ルビィが加わり、5人になったAqours。
しかし、花丸は何も告げずに去っていった。
彼女の心理を知るためにルビィは・・・。
次の日の放課後。
部室でルビィは入部届けを書いていて、俺たち2年生の4人は一生懸命文字を書いているルビィを見守っている。
ルビィはペンを置き、立ち上がる。
「よろしくお願いします!」
入部届けを千歌に渡す。千歌はそれを受け取り、ニコリ、と笑う。
「よろしくね!」
「はい!頑張ります!」
これで正式にAqoursの4人目になったルビィ。
ようやくスクールアイドルになる、というルビィの夢が叶った。
・・・なんだか、泣けてきた。
「そう言えば国木田さんは?」
梨子が不思議そうにルビィに尋ねる。この部室に花丸ちゃんはいない。それに昨日の練習から連絡すらない。
梨子の言葉を聞いたルビィは顔を曇らせる。
「ルビィは何か知ってる?」
俺はルビィに聞いてみることにした。
この表情からして何か知ってるはずだ。
「分からないけど・・・。多分マルちゃん、ルビィのために昨日一緒に来てくれたから・・・」
「花丸ちゃんはルビィがスクールアイドルをやりたいのを知ってた。でも、ルビィは1人じゃ勇気が出せなかった。それを花丸ちゃんは分かってて、体験入部を申し出たってこと?」
俺は昨日考えた推測をルビィに言うと、ルビィはこくり、と頷く。
「どういうこと?」
千歌が頭に?マークを浮かべる。
「ルビィのためにってこと。ルビィがこうしてスクールアイドルになる。これが花丸ちゃんのやりたかった事なんだよ」
そっか、と千歌は寂しげに呟く。曜と梨子も悲しそうな顔をする。
「でも、俺にはそうは見えなかった!」
落ち込んだ空気を晴らすために俺はわざとらしく声を大きくする。
「え?」
「花丸ちゃんも昨日の入部でスクールアイドルをやることを楽しんでた。そうだよね、ルビィ」
いきなり話をふられたルビィは驚くが、力強く頷く。
「マルちゃんもスクールアイドルが好きなんだと思う。でも、それを閉じ込めるのはダメなことなんだと思う。でも、ルビィにはマルちゃんのこという資格なんて・・・」
ルビィは言いながら視線を落としていく。
だけど、俺は。
「あるよ」
「ないよ」
「ある。だって、2人は友達だろ?」
その言葉でルビィは顔を上げる。
「友達なら、わがまま言っていいんだよ。甘えたっていい。でも、それだけじゃダメなんだ。時にはお互いを励まして導いて、高めてあって。そして、一緒に笑う。これが友達だと思う。ほら、ルビィはどうしたい?」
ルビィは目を閉じて自分の気持ちと向き合う。
目を開き、小さく話し出す。
「ルビィはマルちゃんと一緒にやりたい。マルちゃんと、スクールアイドルやりたい!」
「うん。なら、行ってこい!そして、2人で帰ってこい!」
「うん!」
ルビィは走って部室を後にする。
全く、あの目。やることを決めたやる時のあの目。ダイヤちゃんにそっくりだ。
「おーおー。先輩してますねぇ」
曜がにやけながら俺の脇をつつく。
「本当にねぇ。やるじゃん」
千歌もニヤニヤしながら絡んでくる。
「正直、背中が痒かったわ」
梨子も2人を真似して冷やかす。
「いいじゃん!たまには先輩らしいことしたって。ほら、行くよ!」
恥ずかしくなった俺も3人を連れて部室を後にする。
どこに行くか?そんなの、分かりきってるじゃないか。
side 花丸
マルは1人、図書室に向かう。
ルビィちゃんはスクールアイドルとしてAqoursに入った。だから、マルの出番はおしまい。
もう、夢は叶ったから。マルは本の世界に戻るの。
「大丈夫。1人でも」
受付カウンターに座り、誰もいない図書室で呟く。
カウンターの引き出しにはこの間、沼津の本屋で買ったスクールアイドル雑誌が入っている。ページをめくり、ある1つの記事を開く。
『星空凛』ちゃん。
マルの憧れ。
ウエディングドレス風の衣装を着た凛ちゃんはとてもかわいくて。マルもこんなふうになれたらなって、考えてしまう。
やめよう。マルのお話はこれで終わりだから。
「ばいばい」
そっ、とページを閉じようとした。
「ルビィね!」
「あっ!」
声のした入口の方を向くとそこには大好きな友達のルビィちゃんがいた。
どうして?
