2人の夢の軌道   作:梨善

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〜前回のあらすじ〜
ライブが終わり、祭りももう少し。
楽しい時間は終わろうとしていた。


#49 優しさは時に人を傷つける

みんな着替え終わり、それぞれ残り少ない祭りを楽しみに出た。

 

ダイヤちゃん、ルビィ、花丸ちゃんと梨子、曜、善子と鞠莉ちゃん、果南ちゃんの3グループに別れて行った。

 

残ったのは俺と千歌だけ。ライブが始まる前に千歌から呼び出されていた件を聞くためだ。

 

「それで、千歌。どうしたの?」

「・・・・・・」

 

千歌は何も話さない。

 

「・・・何も無いなら俺は行くよ」

 

立ち去ろうとすると千歌は俺の手を掴み、引き止める。

 

「行っちゃヤダ・・・」

 

俯きながら千歌は呟く。

 

まいったな・・・。

 

俺はどうしたらいいのか分からず、頭をかく。

 

「・・・少し歩こうよ」

 

不意に千歌が言う。

 

「まあ、そうだね。腹減ったでしょ、なんか食べようか」

「・・・うん」

 

千歌と共に屋台の並ぶ道を歩いていく。

屋台は少しずつ店仕舞いを始めており、数も少なくなっている。

 

隣を歩いている千歌は相変わらず黙ったままで、どう話せばいいのか分からない。

 

「・・・りんご飴でも食べる?」

 

とりあえず目に止まったりんご飴の屋台。それを食べるかと聞いてみると、千歌は食べたいようで、頷く。

 

「OK。買ってくるよ」

「あ、お金・・・」

「いいよ。今日のご褒美だよ」

 

屋台に少しだけ並び、1つ買って急いで千歌の元に戻る。

 

「はい、これ」

「あ、ありがと・・・」

 

千歌はりんご飴を受け取ると少しだけかじる。

 

「さ、次は何を見ようか」

 

歩きながら少しおどけて言ってみると、千歌は俺の腕を掴んだ。

 

「どうかした?」

 

千歌は俯いたままだ。

 

「千歌?」

「私ね・・・」

「ん?」

「私、カズくんのこと・・・」

 

付近に人はいなくなっていて、千歌の小さな声がやけに響く。

 

やめてくれ・・・。言わないでくれ・・・。答えは1つしかないんだ・・・。

 

言葉を溜める千歌。

言いたいことは自然と分かってしまう。俺はただ俺が思う言葉を千歌が言わないことを願うだけだった。

 

「カズくんのこと、好き」

 

言われてしまった。

千歌が俺に好意をもっていることには気づいていた。

 

有耶無耶にしていた俺が悪いのもある。だが、なんで今なんだ。

 

「ち・・・」

「分かってるよ」

「・・・え」

 

千歌は俺の言葉を遮る。

 

「分かってるよ。カズくんが私のことを友達としか思ってないことも。梨子ちゃんと付き合ってることも」

「・・・なん、で・・・」

 

千歌の言葉に俺は目眩がした。

 

バレていた、んだ・・・。

 

「・・・見ちゃったんだ。あの日、カズくんと梨子ちゃんがき、キスしてたの・・・」

「なっ・・・」

 

あれが見られていた・・・。

 

何か言おうとするが、何を言えばいいのか分からず、金魚のように口をパクパク動かすことしかできない。

 

「だから今のはチカの我儘なの。こんなこと言ってもただカズくんを困らせるだけだし、どうかなるなんて思ってない。それにカズくんと恋人になれるなんても。でもね」

 

千歌は唇をぐっ、と噛み締める。

 

「言わなきゃ、って。果南ちゃんたちがそうだったみたいに言わないと、って。言葉にしないと伝わないし、自分が苦しいもん。だから、ね?カズくん」

「・・・何?」

「チカのこと、フッて。カズくんの言葉でチカを」

 

千歌は笑う。苦しそうに。

でも、俺は言わなければならない。

お前にそんな気は無い、と。梨子が好きなんだ、と。

 

「俺は・・・」

 

何を言い淀んでいるんだ、俺は。

言わないと。千歌の勇気を無駄にしないために。

 

「俺は、梨子が好きなんだ。千歌のことをそういう目で見れない。千歌とは友達でいたい」

「うん・・・。ありがと・・・」

 

そんな顔で・・・。

そんな今にも泣きそうな顔で笑わないでくれ・・・。

 

「あはは・・・。フラレちゃったなぁ・・・」

「ごめん・・・」

「謝らないでよ。チカが、バカ、みたいじゃん」

「本当にバカだよ、千歌は・・・」

「えへへ。そっか・・・」

 

泣きそうな声で呟く千歌。

すると千歌は走ってその場から逃げようとする。

 

「千歌!」

 

思わず彼女の腕を掴み、引き止めてしまった。

そんなことをする資格なんてないのに。

 

「呼び止めるところじゃないだろ・・・、これ・・・」

「ごめん、でも!」

「やめて!カズくんは優しすぎるの!これだって泣きそうな千歌がほっとけないんでしょ!?そんなことされたら期待しちゃうじゃん!もしかしたら、って思うじゃん!」

 

千歌の言ったことは本当だ。

今の彼女を俺は放っておけない。

せめて何か、俺にもできることがあると思ったから。

 

「離して!今のそれはただ相手を傷つけるだけなんだよ!」

 

その言葉で俺は千歌の腕を離してしまう。

 

「ちゃんと友達としてカズくんのこと見るから。恋しないようにするから。・・・梨子ちゃんを大切にしてあげてね」

 

そう言って千歌は走っていった。

 

俺は・・・。

 

「俺は、どうすればよかったんだ・・・」




千歌の思い。
それは届くものではなかった。

楽しくても悲しくても。それでも夏は過ぎていく。
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