内浦の出会いを経て、明るくなった和哉。
和哉を待つ新しい出会いとは?
季節は巡って春。
沼津に引越して1年が経ち、俺は中学生に進級した。
小学校と同じで果南ちゃんや千歌たちは別の学校だ。もちろん、ダイヤちゃんと鞠莉ちゃんもいない。
だが、クラスも半分が同じ小学校で交友関係も問題なさそうだ。
そして、中学2年生になった春のある日。
その日は天気が良く、昼に屋上でのんびり、ダイヤちゃんに教えて貰ったスクールアイドルの曲を聞きながら日向ぼっこをしていた時だった。
「この堕天使ヨハネの魔眼が全てを見通すのです!全てのリトルデーモンに告げる!堕天の力を!」
· · ·なんだ、あいつ?
屋上の塀の上に登って、決めポーズをしている女子生徒がいた。
制服の上に黒いマントを羽織って、頭のシニヨンに黒い羽を刺していた。
中二病· · ·。初めて見た· · ·。
関わらない方が身のためと思い、コソコソと屋上から退散しようと思った。その時· · ·。
「· · ·むっ!リトルデーモンの気配!」
ばっ、と中二病少女は俺の方を振り向く。
マジでこいつ能力者?ていうか、リトルデーモンって何だよ· · ·。
「あ、ほんとにいた」
「適当なのかよ!!」
千歌や鞠莉ちゃんと一緒にいることが多いからか、思わず突っ込んでしまった。
「フフフッ· · ·。とうとうこの堕天使ヨハネの召喚に応じた、従順たるリトルデーモンが現界したのね」
中二病少女は決めポーズを決めたままブツブツ言ってる。
自分の世界に入っているうちにこっそり逃げようと思い、ゆっくり後ずさりをする。
「待ちなさい!どこへ行くつもり!」
・・・やっぱり自称堕天使に呼び止められてしまう。
「あなた、真名は?」
「名を名乗るなら自分からだろ?」
「生意気なリトルデーモンね。いいから名乗りなさい」
生意気なのはお前だ、と心の中でボヤく。
ふと、胸元のリボンを見ると1年生の学年色をしている。
つまり、こいつは上級生に向かって生意気言ってる訳だ。
「· · ·お前、先輩にそんな口聞いていいの?」
「へ?先輩?」
どうやら気づいてなかったようだ。
自称堕天使は俺の制服の学年色に気づいたらしく、顔を青ざめ始める。
「え、えっと。あの、その· · ·。ごめんなさい!」
綺麗に90°頭をぺこりと下げる。
「そ、その。先輩だと気付かなくて。お昼に1人で屋上にいるから友達がまだ作れてない1年生かなって思っちゃって」
自称堕天使の声は段々覇気が無くなって、涙声になっていく。
確かに背は低いほうだから1年生に見えるけど!友達もそんなに多くないけど!
それよりまずい。このままじゃ俺がこの自称堕天使を泣かせたみたいになる。
「あ、いや、別に謝れって言ってるんじゃないんだ。確かに初対面で訳分からないこと言われて、イラッとはしたけども」
「や、やっぱり· · ·」
顔を上げた彼女は瞳に涙を貯めていた。
「じゃなくて!そう!個性!君のその堕天使?その個性に圧倒されて!」
「そう· · ·なんですか?」
「ああ!そうだとも!」
「· · ·クッ、· · ·クックックッ· · ·」
再び顔を伏せると気味の悪い笑い声を上げている。
「やはり、堕天使ヨハネの魅力は底知れないわね· · ·。いいわ、貴方!」
「な、なに?」
「終焉の鐘が響く時、私は去らなければならないの。けれど安心して、リトルデーモン。また明日この約束地に私は舞い降りるわ。また逢いましょう」
自称堕天使、ヨハネは出入口まで悠々と歩いていく。
すると、突風が吹き、ドアがひとりでに勢いよく開くと、ガン!と言う音とともに自称堕天使の額に扉がクリーンヒットした。
物凄い音に目をそらし、扉を見るとヨハネは出入口の前でうずくまっていた。
「いったぁ· · ·」
「大丈夫?」
「し、心配ないわ!こんなの全然平気なんだからね!」
涙を浮かべるヨハネだが、すぐさま立ち上がる。
「こ、今度こそ、さらば!」
· · ·そのまま走り去って行った。
