千歌の不機嫌なメールを受け取り、仕方なく指定された場所へ向かう和哉。
しかし、そこには更なる出来事が?
翌日、千歌に言われた通り、曜と指定された場所に向かう。
「ねえ、曜。今から何するの?」
「朝練だよ!」
「朝練?」
よく分からない言葉に首を傾げる。
バスを降り、集合場所に到着。そこには既に千歌、それに梨子がいた。
「おはよう」
梨子に挨拶され、返事をする。
「お、カズくんも来たね。それじゃ行こっか」
「待て待て。ホントに何するの?全く分かんないんだけど」
「今からランニングと柔軟体操と振り付けの練習だよ」
千歌の言葉に納得する。
本格的に活動を始めるようだ。
「でも、何で俺も?」
「そりゃ、カズくんは私たちのサポート役でしょ?」
当然のような顔をしている千歌。
確かにダイヤちゃんにはサポート役をやると言った。しかし、あの時はそうでも言わないとダイヤちゃんの雷が更に落ちると思ったからだ。
「知らないよ!千歌が思い込んでるだけでしょ!」
「そうなの?てっきり私はそうだとばかり」
「梨子、千歌の言葉をあまり信用しちゃダメだよ・・・」
「じゃあ、今からカズくんは正式にサポート役ということで!それじゃ、練習スタート!」
俺の話も聞かず、練習が始まる。
渋々だがせっかく来たことだし、俺もサポートに入る。
柔軟体操を終え、ランニングを始める。
ランニングでラララサンビーチまで向かい、この間作り上げた曲の振り付けをの練習を始める。
俺が手拍子でリズムをとり、3人の踊っている姿を曜のスマホで撮影する。
「よし、そこまで。一回確認しよう」
一度練習を切り、録画した動画を4人で見る。
「どう?」
「だいぶよくなってきてるとは思うけど」
梨子と千歌が不安そうに言う。
「けど、ここの蹴り上げがまだ弱いのと、ここの動きも」
曜が撮影した箇所の良くない部分を指摘する。
「あぁ!ホントだー!」
「流石ね。すぐ気づくなんて」
「私、高飛び込みやってたからフォームの確認は得意なんだ」
・・・俺が指摘しようとしていた所を全部曜に言われてしまった。
「リズムは?」
「だいたい良いけど、千歌ちゃんが少し遅れてるわ」
「あー!私か!」
・・・それも俺が言おうと思ってた。
千歌は頭を抱え、空を見上げる。
「ん?」
「なにか見つけた?」
千歌に尋ねると空を指さした。
指さした先を見るとピンクの色をしたヘリが低い高度で飛んでいた。
「何、あれ?」
「小原家のヘリだね」
梨子が聞く曜が答える。
「小原家?」
「淡島にあるホテルを経営してて、次の新理事長もそこの人らしいよ」
「前に果南ちゃんとこに行った時、奥にホテルがあっただろ?あれだよ」
「へー」
あんなド派手なヘリを使うなんてやっぱりいい趣味してるよ、と皮肉を込めながらヘリを見つめる。
・・・鞠莉ちゃんならやりそうだ。
ヘリはそのまま通り過ぎず、旋回する。
「なんか近づいてない?」
「そんな気がする・・・」
「気のせいよ」
「でも・・・」
みんな否定をするがやっぱり、ヘリはこちらに近づいてきていた。
「うわぁ!」
全員その場に倒れ込み、身を守る。
「なになに!?」
ヘリが起こす風と砂嵐に耐えながら、ヘリを見続ける。
こんなことをするのは1人しか居ない。きっと・・・。
ホバリングを続けるヘリの扉が開き、そこから・・・。
「チャオ~☆」
ウィンクをしながらシャイニー姉さんこと、鞠莉ちゃんが登場した。
「何やってんだよ!危ないでしょ!」
「だって和哉とみんなに会いたかったんだもの!」
俺は大声で叫ぶと鞠莉ちゃんはいつもの笑顔で言う。
「もう少し時と場所を考えてよ!」
ヘリは着地し、鞠莉ちゃんはぴょんと飛び降りる。
「だ、誰?」
「先輩?」
「でも、見たことないよ?」
梨子、千歌、曜が順に疑問を投げる。
「知り合い?」
「まあ、色々あってね・・・」
曜が聞いてきたことに対し、曖昧に返す。
「貴女たち、浦の星のschool idolよね?」
「は、はい!」
「明日の朝、理事長室に来てね。もちろん!和哉も一緒」
「は、はい・・・」
千歌が不安そうに返事をする。
「じゃあ、話はそれだけだから。シャイニー☆」
「は?」
そういった鞠莉ちゃんはそそくさとヘリに乗り込む。
「ちょっ!待ってよ!」
俺の呼び止めには全く答えず、そのままヘリは飛び立っていった。
「何だったの?」
「さ、さあ?嵐みたいだったね・・・」
曜と梨子は呆気に取られていた。
「と、とりあえず!気を取り直して、練習再開しよ!悪かったところも見つかったし」
千歌の言葉に2人は頷き、練習を再開した。
・・・俺、いらなく無いですか?
