2人の夢の軌道   作:梨善

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第3話です!
是非ともよろしくお願いします!

~前回のあらすじ〜
梨子との約束を守れなかった和哉。
引っ越した先の新しい場所と新しい出会い。
和哉は何を思う。


プロローグ3

静岡の沼津というところに引越して、俺は転入すると同時に6年生になった。

 

貰ったキーホルダーはいつも使うカバンに付け、梨子との時間を忘れないようにしている。

だが、あの日から1度も梨子には連絡をしていない。

話を聞いたであろう梨子から電話が来たこともあったが、約束を破ってしまった後ろめたさから俺は電話に出なかった。

それからなんとなく梨子に電話もかける気力も起きず、時間だけが過ぎていく。

 

暇を見つけては家から出て、少し離れた内浦の海を眺めている日々。

家にいる時はμ'sの曲を聞いて少しでも嫌なことを忘れようとしている。

 

引越して1ヶ月と少しが過ぎた5月のこと。いつものように防波堤に腰をかけて海を見ていると声をかけられる。

 

「何してるの?」

 

後ろを振り返ると少し青みがかった長い黒髪をポニーテールにした女の人がいた。

多分高校生くらいだと思う。なんとなく佇まいがそんな風だ。

 

「· · ·別に。ただ海を見てて」

「そっか。海はいいよね。私たちを包んでくれてるみたいで」

 

女の人は俺の横に腰掛ける。

 

「私は松浦果南。あそこに見える淡島で家がダイビングショップやってるんだ。君は?」

 

果南と名乗った女の人は海の先にある島を指さしながら言う。

 

「・・・北野和哉」

「うん。よろしくね。この辺じゃ見ないけど最近引越してきたの?」

「そうです。それで松浦さんはどうして俺に?」

「果南でいいよ。なんとなく。知ってる友達に似てたから」

 

細く笑う果南さん。

 

「悩んでるんだよね?どう、このあと暇ならうちに来てダイビングしてみない?」

「別にいいですよ・・・」

「だーめ。ほら、行くよ」

 

果南さんは立ち上がると俺の手を引いて乗船場に連れていく。

どうやら、拒否権はないようだ。

 

乗船場に着くとタイミングよく船の出航直前らしくすんなり乗れた。

船から降りてすぐの所に松浦ダイビングと大きく書かれた建物に着く。

 

「はい、これ。君のダイビングスーツ。外に更衣室があるからそこで着替えてね」

 

きっと何言っても無理やりやらさせるんだろうな、と諦めながら更衣室に入り、初めてダイビングスーツを着る。

 

「お、きたきた。じゃあ、早速船に乗って」

 

更衣室から出て、店の前に行くと果南さんもダイビングスーツに着替えて待っていた。

店の前に止めてある小型船に乗り込んで準備をしていた。

果南さんに手を取ってもらい、船に乗り込む。

 

「うわ、結構揺れる· · ·」

「もしかしてこんな小型船は初めて?」

「ま、まあ。東京じゃ見たことないですし」

「え?東京から来たの?」

「今更ですか?それより誰が運転するんですか?」

 

船には俺と果南さんしかいない。

 

「私」

「え?」

「だから、私。おじいがうるさくて運転できるように仕込まれたの」

「免許とかは?」

「んー、田舎だから気にしなくていいんじゃない」

 

い、田舎こえー· · ·。

 

そんなこんなで出発した船はポイントに付いたらしく、遮るものが何も無い海上に止まる。

 

「さて、ゴーグルとシュノーケルと水かきは持った?」

「ありますけど、ボンベとか使わないんですか?」

「使わないよ。あれってちゃんとライセンス持ってる人しか使えないんだから」

「へぇ。知らなかった」

 

果南さんはシュノーケルとゴーグルを付けると船からぴょんと足から飛びこむ。

顔だけ海からだし、片手を差し出す。

 

「さ、おいで」

 

俺は恐る恐る果南さんの手を握り、ゆっくり海に入る。

 

「どんな感じ?」

「・・・寒いです」

「そう?5月だから4月程じゃないよ」

 

いつから海入ってるんだよ、と心の中で突っ込む。

 

「じゃあ、少し潜ってみよっか。怖がらないで、心を落ち着かせるんだよ?」

 

