ブレイドによる学園長のテストをクリアした後の翌日の朝。
クロヤは学園に支給された制服を着ると、体の至るところに短剣や魔導銃を隠し持てるよう細工し、袖の下には暗器まで仕込んでいた。
学園には本来なら寮が用意されているが、クロヤはそれを断った。
仕事柄、道具や武器の量が増えていく。旅をするつもりだったが、一つの場所で長く暮らすとなれば、家でも買って、堂々と看板をかがけて商売した方がいい。
身支度を終えて外に出ると、そこにはルーシャが――猫と戯れていた。
わしゃわしゃと猫のお腹を触り、猫も満更でもなく喜んでいるようだった。
「猫が好きなのか?」
クロヤが後ろから声をかけると、ルーシャは「ひゃい」と驚いた声と共に背筋をビクンとさせる。
猫もスタスタと走り去ってしまった。
「お、おはようクロヤ。全然気配がしなかったよ」
「おはよう。ま、足音とかは消すように意識してるからな。何しに来たんだ?」
「学園長があいつは学校に来るか怪しいから迎えに行けって」
「そんな適当な奴に見えたのか?」
頭を抱えるクロヤだが、確かにアイザックの弟子、だなんていってらそう思われても仕方が無い。
「はぁ」と思わず納得してしまってため息を吐く。
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アイシャは授業があるからと別行動になった。クロヤが案内されたのは学園の測定室だ。
個人が持つ魔力量を数値化したり、属性による適正を調べることができる。
部屋には幾つものパソコンのモニターや機器が整備されていた。ここだけ明らかに外と科学技術が数百年は違うと思える程に。
「ホッホッホ。お主が転校してきたクロヤ君だな? 入りたまえ」
長い白髭に丸メガネ、白衣を来た老人がクロヤを迎えた。
なんかうさんくさい雰囲気をクロヤは一瞬で感じた。
「私のことは博士と呼びたまえ。君と子供の戦いは見させてもらった。大変勉強になったよ」
「子供……? 一体なんのことでしょう?」
「昨日戦ったブレイドだよ。あれは私が作ったのだ」
「なるほど」とクロヤは心の中で呟く。
「学園長から聞いたのだが、便利屋とかいうものを営んでいるそうだな」
「はい」
「ホッホッホ。あの実力だ、実践的なデータを手に入れる時に何か君に頼むかもしれん……。とはいえ、今日は検査だったな」
「報酬を頂けるのならなんでもやりますよ。それで検査とは?」
「まずは、あの球体に魔力を流してくれ」
博士が指を指す方向には、紫色の水晶玉があった。クロヤはそこに手を乗っけると、魔力を流し込む。
博士はキーボードを叩いて魔力を解析していく。
「ふむふむ……属性相性は闇がすば抜けて高いな。それに次いで雷火、あとは軒並み同じくらいか。魔力量は2158と」
「いまいちパッとしないですね」
「属性相性は魔法を覚えやすさや威力が左右される。 魔力量に関しては一年生にしては十分高い。2000を超えれば魔術師として十分に食えるレベルだ。5000で宮廷魔術師、10000もあれば宮廷魔術師のリーダーや上位の教皇レベルになれる」
「ちなみにこの学校のMAXはなんですか?」
「学園長の21万だ。生徒で言えば6万ぐらいだったかな、3年生に1人桁外れがおる」
博士は検査の測定記録をメモをとると、ジリリリとベルが鳴った。
「すまない。呼び出しだ。少し待ってくれ」
博士が席を部屋を離れると、クロヤは再び水晶玉の前に立つ。
目を閉じて、意識を覚醒させた。
「リミットブレイク」
体の底から力が溢れるのを感じる。魔力を流し込むと直ぐに覚醒のスイッチを切った。
数値は25435。
「俺もまだまだだな」
博士が戻る前に、素早く結果を以前の物に戻す。すると、直ぐに博士が戻ってきた。
「すまない。あとは身体測定をするだけだ。今回の結果を踏まえてかリュキュラムを組むはずだ」
クロヤはそれから体重や身長、視力や握力といった簡易的な検査をー通り受けた。
「順調みたいじゃな」
学園長が診断室に乗り込むとクロヤの様子を見てそう言った。
博士が記載している検査結果を見ると、「まぁこんなもんじゃな」と呟く。
「検査の方は無事に完了だ。学園長、あとはよろしく頼む」
「了解。ご苦労じゃ博士。クロヤ、自己紹介のスピーチは考えたか? いまからお前が1年間過ごす教室に案内するぞ」