Fate/apocrypha La Divina Commedia   作:K-15

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最終話 英雄

 鮮やかに咲き誇っていた花々は枯れて朽ち果てている。広がる暗雲、そんな中で白い衣装は酷く浮いている。

 歴代の魔術師達が集めた魔力の結晶、万能の願望器である大聖杯は今や悪魔によりその能力を使われ役目を果たそうとしていた。

 力なくぶら下がる両腕、焦点の定まっていない眼。立つ事すらできなくなった時、彼女が消える時。

 天草四郎はそんな彼女の元へ必死の思いでやって来た。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、大聖杯! 私の願望を叶えろッ!」

 

 走り寄る彼は地面に膝を着くと死に体の彼女へ縋り付いた。白い衣装を纏う彼女の体を力一杯指で抑え込む。彼の言葉はちゃんと耳に届いたのだろうか。数秒遅れて頭を動かす彼女はゆっくりと唇を動かした。

 

「残る魔力は十パーセントにもなりません。大聖杯として現状を維持するのも困難です」

 

「そんな!? いや……器が残っているなら魔力はまた溜め治せる。何百年掛かろうとこれだけは!」

 

「そうはさせません、天草四郎!」

 

 振り返った先に居るのは鉾を向けるジャンヌの姿。

 さっきまで大聖杯に懇願していた天草四郎は立ち上がると、その瞳も鋭い元へと変わっていく。

 

「驚いた、ここまで来たのですね」

 

「貴方の野望は潰えました。この光景……大聖杯にもはやその力は残っていない」

 

「確かにそうです。ですが私の野望が潰えた訳ではない。器はまだ残っている」

 

「貴方と言う人は! 人類救済などと、そのような願いは間違っています! 私達サーヴァントは--」

 

「もはや話し合う段階は終わっている。まだ私の前に立ち塞がると言うのなら、互いの刃を交えるしかない」

 

 言うと四郎は腰の刀を抜いた。言葉はもう通じない。

 覚悟を決めたジャンヌも旗の柄を地面に突き立て、腰の剣に手を掛ける。瞬間--

 

「その必要はねぇぜ」

 

「え……」

 

 赤い影が飛んで来ると刀を構える四郎と激突した。刃と刃がぶつかり合いギリギリと音を立てる。

 襲撃に対して瞬時に反応した四郎ではあったが、眼前の相手に怒号を飛ばす。

 

「セイバァァァッ! ここまで来て私の邪魔を!」

 

「当然だ! 聖杯戦争はサーヴァントが一人になるまで戦い合う。テメェだってこの聖杯戦争に参加してるんだ。だったらぶっ倒すだけだ!」

 

「度し難い!」

 

 セイバーを押し返す四郎。一旦距離を離す両者だが一対一での戦闘能力ではセイバーの方が上。地面を蹴り再び距離を詰めると素早く袈裟斬り。

 迫る白銀の大剣にどうにか動きを合わせるので四郎は精一杯。

 斬り上げて袈裟斬り、逆袈裟斬り、もう一度振り下ろす。が、切っ先は地面を突く。

 近接戦闘では勝てぬと見た四郎が後方へ飛び退いた。それを見てセイバーも大剣を肩に担ぐ。

 

「へへ、大層なことを言った割には俺の方が強いみたいだな。けど時間もねぇからよ、一瞬で終わらせるぜ」

 

「くっ! こんな所で終わらせる訳にはいかないんだ!」

 

 魔力を放出させるセイバー、大剣の鍔が変形し必殺の宝具を叩き込むつもりだ。一方の四郎は刀を自らの右腕に添える。

 

「腕を捨てるくらい! 右腕・零次収束!」

 

 刃が右腕を斬り落とす。それは同時に彼の魔術回路を切断し、膨大な魔力が暴走する。

 

「クラレント・ブラッドアーサーッ!」

 

 同様にモードレッドも必殺の一撃を放つ。強力な赤い魔力の波動が唸りを上げ一直線に天草四郎に向って突き進む。が、必殺の一撃にはなりえなかった。

 四郎の前には斬り落とした腕を媒体とし疑似ブラックホールが発生し全てを飲み込んでいく。

 