果南さんにならって息を吸い、潜る。

そこに広がってきたのは蒼。

360°全体に広がる蒼の中に浮いている。

この世界は広い、でも1人しかいない。だけど、寂しくない。むしろ、安心感がある。そん不思議な感覚がしっくりきた。

 

息が続かなくなり、海面まで浮き上がり、大きく息を吸う。

肩で息をしていると、隣に果南さんが浮いてきた。

 

「どう?海の中は」

「よく分からなかったです。でも、また潜ってあの景色を見てみたいです」

「そっか。私も付き合うよ」

 

果南さんはにっこり笑ってまた潜って行った。

 

 

 

 

 

 

 

約1時間ほどダイビングを続けていると果南さんから今日は終わりと言われ、ストップを受ける。

なんでも慣れてないうちから長時間潜ると事故を起こしてしまうらしい。

大人しく船に乗ってダイビングショップの前につくと二人の女の子がいた。

 

「あ!果南ちゃん帰ってきた!」

「ホントだ!」

 

1人はオレンジ色の髪をしてクリっとした丸い目が特徴の元気のいい子。もう1人は銀色のくせっ毛の髪をしたボーイッシュな子。

 

「あれ、千歌に曜じゃん。どうしたの?」

「暇だから遊びに来たよー」

 

オレンジ色の髪の子が答える。

 

「私は千歌ちゃんに呼ばれてついてきたの」

 

となるとこの子が曜というらしい。

 

「ねぇねぇ、果南ちゃん。その人は?」

 

千歌と呼ばれた子が俺に気づき、果南さんに聞く。

 

「この子ね。自己紹介できる?」

 

果南さんに話をふられ、少し動揺するが、落ち着いて自己紹介をする。

 

「え、ええ。まあ。北野和哉です。小学6年生。先月東京から引っ越してきました」

「えぇ!?東京!?あ、チカは高海千歌!同じ小学6年生だよ!」

「私は渡辺曜!千歌ちゃんと同じ小学6年生!でも見たことないから他の学校なのかな?」

 

千歌ちゃんは大げさなリアクションをするが、曜ちゃんは元気だが、落ち着いた様子で自己紹介をしてくれた。

 

「えっと、うん。沼津?のほうだから」

「そっかー、残念だなぁ」

 

千歌ちゃんは手を頭の上に組んでいじけたように言う。

 

「まあまあ、千歌ちゃん。ここに来ればまた会えるかもよ?ね?」

 

曜ちゃんは俺の方を見て、話し合わせてと申しわけなさそうな表情をする。

 

「そうだね。またダイビングしにここに来るかも」

「ホント!?じゃあ、その時はチカとよーちゃんも一緒にダイビングするからね!」

 

その後は4人で千歌ちゃんの持ってきたみかんを食べながら雑談して。その日はあっという間に日が暮れてしまった。

 

高校生かと思っていた果南さんだが、実は1つ年上の中学1年生。

背も高いし大人びているからとても驚いた。

 

元気ハツラツの千歌ちゃんと上手くなだめる曜ちゃん。そして頼れるお姉さんの果南さん。

3人と知り合えて、引越してから初めて心から楽しいと思えた。

少しだけどこっちでもうまく行きそうな気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから週に1回程度ダイビングショップ松浦に通いつつ、俺はダイビングに少しづつハマっていった。

それと同時に3人とも仲良くなり、千歌と曜を呼び捨てで、果南さんは果南ちゃんと呼べるまでは仲良くなった。

小学校の方にも少しづつだけど友達もできてきた。

 

まだまだ暑い8月。いつものようにダイビングショップに行くと知らない人が店の前に2人いた。

 

「果南さんは何をしていますの!?」

 

後ろ姿しかわからないが、艶のある黒髪を腰まで伸ばした女の人が、何やら果南ちゃんの名前を出して騒いでいる。

 

「もうダイヤ、鼻息荒いよ?」

「はっ!?んんっ」

 

金髪の人が黒髪の人をなだめている。

 

なんだろう。果南ちゃんの友達かな?

