2人の夢の軌道   作:梨善

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〜前回のあらすじ〜
堕天使アイドルとして動画を作成し、投稿したAqours。
果たしてその成果は?


#23 新たな輝き

今日決まったことは明日、紹介PVを撮ること。

 

ふと気になった梨子さんが犬が嫌いなことを帰りのバスで先輩に聞いてみると、先輩も知らなかったようだ。

 

それはさておき、次の日。早速屋上でPV撮影を始める。

 

「ハァイ。伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ!みんなで一緒にー、堕天しない?」

「「しない?」」

 

先輩が回しているカメラに向かい、6人で決めポーズをとる。

 

クックックッ、決まった!

 

「うん、オーケー。いい感じじゃないかな」

 

先輩の声にみんな、安堵の息をつく。

 

「じゃあ、早速サイトに投稿しよう!カズくんは先に行っててね」

「分かった」

 

千歌さんの指示に従って、先輩は機材をまとめて持ち、屋上から出ていき、私たちも着替えることにした。

 

部室につくと先輩がノーパソを操作しながら、お疲れ様、と声をかける。

 

「どう?アップできた?」

 

曜さんの質問に先輩は笑顔で答える。

 

「うん。ばっちりだよ。見てみる?」

 

梨子さん以外のメンバーが見ると言うと、先輩は動画ファイルを再生する。

 

「おぉー!最高に堕天使だよ!」

 

喜ぶ千歌さんとは逆に梨子さんは。

 

「やってしまった・・・」

 

壁に頭を当て、落ち込んでいた。

 

余程恥ずかしかったのかしら?かなり可愛く撮れてるのに。

 

すると、ピロン♪とノーパソが通知音を鳴らす。

 

「カズくん!」

 

千歌さんは早く早く!と先輩の肩を叩く。

 

「叩くな!今開くよ」

 

先輩がAqoursのページを表示させる。

 

「あぁ!嘘!?」

 

曜さんが驚く。

 

「一気にこんなに!?」

「じゃあ効果があった、ってこと?」

 

落ち込んでいた梨子さんも画面に食いつく。

そう、Aqoursの順位は953位。

 

「コメントも沢山!すごい!」

 

ルビィも喜んでいる。

 

あ、別にいきなり呼び捨てとかじゃないわよ!教室で話してちゃんと仲良くなったんだから!

なんか、堕天使のヨハネをかっこいいって言ってくれるし、かわいいリトルデーモンだし・・・。

じゃなくて!投稿した動画にはかなりのコメントが出ていた。

どれどれ、コメントの内容は・・・。

 

「ルビィちゃんと堕天する」

「ルビィちゃん最高」

「ルビィちゃんのミニスカートがとてもいいです」

「ルビィちゃんの笑顔・・・」

「ルビィばかりだね。よかったじゃん、ルビィ」

 

みんなが読み上げ、先輩もルビィを褒める。

 

「いやぁー、そんなぁー」

 

照れながら笑うルビィ。少し羨ましい。

 

いや、先輩に褒められた、とかじゃなくて!

 

なぜ、ルビィの人気が高いのかと言うと、この場面だろう。

 

『ヨハネ様のリトルデーモン4号、く、黒澤ルビィです。一番小さな悪魔・・・、可愛がってね!』

 

うん、可愛い。流石リトルデーモンだわ。

 

みんなでワイワイ言いながら動画を見ると校内放送が流れる。

 

『スクールアイドル部!今すぐ生徒会室に来なさい!』

「げっ!?ダイヤさんに見つかった!?」

「あちゃー、勘付くのはやいなぁー」

 

放送した人は生徒会長。

千歌さんはうぁー、と頭をかかえ、先輩ははぁ、とため息。他の2年生も同じだ。

 

「とにかく、早く行こう。長引かせると面倒だよ」

 

先輩の声にみんな立ち上がり、渋々生徒会室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室に着くとパソコンの画面を鬼の形相で見る生徒会長と・・・。

 

「Oh!Pretty bomber head!」

 

理事長がいた。

 

「プリチー?どこがですの?こういうのは破廉恥というのですわ!」

 

生徒会長はお怒りのようだ。

 

「ダイヤ、口調」

 

理事長に言われ、コホン、と咳払いをした生徒会長は私たちを睨む。

 

「いやー、そういう衣装というか・・・」

「キャラというか・・・」

 

千歌さんと曜さんが苦笑いしながら答える。梨子さんが千歌さんに何か言っているが、私のところからじゃ、聞こえない。

バン!と机を叩き、注目を集める生徒会長。というか、いつの間に理事長いなくなったの?

