Fate/apocrypha La Divina Commedia   作:K-15

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第八話 動き出す黒幕

 黒のキャスターは至って冷静だ。いや、悟っているとも言える。負傷しているとは言えセイバーと一対一で正面から戦って勝つなど困難を極める。が、彼は逃げも隠れもしない。

 魔力を開放し、術式を組み上げ周囲の石や岩石を一点に集めていく。そして出来上がるのは主の命令に忠実に従う岩石でできた人形、ゴーレムが四体、五体と無数に生まれる。

 セイバーは一歩踏み出すと啖呵を切った。

 

「キャスター、まさかこの程度で俺を止められるなんて思ってるのか?」

 

「まさか……このゴーレムは僅かな時間稼ぎに使えれば充分。本命は僕の宝具」

 

「させる訳ねぇだろ!」

 

 地面を蹴り突風が舞う。先を塞ぐゴーレムの一体の頭上に現れたセイバーはクラレントを大きく振り下ろし一撃で粉砕した。

 

「流石は最優と呼ばれるセイバー。こんなゴーレムを倒すなど造作もないか」

 

「雑魚は消えろッ!」

 

 柄を握り直し横一閃。ゴーレムでは逃げる事も防ぐ事もできず、鋭い刃が更に二体斬り裂いた。破壊されたゴーレムは元の岩石や石へと戻る。

 戦闘が始まって僅か数秒の間に形勢はセイバーへと傾く。だがキャスターにとってはその数秒で充分だった。魔法陣を展開しまた新たな術式を練り上げる。

 

「地ははに産まれ、風ちせいを呑み、水いのちを充たす。火ぶきを振るえば、病あくまは去れり。不仁は己が頭蓋を砕き、義は己が血を清浄へと導かん。霊峰の如き巨躯は、巌の如く堅牢で。万民を守護し、万民を統治し、万民を支配する貌を持つ」

 

「やらせねぇって言ってんだよ!」

 

 キャスターの術式を阻止しようとセイバーは走るがゴーレムは倒せども倒せども地中から生えるように生まれ続ける。

 

「チッ! 雑魚がどれだけ集まってもなぁ――」

 

 轟音が響き渡る。戦うのはセイバーだけではない。この場には彼も居る。最強のデビルハンターが。

 

「イヤッハァッ! どうしたデンジャラスガール? まだ休憩が足りなかったか?」

 

 エボニー・アンド・アイボリーを構えるダンテは絶え間なくトリガーを引き続ける。ゴーレムと言えど元は岩石。大口径の弾丸が次々と岩肌を砕き頭部を吹き飛ばす。

 マズルフラッシュはまだまだ光り続ける。弾丸は胸を突き破り、腕を吹き飛ばし、生まれてくるゴーレムと並ぶ勢いでバタバタと倒していく。

 

「銃も使った方が楽だろ?」

 

「そんな無粋なモン、騎士が使えるか。俺はこいつ一本で充分だ!」

 

「そうかい。なら、さっさとアイツをぶっ倒すぞ」

 

「言われるまでもねぇ! 俺がやる!」

 

 両腕を左右に交差させトリガーを引くと二体のゴーレムが倒れる。そしてセイバーの宣言と同時にダンテも走り出すが、キャスターの術式も完了しようとしていた。

 

「デンジャラスガールには悪いが俺が一番乗りだ」

 

「抜かせ! テメェなんぞに負けられるか!」

 

「汝は土塊にして土塊にあらず。汝は人間にして人間にあらず。汝は楽園に佇む者、楽園を統治する者、楽園に導く者。汝は我らが夢、我らが希望、我らが愛。聖霊ルーアハを抱く汝の名は原初の人間アダムなりッ!」

 

 同時に剣を振り下ろす二人。だが切っ先がキャスターの体に届くよりも前に大地が大きく揺れ動く。地震か、地割れか、とても立っていられず剣を地面に突き立て何とか体を支える。

 そして揺れの原因が現れようとしていた。周囲の地面がせり上がり、二人は危険を察知して後方へと逃げる。

 

「普通の揺れじゃねぇな」

 

「多分、キャスターの宝具だ。これは思ったよりも不味いかもな……」

 

 せり上がる地面の中央に立つキャスター。その姿は見る見る内に高くなっていく。地中から現れるのはさっきまでのとは比べ物にならない程に巨大なゴーレム。しかし、その体は岩石で形成されていない。

 肉、屈強な筋肉と骨を持った体長一五メートルにも及ぶ巨人。キャスターは巨人の手の平の上に立っている。

 

