を仕掛ける。

 本来のアーチャーの筋力はそこまで高くはないが、今の彼女ならセイバーやバーサーカーが相手であろうと一撃で致命傷を与えられる。それが人間相手ともなれば死は避けられない。

 だがダンテはその全てをリベリオンのチャンバラで防いでいく。

 

「こんな所で死ぬなんて御免だ。せめて最後にピザくらい食いたいぜ」

 

「減らず口を! 只の人間がサーヴァントに勝つことなど!」

 

「やってやろうか?」

 

「グガァァァッ!」

 

 リベリオンで袈裟斬りするダンテに鉤爪で振り払うアーチャー。火花が飛び散り、アーチャーの体が後方へ押し込まれた。しかし距離が開けば彼女が得意とする弓が光る。

 けれどもダンテは余裕の表情を崩さない。

 

「当てられるか?」

 

「舐めるナァァァッ!」

 

 弓の弦を力一杯引き漆黒の矢が放たれる。ダンテもリベリオンに魔力を流し、刃を振り下ろすと赤黒い衝撃波を飛ばす。互いの一撃がぶつかり合い、轟音と衝撃波で土煙が上がる。

 視界が悪くなる瞬間を突き上空へ飛ぶダンテ。だがその位でアーチャーは欺けない。

 

「同じことをした所で私に勝つ道理などない! タウロポロス!」

 

「そうでもないぜ?」

 

 降り注ぐ無数の矢。身を捩りながらエボニー・アンド・アイボリーを取り出すダンテはアーチャー目掛けてトリガーを引く。

 

「当たるものか」

 

「いいや、ビンゴだ」

 

 弾丸がアーチャーに直撃する事はなかった。強化された身体能力で右へ左へと飛ぶと簡単に避けてしまう。だがダンテの狙いはそれではない。

 アーチャーが放ち、ダンテが避けた数え切れない矢、それらは全て空中庭園を貫いていた。足場にしていた地面はもはやボロボロ。そこに狙いを付けたダンテはトリガーを引き、アーチャーの足場が完全に崩れた。

 

「なに!? ぐッ!?」

 

「たたっ斬る!」

 

 ガレキと共に庭園内部へと落ちて行くアーチャー。しかし魔獣リュドンの皮により強化された彼女は魔力を流すと背中から黒い翼を広げるが、彼女目掛けて急降下するダンテはリベリオンを力任せに振り下ろす。

 流石のアーチャーでも空中での反応は遅れてしまい、防ぐ事もできず右翼を切断されてしまった。

 

「があ゛ぁぁぁァァァッ!?」

 

 切断面からは血が流れ、張り裂けんばかりの悲鳴が鳴る。そんな状態で何ができる筈もなく、アーチャーは錐揉みしながら内部の床へ激突した。

 それから少し遅れて天井部分のガレキも落下し広範囲に土煙が舞う。内部では視界が全く効かなくなる中、ダンテは真っ赤なロングコートをなびかせながら床へ着地した。

 

「おい、どうした? もっと来いよ。悪魔を殺すんじゃなかったのか?」

 

「ぐぅッ!」

 

 煙を晴らしながら矢が飛来するが顔をわずかに傾けるだけで避けてしまう。

 地面を蹴るアーチャーは横へ飛び、壁にまで到達すると両足の鉤爪をアンカーのように食い付かせ、そのまま弓を引いた。

 更に壁を蹴り次の壁へ。壁を引っ掻きわずかな時間体を支えまた弓を引く。そしてまた飛ぶ。

 縦横無尽に落下した室内を飛び回り、狙いを定め無数に弓を放つ。

 

「肉片一つこの世に残さん! 吹き飛べぇぇぇ!」

 

 四方八方からダンテに目掛けて迫る漆黒の弓。それら全てを避ける事は不可能。ダンテは避けようともせず、矢の雨の中に飲み込まれた。轟音と衝撃が室内に広がり、床へ戻るアーチャーは射抜いた先を見つめる。

 確実に当てた、それでも何故か確証が持てず弓は握ったままだ。

 瞬間、物凄い量と密度のオドが爆発し、自らが放った弓が弾き飛ばされていく。反応するアーチャーは身を屈め飛んで来た弓を避ける。そして立ち上がった先に見えたのは、キズ一つ負っていないダンテの姿。

 

「貴様……一体何を!?」

 

「行くぜ! 終わりだ!」

 

「なッ!?」

 

