2人の夢の軌道   作:梨善

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〜前回のあらすじ〜
予備予選を突破したAqours。
ピアノも成功した梨子。
Aqoursはμ'sを探すために東京へやってきた。


#58 Aqours in Tokyo!

みんなが沼津からいきなり東京へやってくると梨子から聞き、東京駅で待ち合わせをすることになった。

正直な話、俺は乗り気じゃない。歌から伝わったみんなの気持ちは確かに理解した。だがあんないざこざがあった後にすんなり元通り、とはならない。というか俺ができない。なんとか避けようと試みるも梨子が近くから離れようとせず、逃げることはできなかった。

 

そんなこんなで東京駅。

今日はみんなと合流した後に千歌の言うμ'sを探し、終わったら沼津にそのまま帰るというスケジュールだから手荷物が多い。

運良く待ち合わせ場のコインロッカーが空いていたからそこに荷物を預け、千歌たちを待つつもりだったのだが・・・。

 

「ふんっ!!んにゅ〜!!」

 

梨子はコインロッカーと格闘していた。

静かにみんなと会うための気持ちの整理をしようと思っていたのにそんな場合じゃないようだ。

 

「・・・ねえ、それは流石に1箇所に入んないと思う」

「し、仕方ないじゃない!空いているのここしかないんだし!みんなが来る前にしまわないと!んんーーーー!!」

 

梨子が無理矢理コインロッカーに詰め込もうとしているのは彼女が買い漁り紙袋いっぱいに入った同人誌。それが2つ。それなりの重さがあったと思うが梨子はそれを感じさせないように歩いていた。

 

「梨子ちゃん?」

 

この声、千歌だ。

 

「はっ!ち、千歌ちゃん・・・。みんなも・・・」

 

引きつった笑顔で後ろを振り向く梨子。

 

「何入れてるのー?」

 

純粋な千歌の疑問。

そりゃあれだけ必死に詰め込もうとしてるんだ。気にならない方がおかしい。

 

「えっ!?えーっとー。お土産とかお土産とかお土産とか!?」

「わーっ!お土産!?」

 

急遽近づいてきた千歌に驚いた梨子は紙袋を離してしまう。そのせいで紙袋は床に落ち、中から同人誌が飛び出す。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!??????」

 

絶叫する梨子。

 

どこから出てるんですかね、その声。

 

「何ー?」

 

見たことの無いものに興味が移った千歌は床の同人誌を手に取ろうとする。

 

「うわっ!何!?見えない!見えないよ〜!」

 

咄嗟に梨子は千歌の目を後ろから両手で隠し、何としてでも見られるのを阻止していた。

 

・・・だったらこんなに買わなければよかったじゃん。と言うのはお門違いだろうか・・・。

 

んんっ。とにかくあの2人はそのままでいいとして、みんなここに居るんだ。緊張と不安で心臓が破裂しそうになっているが言わなきゃいけないことをみんなに言わないと。

 

「みんな・・・」

 

俺が声をかけるとゆっくり俺の方を見る7人。正直嫌な顔とかされるかと思ったが、それとは全く逆で笑顔だった。

 

「ごめん!いきなり抜けるとか言って!そのせいでみんなにどれだけ迷惑をかけたか・・・」

 

周りに人がいることなんて忘れて俺は声を張り上げ、深深と頭を下げる。

 

コツコツ、と靴の音が近づいてくる。その音は俺のすぐ前で止まる。

 

「はぁ・・・。全く。体ばっかり大きくなってさ。昔と変わらず自分のことはなかなか言ってくれないよね」

「果南、ちゃん・・・」

 

声から彼女だと判断する。声からは怒っているような様子は感じられず、懐かしんでいるような気がする。

 

「わっ・・・」

 

すると果南ちゃんは俺の頭をワシワシと撫で始める。

 

「私が言えたことじゃないけど、1人で溜め込まないの。みんなカズの力になりたいんだよ」

「果南ちゃん」

 

頭から手が離れる同時に顔を上げるとみんなの笑顔がさっきよりも強くなっていた。

 

「ありがとう、みんな・・・!」

 

みんなの温かさで涙が溢れそうになる。だけどここで泣いてちゃダメだ。まだあと一つやらなきゃいけないことがある。

 

「曜、ちょっと来てくれない?」

 

少し離れたところで俺を見ていた曜に話しかける。

悩んだように顔を伏せた彼女だが、直ぐに顔を上げ、俺を真っ直ぐ見る。

 

「うん。分かった」

 

みんなも察してくれたようで特に触れず、梨子と千歌の方へ向かって行った。

 

曜を連れ、1度駅の外へ。そこにはあまり人も居ないし、話せそうだ。

 