 

すると、ダイビングショップから果南ちゃんがラフな格好で出てきた。

まあ、それでもかなり着こなしてる。きっと果南ちゃんの素材の良さとスタイルが引き出してるんだろう。

 

「ごめんごめん。朝潜ってたら遅くなっちゃった」

「まったく。果南さんはいつ「かなぁ~ん!!」ちょっと!?」

 

金髪の人が勢いよく果南ちゃんに抱きついた。

 

「ちょっと鞠莉さん!まだわたくしが話している途中ですわ!」

「まあまあ、ダイヤ。鞠莉も離れて」

 

鞠莉と呼ばれた金髪の人は果南ちゃんの胸元にグリグリ顔を押し付けている。

引き剥がそうとする果南ちゃんに抵抗するも、力で勝てるわけもなくあっさり引き剥がされる。

 

「はあ、まったく。果南さんはもう少し時間に厳しくしてくださいな」

「ダイヤさっきからお硬いよ。硬度10?」

「誰が硬度10ですの!!」

「うるさいなぁ、炭になっちゃえ」

「ま〜り〜さ~ん!?」

 

隙あらばコントを始める黒髪の人と金髪の人。それを果南ちゃんは笑いながら見ている。

 

邪魔するのも悪いし、帰ろうかな、なんて思って帰ろうとした時果南ちゃんがこっちを向き、俺に気づいた。

 

「あ、カズ。今日も潜るの?」

 

そっ、と帰ろうとしたのに!バカナンちゃん

 

もちろん、果南ちゃんの友達の2人も俺に気づく。

 

「誰ですの?あの子」

「果南のボーイフレンド?」

「ボ、ボボボボボーイフレンド!?果南さん!いけませんわ!破廉恥ですわ!!」

「そうよ果南!私というものがありながら!」

「いやいや、違うから。普通に友達でここの常連さんだから」

 

またコントを始める。本当にどうしよう。

 

「そうだ!カズも一緒に来る?」

「え!?」

「あ、いいわね。果南の友達ならちょっと興味あるし」

「ま、まあ?わたくしも果南さんのお友達と言うなら問題ありませんわ」

 

なんだか一緒に行く流れになってる。

 

「待って。行くってどこに?」

「今日沼津に買い物に行く予定だったんだ。タイミングよくカズが来たからさ、ね?」

「いや、ね?って言われても」

「ほら、いこ?」

 

なんだか断れない雰囲気だ。

 

「· · ·分かったよ。行く」

「さっすがぁ!」

 

そう言うと果南ちゃんは思いっきり俺にハグをする。

正直恥ずかしくて顔を背ける。

 

果南ちゃんは俺よりずっと背が高い。

つまり正面から抱きついてるから果南ちゃんの胸が顔に・・・。

 

「それじゃあ、行きましょうか。私は小原鞠莉。気軽にマリーって呼んでね」

「わたくしは黒澤ダイヤ。よろしくお願い致します」

 

ダイヤってやっぱり本名なんだ。変わってるなぁ。

 

「ん?黒澤と小原って」

「そうだよ。2人ともご令嬢だよ」

 

果南ちゃんはハグしたまま俺に教えてくれた。

小原家は言うまでもなく、ホテルチェーン店の大グループ。

黒澤家はなんでもこの内浦を仕切る、代々続く家系らしい。

そもそも千歌と曜もそうだ。

千歌の実家は古くからある立派な旅館。

曜は父親が定期船の船長をやっている。

田舎だからなのか、親のやっている職種や家系が凄い。

 

「まさか、果南ちゃん。お金持ち2人にたかってるんじゃないの?」

「あ、こいつぅ!そんな分けないでしょ!馬鹿みたいなこと言うのはこの口か!」

 

果南ちゃんは俺の頬をぐにぃ、とつまみ上げる。

 

「いひゃいいひゃい!ほめんへ!」

「ほら果南、この子も冗談で言ってるんだろうから」

 

と鞠莉さんは果南ちゃんをなだめる。

 

「分かってるよ。ほら、カズ。挨拶」

「あ、うん。北野和哉です。最近東京から引越して来ました」

 

こんな感じで2人に挨拶して、後は3人に引っぱられるように沼津の街で遊んだ。

 

今日分かったことは、鞠莉さんは日本人の母親とアメリカ人の父親のハーフで、イメージ通りのお金持ちの人だったってこと。

ダイヤさんは名前の割には硬度が足りてなかったり、μ'sの大ファンだったということ。

 

そして、これがスクールアイドル『Aqours』との出会い。




果南や千歌との出会いで明るくなった和哉。
少しづつ心の傷は癒されていく。

快速 新開地様、☆6評価ありがとうございます!
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