「新理事長!?」
鞠莉ちゃんに言われた通り4人で理事長室に来た俺たち。
左から俺、梨子、千歌、曜の順に並んでいて、俺以外が鞠莉ちゃんの言葉に驚く。
「イエース!でも、あまり気にせずマリーって呼んでほしいの」
でも、鞠莉ちゃんの格好は先生たちのような服装ではなく、浦女の制服だ。
「でも」
「和哉、ハグー!」
いきなり抱きついてくる鞠莉ちゃん。
曜が何か聞こうとしたことを無視して、だ。
それにしても数年会ってない間に成長しすぎでは?
「ちょっ、いきなり・・・」
すげぇ、いい匂い・・・。
「痛っ!」
その瞬間、脇腹に鋭い痛みを感じる。
「デレデレしすぎよ」
梨子が鋭い目付きで俺を睨む。
千歌も同じ表情で、曜はしーらないっと言ったふうな顔をしている。
「ごめんなさい・・・」
なんで、謝らなきゃいけないの?
鞠莉ちゃんは満足したのか離れ、俺たちの前に立つ。
「あの」
「紅茶、飲みたい?」
鞠莉ちゃんはまた曜の言葉を遮って言葉を続ける。
相変わらずすぎて頭を少し抱える。
「あの、新理事長・・・」
「もう、マリーだよ!」
新理事長と呼んだ千歌に鞠莉ちゃんは近付いて訂正させる。
「ま、マリーさん?」
鞠莉ちゃんは嬉しそうに笑う。
「その制服は?」
千歌は鞠莉ちゃんの格好に疑問を持ち、尋ねる。
「どこか変かな?3年生のリボンをちゃんと用意したはずなんだけど」
制服の胸元にある緑色のネクタイを見せつける鞠莉ちゃん。
「でも、新理事長ですよね?」
「シカーシ!この学校の3年生!生徒兼理事長、カレーギュードンみたいなものね!」
鞠莉ちゃん的には1つで2つ楽しめるみたいなことを言いたいのだろうが、イマイチ例えがピンとこない。
「・・・例えがよく分からない」
俺が思っていたことを梨子がすまし顔で呟くと、次は梨子に絡みに行く鞠莉ちゃん。
「えー!分からないの!?」
「分からないに決まってるわ!」
鞠莉ちゃんの背後にダイヤちゃんが現れ、怒鳴る。
いつやって来たのか全く気づかなかった。
「生徒会長?」
「Oh!ダイヤ久しぶり!随分大きくなってぇ!口調も変えた?」
鞠莉ちゃんはダイヤちゃんに抱きつき、頭を撫でる。
「触らないで貰える?」
鞠莉ちゃんはすーっ、と手を下げ、ダイヤちゃんの胸に触れる。
「でも、胸は相変わらずねぇ」
さっと、胸を隠すダイヤちゃんだが、鞠莉ちゃんもすっ、と逃げる。
「やかましい!」
「It's jork!」
「全く、1年の時に居なくなったと思ったらこんな時に戻ってくるなんて。一体、どういうつもり?」
「シャイニー☆」
机の後ろにあるカーテンの扉をバッ!と開ける鞠莉ちゃん。
そんな彼女の胸ぐらを掴みあげるダイヤちゃん。
怖いんだけど・・・。
「人の話を聞かない癖は相変わらずのようね?」
「It's jork」
鞠莉ちゃんは鞠莉ちゃんで余裕の表情のまま、笑顔でピースする。
ダイヤちゃんは鞠莉ちゃんの胸ぐらを離す。
「とにかく、高校3年生が理事長だなんて冗談にも程があるわ」
ご最もな意見。正直誰が信じるだろう。俺も信じてなかったし。
「そっちはジョークじゃないのよね」
鞠莉ちゃんは前に俺にも見せたように1枚の紙を見せつける。
「は?」
「私のホーム、小原家のこの学校への寄付は相当な額なの」
ダイヤちゃんは見せらつけられた委任状を目で読む。
「嘘・・・」
千歌が驚きの声をあげる。
「な、なんで!?」
ダイヤちゃんも驚きの声を上げた。
まあ、俺も同じ反応をしたんですけどね・・・。
「実はこの浦の星女学院にschool idolが誕生したと聞いてね」
「まさか、それで?」
「そう。ダイヤに邪魔されちゃ、可哀想なので応援しに来たのです」
「ホントですか!?」
スクールアイドル部設立がずっと承認されてこなかった千歌は鞠莉ちゃんの言葉に目を輝かせ、喜ぶ。
「Yes!このマリーが来たからには心配はありません。デビューライブはアキバドゥームを用意してみたわ」
鞠莉ちゃんは小さなノートパソコンを取り出し、画面を俺たちに見せる。
嘘でしょ!?