「ケテルマルクト、お前はもう自由だ。僕の夢の実現の為、あの男を取り込み完全な存在となるのだ!」

 

 一歩を踏み出すゴーレム、ケテルマルクト。その歩みは地を揺らす。後ろに続く足跡には新たな草花が生まれる。

 ケテルマルクト、それは原初の人間の模造。

 

 

 

第八話 動き出す黒幕

 

 

 

「あの男を取り込めば僕が理想とする世界……楽園が創造できる! 世界を! 民を救える!」

 

 一歩一歩進んで来るケテルマルクトを待ち構えるダンテとセイバーは、自らの頭身を遥かに超える巨人を前にしても口元に笑みを浮かべていた。

 

「石人形の次はデカブツ退治か。デンジャラスガール、動けるな?」

 

「誰に物を言ってる? キャスターを討ち取るのは俺だッ!」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

 地を駆ける二人。ダンテはリベリオン、セイバーはクレラントを手に巨人の足元へと迫る。敵と認識するケテルマルクトは握り潰さんと手を伸ばすが、巨体故に動きは俊敏ではない。指先が触れる間もなく、二人の剣は両足を切断した。

 

「ハァァァッ!」

 

「デリャァァッ」

 

 刃は皮膚を斬り裂き骨を断ち切る。支えが失くなった巨体は重力に引かれゆっくり崩れ落ちて行く。セイバーはその瞬間、本命であるキャスターに狙いを定める。

 

「テメェを倒すのは――」

 

 地面を蹴り魔力を放出するセイバーはロケットの様に加速し一直線にキャスターへ飛んで行く。赤い魔力の渦の中で剣を構えるセイバー。接近戦でその一撃を防ぐだけの力をキャスターは持ち合わせていない。

 

「来るか、セイバー……」

 

「この俺だぁぁぁッ!」

 

 両腕を大きく振り上げ袈裟斬り。魔法陣で防御の構えを取るキャスターだが、鋭い刃と高出力の魔力は意図も容易く斬り裂き、そのままキャスターの胴体まで真っ二つにした。

 

「無駄だよ……ケテルマルクトはもう止まらない……」

 

「何だと? ぐぅッ!?」

 

 崩れ落ちた筈の巨人は地に足を付け立っている。そしてその手はセイバーの体を鷲掴みにし握り潰そうとした。

 もはや巨人はキャスターの指示に従うのではない。自らの意思を持って動いている。その傍らで、キャスターは自身の体が消えるその瞬間までケテルマルクトの姿を瞳に焼き付けた。

 

「聖杯への願いなど些細な物だった……完璧な炉心を取り込んだケテルマルクト……それさえ見る事ができれば僕は……」

 

「こいつ……斬った足がもう再生してる!? があ゛あ゛ァァァッ!」

 

 屈強で巨大な手で握り潰す。たったそれだけの動きでセイバーの骨は軋み体が悲鳴を上げる。両腕を塞がれた状態では剣も使えない。

 しかし彼なら銃が使える。轟音が鳴り響き銃弾が掴む指を吹き飛ばす。

 

「ダンテ!?」

 

「キャスターの野郎はやったか? それなら……」

 

 落下するセイバーを脇に抱えるダンテ、その体勢にセイバーは戦闘の真っ最中にも関わらず赤面してしまう。

 

「な!? 離せ、離せよ! 俺を女扱いするんじゃねぇ!」

 

「わかってるよ。ちょっと待ってろ」

 

 そのまま着地すると抱えたセイバーを降ろす。地に足を付けた彼女は赤面しながらもダンテに詰め寄り胸ぐらを掴んだ。

 

「テンメェ、何回も何回も俺を女扱いしやがってッ! 次にやったら本気で殺すからな!」

 

「悪かったよ。それよりもあのデカブツだ。キャスターは倒したんだろ? どうして動いてる?」

 

 見るとダンテが放った弾丸が吹き飛ばした指も切断面から瞬く間に新しい指が生え回復してしまう。そしてケテルマルクトは魔力を開放させ地面に手の平を向けた。ゴーレムが生まれるのと同様に石や岩石が集まり、巨人は身の丈程もあるこん棒を手にした。

 

「アイツ、炉心とか言ってたな。憶測だが炉心に当たる部分を破壊すれば止まる筈だ」

 

「それで……その炉心の場所は?」

 

「わかれば苦労しねぇよ。マスター、どう思う?」

 

 魔術回路を通してマスターである獅子劫に問う。別行動を取る彼にもセイバーを通じて状況だけは理解できていた。

 

