東京の地に立ち、浮かれる7人。
イベントの願掛けに神田明神を訪れた一行は謎の2人組に出会う。
「こんにちは」
サイドテールが千歌を見ながら挨拶をする。
「こ、こんにちは・・・」
「まさか、天界直視?」
石像に隠れながら善子が意味不明な発言をしているが、無視だ無視。
「あら?貴女たちもしかして、Aqoursの皆さん?」
「嘘?なんで?」
千歌が驚く。
Aqoursは最近急上昇スクールアイドルNo.1だ。
好きな人が見れば1発だろう。
だが、こいつらは千歌たちのファンには見えない。
「この子、脳内に直接・・・!?」
「口で喋ってただろ・・・」
久々に善子がうざく感じる。
「マルたちもうそんなに有名人?」
「ピギィ!?」
・・・なんというか1年生はいつも通りだ・・・。
「PV見ました。素晴らしかったです」
「ありがとうございます!」
サイドテールの賞賛に千歌は素直に喜ぶ。
「もしかして、明日のイベントでいらしたんですか?」
「はい」
「そうですか、楽しみにしてます」
サイドテールがその場を去っていく。
ツインテールの方はその場でお辞儀をした。
意外と礼儀正しいのかもしれない。
前言撤回。
ツインテールはお辞儀したのではなく、走り出す準備をしていた。
そのまま走り出し、その場でアクロバット演技を披露する。
その姿にみんな驚く。
というか、ここ、神社なんですけど?
場所をわきまえろよ。
「では!」
2人は俺たちを一瞥し、何事も無かったかのように行ってしまった。
「凄いです!」
「東京の女子高生ってみんなあんなに凄いずら?」
「あったり前でしょ!東京よ!東京!」
1年生が騒いでいるが、それを静かにさせる。
「はいはい。ここ神社なんだ。静かにね。それにあの人たちは北海道のスクールアイドル、Saint Snowだよ」
「あ!聞いたことある!」
どうやら、名前を言われてルビィも2人を思い出したようだ。
「あの2人も明日のイベントに出る。ライバルだ。とにかく、お参りして宿に行こう。ね、千歌」
千歌の名前を呼ぶが返事が来ない。
「千歌?」
「歌、綺麗だったなぁ」
「確かに歌は上手いけど、今は明日に向けて意識を集中しないと、ね!」
ぼー、っと2人の行った先を見つめている千歌にチョップをする。
「いたっ!何すんの!?」
「ぼー、っとしてるから。ほら、お参りしよう」
ぷくーっ、と、頬を膨らませる千歌。
俺は皆を置いて1番に祭壇にあがる。
財布を取り出し、賽銭箱にお金を投げ入れ、手を合わせ、心の中で願う。
明日、みんなが上手くパフォーマンスできますように、と。
久しぶりの外食で夕飯を楽しんだ後、鞠莉ちゃんが梨子の意見を参考に手配してくれた旅館にチェックインし、旅館の人に部屋まで案内してもらう。
「えっと、ここの1室だけですか?」
「はい。そのように予約されてあります」
嘘だろ・・・。
「あ、ありがとうございます・・・」
旅館の人にお礼を言い、行ったのを確認し、俺は鞠莉ちゃんをコールする。
『ハァーイ!和哉!東京はどう?』
いつものふざけたテンションの鞠莉ちゃん。
今日、不機嫌な俺にはとてもウザく感じる。
「どうじゃないよ!なんで旅館1室なんだよ!」
『そのほうが、みんなHappyじゃない』
「アンハッピーだよっ!ふざけんな!女子6人の部屋に男1人とか通報されるよ!」
『仕方ないじゃない。うちの学校はただでさえ貧乏なんだから。1室とるだけでもギリギリなのよ』
「・・・うっ・・・」
それを言われると、何も言えない。
『私だって教育者としては避けたかったわ。とにかく、和哉が変なことしなければいいの。じゃあ、私は忙しいから』
鞠莉ちゃんは電話を切ってしまった。
大変なことになってしまったようだ。
「やっぱり1室だけ?」
曜が心配そうに話しかけてくる。
そりゃそうだ。男と同じ部屋で寝るなんて不安でしかない。
「うん。これの問題だと」
俺は手でお金のジェスチャーをすると、それを見ていたみんなが納得する。
「とりあえず、今日は早く休もう。まずは、風呂でも入ろうよ。俺は先に行くから!」
変な疑いをかけられない為にも、ここに長くいる必要は無い。
自分の荷物から着替えを取り出し、さっさと浴室へ向かった。
どれだけ湯船に浸かってたかは分からないが、軽くのぼせてしまった。
多少フラフラする足取りで部屋に戻る。
「あ、和哉くん。・・・て顔赤いよ?」
鏡の前で髪を解いていた梨子が俺に気づく。
「あー。うん。少しのぼせた」
「もう。何してるの?」
「ほんと、なんだろうね?」
みんなは浴衣を来てリラックスしている。
曜はまたコスプレしていて、次はバスガイドだ。
「なんか、修学旅行みたいで楽しいね!」
相変わらず敬礼する曜。
ルビィも流石に苦笑いだ。
「堕天使ヨハネ、降臨!」
善子はテーブルの上でマントを羽織り、ご満悦だ。
「やばい・・・!カッコイイ・・・!」
カッコイイ!・・・のか・・・?