「· · ·何だったんだ、あの子。って、なんか落としてるし」
落としたものを拾って確認すると、それはあのヨハネとかいう少女の生徒手帳。だが、その手帳にはヨハネという名前は一切ない。
「ヨハネが本名だとは思ってないけどさ。名前まで設定に基づいてるのか?」
自称堕天使ことヨハネ。彼女の本名は『津島善子』というらしい。
本名の『よ』しか一致していない・・・。
帰りにでも返してやろうと思い、屋上を後にした。
放課後になり、1年生の教室に向かうと、ヨハネこと津島善子は教室で何やらあやしげな本を読んでいた。
ちらり、と見えた表紙には黒魔術と書いてある。ここまで徹底してると逆に清々しい。
教室に入ろうとしている女子がいたので、彼女に声をかける。
「君、ここのクラスの子だよね?」
「はい。そうですけど」
「津島善子さんに渡してほしいんだ」
スボンのポケットから津島善子の生徒手帳を取り出す。
「津島さん?ああ、えっと、呼んできますね」
「いや、渡してくれるだけで良いんだけど」
「津島さーん。お迎えきてるよ」
お迎えなどという訳の分からない単語を聞き、津島はゆっくりこっちを向く。
するとぎょっ、とした目をすると、こちらに飛びつくように向かってきた。
何故か辺りからは女子の黄色い声や、男子のおぞましい視線が飛んでいる。
「な、なんで!?なんで先輩がここに!?」
「お、落ち着け!これ、落としただろ?」
津島に生徒手帳を見せるが、手帳を無視して俺を問い詰める。
ていうか、顔が近い・・・。
こいつ、顔の系統的にダイヤちゃんに近くて美人だ。鼻も通って高い。つり目がそれを更に際立たせている。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「え?」
怒りながら呆れた顔をした津島が俺を睨む。
「もういい!それで、どういうこと!?お迎えって!!」
津島は俺が声をかけた女子に問いただす。
「だって、こんな時間にわざわざ名指しで呼び出すなんて彼氏さんしかいないでしょ?」
「違うから!ちょっと来てください!」
津島は俺の腕を掴むとグイグイ引っ張る。
「お、おい!どこに連れてくんだ!?」
「黙っててください!」
連れてこられたのは屋上。
2人とも肩で息をしている。
「な、なんで教室が分かったんですか?それに、私の名前も」
「これ、落として行っただろ?」
津島に生徒手帳を渡す。
「え?嘘。落としちゃってた?」
「そう、落としてた」
「本当だ。私の。ありがとうございます」
津島は学生証を受け取るとポケットにしまう。
「クラスだと普通なんだ。堕天使ヨハネっていうのはやらないんだね」
「· · ·多分。これをやるとみんな引いちゃうと思います」
そう言った津島の表情は暗い。
まだ会って数分だが、こいつは好きな堕天使のことをやっている時の表情はとても輝いていて、俺はその表情が素敵だと思った。
だったら・・・。
「津島はさ、好きなんだよね。堕天使が」
「· · ·はい」
「だったらやってもいいんじゃない?自分の好きなものを閉じ込めるのは良くないよ」
津島は無言で俯く。
「確かに周りからしたら変だよ。でも仲のいい人との間だけで、会話の中に少し入れるといいんじゃないか?」
「できますか?私に」
「できると思うよ。それに俺は嫌いじゃないよ、その堕天使」
津島は少し考えると顔を上げ、さっきまでとは違う、しっかりとした意志を持って言った。
「私、やってみます!まずは友達を作ることからだけど、この堕天使ヨハネにできないことは無いわ!」
明るく笑う津島。
本当に素敵な表情だ。
「うん。俺も応援するよ」
「じゃあ、まずはあなたが私のリトルデーモン第1号よ!」
「はぁ!?」
こうして俺は堕天使ヨハネと契約(?)を結んだのだった。
和哉が出会ったのはまさかの中二病美少女。
この出会いが未来を変える?
☆9 koudorayaki様
☆9 快速 新開地様
評価ありがとうございます!
この評価を励みにこれからも頑張ります!