「何だよ、そりゃ!」

 

「ここで聖杯を失う訳にはいかない! 私の体に変えても聖杯だけは、人類救済は!」

 

「だったらまとめてぶっ飛ばす! うおおおッ!」

 

 更に魔力を高めるモードレッドと、それを飲み込まんとする天草四郎。衝突する魔力の流動に空間が歪み、枯れた草花が四方八方に飛び散る。

 瞬間、両者の技は衝撃となって弾け飛んだ。まるで爆発が起きたかのように天草四郎とモードレッドも後方へ吹き飛ばされる。

 後退りながらも着地する四郎は直ぐ様正面に刀を構えると、そこには拳を振り被るモードレッド。

 

「貰ったぁぁぁッ!」

 

「何が!」

 

 顔面に叩き込まんとするモードレッドの強烈な右ストレートを首を傾けるだけで躱す。隙かさず握る刀で腹部を突こうとする。が、四郎は目を見開き動きを一瞬止めた。

 

(何故両手が空いている? 剣は--)

 

 周囲を警戒するがそんな物はどこにも見当たらない。

 当然だ。モードレッドが狙っているのは天草四郎ではない。

 

「まさか!?」

 

「よそ見してんじゃねぇよ!」

 

 頭部を狙ったハイキックが迫るが四郎は残る左腕でこれを受ける。しかし強力なキックに耐えられず刀をこぼしてしまう。だが今はそんな事を気にしている暇はない。

 地面を蹴り、天草四郎は彼女の前に飛び出た。

 

「止めろッ!」

 

 見えるのは彼女、聖杯目掛けて一直線に飛ぶ白銀の大剣。聖杯を守らんと立ち塞がる天草四郎だが、弾丸の用に突き進んで来る切っ先に腹部を貫かれる。それでも勢いは止まらず、背中まで突き抜ける血糊が付いた剣身が四郎の体を飛ばす。その先にあるのは聖杯--

 

「ぐぅッ!? 止めろ……聖杯は……聖杯だけは……」

 

 二人の体をまとめて貫くモードレッドの大剣。聖杯が纏う純白の僧衣は天草四郎の血で汚れてしまっている。そして天草四郎も、自らが斬り落とした右腕と暴走させた魔術回路、モードレッドの一撃を受けてもはや死に体。

 残る手を大剣の柄に伸ばし必死に引き抜こうとするも、血反吐が溢れるだけでそれだけの力も残っていない。

 

「終われない……こんなことで……聖杯は……」

 

「上手くいったぜ。吹っ飛ばされた時、咄嗟に思い付いた戦法よ。柄を地面に突き立てて地面越しに魔力を流し込んで遠隔操作で剣を飛ばす。なかなか良いじゃねぇ……か」

 

 天草四郎に詰め寄るモードレッドは大剣を引き抜き肩に担いだ。その拍子に四郎は力なく仰向けに倒れ込むも、聖杯は生気のない瞳で俯向いたまま。

 

「向こうはどうなってる?」

 

 見る先は魔帝と戦うダンテ。

 魔人化したままのダンテはもう何本目かの触手をリベリオンで叩き斬った。モードレッドの声を耳にすると元の人間の姿へと戻りながら後ろに振り向く余裕さえ見せる。

 

「終わったのかデンジャラスガール?」

 

「当たり前だろ? そっちもさっさと終わらせろ」

 

「わかってるよ。おい、ムンドゥス! ここらで決着付けようぜ!」

 

 ガンホルダーからエボニー・アンド・アイボリーを取り出すダンテは両腕をクロスさせ二の銃口に魔力を集中させる。赤い魔力が収束し、ムンドゥスのむき出しの眼球の一つに狙いを定めトリガーを引こうとしたその時、伸ばされる触手が左手の銃を弾き飛ばした。

 

「ッと--」

 

「何やってんだよ!」

 

 飛び出すモードレッドが溢す銃、アイボリーをキャッチしダンテと肩を並べる。横並ぶ二人、その口元は不敵な笑みで釣り上がっていた。

 

「終わらせるんじゃなかったのか?」

 

「そうだよ。ここが見せ場だ、邪魔すんじゃねぇぞ」

 