「ご満悦ずら」
「あんただって!東京のお菓子にご満悦の癖に!」
花丸ちゃんにやけに強気で絡む善子。
まあ、何はともあれ、2人は東京を満喫してるみたいだ。
「降りなさい!」
梨子が善子に怒鳴ると、善子はしゅん、とし、ゆっくりテーブルから降りる。
「お土産に買ったけど、夜食用に別にとってあるずら」
花丸ちゃんは東京のお菓子、バックトゥザぴよこまんじゅうをニコニコしながら取り出す。
まあ、俺も今食ってるんだけど・・・。
待てよ。これってもしかして。
一緒に食べている梨子と曜と顔を見合わせる。
「ほぇ?」
同じく食べている曜はいまいち、状況が分かってないみたいだ。
「これ、旅館のじゃなかったの!?」
「てっきり、旅館が用意してくれてたものだと・・・」
「マルのバックトゥザぴよこまんじゅうー!」
花丸ちゃんのだったようだ。
いや、申し訳ないことしちゃったなぁ。
「マルちゃん、夜食べると太るよ」
俺たちが必死に拗ねてしまった花丸ちゃんを宥めていると、ルビィが夜食を食べようとしていた花丸ちゃんを注意する。
その後ろでは何やら外に向かってブツブツ呟いている善子。
善子はまあ、うん。無視していいだろう。
「静かにして!集中できないでしょ!」
いや、知ったことか!
それよりも、花丸ちゃんの機嫌なんだよ!
「もういいずら!1人で食べちゃうずら」
目に涙を浮かべながら、花丸ちゃんはお土産用のぴよこまんじゅうを開封し、1人でもしゃもしゃ食べ始めた。
泣くほど食べたかったんだね・・・。
帰りにぴよこまんじゅう、買ってあげよう。
「それより、そろそろ布団しかなきゃ」
ルビィは押し入れから布団を取り出している。
だが、思ったよりも大きかったらしく、ルビィは布団を持ったままバランスを崩す。
「あ、ルビィ!」
俺の声で、部屋のみんながルビィを見る。
「ピギィ!?」
と、まあ。みんな布団の下敷きになり、ぴよこまんじゅうは部屋に散乱してしまった。
「ねぇ!今旅館の人に聞いたんだけど・・・」
今までどこかへ行ってた千歌が帰ってきて、この惨状を見て、立ち尽くしていた。
千歌の話によると、ここの旅館から音ノ木坂学院までは近いらしい。
「音ノ木坂ってμ'sの?」
「うん。この近くなんだよ。梨子ちゃん!」
「ん?」
「今からさ、行ってみない?」
「えぇ?」
こんな夜遅くに2人で外に出るのは良くない。
けど、千歌はそんなこと聞かないだろうな。
「みんなで!」
「え?」
ちょっと、これは予想外。
まさかみんな誘うとは思ってもいなかった。
「私1回行ってみたいと思ってたんだ。μ'sが頑張って守った高校!μ'sの練習していた学校!」
「ルビィも言ってみたい!」
「私も賛成!」
「でも、東京の夜って物騒じゃないずら?」
「な、何?怖いの?」
「善子ちゃん、震えてるずら」
「何かあっても俺がみんなを逃がすくらいの時間は稼ぐよ」
「死ぬ前提じゃないのよ!?」
「ごめん、私はいい」
梨子?
彼女は辛そうな顔をしながら謝る。
「え?」
「先に寝てるから。みんなで行って来て」
梨子は立ち上がると部屋から出ていってしまった。
「梨子ちゃん・・・」
千歌は寂しそうに呟く。
「やっぱり寝ようか」
「そうですね、明日はライブですし」
曜の言葉でみんな寝る支度を始める。
「悪い、俺トイレ」
「もう!言わなくてもいいよ」
曜に注意をされる。
「ごめんごめん。とにかく、布団は任せたよ」
そう言って俺も部屋から出る。
放っておけない。
今の音ノ木坂に行かないと言った梨子の顔が頭から離れない。
俺に何かできるんなら。
後先も考えず、俺は梨子を追いかけ始めた。
梨子の気持ちを知るために和哉は動く。
自身の気持ちも分からぬまま