 加速するダンテはリベリオンの切っ先を突き出す。弓を手放し、咄嗟に両腕で防ごうとするがもう遅い。刃は深々と突き刺さり背中まで貫通し、そのまま壁にまで激突した。

 

「ぐはァッ!?」

 

 血反吐を流し、腹部に突き刺さるリベリオンを押し返そうと両手で刀身を掴むがびくともしない。弓もなく、鉤爪もダンテの体にまでは届かない。マスターからは実質魔力を供給されているのみで体を治癒させる事もできない状況。

 

「ぐぅ……う゛ぅぅぅッ! 私は……私はこんな所で! 殺してやる……殺してやる!」

 

「往生際の悪い奴だ。だったら……」

 

 リベリオンに魔力を流し込み刀身が赤く発光する。最後の一撃を与えんと力を込めるダンテ、そして覚悟するアーチャー。それでも目の前の男を殺そうと左手は刀身を掴み、右手は限界まで前に突き出す。

 

「ぐぅゥゥゥ!」

 

「……止めだ」

 

 

 突然リベリオンを引き抜くダンテ。自由の身になるアーチャーだが受けたダメージは重く、腹部から大量の血を吹き出すと前のめりに倒れた。

 這い蹲りながら、血反吐で汚れた口元と血走る瞳でダンテの事を見上げる。

 

「何故……殺さない? 私のことを見下して! やはりお前は――」

 

「泣いている」

 

「なに? それが何だと言うのだ!」

 

「お前だってわかってる筈だ。その力を使う意味を。悪魔を殺すんだろ? お前がそうなっちまってどうするんだ?」

 

「私は……愛されぬ子ども達が幸せになるようにと戦った。だがサーヴァントとして召喚された現代でさえも、不幸は続くばかり。私は未来の為に戦ったのに……そんな子ども達をお前は殺した! 聖杯を使えば救えたのに! だから私は……子ども達を救えるのなら何だってやる!」

 

「そうか。そりゃお前の言う通り愛されないガキは不幸なのかもな。けどな、不幸だろうと何だろうと負けない強さを人間は持ってる。お前はそれを捨てて悪魔になった」

 

「フフフ……知ったような口を……」

 

「知ってるさ。昔の俺がそうだった」

 

「え……」

 

 ふと、アーチャーの瞳から殺意が消える。血溜まりが広がる床、ダンテは言葉を続けた。

 

「お前が言う理想が叶えば俺のオヤジとおふくろは生き返りでもするのか? 今更しゃしゃり出られても鬱陶しいだけだな。オヤジには一発蹴り入れるとして、おふくろはうるさそうだな。毎日ピザ食って、気分が乗った時だけ仕事する生活の方が俺の性に合ってる。二人が居たらそんなこともできないかもな」

 

「お前もそうだったのか……ならば何故、私の思いがわからない……」

 

「独り善がりが過ぎるぜ。まぁ、もう話すこともないだろ。あとは一人で考えな」

 

「だったらこれだけで良い、教えてくれ……何故私を殺さない?」

 

「言わなかったか? お前は泣いている。悪魔は泣かない。涙を流すお前はまだ人間だ。俺の仕事は悪魔を狩ることだからな」

 

「たったそれだけのことで……」

 

 最後の言葉を告げるとダンテはこの場から去って行く。残されるアーチャーは二度目の寿命が尽きるその時が来るのを待つしかできない。彼女の命も風前の灯火だ。

 

「何が正しくて、何が間違っていたんだ……そんな簡単なことでさえも、私は二度目の生を受けても迷ったままだ。アルテミス……私は……アタランテはもうすぐ貴方の元へ戻ります




 黒のライダーの次回予告~!
 今回のゲストは赤のセイバーさんです。はい、拍手~!
 何で俺がこんなことしないといけないんだ?
 まぁまぁそう言わない。それよりも! 次回は赤のアサシンことセミラミスとの戦い、自信の程は?
 あるに決まってんだろ? 俺が負ける筈がねぇ。そして聖杯を手にして俺は願いを叶える! そんでもってダンテ! テメェもぶっ潰してやるからな!
 でも一回負けてますよね? 秘策とかはあるのですか?
 あんなの勝負じゃねぇからノーカンだよ、ノーカン。騎士としてアイツは決闘で勝負を着ける。全力の宝具をぶちかましてねじ伏せてやるよ
 おぉ!? それは期待できそう。次回! アストルフォ、漁夫の利を得るにド~ントミスイット!
 オイ!
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