Aqoursの練習は?
それに、今まで見たことないような真剣な表情。
「ルビィちゃん?」
「ルビィね!マルちゃんのことずっと見てた!ルビィに気を使ってスクールアイドルやってるんじゃないかって。ルビィのために無理してるんじゃないかって。心配だったから!」
ルビィちゃんは今にも泣きそうな声で叫ぶ。
「でも練習の時も、屋上にいた時も、みんなで話してる時も!マルちゃん、嬉しそうだった!それ見て思った。マルちゃん好きなんだって!ルビィと同じくらい好きなんだって!スクールアイドルが!」
ルビィちゃんの瞳からは涙が溢れ出す。
マルがスクールアイドルが好き?
「マルが・・・。まさか・・・」
「じゃあ、なんでその本そんなに読んでたの?」
「それは・・・」
自分でも分からない。
なんでこの本をそんなに読むのか。
なんでこんなにも惹かれるのか。
確かに凄いとは思った。
かわいいと思った。
でもそれだけ。
それだけのはず。
ルビィちゃんはカウンターに近づき、マルの正面に来る。
「ルビィね、マルちゃんとスクールアイドル一緒にできたらって、ずっと思ってた!一緒に頑張れたらって!」
ルビィちゃんの気持ちは凄く伝わった。
でも・・・。
「オラには無理ずら。体力ないし、むいてないよ」
ルビィちゃんはマルの言葉を聞いて、笑う。
「そこに写ってる凛ちゃんもね、自分はスクールアイドルに向いてないって、ずっと思ってたんだよ」
え?
凛ちゃんが?
まさか・・・。
「でも好きだった」
入口から新しい声が聞こえた。
それは梨子さんだ。その隣に千歌さん、曜さん、それに和哉さんもいる。
「やってみたいと思った。最初はそれでいいと思うけど?」
梨子さんは少しおどけて話す。
そして千歌さんがそっ、と手を差し出す。
でも、マルがその手を受け取っていいのかな?
「ルビィ、スクールアイドルがやりたい!マルちゃんと!」
ルビィちゃんの声。
それが1つ1つ、マルの心を埋めていく。
「オラにできるかな?」
「私だってそうだよ!」
千歌さんが明るく言う。
「大切なのは、できるかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ!」
その時の千歌さんの笑顔は太陽みたいで。
そして、他のみんなを見回す。
みんな、優しく笑っている。
やりたいかどうか・・・。
マルは・・・。
やりたい・・・!
千歌さんが差し伸べている手にそっ、と触れる。すると、他のみんながその手に自分の手を重ねる。
暖かい・・・。
「花丸ちゃん」
和哉さんが話しかける。
マルが和哉さんを見上げると、和哉さんは視線で千歌さんを見ろ、と言っている。
言われた通りに、千歌さんを見る。
「Aqoursへようこそ、花丸ちゃん!」
なんだ、マルのお話は始まったばかりだったんだ。
「はい!」
「マルちゃん!」
ルビィちゃんがカウンター越しでマルに抱きつく。
「ルビィちゃん!」
マルはこの大好きな友達と頑張ろう。
心にそう決めてマルの物語は始まった。
side out
花丸も加わり、さらに勢いがついたAqours。
彼女たちの物語は始まったばかりだ。
「勝手に思い込んで、決めつけて。恥ずかしいずら・・・」
大丈夫ですよ、花丸さん。
間違えてこそ、人は成長するものです。
「そうだね!これからマルも輝くために頑張るずら!」
その意気です。
はにゃ猫様、☆9評価。
鵺鵠とも様、☆9評価ありがとうございます!
次回をお楽しみに!