何やらおかしな行動を再びとる花丸。
和哉はそれを探ろうと尾行を始めた。
side 善子
「いきなり屋上から堕天してしまった・・・」
渡り廊下の戸棚。そこで私は膝を抱えて座り込んでいる。
なぜ、私がこんな所にいるかと言うと、そもそも不登校の私。行き場もなく屋上に逃げたら屋上で何やら始まったのがきっかけだ。
そこには和哉先輩と幼稚園の頃の幼馴染みの花丸こと、ずら丸もいた。
そもそも自己紹介であんなこと言わなきゃ、こんなことにはなって無かったのに。
すると、戸棚が開き、光が差し込む。
まずっ!
また変な子だと思われる!
「学校来たずらか」
顔を覗かせたのは花丸。
どうしてここが!?
「ひぃっ!?」
戸棚から飛び出し、反対の壁にもたれるように座る。
「来たっていうか、たまたま近くを通りかかって寄ってみた、と言うか・・・」
「たまたま?」
「どうだっていいでしょ、そんなのこと!」
のんびり立ち上がる花丸。
私も立ち上がり、花丸にいろいろ聞き出すことにした。
「それよりクラスのみんな、なんて言ってる?」
そう、一番大事なのはこれだ。この返答次第で私の青春の高校生活が決まると言っても過言ではない。
「え?」
花丸は何のことか、分かっていないようだ。
「私のことよ!変な子だねー、とか!ヨハネって何?とか!リトルデーモンだって、ぷふーっ!とか!」
「はぁ」
花丸は昔と変わらない呑気な声で返事をした。
「そのリアクション、やっぱり噂になってるのね!そうよね、あんな変なこと言ったんだもん!終わった、ラグナロク!まさに、デッドアライブ」
私はまた戸棚に逃げ込む。
もう生徒全員が帰るまでここに隠れてよう・・・。
「それ、生きるか死ぬかってことだと思うずら。というか、誰も気にしてないよ」
「でっしょー・・・。え?」
今、花丸は確かに気にしてないって・・・。
でも、そんなの上辺だけなんじゃ・・・。
「ふふっ。それよりみんな、どうして来ないんだろう、とか。悪いことしちゃったのかなって、心配してて」
「ほんと?」
「うん」
私は戸棚から顔を出して外の様子を覗く。
「ほんとね?天界堕天条例に誓って嘘じゃないわよね?」
「ずら」
「嘘じゃないよ」
2人の声を答えを聞いて私は立ち上がる!
「よし、まだいける!まだやり直せる!今から普通の生徒で行ければ!」
って、2人?
キョロキョロ、と当たりを見回すと尻餅をついた花丸。
私の隣にもう1人。
ゆっくりとそちらを見る。
「やっ。学校来たね」
ニコニコ笑う和哉先輩がいた。
「な、ななななななんで!なんで先輩が!?」
「花丸ちゃんが戻ってこないから、ていうのは建前で何こそこそやってるのかなって気になって着いてきた」
「あはは、オラもびっくりしたずら」
この人はお節介というか、お人好しというか。
「そもそも!先輩がずら丸の連絡先教えてくれればここに来る必要無かったのに!?」
先輩に八つ当たり気味にこの前の電話の件について言う。
「えー、俺のせい?」
「そうよ!」
「すぐに切ったのは善子でしょ?てっきり知ってるものかと思ってたけど」
うっ、そう言われると何も言えない・・・。
「とにかく!ずら丸!」
尻餅をついた花丸にずいっ、と顔を寄せる。
花丸は驚いたように目を見開く。
「な、なんずら!?」
「ヨハネたってのお願いがあるの」
「だから、ヨハネ辞めたいのなら、まずそれを」
「先輩は黙ってて」
「えー・・・」
「それで、お願いって?」
花丸は聞いてくれるようで、内容を聞いてくる。
「私、気が緩むとどうしても堕天使が顔を出すの。だから」
「マルが注意すればいいずら?」
「そうよ。お願いできるかしら?」
「任せるずら!」
クックックッ・・・。
ここで花丸を味方につければ憧れの青春スクールライフを送れる!
勝負は明日からよ!
先輩は頭を抱えていたけど、なんとかなるわ!