「だったら--」

 

 ふと気配を感じ取り振り返る。視線を向ける先では片腕を失い、溢れ出る血で塗れた天草四郎が無反応のまま立ち尽くす聖杯に手を伸ばしていた。

 

「ほんの僅かでも……魔力が残っているのなら……わた……願い……」

 

 残る魔力を絞り出し魔術回路から流し込む。深々と空いた腹部の傷がジワジワと回復していく。遠目からそれを眺めるモードレッド。

 

「アイツもなかなか往生際が悪いな」

 

「その銃はそっちに使え。合言葉は知ってるか?」

 

「知るかよ。でも今だけは付き合ってやる」

 

 互いに背中を合わせる。ダンテは魔帝を、モードレッドは天草四郎を。

 右腕を伸ばし照準を合わせる二人は白と黒の銃のトリガーを同時に引いた。激しいマズルフラッシュと共に収束された魔力弾が飛ぶ。

 

『ジャックポットッ!』

 

 二人の声が重なった。

 虹色に輝く魔力弾は狙った方向へと飛んで行き、ムンドゥスに撃ち込まれた弾は魔帝を再び地獄の底へと封印する。ブラックホールの用にスライム状のムンドゥスの体が飲み込まれていく。

 

「ぐお゛お゛お゛ォォォッ!? まだだ! アレさえ使えるのならまだ!」

 

「残念だったな。それはナシだ」

 

 ダンテが言うとモードレッドにより放たれた魔力弾が天草四郎の後頭部を貫いた。風穴が空き、力なくうつ伏せに倒れ込む。そして着弾点を起点とし封印の扉が開かれる。

 天草四郎と聖杯、二人は開かれた闇の中へ飲み込まれていった。その先はどこへ続いているのか。彼の姿は一瞬で見えなくなる程遠くに行き、聖杯も彼と共にどこかへと消えていく。

 聖杯が失われた今、その力も失われる。魔帝ムンドゥスは満足に抵抗すらできず、彼らと同じ場所へ飲み込まれていく。

 

「ダンテ、忘れるな! 世界を覇するのはこの我だ! 必ず現界してみせるぞ!」

 

「あばよ! おとなしくまたお寝んねしてな」

 

「お゛お゛お゛ォォォッ!?」

 

 

 

 最終話 英雄

 

 

 

 魔帝が消えた。それは固有結界が消える事と同意義であり、宇宙空間に居たダンテ、モードレッド、ジャンヌは元の空中庭園の最深部へ戻って来た。

 その事に胸を撫で下ろすジャンヌ。

 

「終わったのですね。悪魔の驚異も、聖杯大戦も……」

 

 静寂とした空気が広がる。それは晴ればれとした空のように。時を同じくしてセイバーのマスターである獅子劫もやって来る。

 

「良くわからんが……聖杯はどうなった?」

 

「天草四郎はもうこの世に居ません。共に聖杯もこの世から消えました。二度と聖杯戦争が開かれることもないでしょう」

 

「それはぁ……つまり?」

 

「私も現世から去る時が来たようです。この体も彼女に返さなければ」

 

 ジャンヌが言う事をすぐには理解できない。一方で彼のサーヴァントであるモードレッドは握る銃を人差し指でクルクル回しながら、持ち主であるダンテに返す。

 

「ほらよ、お前のだろ?」

 

「サンキュー、一応愛着は持ってるからな」

 

「ダンテ、聖杯戦争のルールは知ってるか?」

 

 銃を受け取るダンテはガンホルダーに戻しながら眉間にシワを寄せる。

 

「そう言えば最初にお嬢ちゃんから聞いたな。で、それがどうした?」

 

「聖杯戦争は最後に残った魔術師とサーヴァントが勝利し、聖杯を手にして願いを叶える。聖杯はなくなっちまったが聖杯戦争が終わった訳じゃねぇ。ここにはまだサーヴァントが二人居る」

 

 白銀の大剣を手に取るモードレッドはその切っ先をルーラー、ジャンヌ・ダルクへ突き付ける。

 ダンテも背中のリベリオンを手にし、モードレッドとジャンヌの間に割って入った。両者の鋭い視線が交わる。

 静寂とした空気は一変して緊張感と殺気が充満する空間へと変わってしまう。ジャンヌは二人の戦いに異議を唱える。

 

