2人の夢の軌道   作:梨善

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~前回のあらすじ~
Aqoursを離れることを決意した和哉。
これからAqoursと和哉たちは・・・。


#51 離別

「うん。そういうことだから」

『いいの?果南たちはなんて?』

「果南ちゃんとダイヤちゃんにも説明はしたよ」

 

俺は今、3年生たちに部活を、Aqoursの手伝いを辞める旨を伝えた。

もちろん果南ちゃんは怒った。でも千歌と、そして梨子との関係を話すとすんなりと俺の提案を受け入れてくれた。ダイヤちゃんも同様だ。

 

『そう、なのね・・・。悲しいけどそんなことがあればいづらいのも確かね・・・。和哉が決めたのなら仕方ないわ・・・』

 

どうやら鞠莉ちゃんは受け入れてくれるようだ。

 

『和哉には沢山迷惑をかけたから・・・。このくらいのワガママどうってことないわよ。1年生と2年生には私たちから説明はするとして、梨子との関係は伏せていた方がいいわよね?』

「できれば・・・。みんなが納得してくれないようなら話してもいいよ。俺から梨子には伝えておくから」

『ええ。また戻ってくるのよ・・・』

「え・・・?」

 

そこで電話は途切れてしまった。

 

「今更、戻れるもんか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

今日おそらく梨子と3年生から俺が部活を去るという連絡が入っている筈だ。

そう思った矢先だった。スマホが一気にメールを受信をした。案の定Aqoursのメンバーからだ。

 

「・・・俺には関係ないよ・・・」

 

メールを読まず、スマホをベッドに投げ捨てる。

 

「俺は間違ってない筈なんだ・・・」

 

考えても無駄だと思った俺は家を出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば日が暮れ、俺は1日中狩野川の河川敷に腰掛けていた。

 

「ここにいたんだ」

 

後ろから声をかけられ、振り向くとそこには不機嫌な表情をした曜がいた。

 

「曜こそ。何しにきたの?」

 

ぶっきらぼうに告げると、曜はさらに顔をしかめさせる。

 

「なんで練習に来なかったの?」

「理由、3年生から聞かなかったの?」

「質問に質問で返さないでよ。・・・聞いたよ。千歌ちゃんが最近無理している原因になったからでしょ?」

「そうだよ」

 

どうやら千歌がそうなってしまった理由と俺と梨子の関係は聞かされていないようだ。

 

「それだけじゃないんでしょ?言ったよね。変なことしないでって。教えて。本当は何があったのか」

 

曜は俺に詰め寄り、食らいつくように問いただす。

 

「・・・曜には関係ないよ」

「あるよ!私だって和哉くんの友達なんだよ!」

 

どうやら曜は引くつもりがないようだ。

こうなったら話して嫌でも納得させるしかないのかもしれない。

 

「・・・千歌に告白された。千歌をフって梨子と付き合ってる。これで満足?」

 

俺の言葉に対して曜は目を見開き、驚きを隠せていなかった。

 

「嘘・・・」

 

曜は少し震えた声で呟く。

 

「嘘じゃない。本当だよ」

「嘘だよ!千歌ちゃんはずっと和哉くんのことが好きだったんだよ!和哉くんもそれを分かってたから誰とも付き合ったりしなかったんでしょ!?」

「そんなわけあるもんか。俺はずっと梨子が忘れられなかった。それだけだよ」

「千歌ちゃんはどうするのさ!」

「そんなの千歌がどうこうするしかなでしょ」

「無責任すぎるよ!」

 

こいつは・・。千歌のことになるとすぐに周りが見えなくなって・・・。なんで俺がこんな言われなきゃいけないんだ・・・!

 

「フった相手なんて知ったことじゃないだろ!どうして俺がそこまでやらなくちゃいけないんだ!そもそも曜も曜だよ!いつもしつこく俺に口うるさく言って、馴れ馴れしく近づいて!千歌に常に付きまとって!うっとおしいんだよ!それに千歌のことになると周りがまるで見えなくなって!お前がなんとかすればいいだけだろ!Aqoursの時だってそうだ!あれも千歌のため!二言目には千歌千歌!お前の言葉に自分の意思はないのかよ!千歌のことしか考えられないのかよ!・・・そりゃそうだよ。お前は俺たちと違ってなんでもできる完璧超人だもんな。自分よりも周りの評価が大事だもんな!」

 

そこまで言って俺ははっ、とした。

いくら頭に血が上っていたからと言って思ってもないことを口走り、曜を傷つけてしまった。そして、その曜は蒼い瞳から涙を流していた。

 

「あ・・・。ちが・・・、今のは・・・」

 

俺は声を震わせながら、今の言葉を否定しようとするがうまく声が出ない。

 

「・・・っ!」

 

曜は涙を堪えることができないまま、振り向き走って行った。

 

「・・・クソッ・・・!」

 

自分への怒りと苛立ちを吐き捨てることしかできなかった。

 

pipipipipipipi・・・。

 

スマホが着信音を鳴らす。

特に誰がかけてきたのか確認もしないまま電話に出る。

 

「もしもし・・・」

『もしもし。どうしたの?声が暗いわ』

 

電話をかけてきたのは梨子だった。

 

「ごめん・・・」

『謝らないでよ。そっちに曜ちゃんが行ったと思うんだけど・・・』

「・・・・・・」

 

曜の名前が出て、俺は黙ってしまう。

 

『その反応だと、あまりよくないことになっちゃったかしら・・・』

「・・・うん」

 

梨子はお見通しみたいだ。

 

「曜に酷いこと言った・・・。あいつを泣かせた・・・」

『そう、なのね・・・。曜ちゃんは私で何とかするから。和哉くんは心の整理をしっかりしてね。私は、ううん。私たちはいつでも待ってるから』

 

待っている。

鞠莉ちゃんも言った言葉だ。

だけど今の俺は・・・。

 

「戻るなんて言えないよ・・・」

『だよね。だから、心の整理をするの。ゆっくりでいいから。また和哉くんとみんなで笑える日が来るのを私は待ってるから』

 

優しく。ただ包み込むように優しく話す梨子の声に俺は涙を流しそうになっていた。

彼女がいるだけで。彼女の声だけで俺はこんなにも心が救われる。そんな気がした。

 

「ありがとう、梨子」

『ううん。私なんかでよければいつでも話を聞くよ』

「・・・なんかじゃないよ」

『え?』

「梨子だから、話せるんだ」

 

俺がそう言うと梨子は黙り込んでしまった。

 

「梨子?」

『そ、そういうことだから!またね!』

 

やけに慌て、声を荒らげた梨子は電話を切ってしまった。

不思議に思いながらスマホをしまい、自宅への帰路につく。そして、赤く染まった空を見上げる。

 

梨子のおかげで気は楽になったけど。

けど。

 

「千歌にも曜にもあんなことを言ったんだ。戻れるわけがないんだよ・・・」

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