次の日。
登校時間通りに学校に続く坂道を登っていく。
あぁ、なんなのかしら、この空気。少し状況が変わるだけで世界が全部変わるなんて!清々しい気分で最高だわ。
少し前を歩く1年生3人組が私に気づいたようだ。
少し、ほんの少しだけドキリとしたけど、ここは落ち着いて、っと。
3人組は立ち止まり、私をじっくり見る。
その前を通り過ぎるが、特に何もアクションを起こさない。
ふふっ、見てる見てる!
花丸の言った通り、みんな前のことは覚えてないようね。ようし!
「おはよう」
私は立ち止まり、振り返ると挨拶をした。
さあ、どうだ?
「お、おはよう」
よっし!掴みは良さげね!
教室に着くと、花丸は既にいて、私の席の場所を聞くと、嬉しそうに案内をしてくれた。
花丸の隣にいた赤髪のツインテールの女の子は黒澤ルビィと言うらしい。
かわいらしいけど、すごい名前ね。
席につくとクラスのみんなが寄って集まり、私の席を囲む。
「津島さんだよね!」
「ええ。そうよ」
「雰囲気変わってたから、ビックリしちゃった」
「みんなで話してたんだよ!どうして休んでるんだろうって」
これが質問攻め!
なんだかリア充っぽい!
おっと、それよりまずは、質問に答えないと。
私は細く微笑む。
「ふふっ。ごめんね。今日からちゃんと来るから。よろしく」
「こちらこそ!」
よしっ!これで明日からも大丈夫なはず!
しかし、その子は苦笑いを浮かべながら質問をする。
「津島さんて名前、なんだっけ?」
「ひどいなー。あれだよ、あれ。えっと・・・」
「なんだっけ?確か、よ・・・よ・・・よ・・・」
まさか、名前を覚えられてないとは・・・。
い、いや、まだよ、善子。慌てる時間じゃないわ。
そう、名前を覚えてないのは私が学校に来てなかっただけのはずよ。
「よ・・・よは・・・」
まずい!!
「善子!私は津島善子だよ!」
「そ、そうだよね・・・」
やばっ、変に食いついて苦笑いされた!
ど、どうしよう・・・。
と、とりあえず笑っとこう。
笑ってみると、周りのみんなも笑ってくれた。
ふぅ、なんとか乗り切った・・・。
とりあえず、座ろう。
「津島さんって、趣味とかないの?」
「趣味?と、特には・・・」
いや、これはクラスに溶け込むチャンス!?ここでうまく好感度を上げて・・・。でも、なんて言うの?
堕天使ファッション?これはダメ。
ゲーム?陰キャラって思われちゃう!
だ、だったら生放送でもよくやってる・・・。
「う、占いをちょっと・・・」
「本当に!?」
「私、占ってくれる?」
「私も私も!」
反応はいい。
なんとか、なりそうだ。
「いいよ!えっと・・・」
今占いをやるには何がいいかしら?と考え、持っているものを思い出す。
「あ!今準備するわね!」
「やった!」
みんな喜んで拍手している。
よし、頑張らなきゃ。
私は自分のカバンからいつも愛用のテーブルクロスを取り出し、マントを羽織り、シニヨンに黒い羽を刺す。
「これでよし!」
占いの準備はバッチリ!
「はい、火をつけてくれる?」
蝋燭立てに立てた蝋燭を1人に差し出す。
「え?」
その子にマッチを渡し、火をつけてもらう。
蝋燭に火が灯る。
さあ、堕天使ヨハネの占いの開幕よ。
「天界と魔界の蔓延る遍く精霊。煉獄に堕ちたる眷属たちに告げます。ルシファー、アスモデウスの洗礼者、堕天使ヨハネと共に、堕天の時が来たのです!」
シーン、と静まり返る教室。
みんなの顔を見るとひいてしまっている。
やってしまったぁ・・・!
その隣にはジト目で私を見る花丸。
フッ、と息で蝋燭の日を消す。
「善子ちゃん」
「はい・・・」
「片付けて」
「はい」
花丸に言われた通り、占い用の道具をすべて片付ける。
「ごめんね、みんな。善子ちゃんちょっと借りるね。行こ、ルビィちゃん」
「あ、うん!」
花丸に手を引かれるまま着いていく。
「どこに行くの?」
「オラたちの部室ずら。そこで話を聞いてあげる」
「そう・・・」
何にせよ、私の青春は終わったわ・・・。
やはりやってしまった善子。
そんな善子を見かね、花丸が行動に移る。
「マルがついていながら、情けないずら」
花丸さんのせいではない気がします。
「そんなことはないずら。もっとしっかりしないと」
責任感が強いんですね。
次回もお楽しみに!