果南を追いかけ、果南が鞠莉を拒絶する光景を見たAqours。
3年生への疑問は増えるばかりだった。
次の日の朝。
曜が騒がしく教室にやって来た。
俺は千歌と梨子と共にベランダで雑談をしている最中だった。
「千歌ちゃん!和哉くん!ニュースだよ!」
「何?朝から」
「果南ちゃんが学校に来たよ!」
「「果南ちゃんが!?」」
俺と千歌は同じタイミングで驚く。
「うん。今日から学校に来るって」
なるほど、だから妙に上の階がざわついていたのか。
「それで、鞠莉さんは?」
昨日の1件を見たあとのせいか、梨子は鞠莉ちゃんと果南ちゃんのことを心配する。
「まだ分からないけど・・・」
「・・・ま、鞠莉ちゃんだって理事長なんだし、面倒なことにはならないさ」
「だといいけど・・・」
曜が不安そうに呟く。
すると・・・。
上から白い何かが舞い降りてくる。
「何?あれ」
「さあ・・・?」
そして、隣にいた曜がくんくん、と鼻を動かした。
「制服!!」
「曜!?」
曜はベランダの外をヒラヒラ落ちていく制服らしきものへ勢いよく飛びついた。
ベランダの柵を越え、曜の体はふわり、と宙に浮いた。
「「ダメっ!!」」
咄嗟に反応した俺たち。
俺は曜の腰を掴み、千歌と梨子は足を掴まえた。
「ふぅ・・・」
一なんとか曜を地面に落とすことしなかった。
一息つき、ゆっくり引き上げ、ベランダに曜を降ろす。
「あ、あははは・・・。ごめん・・・」
曜は申し訳なさそうに謝る。
「もう!何考えてるのよ!」
梨子は曜を叱る。
叱られた曜はごめん!と手を合わせ、頭を下げる。
「は、ははっ・・・。誰もケガしなくて良かったよ」
いいものも見れたし。
「そ、そうだね。てか、よーちゃん。パンツ丸見えだったよ」
「え!?」
曜は顔を赤らめ、今更スカートを抑える。
「か、和哉くん・・・。見た?」
「・・・見てない」
「えー!?見てたじゃん!」
このバカチカ!面倒なことになるから言わないでいいだろ!?
「清楚な白色だったわね」
ここで梨子が色について話す。
「違う!白じゃなくて曜のイメージカラーでもある綺麗なみずい・・・。あ」
ここまで言って俺は気づく。
今の梨子の発言はブラフ。つまり、俺の真偽を確かめる罠。
それに俺はまんまと引っかかってしまった。
「・・・み、見てるじゃん・・・!」
曜は瞳に涙を溜めながら俺を睨む。
「あ、違う!違うんだよ!そう!今のは間違いを正そうとする正直な心が!」
「こんの!バカズヤくん!」
「ぶふぉっ!?」
俺の顔面目掛け、容赦のない正拳突き。
鍛えているだけあって、その拳は重かった。
俺はだらしなくその場に寝そべるのだった。
「よーちゃん大丈夫?」
「うわ〜ん!千歌ちゃーん!」
曜は泣きながら千歌に抱きつく。
「おー、よしよし。怖かったね〜」
千歌は曜の髪を撫でながら宥める。
「はぁ・・・。でも、それって制服と言うよりは・・・」
また茶番が始まった、とでも言いたげな梨子のため息。そして、梨子は曜がキャッチした制服を見つめながら言葉を濁す。
「うん。スクールアイドルの衣装みたいだね」
千歌は迷いなくそう言った。
「カズくんは何か知らない?」
「俺への気遣いはなしですか?コノヤロー」
「必要?」
「いいえ・・・」
梨子に笑顔でそう言われたら何も言い返せない・・・。
「それで、その衣装?・・・果南ちゃんたちのだよ」
どうやら上では何やら波乱な出来事が起こってそうだ。
千歌の提案で3年生の教室を見に行くことにした俺たち。
「うわっ、何これ」
3年生の教室の前にはどこから嗅ぎつけてきたのか、1年生と2年生が集まっていた。
その中にはAqoursの1年生組の姿もあった。
「離して!離せって言ってるの!」
教室から聞こえてくるのは果南ちゃんの怒鳴り声。
中を覗いてみると教壇の前に何やら人集りができていた。
「イヤっ!離さない!強情も大概にしておきなさい!たった一度失敗したくらいで、いつまでもネガティブに!」
次は鞠莉ちゃんの声。
どうやらあの中心で2人が言い争っているみたいで、姿が見えない。
「うるさい!いつまでもはどっち!?もう2年前の話だよ!だいたい今更スクールアイドルなんて!私たちもう3年生なんだよ!」
「2人ともおやめなさい!みんな見てますのよ!」
ここでダイヤちゃんの声がした。
ダイヤちゃんのことだ、止めようとしても止めきれていないのだろう。
その姿が容易に想像できて、微笑ましく感じる。
「ダイヤもそう思うでしょ!」
「やめなさい!いくら粘っても果南さんはスクールアイドルを始めることはありません!」
「どうして!あの時の失敗はそんなに引きずること!?チカっちだって再スタートを切ろうとしているのに!なんで!?」
「千歌とは違うの!!」
ここで千歌の名前が上がる。
すると千歌は教室の中にズカズカと入っていく。
人の波を強引に割いて、果南ちゃんたちの前に立つ。
「千歌?」
突然現れた千歌に驚く果南ちゃん。
思わず言い争いをやめてしまった。
そして千歌は大きく息を吸う。
「いい加減に・・・!」
この場にいる全員が千歌に注目する。
しばらくの静寂。
静寂の次には・・・。
「しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
千歌の叫び声が学校中に響き渡り、そのあまりの音量に全員が耳を塞ぎ、窓が揺れた。
・・・いやいや。たまたま風が吹いただけだよ。・・・そうだよね?
「もう!何かよく分からない話をいつまでもずーっと、ずーっと、ずーーーーーっと!隠してないでちゃんと話なさい!」
どうやら千歌は何かこそこそ隠し事をしている3年生に痺れを切らしたようだ。
その姿に俺はよくやった、という表情で見つめる。すぐ近くにいる花丸ちゃんも同じ表情をしていた。
「千歌にはかんけ・・・」
「あるよ!」
果南ちゃんの言葉を千歌は遮る。
「いや、ですが・・・」
「ダイヤさんも、鞠莉さんも。3人揃って放課後、部室に来てください」
上級生3人にメンチを切った千歌。
多分、あれは頭に血が登り過ぎて、周りが見えていないな・・・。
「いや、でも・・・」
「い い で す ね !?」
「「・・・はい」」
何か言おうとする前に言葉を遮り、有無を言わせぬ強制力で千歌は3年生に勝利した!
・・・いや、何に?
てか、これ。ヤバくない?
ここ、3年の教室だよ・・・。目、付けられたんじゃ・・・。
「千歌ちゃん、凄い!」
「3年生に向かって・・・」
曜とルビィが感心したような、呆れたような声を出す。
「あ・・・」
やっぱり千歌は周りが見えていなかったようだ。
3年生を部室に呼び出すことには成功したが、過去を聞き出すことはできるのか。