・・言峰教会・・
「アレ?こんな町の奥に教会なんてありましたっけ?」
揚羽は不思議そうに尋ねる。
「いいえ、ないわ。ただ聖杯戦争がこの場で行われるから、元々冬木にあった聖杯の地からこの地まで越してきたのよ。」
「・・はあ・・」
揚羽には聖杯と言うものがよく分からないので何のことか全く分からない。
「綺麗、いるかしら?」
魔術師の少女は教会に入り、誰かを呼んでいた。
すると、奥から神父が現れる。
「何だ?凛・・こんな夜遅くに。それに隣にいるのは・・」
「一応、七人目のマスターよ。」
「ホウ・・。名はなんと言う?」
すると、揚羽は少し緊張気味のせいか
「は・・はいっ!月見揚羽といいます!」
「・・フム・・。」
神父は頷く。
「凛よ。彼女は多少の魔術の心得はあるみたいだが、この表情だと・・。」
「ええ、聖杯に関しては全く分かってないみたい。彼女にこの戦いをまず理解してもらおうと思ってね・・・。」
「そうか・・。サーヴァントは?」
「外で待たせてるわ。私のも彼女のも・・。でも、彼女のサーヴァントはイレギュラーよ。アインツベルン杯にも関わらず東洋のサーヴァントが召喚されたみたい。」
「ホウ・・。興味深い。サーヴァントも中に入れなさい。」
「・・・いいの?」
「少し彼女のサーヴァントとも話をしたい。」
**********
「え・・と、つまり簡単に言うと、そのあらゆる願望を叶えるために『聖杯』を争奪する・・。それが『聖杯戦争』ですか?」
揚羽は神父が説明した聖杯のルールをザッとまとめてみる。
「簡単に言うとそういうことになるな。」
神父は澄ました顔で言う。
しかし、揚羽は納得できなかった。
「そんな、願望とかよく分からないモノの為に戦うんですか?」
揚羽は昔から争い事が苦手だった。
小さな口喧嘩でさえも目を背けたくなるくらいだ。
「成程、君は争い嫌いだったか・・。だが、よく考えて欲しいな。ここで聖杯戦争が行われるということは、無論君の親友なども襲われることがある、ということだぞ。」
「ど、どういうことですか?」
揚羽は神父の言葉に驚く。
「マスターの中には進んで殺戮を好む者もいる。そういう可能性は非常に高いと言っていい。例え、今まで一般人と変わらず生活してきた君にも戦う理由はあるはずだ」
揚羽は不機嫌そうに、
「まるで、この戦いが私を無理やり戦わせようとしているようにも見えるんですが・・。」
すると、神父はフッと笑い、
「それも運命だ。戦わなければ死ぬ。ただそれだけだ。」
どうも納得がいかない。
自分の中では戦いたくないという感情が強いのだが、自分の周りにいる親友たちが巻き込まれるのも揚羽にとって辛いことだ。
「・・わかりました・・。戦います。」
小さな声で戦うことを決意する。
「そうか・・。」
神父は頷く。
「さて、次は君と話がしたい。キャスター。」
キャスターの少年はゆっくり神父に近づく。
☆☆☆
「アーチャー。どうだった?セイバーとの一戦は」
「フム。中々の相手だったな。セイバークラス相当の力を持っていた。」
「そりゃ、当然だ。じゃなきゃセイバーに召喚されるはずがない。」
「フ・・。そうだな。」
アーチャーとそのマスターらしき少年はハハと笑う。
「んで、正体はわかったか?」
「いいや、全く・・。おそらくあの兜のせいだ。あの兜が一部のステータスを隠している。」
「・・そう・・か・・。」
少年は頷く。
「あと、途中キャスターと戦った。」
「へえ・・。どうだった? アーチャーのお前ならそんな苦戦しなかったんじゃないか?」
「・・いや」
アーチャーが真剣な表情で首を横に振る。
「キャスターの割には剣術に優れていたし、魔術も妙な術だった。」
「・・妙・・?」
少年は不思議そうな顔をする。
「ああ。札を使っていた。」
「・・札・・」
少年は黙り込み、何か考えているようだった。
「陰陽術か・・!?」
「・・・!」
札・・おそらく式神のことだろう。
少年はそれに関した術は陰陽術だろうと判断する。
「いや、でも待て。アーチャー。お前聖杯の知識を与えられてるならこれくらい・・。」
「マスター。別にオレも気づかなかったわけじゃない。だが、妙だと思わないか?」
「・・そういうことか・・」
妙とはどういうことか・・?
つまり、アインツベルン杯であるこの聖杯に陰陽術を使う東洋のサーヴァントなんて普通召喚されない。
前回の第四次聖杯戦争でも東洋のサーヴァントは召喚されていない。
西洋のサーヴァントがほとんどだ。
少年は下を向き、何やら考えているようだったが、顔を上げ
「まあ、いいか。とりあえずご苦労だった。アーチャー。いや、『オレ』。」
「・・ああ」
アーチャーは頷き、霊体化する。
☆☆☆
「んで、話って何だ?」
キャスターの少年は神父に問う。
「フム。君が召喚された理由だ。自分でも分かっているはずだ。自分は本来召喚されるべき存在じゃないと・・。」
「・・・」
神父の言う通りだった。本来この聖杯に関わるべき英霊でないと・・。自分でも分かっていたことだった。
しかし、呼ばれる理由があるとすれば、自分のマスターが原因だと思った。
なぜなら・・。
「まあ、無理に答えろとは言わんが・・。」
「イヤ、別にいい。知りたいのなら話す」
「ホウ・・?」
神父は興味深そうに頷く。
そして、キャスターはチラと自分のマスターの方を見る。
マスターである揚羽はビクッとした表情だった。
「何とも言えないが、オレが呼ばれた理由はオレのマスターが原因だと思っている。」
「ホウ・・。彼女が・・?何故だ?」
「前世の知り合いだった少女と瓜二つだ。雰囲気も姿も。」
「・・フム・・。」
神父も少し驚いているようだったが、しばらくして口を開き、
「俄かに信じられんが、君の前世で知り合いだったその少女・・。その生まれ変わりが君のマスターなんじゃないか?」
「・・なっ・・!?」
声をあげたのはキャスターの少年だけじゃない。そのマスターである揚羽も神父の予想外の言葉に驚いた。
「悪魔で可能性の話だ。まだ絶対そうと決まったわけじゃない。それに今私が言ったこと以外にも何か理由はあるかもしれない。
だが、君と少女がもし深く繋がっていたなら、その少女が生まれ変わり呼び出すことも不可能ではない・・のかもしれない。
こんな例は私も初めてだ。」
「うそ・・だろ・・?」
千年前、彼は最愛の人を失った。
そして、もう二度と会うことなど出来ない人だった。
なのに千年経ち、再び出会う。 それも生まれ変わった姿で。
こんなことが本当にあるのだろうか・・? 彼の心の中に葛藤が生じる。