(断言はできない。だが一五メートルはある巨体だ。全身に魔力を供給するとすれば頭部か心臓か)

 

「頭か心臓か……どっちだ……」

 

「悩んでもしょうがねぇ。だったら俺は心臓をやる。そっちは頭だ」

 

「おい、勝手に決めるな!」

 

「向こうもそう待ってはくれないみたいだ。来るぞ!」

 

 岩石で形成されたこん棒が巨人の頭上から振り下ろされる。二人は瞬時に散開し、数秒後には轟音と衝撃が響き渡った。

 

「チッ、アイツに言われて動くなんてムカつくけどよ、今はこのデカブツを倒すのが先だ。マスター、心臓を狙える位置に行ったら一気に宝具を開放する。行くぜ!」

 

 地を駆けるセイバー。巨大なだけで動きの鈍いケテルマルクトへ肉薄するなど容易い。が、その考えは早々に捨てなくてはならない。

 ケテルマルクトの動きは刻一刻と進化する。巨体にも関わらず動きは人間と同じ。

 

「さっきまでと動きが違う。チィッ!」

 

 振り下ろされるこん棒を避けずにクレラントで受ける。地面にヒビが走るが物ともせず、剣を振り払い岩石のこん棒を破壊した。

 

「これなら!」

 

 けれどもまだ勝機は生まれない。ケテルマルクトは地面に向けて手を掲げ再び武器を精製する。しかし今度は岩石のこん棒などと幼稚な物ではない。集まるのはガラスの光沢を持つ黒い岩石、黒曜石と呼ばれる物。

 作り上げるは両刃の剣。無骨な見た目とは裏腹にその刃は鋭い。

 ケテルマルクトは両手で柄を掴み黒曜石の剣を振るう。

 

「早い!?」

 

「遅いぞ、デンジャラスガール!」

 

 エボニー・アンド・アイボリーを前方に交差して構えるダンテは目にも止まらぬ連射を見せ付ける。絶え間なく続くマズルフラッシュはライトを点灯しているよう。そしてマシンガンの如く発射される大口径の弾丸は、セイバーに振り下ろされる黒曜石の剣の動きを止める。

 

「ダンテ!?」

 

「時間を掛けると余計に面倒だ。さっさと決めるぞ!」

 

「わかってるよ! 黙って見てろ!」

 

 走るセイバーはケテルマルクトの剣先から逃げるとダンテもトリガーを引くのを止めた。振り下ろされる刃は大地を叩き割り衝撃は空気を揺らす。

 クラレントを両手で構え切っ先を天に向けるセイバーは自身の魔力を開放させた。

 

「全力開放で行くぜェェェッ!」

 

 彼女が握る白銀の大剣がその姿を開示する。鍔に当たる部分が左右に展開、全身から放出する禍々しき赤黒い魔力。

 赤い雷鳴が轟き大地が揺れ動く。宝具、彼女が放つ一撃必殺の技がケテルマルクトの心臓部に目掛けて放たれようとしていた。

 

「クラレントォォォ――」

 

 けれどもダンテも負けてはいない。セイバーに先を越されまいとケテルマルクトの両足の間へ潜り込み、リベリオンで両足首を斬り刻む。

 幾ら再生能力が早いケテルマルクトでも切断された足を回復させるのに数秒は掛かる。再び自重を支えられず落ちていく巨人に、ダンテはまだ攻撃を止めはしない。

 

「こんなもんじゃねぇぞ。ぶっ飛びな!」

 

 突き出された切っ先は天を向く。リベリオンはケテルマルクトの腹部を突き上げその巨体を空中へと打ち上げた。そしてエボニー・アンド・アイボリーを取り出し心臓部に狙いを定め撃ちまくる。

 鳴り響く銃声、弾丸は巨人の胸板をボロボロにした。けれども決定打はまだ与えられていない。

 

「あのムキムキの筋肉をぶち抜くには銃じゃダメか。オチオチしてたらデンジャラスガールに先を越される。やっぱコイツでぶった斬るしかねぇか」

 

 銃をクルクルと回しながらホルダーに戻すと背中のリベリオンを手に取る。地上に向かって落下して来るケテルマルクトの心臓部目掛けてダンテは地面を蹴り飛んだ。真っ赤なロングコートをなびかせ空中を突き進んで行く。

 そしてそれはセイバーも同じ。全身に赤黒い魔力の渦を纏いながら、頭部目掛けて一直線に進む。放たれるは必殺の一撃。

 

「ブラッドアァァァサァァァッ!」

 

