・・・平安時代・・・
この時代は鬼という人に危害を与える存在がいた。
そんな彼らを滅するのが陰陽師・・。
その中で一人だけ桁の外れた術士がいた。
彼の名は安倍晴明(あべの・せいめい)。まだほんの15歳でやや小柄。容姿は女性のように美しく、また長い漆黒の髪が特徴的である。
そんな彼だが、この日は鬼の数が尋常ではなかった。
京の都は鬼で埋め尽くされていた。
「・・・クソッ!」
鬼を滅しても滅しても周りは鬼だらけ。減る気配がなかった。
自分の足元を見ると、何百人、イヤ何千人だろうか。
死体が転がっている。
晴明は酷く自分を責める。
目の前の人間すら救えず、何が最強の陰陽師だ・・!?
自分を責める気持ちしか生まれなかった。
・・そんなとき・・
「きゃああああああッ!」
ある一人の少女の悲鳴が聞こえる。
・・・この声は・・・
晴明のよく知る人物だった。
「小雪ィーーーー!」
名前は小雪。晴明の愛人だった。
夕日のような綺麗な長い髪でお淑やかで誰よりも自分を分かってくれた存在だ。
「せ・・晴明・・」
晴明は彼女に手を差し伸べるが、届かず。
「クソッ!どけえええ鬼ども!」
小雪の目の前に現れる鬼を式神で滅していく。
・・・ようやく手が届く・・・
だが、次の瞬間・・・
ドガッ
何かが貫く音がした。
そう、彼女の体が鬼の刀に貫かれていた。
「・・こゆ・・き・・」
掠れたような声しか出なかった。何故彼女が・・?
「・・せ・・いめい・・」
「・・・っ!」
小雪はゆっくり目をつむる。
「うあああああああああああああああっ!」
絶叫する。
どんなに叫んでも彼女が目を開くことはない。
しかし、絶叫するほかなかった。 そうしなければ今にも自分の心が砕け散りそうだったからだ。
そして、
ドギュッ
「がっ・・・!」
晴明の体も鬼の刀で貫かれる。
「・・・・・」
彼の目に映るのは目の前にいる鬼でもなく、自分を貫いた刀でもない。
最愛の人、小雪だった。
目からは一粒の涙が頬を伝う。
「小雪・・。オレはもう一度、君のいる世界・・に」
そう言い、晴明もゆっくり目を閉じる。
翌日。都は生き残りが一人もおらず、死体しかなかったそうだ・・。
☆☆☆
約千年後・・。 2002年
今まで冬木にあった聖杯が冬木と同等に霊脈が多いとされる神威町という町に移される。
つまり、この神威町は聖杯戦争の為、戦場になるのだが・・。
しかし、町の者はそんなことが起こるとも知らずいつも通りに日々を送っている。
「ねえ、揚羽(あげは)~。」
「何?優香(ゆうか)」
「アンタ、またコクられたんだって?」
「う・・うん」
「アンタ、また振ったの?」
「だって、私、恋愛とかよく分からないし・・。」
「アンタ、そんだけ可愛いんだし、そりゃ告白してくる男子も多いわよ」
月見 揚羽(つきみ・あげは)。
優等生でありながら、容姿端麗。夕日のような髪の色でリボンでツインテールにしている。
彼女は男女共に人気があり、告白されることがあるのだが、振ることが多い。
その理由の一つとして、恋愛がよく分からないということ。
分からない為、告白されてもどう対応すればいいのか分からないのだ。
もう一つは夢にある男が現れるのだ。
顔ははっきりしていないが、服装は平安時代。恋愛云々関係なく付き合うならちょっと普通じゃない、そんな人物と付き合いたい・・。そう夢に出てくる男のように。
しかし、そんな不思議な考えをするせいか、揚羽は「不思議ちゃん」などと呼ばれたりすることがある。
キーンコーンカーンコン。
授業開始のチャイム。
「ヤバッ、次の授業何だっけ?揚羽!」
「え、えーと数学・・。」
「急ごッ!」
「う、うん。」
**********
「えー・・・ここが・・・・で・・。」
先生の声が遠くなる。
そして、なにか不思議な光景が映る・・。
桜の散る丘・・。一人の少年・・イヤ少女? 小柄で可憐な瞳、そして長い漆黒の髪は女性らしさを感じるが、しかし、どこか少年らしさも感じる。
「・・小雪・・。」
・・小雪・・・?
私に言ったの? この少年は一体・・?
そんな時・・
「月見!」
「は・・ハイっ」
先生の声がし、急に現実に戻る。
「おい、大丈夫か? すっかり夢の中にいたんじゃないか?」
すると、ドッと笑いに包まれる。
すると、後ろに座ってる私の親友、優香が
「珍しいわね。アンタが授業中に寝るなんて・・。」
「うん、何かね。変な夢見ちゃって・・。」
「ふーん・・?」
あまり興味なさそうだった。
「あんた時々おかしなこというのよね・・。」
まだ、そのおかしな内容を言ってないのに・・。
「ま、いいか」
そう言い、再び授業に集中する。
☆☆☆
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ」
少女は術の詠唱を始める。
彼女の名前は、遠坂 凛(とおさか・りん)。
彼女はこの神威町で行われる聖杯戦争のメンバーである。
つまり、彼女が今、行おうとしているのは、『英霊召喚』・・・。
英霊とは人類の歴史上に優れた功績をなした者・・例えば、竜殺しのジークフリート、聖剣(エクスカリバー)の使い手、アーサー王など様々だ。
「告げる――。汝の身は我がもとに 我が命運は汝の剣に、聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に我は常世総ての善となる者。我は常世総ての悪を敷く者、汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!!」
ゴォッ!
煙が上がる。
「・・・・っ!」
煙が少しずつ晴れ、サーヴァントの姿が見える。
すると、全身鎧を纏っていた。
顔も兜で見えない。ステータスも全然分からない。
「あの、アナタ真名は・・・?」
凛は恐る恐る召喚されたサーヴァントに名を聞く。
すると、
「ん・・? どういうことだ?お前オレを召喚するために召喚じたんじゃないのか?」
「え、いや・・。」
正直、どう答えればいいか分からなかった。
「お前、触媒は何を使った?」
「コレよ、円卓よ、あなた達騎士が使っていた・・。」
バキッ!
召喚されたサーヴァントは触媒を握り潰す。
「ちょっ、何すんのよ!」
「こんなもので召喚されたとは・・」
凛は一度落ち着き、息を吸う、そして吐く。
「とりあえず、その兜、外してもらってもいい?」
「ああ、そうだな。このまんまじゃ分かんねえよな」
外すと、驚くことに、16歳くらいの少女だった。
「オレはモードレッド。今回の戦争ではセイバークラスとして戦う」
凛はゴクリと息を飲んだ。
☆☆☆
再び、揚羽は夢を見る。
桜の丘にいる少年を・・。
彼は一体誰だろう・・? 夢の中の人物だ。
なのに、どうしてこんなにも会いたいと思ってしまうのだろう・・
夢の中でゆっくり手を伸ばす。彼に届くように・・。