「待って下さい! 二人が戦う必要なんて--」

 

「止めとけ、セイバーは言い出したら聞かないんだ」

 

「マスターとして、貴方はそれで良いのですか?」

 

「そうだな……セイバー、マスターとして最後の言葉だ。令呪を持って命ずる、存分に戦え!」

 

 獅子劫の左手に刻まれた最後の令呪の一画が光り輝きモードレッドに力を与える。もう戦いは避けられない。

 思わずジャンヌは獅子劫を見るが、彼はサングラス越しにモードレッドの行く末を見るだけだ。そしてダンテも、モードレッドの視線の先から動くつもりはない。

 

「ダンテ、貴方も--」

 

「逃げるのは趣味じゃないんでね。それにお嬢ちゃんをガードするのが俺の仕事だ」

 

 止める事はできない。互いに剣を握りゆっくりと歩を進める。

 ジャンヌと獅子劫も視線を向けながらもその場から後退して行き、庭園最深部の中央でダンテとモードレッドは再度視線を交える。

 

「デヤァッ!」

 

「ハァッ!」

 

 振り下ろされる二本の剣がぶつかり合う。甲高い音が響き渡り、鍔迫り合いで刃がギリギリと鳴る。

 

「どうした? 本気出せよ」

 

「テメェだって! あの時みたいに魔人になってみろよ?」

 

「生憎と燃料切れでね」

 

「だったら俺が勝つ!」

 

 剣を弾き距離を離すモードレッド。そして息を呑み構えるとまた踏み込んだ。袈裟斬り、横一線、袈裟斬り、刃が交わる度に火花が散る。

 ダンテも得意のチャンバラでモードレッドの攻撃を防ぎつつ、一瞬の隙を付き斬り上げる。が、向こうも巧みな剣術でこれを防ぐ。

 だが攻撃の手は緩めない。リベリオンを引き、足と腕の筋肉をバネのように使うダンテは至近距離から強力な突きを繰り出す。モードレッドも負けじと魔力を開放し赤雷を帯びた突きを繰り出した。

 

「ぶっ飛べ!」

 

「やられるかよ!」

 

 衝突する切っ先。あまりの衝撃に互いの手から剣が弾け飛び、高速回転しながら真上に飛んで行ってしまう。

 けれども武器を手放そうとも戦いは止まらない。間髪入れずモードレッドは拳を突き出し腹部に叩き込む。ダンテもカウンターで掌底を繰り出す。

 

「うらァァァッ!」

 

 魔力を開放しているモードレッドの腕にも赤雷が帯びており、分厚いコンクリートを砕く程の強力なパンチがボディにめり込む。だがダンテの掌底も素早く、モードレッドの頭部にクリーンヒットする。

 吹き飛ぶダンテとモードレッド。

 空中で回転しロングコートを靡かせるダンテはすぐに体勢を立て直し相手に詰め寄る。一方のモードレッドは両足で全力でブレーキを掛け衝撃を相殺させた。

 

「クッ!? 野郎……」

 

「まだまだ行くぜ!」

 

「なッ!?」

 

 見上げればすぐ先にダンテの姿が。急降下しつつ蹴りを繰り出す。

 咄嗟に飛び退くモードレッド。数秒後にはさっきまで立っていた石畳が砕ける。着地したダンテは周囲を見渡すが、相手の姿は見当たらない。

 

「あん?」

 

「今度はこっちの番だ! くらいやがれッ!」

 

 声がするのは上から、弾け飛んだ二本の大剣を手にしたモードレッドが急降下しながら振り下ろして来る。

 避けるダンテ。振り下ろされた刃の衝撃で粉砕される石畳と舞い上がる土煙。

 右手には自身の宝具であるクラレント、左手にはダンテのリベリオンを持つモードレッドはゆっくり歩を進めて来る。

 しかしダンテはこの状況でも笑みを崩さない。

 

「っと……へへ、やるな」

 

「余裕かますのもここまでだ。ぶった斬るッ!」

 

「やってみな?」

 