 

「そもそも、わたくしがルビィにスクールアイドル活動を許可したのは、節度を持って自分の意思でやりたいと言ったからよ。こんな格好をさせて注目を浴びようなど!」

 

そういえば、この人はルビィのお姉さんだったわね。似てないわ。むしろ、梨子さんの方がルビィに似てる気がする。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん」

 

ルビィが謝ると生徒会長は息を吐く。

 

「とにかく、キャラが立ってないとか、個性がないと人気が出ないとか、そういう狙いでこんなことするのはいただけないわ」

「でも、順位は一応上がったし・・・」

 

そう、曜さんの言う通り、順位は大幅に上がった。

 

結果オーライじゃない!

 

「そんなもの、一瞬に決まっているでしょう?試しに今、ランキングを見てみるといいわ」

 

生徒会長がノーパソを滑らせる。それを曜さんが受け取り、ノーパソを開く。

 

「あっ!?」

 

曜さんの驚く声。

画面を見るとAqoursの順位は1526位にまで落ちていた。

 

「本気でラブライブを目指すのならばどうすればいいのか、もう1度考えることよ!」

「はい・・・」

「和哉さん」

「何?ダイヤちゃん」

 

生徒会長がいきなり先輩を名指しする。先輩も妙に落ち着いたように答える。

 

「貴方、分かってて何も言わなかった、そうよね?」

「そうだよ」

「では、何故!止めなかったの!?」

「俺が言ったらみんなはその言葉を信じる。見たことないものを見ないまま止めるのは俺は嫌だ。みんなには1つずつ決めたことをやって、その結果から得られるものを知って言ってほしい。それだけだよ」

「貴方はいつもそうよね。変わらないのね」

「俺は変わったよ、前に進み始めたから。むしろ変わらないのはダイヤちゃんじゃない?そんなダイヤちゃんにとやかく言われる筋合いはない。今は俺たちが『Aqours』なんだから」

 

あんなに怒ってた生徒会長に向かって怯まずに言い返すどころか、煽るなんて・・・。

 

私が思ってるよりも先輩って凄い?

 

「ふん。では、『Aqours』の皆様にもう1度言うわ。どうすればいいか、考え直すことね」

 

そんなの分かりきってるわ。堕天使をやめればいい。それだけじゃない。考える必要なんて無いわ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会長にきつい言葉を言われ、私たちは夕日が眩しい海岸の防波堤に座っている。

 

「失敗したなぁ・・・」

 

千歌さんがため息混じりに呟く。

 

「確かにダイヤさんの言う通りだね。こんなことでμ'sみたいになりたいだなんて、失礼だよね」

「千歌さんが悪いわけじゃないです!」

 

ルビィは落ち込む千歌さんを励まそうと声をかける。

 

「そうだよ。あの鉱石生徒会長が変な意地張ってるのがいけない」

「あ、あはは・・・。お姉ちゃんのせいでもない気はするけど・・・」

 

先輩とルビィがフォローする必要なんてないの。

全部、私のせい。

 

「そうよ。いけなかったの、堕天使。」

「え?」

「やっぱり、高校生にもなって通じないよ」

「それは!」

 

千歌さんが否定しようとするが、その前に私は立ち上がり、少し伸びをする。

 

「なんか、スッキリした。明日から今度こそ、普通の高校生になれそう」

「じゃあ、スクールアイドルは?」

 

ルビィが悲しげな表情で聞く。

 

スクールアイドルか・・・。みんなで何かするのはとても楽しくて、魅力的だけど・・・。

 

「やめとく。迷惑かけそうだし。じゃあ」

 

みんなの顔を見ないように、なるべく背中を向け、立ち去ろうとする。

 

「少しの間だったけど、堕天使に付き合ってくれてありがとね。楽しかったよ」

 

