2人の夢の軌道   作:梨善

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〜前回のあらすじ〜
ピアノを弾ききり、コンクールを無事に終えた梨子。
梨子が不在のまま8人で地区予選に挑んだAqours。
そのパフォーマンスを見て涙する和哉。
果たしてAqoursの結果は?


#57 2つの結果

昨日の地区予選の結果発表は今日の昼にラブライブ!公式サイトで発表らしく、私は和哉くんと2人で結果を見ることにした、のだが・・・。

 

「いつまでうろうろしてるの?少しは落ち着いたら?」

「これが落ち着いていられるわけないでしょ」

 

さっきから部屋の中をグルグル歩き回り落ち着きが一切ない。

 

「気持ちは分かるけど、って来た!」

「っ!!待って!まだ心の準備できてない!!」

「うるさいわよ」

 

1人で騒いでいる和哉くんを一瞥してスマホに目を落とし、ゆっくりページをスクロールさせ『Aqours』の文字を探す。

 

「あっ・・・」

「ちょっ!?なんでそんな細い声出したの!?」

「あったよ・・・」

「What's?」

 

鞠莉ちゃん並みの流暢な発音。というか何故英語・・・。

んんっ。じゃなくて。

 

「あったよ。あったよ、Aqours!」

 

ばっ!と私の方へ飛び込むように近づいた彼はスマホの画面を覗き込む。

 

「本当だ・・・。ある・・・。予備予選を突破した・・・!」

「うん!」

「やっっっっっ!!!!・・・・・・・・・・・・たぁ・・・・・・・・・」

 

強くガッツポーズをするのかと思ったらそのままへなへな、と座り込む。

今日の彼は変だ。

 

「もう!さっきから変よ」

「あはは・・・。自分でもそう思うよ。でもそうなるくらい昨日のパフォーマンスは凄かったし、この結果は嬉しいんだ」

 

久しぶりに見た気がする彼の笑顔。

 

ああ、やっぱりその表情はとても落ち着く。安心するなぁ。

 

「うん。そうだね」

 

それにつられ、私も自然と笑顔になる。

 

「あ、そうだ。千歌ちゃんたちに電話してきていい?コンクールは大丈夫だったことと、みんなにおめでとう、って伝えたいの」

「うん。まだ直接おめでとう、って言えるほど開き直れてないから俺の分もお願いしていい?」

「もちろん」

 

こういうところで弱気になるのもかわいいかも・・・。

 

じゃなくて。早速電話をしないと。

 

『もしもし?』

「千歌ちゃん?予選突破おめでとう!」

『ありがとう!ピアノの方は?』

「うん・・・。ちゃんと弾けたよ。探していた曲が弾けた気がする」

『良かったね』

 

千歌ちゃんの優しい声を聞いて自分の言葉に更に自信を持てた気がする。

 

『じゃあ次は9人で歌おうよ!全員揃ってラブライブに!』

 

曜ちゃんの明るい声が届く。

曜ちゃんの件も上手く行ったようだ。

 

「そうね。9人で・・・!」

 

今日は左手に付けているシュシュ。それを見つめ、またみんなで歌えることを楽しみにする。

スマホを耳から離し、スピーカーモードにして和哉くんにも会話が聞けるようにする。少し驚いた表情をしたが、優しい表情でみんなの声に耳を傾け始めた。

 

『これで有名になって浦女を存続させるのですわ!』

『がんばルビィ!』

 

黒澤姉妹の元気な声。

 

『これは学校説明会も期待できそうだね!』

 

今の声は果南ちゃんだろう。確かにそろそろそんな時期になってもおかしくない。

 

『うん!Septemberに行うことにしたの』

 

鞠莉ちゃんがそう決めていたようで、果南ちゃんには少しだけ伝えていたようだ。

 

『きっと今回の予選で学校の名前も知れ渡ったはず』

 

ダイヤさんの自信満々の声に鞠莉ちゃんも賛同する。

 

『そうね。PVの閲覧数からすると説明会参加希望の生徒の数も・・・』

 

だが、鞠莉ちゃんの言葉は途切れ、次の言葉がなかなかやってこない。

 