「うお゛お゛お゛ォォォッ!」

 

 走るモードレッド、切っ先が届く距離にまで詰めると剣を、両腕を連続して振りまくる。連続して繰り出される激しい斬撃。素手のダンテは二度三度と体をよじり攻撃を避けるが、一秒の間に無数に放たれる斬撃に初めて自らの意思で後退、バク宙して更に後退した。

 モードレッドの攻撃が届かない距離にまで下がり、ガンホルダーからエボニー・アンド・アイボリーを取り出す。

 

「派手に行くぜ!」

 

 激しいマズルフラッシュ、弾丸がマシンガンから発射されたかのように無数に撃ち出される。二本の剣を駆使して迫る弾丸を斬り払う。ダメージを受ける事はないが、止めどなく来る弾丸の雨に距離を詰めれない。

 

「クソッ、しゃらくせぇ!」

 

 もう何度目か、赤雷をクラレントに帯びさせて斬撃を飛ばす。飛翔する赤雷は弾丸を消し飛ばしダンテに襲い掛かる。

 避けると同時に飛び上がるダンテ。モードレッドの斬撃が来るよりも早くに空中で相手の肩を足場にしてもう一度ジャンプする。一瞬崩れる姿勢、すぐに振り返れば二つの銃口。

 

「俺を踏みやがった!?」

 

「悪いが剣は返して貰うぜ」

 

 連続して発射される弾丸。リベリオンの剣身を盾のようにして受ける。ダンテの狙いはそのリベリオン。弾丸は弾かれる事なく剣身にぶち当たり、そして積み木にように次々と弾丸が積み上がっていく。最後の一発が乗った時、モードレッドの手からリベリオンが溢れる。

 

「くッ! でもなぁ!」

 

「行くぜ、デンジャラスガール!」

 

「俺を女扱いするなッ!」

 

 リベリオンの鍔にあるドクロの目が不気味に赤く光り、落ちた地面からダンテの手元にまで戻って来る。そして両者は勢い良く走り出し互いの剣で振りかぶった。

 斬撃、衝撃、轟音が響く。

 地面を蹴り距離を取るモードレッドは魔力を全開にして必殺の一撃を放つ。

 

「クラレント・ブラッドアァァァサァァァッ!」

 

 一方のダンテもリベリオンに魔力を流し込み強力な一撃をぶつける。

 

「オーバードライブ!」

 

 波動と波動が直撃し膨大な魔力が爆発する。広がる衝撃に二人の戦いを見ていたジャンヌと獅子劫も思わず腕で顔を覆う。

 

「うぅ……凄い……決着は!?」

 

「セイバー……」

 

 ようやく衝撃が収まり視線を向ける二人。ダンテとモードレッドは鋭い突きで切っ先を交え、その体勢のまま固まっていた。

 

「はぁ……はぁ……中々やるな、デンジャラスガール。いや、モードレッド」

 

「どこまでもムカつく野郎だ。俺は叛逆の騎士だぜ? お前なんかより俺の方が強い」

 

「へへ、楽しかったぜ」

 

 リベリオンを肩に担ぐダンテ。モードレッドも白銀の大剣を地面に突き立て、ダンテに背を向けたまま口を動かす。けれどもその足元から光の粒子となり体が消えていく。

 

「なぁダンテ……俺の方が強かったよな?」

 

「勝負したいならいつでも相手になってやるよ。また俺が勝つけどな」

 

「何だよ、こう言う時は嘘でも強いって言うんじゃないのか?」

 

「最後に嘘付かれても後味が悪いだろ? またな」

 

「あぁ……お前との勝負、楽しかったぜ」

 

 両足が消え、それでも最後に振り返るモードレッドは自身のマスターである獅子劫界離に視線を向けた。

 

「マスター……ありがとう……」

 

「お前は良いサーヴァントだったよ。達者でな」

 

 最後に向けられた笑顔を獅子劫はいつまでも見続けた。

 

///

 

 フランスの首都であるパリ。既に月は沈み、燦々と輝く太陽が登る。

 築五十年にもなる学生寮、一度はリフォームされて綺麗にはなっているがどこからか隙間風が入って来る。

 十七歳になる少女、レティシア。彼女は朝の日課であるお祈りを済ませると急いでカバンにノートを入れ始めた。そうしている間にも部屋の外では同級生が扉越しに急かし立てる。