1度だけ、振り返って笑ってお礼を言うと、すぐにみんなに背を向ける。

今ここで何か言われたら、みんなの顔を見たら、またこの気持ちが揺らぎそうな気がして。

 

「善子」

 

そんな私の気持ちとは無関係に先輩が私の名前を呼ぶ。

 

この人は・・・。

 

私は立ち止まりはしたが、無視をする。

 

「いつでも戻ってきていいんだよ。善子だってAqoursなんだ。みんなも言わないだけで、そう思ってるんだから」

 

先輩の言葉にみんな、うん、と返事をした。

 

何よ・・・。なんでそんな事言えるの?私のせいで怒られて、失敗して。でも、きっと、みんな笑ってる。みんな温かいから。それに甘えちゃいけない。

今日で『堕天使ヨハネ』は終わりにして『津島善子』にならないといかないから。

 

「・・・」

 

結局私は何も言わずに、立ち去った。いつも持っている黒い羽を取り出し、それを見つめる。

 

・・・バイバイ。

 

心の中で呟き、その羽を手放す。羽は風に乗り、どこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。

休日なことを利用し、私は朝から部屋の片付けをしていた。

堕天使の私と完全に別れるために。

 

「これでよし」

 

部屋は綺麗に片付き、オカルトチックなアイテムは何1つない、普通の部屋。

ダンボール箱の中には生放送で使っていた衣装と小物を詰めた。後はゴミ置き場に持っていくだけ。

ダンボール箱をそっ、と閉じ、封をする。

住んでいるマンションを出て、外のゴミ置き場へ向かう。

 

・・・これでいいの。これで。

 

何度も自分に言い聞かせ、ゴミ置き場から立ち去る。

 

「堕天使ヨハネちゃん!」

「え?」

 

声の方を向くと、スクールアイドル部のみんな。Aqoursのみんながこの間PVで使ったゴシック服を着て立っていた。

 

どうして?どうしてその服を?

あ、先輩もいる。

 

先輩までメンバーに合わせた様な黒を基調としたロック風な服を着ている。

 

「「スクールアイドルに入りませんか!?」」

「・・・はぁ?」

 

どういうこと?また、堕天使アイドルをやる気?

 

「ううん。入ってください、Aqoursに!堕天使ヨハネとして!」

 

千歌さんが笑顔で言う。

 

「何言ってるの!昨日話したでしょ!もう・・・」

「いいんだよ!堕天使で!自分が好きならいいんだよ!」

「だめよ・・・」

 

これ以上、千歌さんの言葉を聞きたくない。

 

私はその場から走って逃げる。

 

「待って!」

 

みんなは逃げる私を追いかける。

 

「生徒会長にも怒られたでしょ!」

「うん!あれは私たちが悪かったんだよ!善子ちゃんはいいんだよ!そのまんまで!」

「どういう意味ー!」

 

アーケード通りを抜け、駅前まで来た。

みんなは相変わらずしつこく追いかけてくる。

曲がり角を曲がった瞬間、女の人とぶつかりそうになる。

 

「すいません!」

 

駅をぐるっ、と周り、沼津港方面へ逃げる。

 

「しつこーい!」

「私ね!どうしてμ'sが伝説を作れたのか!!どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか考てみて分かったんだ!」

 

狩野川を通り、橋を越え、沼津バーガーを横切っても、それでも追いかけてくる。

 

それに、何よ!いきなりμ'sがって、スクールアイドルがって!

 

「もう!いい加減にしてー!」

 

とうとう、びゅうおまで着いてしまう。ここまで来ると逃げ道はもう無い。

私はここで足を止め、膝に手をつき、呼吸を整える。

 

「ステージの上で自分の好きを迷わずに見せることなんだよ!」

 

振り返るとみんな息を荒くしている。でも、そこには誰1人欠けていない、Aqoursのメンバー。

 

どうして、そこまでできるの?

 

「お客さんにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ!だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り!」

 

千歌さんが言ったことが私にもできたら、それは凄く、素敵なことなんだろう。

 

私にできるのかな?いや、できるようになれるかな?