 白銀の大剣から放たれる赤雷、高濃度に凝縮された魔力はまるでビームのように発射され、無抵抗なケテルマルクトの頭部に直撃した。

 凄まじい再生能力を誇るケテルマルクト。だがセイバーの宝具を跳ね除けるまでは到達していない。時を同じくしてダンテも心臓部にリベリオンを突き立てた。

 

「ハァァァッ!」

 

 空中で繰り出されるリベリオンの鋭い突き。それはミサイルか、ダンテの体ごと突き進む剣は空気の層を突き破ぶる。瞬間、ダンテの体に雷が走った。

 ダメージを受けたのではない。彼の姿はその時、異型の者へと変化していた。全身は爬虫類を思わせる鱗、肉を斬り裂く為に発達した鉤爪。見られただけで震え上がる鋭い眼光。

 しかし、人成らざる姿が見えたのもこの一瞬だけ。

 空中で突き進むダンテ、握るリベリオンの切っ先はケテルマルクトの分厚い胸板を一撃で破壊していく。肉をぶち抜き、骨を粉砕し、そしてそのまま心臓を突き抜け背面から出た。

 

「ハッハァ! 惜しかったな、デンジャラスガール。俺の方が早かった」

 

「馬鹿言うな。今回は俺の勝ちだ」

 

 ケテルマルクトの急所を破壊した二人はそのまま地面へ着地すると後ろに振り返る。巨人の体は地上に落下する間もなく光の粒子となり消えて行く。沈黙が周囲を包みながら、残るのは炉心として使われた物。

 否、それは物ではなく人間の形をしている。

 

「おい、デンジャラスガール。今度は何だと思う?」

 

「だから俺に聞くなって。でもまぁ……お前を炉心にって言ってたくらいだから、人間を使ってたんじゃねぇの?」

 

「なるほどな」

 

 言うとダンテは地面に横たわる人物へ歩み寄る。その人間はまだ幼い少年。下着を付けるだけで他は全裸の肌は生白い。息はか細く表情も蒼白としている。片膝を付くダンテは少年に呼び掛けた。

 

「ボウズ、生きてるか?」

 

「ハァ……ッ……ぁ……」

 

「こりゃヤバそうだ」

 

「ヤバイなんてもんじゃねぇよ。コイツはホムンクルスだ」

 

「ホムンクルス?」

 

「あぁ、巨人の炉心に使う為だけに作られたんだろ。コイツの体には魔術回路が通ってる。でももうズタボロだ。どうやったって治らない。後は死ぬだけだ」

 

 セイバーはマスターである獅子劫の言葉を代弁する。ダンテはそれを聞いても尚、この場から動こうとはせず少年の体を抱え上げた。

 

「どうするつもりだ?」

 

「こんな所に置いておく訳にもいかないだろ。取り敢えず車のシートにでも寝かせてやる。お前は先に行ってろ」

 

 立ち上がり歩を進める。セイバーは彼を止めようともせず、かと言って先に進む事もなかった。背を向ける彼の姿を睨むようにじっと見つめる。

 けれどもダンテの歩みを止める存在が他にも居た。途中で退場した黒のセイバーだ。

 

「うん? 英雄様か、どうした? まさか今からやり合おうってか?」

 

「そうではない。その少年、俺に預けてくれないか?」

 

「何するつもりだ?」

 

「すぐに終わる……」

 

 言われてダンテは何も言わず少年の体をジークフリートに預けた。少年の体を抱えるジークフリートは片膝を付きもう一度地面に体を置く。そしてじっと少年の顔を見つめたまま。

 

「俺は間違いを犯していた。自らが考えるのではなく、誰かに回答を求めていた。他人の願いを叶えるばかり……そんな事では空虚な心はいつまでも埋まらない。ダンテ、短い時間だが貴公に出会えて良かった。ほんの僅かではあるが人としての生き方がわかった気がする。俺が本当にやりたい事も……」

 

 ジークフリートは自らの左胸を鷲掴みにした。爪が皮膚を突き破り指が肉に食い込んでいき血が滴る。赤のセイバーは彼の行動に思わず目を見開く。

 

「お前、何してんだ!?」

 

「この少年を助ける……それが今の俺にできる唯一の事だ。俺のやりたい事……サーヴァントとして現世に召喚されてようやくわかった。正義の味方……」

 

「ホムンクルスを助ける事が、正義の味方なんかになる事がお前の願いなのか!?」

 

「そうだ。子どものような願いと笑うか?」

 

 そしてジークフリートは自らの心臓を取り出した。人間を超越した存在故か、このような状態になってもまだ彼は生きている。そして握る心臓は鼓動を続けており、ジークフリートは心臓を瀕死の少年へ掲げた。

