堕天使として輝きを探し始め、Aqoursに入った善子。
同時に和哉の財布は薄くなった。
日曜の朝。
昨日の沼津バーガーでの1件で俺の財布のライフはほぼ0。今日は何もしたくない、という気分でもう10時になるが、布団に潜ったままだ。
「和哉、起きてるの?」
そんな気分だというのに、母さんが部屋にやってくる。
「起きてるよ」
「だったら起きてきなさい。朝ごはん片付けちゃうわよ」
「今日はいいよ・・・。なんか気分が乗らなくて・・・」
「珍しいこともあるのね。いつもなら果南ちゃんのお家に行って海に潜ってるのに」
「そんな日もあるよ・・・」
「ふーん。お昼は食べるのよ」
「はーい・・・」
母さんはそう言うと、部屋から出ていく。
寝るつもりはないが、布団に寝転んでおくことを決めた。
すると、家のインターホンが鳴る。何か宅配で頼んだっけ?なんて考えていると母さんがまた部屋にやってきた。
「和哉、起きなさい」
「えー・・・。なんで?」
「あんたにお客さん。リビングで待ってもらってるから。身だしなみ整えて、降りてきなさい」
母さんは何故か嬉しそうに笑いながら部屋を出ていった。
俺に?誰だろう・・・。
ぼーっ、と考え、のそのそと起き上がる。
まあ、こんな時間にアポなしで来るなんて千歌くらいだろう、と思いながら、リビングに向かう。
「おはよ」
「なんで、お前がいる!?」
リビングに座っていたのは善子だった。
「和哉!その言い方は無いでしょ!」
「あ、いいんです。何も言わずに来たのは私ですから」
俺を叱る母さんを善子が止める。
「善子ちゃん、ごめんね?バカ息子がこんなんで・・・。わざわざ遊びに来てもらったというのに・・・」
「いいえ!そんな。和哉先輩にはいつもお世話になってますから」
善子ちゃんはいい子だね!と母さんは善子を抱きしめる。
「善子ちゃん、おばさんの事はお義母さんって、呼んでいいからね!」
「え、えぇ・・・?」
そう、俺の母さんはこんな感じだ。
千歌や曜、果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃんが遊びに来た時もいつもこんな感じで、同じことを言う。
善子もどう対処すればいいのか分からず、助けを求める目を俺に向けている。
「母さん、善子を離してやってよ。迷惑でしょ」
「あ、ごめんね?」
「は、はい・・・」
解放された善子はほっ、と安堵する。
「それで、善子はいきなりうちに来てどうしたの?」
本題はこれだ。
なぜ善子が朝からわざわざうちにやって来たのか分からない。
「あー、それは。えっと・・・」
善子はやけに母さんの方をチラチラ見ながら、言い出していいのかどうか、迷っているようだ。
なんとなくだが、母さんには聞かれたくないようだ。
「善子、俺の部屋に行こう。母さんがいると気が散る」
「なんてこと言うのかしら、この息子は」
「はいはい。善子、着いてきなよ」
善子は立ち上がり、そろそろ、と俺の後ろを着いてくる。
俺の部屋に着き、善子にクッションを渡し、座らせる。善子が座ったのを確認し、本題に入る。
「で、善子はなんでうちに?」
「お礼を言いに来たの」
「お礼?」
「ええ。Aqoursの仲間に入れて貰って、先輩にはたくさん助けられたから」
わざわざそんなことを言うためにやって来たとは。
「まぁ、善子のことは中学から知ってるし、それに堕天使ヨハネをやってる善子が好きだからさ」
「すっ、好き!?」
いきなり善子は顔を赤らめ、大声をあげる。
「ちょっ、うるさい」
「だっ、だだだだだだって!先輩が!」
「はぁ?」
「な、なんでもない・・・」
顔を赤くしたまま善子は俯く。
いつも以上に情緒不安定な善子だ。
「とにかく、俺が好きなものは好きでいろって言ったからには、それを守ってた善子を助けるのは当たり前だよ」
「この間までやめようとしてたけどね、あはは・・・」
善子は自虐気味に笑う。
「とにかく、先輩と千歌さんには本当に感謝してるの。ありがと」
「千歌?」
ここで千歌の名前が出てきたことに俺は首を傾げる。
「そもそも浦の星を受けたのは中学の頃のことを知らない人だけの環境にしたかったから。入学式でやっちゃって終わりかと思ったけど、千歌さんと先輩がそのままでいいって言ってくれたから。それが嬉しかったの」
「なるほどね。それを言いに来たわけだ」
「あ、いやー。もう1つお願いがあって・・・」
「何?」
「梨子さんのあだ名、一緒に考えて!」
「えぇー。なんで俺?」
凄くどうでもいいんだけど・・・。
というか、あだ名って考えてつけるものなの?
もっと、こう、何気ない会話がきっかけで決まるような。
「だって、先輩は梨子さんと幼馴染なんでしょ!」
「待って、それ誰から聞いた?」
「曜さん」
あのファザコンヨーソローめ!
勝手に人の過去ベラベラ喋って!
来週の休みに果南ちゃんに頼んで刺身祭りの刑だ!
「とにかく、せっかく梨子さんがあだ名で呼んでくれてるから、私も考えないと!」
「えー・・・。善子は何も考えてないの?」
「私?安直にリリーとか考えたけど」
「はい。決定」
「早っ!もっとかっこいいの考えないと!」
「いやいや、善子が考えたのでいいでしょ。その方が梨子も喜ぶよ」
善子は腕を組み、うーん、と悩む。
「1度それで反応を見てみましょうか・・・」
「うん。そうしてみなよ」
とりあえず決まったところで時計を見る。
そろそろ時計は正午になろうとしていた。
「そうだ、昼食べていきなよ。というか、母さんが食べさせる気満々だから」
「え!流石にそれは申し訳ないわ」
「気にすることないって」
俺は部屋を出て、声を張って母さんに尋ねる。
「母さん!善子も昼食べるけどいいよね!?」
「もちろんよ!」
即答だった。
な?と善子に言うと、照れながら頷く。
その後、丁度昼食のタイミングで朝から出かけていた父さんも帰ってきて、4人で昼食を食べた。
もちろん、父さんからも相当いびられたのは言うまでもない。
名は体を表す。
善子にとってこれ程会うことわざはないのかもしれない。
「善子いうなー!私はヨハネなんだから!」
クラスでも堕天使としてやっていけそうですね。
「それは・・・、別問題というか。ヨハネは堕天使アイドルとしての姿というか・・・」
まだはっきりはしてないみたいです。
次回もお楽しみに!