 

「・・・いいの?変なこと言うわよ?」

「いいよ」

 

曜さんが笑って答える。

 

「時々、儀式とかするわよ」

「そのくらい、我慢するわ」

 

梨子さんも笑って答える。

 

「リトルデーモンになれ!っていうかも!」

「それは、ちょっと・・・」

 

千歌さんが苦笑いをする。

 

「でも!嫌だったら嫌だって言う!」

 

そっか、これが友達なんだ。

これが、仲間なんだ。

 

千歌さんが私に歩み寄る。その手には何かが握られている。

 

「だから!」

 

千歌さんの手に握られていたのは昨日捨てた黒い羽。

 

私のために・・・?

 

千歌さんはそれを差し出す。私は後ろのみんなを見る。みんな笑顔だ。曜さんも梨子さんもルビィも花丸も先輩も。

 

この差し出された羽を受け取れば、私もこの人たちと一緒に輝ける。

この人たちと一緒に居たい。

そして、堕天使を好きでいたい!

 

ゆっくりと手を伸ばし、千歌さんの手に触れる。

 

「わぁ・・・!善子ちゃん!」

 

みんな喜んで私を向かい入れてくれた。

真っ先にやって来たのはルビィと花丸で、小さい体を跳ねさせながら、2人して私の名前を呼ぶ。

 

「言ったでしょ?」

「先輩?」

 

他のみんなと違って1人爽やかな表情をしている。というか、汗かいてない・・・。

 

「堕天使をやめる必要なんかないって。好きなものは好きでいいって。初めて話した日に言ったはずだよ」

「あっ」

 

先輩に言われて気づく。そうだ、この人は最初からそうだった。

 

「私、このままでいいんだよね?」

「うん。堕天使のままでいいよ。千歌も言ったじゃないか」

「そうよね。ありがと、先輩。それと、その服。似合ってるわよ」

 

笑ってお礼を言うと、先輩は何故か顔を赤らめ、目をそらす。

 

「和哉くん?」

「カズくん?」

「なんで!?」

 

やたら鋭い目つきで先輩を睨む、千歌さんと梨子さんがいた。

 

「今日は善子ちゃんに免じて許してあげるけど、次は知らないよ?」

 

と、千歌さん。

 

「よっちゃんがいて良かったね、和哉くん」

「よ、よっちゃん!?・・・私のこと?」

 

梨子さんのいきなりのあだ名呼びに驚く。

 

「ええ。善子ちゃんでヨハネちゃんだからよっちゃん。なんだか善子ちゃんて呼ぶと酷く訂正を求められそうな気がしたから。だめかな?」

「ううん!むしろいい!わ、私も何か・・・」

 

生まれて初めてあだ名呼びに少し心が舞い上がる。

 

「フフッ、いきなりはいいよ。少しずつ、ね?」

「は、はい・・・」

 

こ、この人、あざとい!

 

でも、嬉しいなぁ。きっと、顔はすっごいニヤけてるんだろうなぁ。

 

「善子ちゃん、気持ち悪いずら」

「何よ!ずら丸!」

「そうそう。善子ちゃんはその方がいいずら」

「花丸・・・」

 

花丸にも迷惑かけちゃったし、返す言葉が見つからない。

 

「とにかく、お腹減っちゃったよぉ」

 

千歌さんがみんなに言う。

 

「じゃあ、さっき通った沼津バーガーに行こうか。そろそろ開店時間のはずだよ」

 

先輩の言葉にみんな頷く。

 

「じゃあ、カズくんの奢りね!みんな行っくぞー!」

「「おーっ!」」

 

先輩を残してみんな走り出す。

 

「はぁ!?ちょっと待って!そんな事されたら!ああもう!話を聞けー!」

 

きっと、これから知らない世界が待ってるんだろうな。Aqoursならもっともっと私が堕天使として輝けるんだ。少しずつだけど、恩返し、しないとね。

 

 

 

 

 

 

この後、沼津バーガーでゴシック服のことを忘れていたため、見世物になったAqoursと財布が軽くなって身も心も堕天した先輩の話は別の機会に、ね?

 

side out...




自分のやりたいこと、好きなこと。
それを受け入れ、前へと進み出した善子。
また1つ輝きが産まれた。
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