桜を登場させますが、原作と設定が違う感じになります。
「何よ、さっきからジロジロと・・」
「イヤ、別に。」
キャスターの少年はマスターである揚羽をジロジロと見つめる。
家への帰り道だった。
「でも、あなた達の話を聞いて私もビックリしたわ。まさか生まれ変わってまで再開を果たすなんてな・・」
凛は興味深そうに言う。
「・・・・」
キャスターの少年は言峰という神父の話が未だ信じられない。
しかし、西洋の英霊しか召喚できないこの聖杯に東洋の英霊たる自分が召喚されているということは神父の話も全くの嘘ではないのだろう。
「まあ、私は家こっちだから。それと次会うときは敵同士よ。」
「・・え?でも今日は助けてくれて・・」
「それはアナタがあまりにも聖杯について知らな過ぎたからよ。でも、さっきその説明はした。それにアナタは戦う覚悟を決めた。なら、敵同士でも文句ないでしょ?」
「う・・。それは」
話の線は通っていた気がする・・。と揚羽は思う。
しかし、凛は見た感じ面倒見のいい雰囲気でとても悪い人には見えない。
そんな彼女と戦うのは揚羽にとってあまりいい気持ちではない。
「じゃあね。」
凛は手を振り、そのまま前を歩く。
「マスター。あのキャスターのマスターは大丈夫なのか?イマイチ聖杯のルール分かっていなさそうな雰囲気があるんだが・・。」
今まで霊体化していたセイバーが実体化する。
「それに、アイツのサーヴァントはサーヴァント最弱のキャスター。とても生き残れる感じはしないな。」
「そうね。どうやら揚羽ちゃん、魔力供給もまともに出来ないだろうから、キャスターは霊体化出来ないでしょうね・・。」
「ヤバいな」
「ヤバいわね」
二人は「ハー」と溜め息をつく。
「でもセイバーが他人の心配なんて珍しい・・。」
「別に。言ってみただけだ。オレも他人の心配してるほど余裕はないだろうしな。」
すると、凛はしばらくセイバーを見つめ、「そうね」と返事をする。
「それよりも、あなた、その恰好寒くないの?」
凛は話を変えるようにセイバーの恰好を気にする。
セイバーは戦闘以外は先日凛に買ってもらった薄い半袖の黒いシャツの上に薄いパーカー、ミニスカートを着ていた。
「サーヴァントにとって気候とかはあまり問題じゃないしな。」
とキッパリ言う。
今の季節は冬。凛は制服の上にコートを着るくらいの寒さなのだが・・。
***********
「えーと、アナタ名前は・・?」
揚羽はキャスターの少年に尋ねる。
流石に揚羽でも『キャスター』が本名だとは思はない。
「確かに本来ならマスターに真名を明かすべきなんだろうが・・。お前は未熟な魔術師みたいだしな・・。」
とキャスターは溜め息をつく。
「な、何よ! これでも回復術なら・・。」
「要するに戦闘関係の魔術は一切扱えないんだな?」
「・・うぐッ・・」
図星だった。
「もし、お前が襲われて、真名を明かさなきゃいけない状態になったらどうするつもりだ?」
「真名ってばれるとそんなにヤバいの?」
「自分の能力・・手の内が明かされる可能性もあるからな」
「ふーん・・」
ホントに大丈夫かコイツ・・。と言う目でキャスターは自分のマスターを見る。
ホントに状況を理解しているのか不安だ。
「ここが私の家よ。」
小さなマンションだ。
ここで揚羽は母と一緒に暮らしている。
昔は父親も一緒に暮らしていたが、三年前に他界。
そのため今は二人暮らしだが、母親は仕事で海外にいるため、ほぼ一人で暮らしている。
「まあ、オレは寝れれば何処でもいいや。」
「私の家は寝床扱いかしら!?」
「別にいいだろ。それに今のこの国は平穏だ。夜もゆっくり寝れんだろ?」
「アナタの生きていた時代って寝れないほど危険な時代だったの?」
すると、キャスターは「イヤ」と否定し、
「そういうわけじゃない。ただオレの生きていた時代は人を食う『鬼』という存在がいてな。」
「それって昔話とかの話じゃないの!?」
揚羽は恐る恐る尋ねる。
「いいや。本当だ。どうやらこの時代では人々の思想によって作られた存在とされているらしいが・・。」
「実際そうじゃないの?」
キャスターは少し悩んでいる表情だったが、
「まあ、間違いでもないか。鬼は主に京の都に表れてな。都は華やかではあったが、その分、人々の心の闇も深かった。その心の闇が鬼を生み出した・・と言っていいだろう。」
「ふーん、でもその鬼がいっぱいでてきたら、その都は・・。」
「当然、全滅するだろうな。それを防ぐためにも陰陽師という存在がいた。オレもその一員だ。」
「じゃあ、都は平和を保っていたってこと?」
「いいや、結局はお前の言う通り都は全滅した。オレもその時に命を落とした。」
・・そう、千年前愛しい彼女を抱きながら誓ったのだ・・
『もう一度君のいる世界に・・』
それが彼の聖杯に託す願いである。
もう一度会いたい。そしてあの笑顔をもう一度見たい・・。
だが、そんな彼の願いは揺らぐ。
目の前にいるマスター、揚羽は自分の最愛の彼女、小雪に異様なほどにも似ていたからだ。
召喚されたとき、彼は再び小雪と再会した感覚に包まれた。
その感覚のせいかどうも自分の願い、気持ちは弱まってしまう。
けど、それでもこの戦争に負ける気はなかった。
☆☆☆
先ほど、鬼は人々の心の闇から生まれたという話をしたが、実際に今回の聖杯戦争では、ある魔術師(マスター)の願い、思いから召喚されたサーヴァントがいた。
「お嬢様、体の具合はいかがですか?」
「まあまあよ。」
お嬢様と呼ばれた彼女の名は間桐桜。彼女のサーヴァントであるライダーは敬意を持って言ってるのか分からないが、桜を「お嬢様」と呼んでいる。
赤髪でツンツンした髪型でワイルドな感じを漂わせているが、顔の表情はとても優しそうな雰囲気だった。
「いつも、ゴメンね。家事まで任せちゃって・・。」
「いいえ。私はアナタの『足』です。気になさらないで下さい。」
桜は足が不自由だった。間桐の家で体を薬漬けにされ、いつしか足が自由に動かせなくなってしまった。
そんな桜だが、一つ特化しているものがあった。
想像したものを現実にすること・・。
例えば地球上に存在しないものを桜が想像し、それを現実に再現する・・そんな魔術を扱える。
一見「投影」に似ているが、いちいち対象物の構造性を気にする必要はない。ただ、自分の妄想が現実に再現される、思いのままである。
だが、体の弱い桜は自由と思えるこの魔術を多用することができない。
そして、桜が召喚したこのライダーも歴史上に存在しない、桜の想像上のサーヴァントである。
「ライダー、私、そろそろ寝るね。」
「はい、お嬢様。」
ライダーは電気を消し、ゆっくり桜の部屋から退室する。