新たな1歩を踏み出し、輝きを目指し始めた梨子。
そして、自室でのんびりしている和哉に1本の電話が入る。
ある日の夜。
自室のベッドの上でのんびりしながらμ'sの曲を聞いていると電話がかかってきた。
スマホのディスプレイに表示された名前は梨子。
そういえば、連絡先交換したんだった。
曲を一旦止め、通話ボタンを押そうとした時、なぜか指が止まる。
「あ、あれ?」
着信音が鳴り続ける。
それと一緒に俺の心臓の音もどんどん大きくなる。
もしかして、緊張・・・してる?
「落ち着け。ただ梨子から電話がかかってきただけだ。うん」
もしかして、デートの誘い?
「ないないないないないないないない。自惚れし過ぎだから。馬鹿か!」
1人で喋りながら心を落ち着かせる。
「OK。きっと千歌の勧誘が、とか曲についてだよ。大丈夫。・・・って、誰に話してるんだろ」
指を震わせながら通話ボタンを押す。
「・・・もしもし」
『和哉くん?梨子だけど、夜にごめんね』
梨子の声だ。
・・・それ以外だったら事件なんだが・・・。
「いや、大丈夫だよ。どうかしたの?」
少しだけ声が上ずる。
『私ね、千歌ちゃんたちとスクールアイドル始めるの』
「本当!?」
梨子の報告で声が大きくなり、思わず立ち上がる。
『うん。いつか、和哉くんが言った通りだね』
「覚えてたの?」
嬉しそうに言う梨子の言葉に俺は驚く。
小学生の時、俺は梨子がスクールアイドルになったら人気が出る、なんて言ったことがある。
まさか、覚えてたなんて。
『うん。でも、実際にやるなんて思ってもなかったよ。私にはピアノだけだと思ってたから』
少し自虐気味に言う梨子。
「そんなことないよ。俺が保証する」
『ふふっ。ありがとう』
そこで会話が途切れる。
昔はそんなことは無かったが、5年の空白は大きく、何を話せばいいのかよく分からない。
「えっと、夜遅いし、そろそろ切るよ」
『あ、うん!そうだね、おやすみなさい』
「おやすみ」
プープーとスマホから無機質な音が流れる。
「・・・なんで梨子相手に言葉が出てこないんだよ・・・」
はあ、と溜息をつき、ベッドに腰掛ける。
なんで、緊張してるんだろう・・・。久しぶりに会ったから?まだ俺自身が割り切れてないから?それとも梨子がかなり美人になって緊張してる?
1人で梨子への態度がおかしいことについて思考を巡らせていく。
すると、再び電話がかかってくる。
「うわっ!?」
つい驚き、声を上げてしまう。
相手は千歌だ。
「・・・もしもし」
千歌は悪くないのだが、少し不機嫌目な声で応答する。
『え、なんかごめん』
声で俺が不機嫌なのを感じたのか、謝る千歌。
・・・なんだか、申し訳ない。
「いきなり掛けてくるから驚いただけだよ。それで、どうしたの?」
『そう!あのね、カズくん!梨子ちゃん、スクールアイドルやってくれるって!』
「ああ、うん」
どうやら千歌も梨子がスクールアイドルをやるという報告のようだ。
『何ー?反応薄くない?』
「だって梨子から直接聞いたから」
『・・・ふーん。そっかぁ、仲良しなんだぁ。そーだよねー。幼馴染だもんね』
幼馴染みという言葉を強調する千歌。
それに何故か不機嫌だ。
「俺はそう思ってるけど」
『ふん!カズくんなんてしーらない!ばか!』
「あ!ちょっ、千歌!切られた!」
理不尽な怒りをぶつけられた。
なんで?
・・・考えても分からないものは分からない!
とりあえずμ'sの曲をかけ直し、のんびりタイムを再開する。
すると、スマホがメッセージを受信した。
送り主は千歌だ。
『明日の朝、曜ちゃんとうちの前の海岸にくること』
短くそう書かれていた。
俺、何やらされるんだ?
明日への不安を残しながら結局くつろぐ和哉。
この能天気さが裏目に出なければいいのだが・・・。
「てか!俺が知らないところで梨子が千歌に口説かれてるんだけど!?」
そりゃちかりこですから。
王道ですよ。
「確かに・・・」
いや、よしりこですよ。
「ちかりこ!」
よしりこ!
ちかりこ!
よしりこ!
「え、えっとぉ・・・。次回をお楽しみに・・・。やめて!恥ずかしいからぁ!」