『0・・・』

 

0。

鞠莉ちゃんの声は小さかったが、その言葉だけはやけに鮮明に聞こえた。

 

また・・・、0・・・。

 

『0・・・。0・・・だね・・・』

『そんな!』

 

ルビィちゃんの悲痛な声。

 

『嘘・・・。嘘でしょ!』

 

ダイヤさんの認めたくないという叫び。

 

「0・・・」

 

千歌ちゃんの弱い呟き。

 

0。

またこの数字が私たちを苦しめる。

 

ここから盛り下がってしまい、1度電話を切ることにした。

 

「うん・・・。本当だね」

 

和哉くんのスマホに映っている画面には浦の星のホームページ。その説明会案内ページの参加人数は見間違えでもなく0だった。

 

「そう、なのね」

「でも、まだ諦めるには早い。そうでしょ?」

 

ニカッ、と笑う彼の言葉に私は頷く。

 

「うん。まだラブライブに出場した訳じゃない。まだまだみんなに私たちのことを知ってもらう機会は沢山あるものね」

「そういうこと」

「あ、そうそう。私ちょっと出掛けてくるわ」

「ん?どこに行くの?」

「買い物かな」

「だったら着いてくよ。荷物持ちくらいにはなれるし」

「ううん!大丈夫!和哉くんはゆっくりしてて!無理にここまで連れてきたのは私なんだし!じゃあね!」

 

私は逃げるように部屋を後にする。

 

和哉くんには悪いけどここからは戦い。普段沼津では手に入れられず、通販を頼るしかなかったがここは東京。眠れるお宝を掴み取る!!

 

そう、それは壁本。

乙女の憧れの夢の結晶!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特集雑誌や同人誌といったお宝を両手一杯に持ち帰り、1つ1つ確認していた夜。急遽、千歌ちゃんからAqoursのグループ通話が始まった。

 

『みんな集まった?あのね、明日みんなで東京に行きたいんだ!』

 

またいきなりこの子は何を言い出すのだろう・・・。

 

『見つけたいんだ!μ'sと私たちのどこが違うのか。μ'sがどうして音ノ木坂を救えたのか。何が凄かったのか。それをこの目で見て、みんなで考えたいの!』

 

確かにそれができればAqoursの成長にもなると思う。でもそう簡単に行こう、って言って行ける距離では・・・。

 

『いいんじゃない?』

 

果南ちゃんは乗り気のようだ。

 

『つまり、再びまたあの魔都に降り立つということね』

 

よっちゃんはノリノリだ。

 

「わ、私は1日帰るのを伸ばせばいいけど・・・」

『けど?』

「ううん!詳しく決まったらまた教えてね!」

 

誤魔化すように通話を切る。

 

まずい・・・。非常にまずい。今この状態で、これを持ったままみんなに会うのは・・・。まずい・・・!このお宝をどうにかしないと!!あの感じだと明日確実にこっちにやってくる!フットワーク軽過ぎない!?

 

「梨子ー。帰ってる?」

「わひゃぁ!!??」

 

いきなりこの部屋に入ってきた和哉くん。

咄嗟にお宝の前に立ち、体で隠す。

 

「ど、どうしたの?」

「帰り遅かったから。で、何を買っ・・・・・・。あぁ・・・」

「な、何?」

「いや・・・、別に・・・。うん、俺はいいと思うよ。うん。否定する気はないから・・・。うん」

 

ば、バレてたーーーーーーー!?いつ!?いつからバレていたの!?

 

「じゃあ、俺は寝るわ」

「ま、待って!明日!明日なんだけど!」

 

確かにこのことがバレたのは私にとってとてつもない誤算だ。だけどそれ以上に彼にも伝えないといけないことがある。

 

「千歌ちゃんたち、明日東京に来る、かも・・・?」

「はい?どうして急に・・・」

「探したいらしいよ?」

「何を?」

「μ's・・・?」

「えぇ・・・」

 

どうやら彼にとっても私にとっても波乱の1日になりそうだ。

 

side out




まだまだこの東京の地では一波乱ありそうな予感・・・。
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