 

「早くしないと試験遅れちゃうよぉ?」

 

「ごめんなさい、すぐに!」

 

「一時限目はアンタの苦手な数学だよ?」

 

 カバンを手に取り扉を開けるレティシアは挨拶もそこそこに寮の廊下を走り始めた。

 

「夜まで勉強してて寝過ごすだなんて!?」

 

「旅行行くのは良いけど試験不安なんだったら少しは--」

 

「話すと長い事情があるの!」

 

 寮の扉を勢い良く開けるレティシアはそのまま同級生と横並びで歩道を駆けて行く。

 見慣れた町並み、空気、日常がそこにある。

 

(あの後、私の体から聖女ジャンヌ・ダルクの憑依も解けました。聖杯戦争も終結し、私は元の生活に戻りました。ボディーガードの依頼をしたダンテさんもすぐにアメリカへと帰って行き、心配だった依頼料も思った程高くなく、むしろレンタカー代が痛手でした。しばらくはランチを節約しないと……聖杯はもうこの世から消えた。魔術師による聖杯戦争ももう起こらない。でも悪魔は……常識では理解できない摩訶不思議な現象は世界のどこかで起きている)

 

///

 

 ギターケースを片手に空港のロビーを歩くダンテは適当なイスを見付けるとドカッと体重を預けた。

 

「やれやれ、何だって日本になんか寄らなきゃいけないんだ。ったく、飛行機のメンテぐらいしとけよな」

 

 ダンテはアメリカまでの直行便で帰るつもりだったが、途中で乗っている飛行機の計器トラブルにより日本に着陸する事になった。

 そうして不満を垂れていると、ハイヒールのカツカツ鳴る足音が近づいて来る。横目でちらりと見れば、少しシワ付いたスーツを着る`美女`が居た。

 彼女は掛けていたメガネを取り、くすんだ赤のポニーテールを揺らし琥珀色の瞳をダンテに向ける。

 

「アンタがデビルハンターのダンテか?」

 

「誰だ? 日本人の知り合いなんて居ないんだけどな」

 

「ちょっと訳ありでね。アンタに仕事を受けて貰いたい。金は~……なんとかしよう」

 

「合言葉は?」

 

「悪魔も泣き出す」

 

「OK、美女からの誘いなら大歓迎だ。金は円じゃなくドルで用意しろよ。あとは前払いでキスの一つでも貰おうか」

 

「悪いけどオッサンは趣味じゃないんでね」

 

「そりゃ残念だ。だったら--」

 

 立ち上がるダンテはギターケースからリベリオンを取り出し背中に背負う。そしてガンホルダーからエボニー・アンド・アイボリーを取り出す。

 同時に周囲からは不気味な蠢く声が聞こえて来る。

 

『ダンテェェェッ! 逆賊スパーダ―の息子!』

 

『あギャギャギャはははッ! 魔帝の仇! 逆賊スパァァァダァァァッ!』

 

 それは悪魔――

 ダンテは自らを狙う悪魔を倒す事を仕事にし、人間としての生を満喫する半人半魔の存在。彼はこれからも戦い続ける。悪魔を倒す為に――

 

「前金はコイツラをぶっ倒すことでチャラにするか」

 

「これが悪魔か……お手並み拝見といこうじゃないか」

 

「準備は良いか? C'mon babes! Let's rock!」




 黒のライダーの次回予告~! はもう終わりです。これにて完結! いかがだったでしょうか?
 ストーリーのテンポを早くしてさっさと完結させるつもりでしたが話数は少ないのに結局遅くなってしまいました。
 書いてて思ったのはダンテを動かすのが難し過ぎる! 強すぎてもストーリーが破綻するし弱いのなんて見たくないし、そのキャラクター性を表現するのも最後まで難しかった。
 この場面が良かった、このセリフが良かった、だけでも感想に書いて頂けると非常に嬉しいです。
 次回作は前回書かせてもらったように『鉄血のオルフェンズ』と『Gのレコンギスタ』のクロスオーバーでいきます。

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