まだ結成もしてないグループに!?
あのμ'sが作り上げたステージを!?
「はっ!?そんな、いきなり!」
梨子が不安そうな声を上げるが反対に千歌は奇跡だよー!とはしゃぐ。
「It's jork!」
ノートパソコンをパタン、と閉じ、イタズラが成功した子供のような顔で笑う鞠莉ちゃん。
千歌、曜、梨子はじとっ、と鞠莉ちゃんを睨む。
「ジョークの為にわざわざそんなもの用意しないでください」
「実際には・・・。フフッ」
鞠莉ちゃんはウインクして、ハニカム。
「私についてきて!そこが貴女たちのDebut Stageよ!あ、ダイヤは来なくていいよ」
「貴女に付き合ってたら体がいくつあっても足りないわ」
そう毒づくとダイヤちゃんは理事長室から出ていった。
・・・ダイヤちゃんと鞠莉ちゃんってこんなに仲悪かった?気のせい?
「和哉!行きましょー!」
鞠莉ちゃんは俺の腕に抱きつくと、グイグイ引っ張る。
「分かったから!自分で歩くから!」
・・・後ろの3人の視線が本当に痛いんだよ・・・。
連れてこられたのは浦女の体育館。
「ここで?」
曜が意外な声を上げる。
「ハイ!ここを満員に出来たら人数に関わらず、部として承認してあげますよ」
鞠莉ちゃんは相変わらず俺の腕に抱きついたままだ。
「本当!?」
千歌が喜んで聞き返す。
「部費も使えるしね!」
「でも、満員に出来なければ?」
梨子の質問に鞠莉ちゃんは表情を変えずに答える。
「その時は解散してもらうほかありません」
「え!そんなー・・・」
「嫌なら断ってもらって結構ですよ?どうします?」
鞠莉ちゃんは意地悪な顔をして冷たく言う。
全く、この人は・・・。
「どうって・・・」
「結構広いよね、ここ。やめる?」
不安がる梨子。
曜も意地悪な顔をして千歌に発破をかける。
「やるしかないよ!他に手があるわけじゃないんだし!」
「そうだね!」
「OK。行うということでいいのね?」
鞠莉ちゃんは俺の腕を離し、体育館を後にする。
「はぁ、やっと開放された・・・」
溜息をつき、安堵する。
「ふーん。金髪美女のお姉さんに触れれて良かったんじゃない?」
「そ~だよねー。鼻の下のばしっぱなしだったし」
梨子と千歌からの言葉が心に突き刺さる。
「俺は悪くないでしょ!?」
2人はじとっ、と睨んだままボソリという。
「「最低」」
ハートブレイク、頂きました。
俺はその場で轟沈。
すると、梨子が何かに気づいたようだ。
「待って!この学校の全校生徒、全部で何人?」
「えっとー」
曜が指を降りながら数える。
「あっ!」
「なになに?」
「分からない?全校生徒全員来ても、ここは満員にならない・・・」
「嘘・・・」
自分の夢が実現しようとした矢先、絶望を突きつけられる千歌。
「まさか鞠莉さん、それを分かってて」
曜も千歌と同じのようだ。
暗い表情を浮かべる。
「意外と食えない人のようね、新理事長」
梨子が呟く。
3人はこの広い体育館を呆然と見つめるだけだった。
鞠莉から試練を言い渡され、難しさに悩む4人。
4人はこれからどう動く。
「このくらいできないとお話になりません」
鞠莉さんも意地悪ですね。
「そうかしら?私は普通のことを言ったつもりよ」
鞠莉さんもお優しいですからね。
ちゃんと考えがあるんでしょう。
「ふふっ!さあ、それはどうでしょう。次回もお楽しみにね☆」