ライブが終わり、祭りももう少し。
楽しい時間は終わろうとしていた。
みんな着替え終わり、それぞれ残り少ない祭りを楽しみに出た。
ダイヤちゃん、ルビィ、花丸ちゃんと梨子、曜、善子と鞠莉ちゃん、果南ちゃんの3グループに別れて行った。
残ったのは俺と千歌だけ。ライブが始まる前に千歌から呼び出されていた件を聞くためだ。
「それで、千歌。どうしたの?」
「・・・・・・」
千歌は何も話さない。
「・・・何も無いなら俺は行くよ」
立ち去ろうとすると千歌は俺の手を掴み、引き止める。
「行っちゃヤダ・・・」
俯きながら千歌は呟く。
まいったな・・・。
俺はどうしたらいいのか分からず、頭をかく。
「・・・少し歩こうよ」
不意に千歌が言う。
「まあ、そうだね。腹減ったでしょ、なんか食べようか」
「・・・うん」
千歌と共に屋台の並ぶ道を歩いていく。
屋台は少しずつ店仕舞いを始めており、数も少なくなっている。
隣を歩いている千歌は相変わらず黙ったままで、どう話せばいいのか分からない。
「・・・りんご飴でも食べる?」
とりあえず目に止まったりんご飴の屋台。それを食べるかと聞いてみると、千歌は食べたいようで、頷く。
「OK。買ってくるよ」
「あ、お金・・・」
「いいよ。今日のご褒美だよ」
屋台に少しだけ並び、1つ買って急いで千歌の元に戻る。
「はい、これ」
「あ、ありがと・・・」
千歌はりんご飴を受け取ると少しだけかじる。
「さ、次は何を見ようか」
歩きながら少しおどけて言ってみると、千歌は俺の腕を掴んだ。
「どうかした?」
千歌は俯いたままだ。
「千歌?」
「私ね・・・」
「ん?」
「私、カズくんのこと・・・」
付近に人はいなくなっていて、千歌の小さな声がやけに響く。
やめてくれ・・・。言わないでくれ・・・。答えは1つしかないんだ・・・。
言葉を溜める千歌。
言いたいことは自然と分かってしまう。俺はただ俺が思う言葉を千歌が言わないことを願うだけだった。
「カズくんのこと、好き」
言われてしまった。
千歌が俺に好意をもっていることには気づいていた。
有耶無耶にしていた俺が悪いのもある。だが、なんで今なんだ。
「ち・・・」
「分かってるよ」
「・・・え」
千歌は俺の言葉を遮る。
「分かってるよ。カズくんが私のことを友達としか思ってないことも。梨子ちゃんと付き合ってることも」
「・・・なん、で・・・」
千歌の言葉に俺は目眩がした。
バレていた、んだ・・・。
「・・・見ちゃったんだ。あの日、カズくんと梨子ちゃんがき、キスしてたの・・・」
「なっ・・・」
あれが見られていた・・・。
何か言おうとするが、何を言えばいいのか分からず、金魚のように口をパクパク動かすことしかできない。
「だから今のはチカの我儘なの。こんなこと言ってもただカズくんを困らせるだけだし、どうかなるなんて思ってない。それにカズくんと恋人になれるなんても。でもね」
千歌は唇をぐっ、と噛み締める。
「言わなきゃ、って。果南ちゃんたちがそうだったみたいに言わないと、って。言葉にしないと伝わないし、自分が苦しいもん。だから、ね?カズくん」
「・・・何?」
「チカのこと、フッて。カズくんの言葉でチカを」
千歌は笑う。苦しそうに。
でも、俺は言わなければならない。
お前にそんな気は無い、と。梨子が好きなんだ、と。
「俺は・・・」
何を言い淀んでいるんだ、俺は。
言わないと。千歌の勇気を無駄にしないために。
「俺は、梨子が好きなんだ。千歌のことをそういう目で見れない。千歌とは友達でいたい」
「うん・・・。ありがと・・・」
そんな顔で・・・。
そんな今にも泣きそうな顔で笑わないでくれ・・・。
「あはは・・・。フラレちゃったなぁ・・・」
「ごめん・・・」
「謝らないでよ。チカが、バカ、みたいじゃん」
「本当にバカだよ、千歌は・・・」
「えへへ。そっか・・・」
泣きそうな声で呟く千歌。
すると千歌は走ってその場から逃げようとする。
「千歌!」
思わず彼女の腕を掴み、引き止めてしまった。
そんなことをする資格なんてないのに。
「呼び止めるところじゃないだろ・・・、これ・・・」
「ごめん、でも!」
「やめて!カズくんは優しすぎるの!これだって泣きそうな千歌がほっとけないんでしょ!?そんなことされたら期待しちゃうじゃん!もしかしたら、って思うじゃん!」
千歌の言ったことは本当だ。
今の彼女を俺は放っておけない。
せめて何か、俺にもできることがあると思ったから。
「離して!今のそれはただ相手を傷つけるだけなんだよ!」
その言葉で俺は千歌の腕を離してしまう。
「ちゃんと友達としてカズくんのこと見るから。恋しないようにするから。・・・梨子ちゃんを大切にしてあげてね」
そう言って千歌は走っていった。
俺は・・・。
「俺は、どうすればよかったんだ・・・」
千歌の思い。
それは届くものではなかった。
楽しくても悲しくても。それでも夏は過ぎていく。