 心臓は吸い込まれるように少年の体内へ入って行く。

 

「これで少年は助かる」

 

「でも、それじゃあお前が!?」

 

「そうだな、俺は死ぬ。だが少年は助かる。これで良い……俺は二度目の生など要らない。彼を助ける事ができて本望だ。俺の願いは成就した……」

 

 ジークフリートの命の灯火が消え行くのと同じくして、死にかけていた少年の肌の血色が正常に戻りつつある。

 サーヴァントである彼は光の粒子となり、空の星々に溶け込むようにして現世から姿を消した。

 

「やれやれ……どうせならガキのお守りまでやれよ。一体、誰が面倒見るんだ?」

 

「俺は無理だぞ。マスターもな」

 

「俺だってベビーシッターと子守りの仕事は引き受けねぇようにしてるんだ。でも、しょうがねぇか。取り敢えず車に置くか。そしたらそのまま城に乗り込もうぜ。デンジャラスガール、乗るかい?」

 

「お前に借りを作るのは癪だが徒歩で行くよりは早い。乗らさせて貰う」

 

「なら付いて来な」

 

 ダンテは何度目か少年を抱え上げると真っ赤なオープンカーに向かって歩き出し、セイバーも彼に続いて行く。

 後部座席に少年を横たわらせてダンテは運転席、セイバーは助手席に乗り込み目的地へ視線を向けた。

 

「あの城が黒の陣営の本拠地か。でもなんだ? 随分と周りが静かになってねぇか?」

 

「静かだと?」

 

 クラッチを踏み込みキーを回す。エンジン音が鳴り響きマフラーから排気ガスが放出される。後輪が空回りし土煙を上げながら、ハンドルを握るダンテはフルスロットルで車を走らせた。

 進んで行く景色の中で、黒の陣営の動きが明らかに鈍くなっている。ゴーレムや武装したホムンクルス達は城内へ後退して行く。そして赤の陣営も、下がって行く彼らに攻め入ろうとはしない。

 

「どうなってる……いや、魔力の流れが変わってる」

 

 疑問に思うセイバーだが、その答えを彼女はわからないしマスターである獅子劫でさえも今はまだわからない。

 それを知るのは空中庭園に陣取るシロウ・コトミネのみ。玉座に背を預ける赤のアサシンの隣で彼は地上の戦況を覗いていた。

 

「大聖杯はもうすぐ私の手に……」

 

「黒のキャスターも落ちたか。だが本当にこのタイミングで良かったのか? せっかく集まった他のマスターを殺すとは……」

 

「聖杯戦争とは最後に残った一人のみが万能の願望機を手にする事ができる。僕達以外の存在はいずれ邪魔になります」

 

「フフフッ、とても神父の言葉とは思えんなぁ。魔力供給が断たれた影響でライダーは勝てる筈の戦いに敗れた。黒のアーチャーと相打ちでな。まぁそれも、マスターからすれば好都合か」

 

「そうですね。黒の陣営に残るサーヴァントは二体。ライダーとランサー。どちらも僕の脅威足り得ない」

 

「だが赤の陣営はどうする? セイバーはこのまま城へ乗り込むつもりだが、アーチャーとランサーはどう出るかわからんぞ? ほら、噂をすれば影が現れおった」

 

 空中庭園の玉座の間に来るは二体のサーヴァント。アサシンが言うように、赤のアーチャーとランサーが目の前に現れた。二人が向ける視線は殺気そのもの。相手の事を一切信用などしていないし、この瞬間にも襲い掛かる勢いだ。

 一歩前に出るアーチャー、鋭い視線はそのままにドスの利いた声で口を開く。

 

「どう言うつもりだ、シロウ・コトミネ? マスターとの魔術回路の接続が途切れた。ランサーもだ。私達のマスターはこの空中庭園に居る。貴様らが居ながらこの庭園が攻め込まれるなど考えにくい。それもマスターだけを。その余裕の態度も輪を掛けて怪しい。説明して貰うぞ?」

 

「えぇ、良いですよ……」




 次回、第九話!
 みんなぁ、ガチャガチャガシャガシャ回してるかなぁ? 学生はお年玉を投入しよう!
 さて、ボクはと。何が出るかな何が出るかな? えぇ~ヴラド三世ぃぃぃ!? カルナやエレシュキガルの方が良かったのにぃぃぃ~!
 あ……ちなみにこれ、九話の予告だよ? それじゃ、呼符でもっかい引いてみよぉ~っと。むむむむむむ! 師匠キタァァァ!
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