「ごめん!」

 

開口一番に俺は曜へ頭を下げる。

 

「・・・・・・」

 

曜は何も言わず、俺の次の言葉を待っている。

 

「あの時はどうしたらいいか分からなくて、頭の中ぐちゃぐちゃで。曜には酷いこと言っちゃって・・・。本当にごめん!」

「あの時ね・・・」

 

曜は独り言のように言葉を紡ぎ始めた。

 

「和哉くんがAqoursを抜ける、って言った時、和哉くんだけはそんなこと言わない、って思ってたのにあんなこと言われて本当に悲しかったんだよ」

「ごめん・・・」

「そんな事言わない人だってことは分かってるけど心のどこかで思ってた本音だと思う」

 

淡々と話す曜の言葉を黙って聞き続ける。

 

「私も自分を押さえて周りに合わせるところあるからそういう風に見られてもおかしくないって鞠莉ちゃんと話して気づいたの。だから一方的に被害者ぶった私も悪いのごめん」

 

少しだけ顔を上げて曜を見てみると彼女も頭を下げていた。すると曜も少し顔を上げたことで目が合う。

 

「「ぷっ・・・、あははははははははは!」」

 

2人して謝っている姿が面白くて笑いだしてしまった。

 

「これからもよろしくね、和哉くん!」

「うん、こちらこそ!」

 

曜と握手を交わし、2人でみんなの元へ戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行きましょうか!」

 

自分の荷物をなんとかコインロッカーに押し込めた梨子。

 

「とは言ってもまずどこに行く?」

 

曜の疑問は最もだ。

μ'sを探すと言ったってどこから当たるべきかなんて検討もつかない。強いて言うなら・・・、あそこかな。

 

「Tower?Tree?Hills?」

「遊びに行くのではありませんわ」

 

観光したいだけの鞠莉ちゃんにダイヤちゃんが間髪入れずに否定する。

 

「そうだよ!」

「うわっ、なんだその顔」

 

パンダのように目の周りだけ色を変えた千歌がそう言う。

パンダは黒だが、千歌は赤くなっている。

 

何があったんだ・・・。

 

「リリーが落としたものを千歌に見せまいと押さえつけた結果よ」

 

腕を頭の後ろで組んで、隣に立っている善子が耳元で呟く。

 

「ああ・・・。なるほど・・・」

「ふぇ?何?」

「いや、なんでもないよ・・・。んで、どこに行くの?」

「うん!まずは神社!」

「また?」

 

ルビィが不思議そうに呟く。

確かにあそこはμ'sが練習場所にしていたらしいし、何かあるかもしれない。

 

「うん。実はね、ある人に話を聞きたくてすっごい調べたんだ!そしたら会ってくれるって!」

「ある人?誰ずら?」

「それは会ってのお楽しみぃー」

 

ずいっ、と花丸ちゃんに顔を近づける千歌。それに対し花丸ちゃんは引き気味な笑みを浮かべる。

あの顔で迫られたらそりゃそうなる。

 

「話を聞くにはうってつけの人だよ!」

 

それにしてもある人、うってつけの人、か。神田明神でしょ・・・。もしかすると・・・。まさか・・・。

 

「ダイヤちゃん・・・。ルビィ・・・。まさか・・・」

「ええ。そのまさかかも知れません!」

「まさかかも!」

 

黒澤姉妹と顔を見合わせ、期待に胸を膨らませる。

 

「こうしちゃいられない・・・。ダイヤちゃん!ルビィ!」

「はい!」

「うん!」

 

俺とダイヤちゃんとルビィの3人は駆け出す。

 

「ちょっ!どこ行くのさ!」

 

果南ちゃんが背中から叫ぶ。

 

「ちょっと買い物!みんなは先に行ってて!」

「えぇ!?」

「和哉さん!急ぎますわよ!」

「分かってる!それじゃっ!」

 

そう言って俺たちはその場を後にする。

買うものなんて決まってるでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神田明神正面の大きな鳥居を潜り、俺たちはさっき買った色紙とサインペンを胸に抱え、勢いよく敷地内へと入っていく。

 

「「「まさか!まさか!!まさか!!!まさか!!!!」」」

 

祭壇の前に立っている2人組。まだ距離があり、細かい背格好はよく分からないがあの人たちが千歌の言っていた人たちだろう。

俺たちの興奮が最高潮になったタイミングで2人組がこちらを振り返る。

 

「お久しぶりです」

「なんでお前らなんだよ!?」

 

そこに居たのは函館のスクールアイドル、Saint Snowの鹿角聖良と鹿角理亞だった。

 

「なんだとは何よ!」

 

ちっちゃい方の鹿角理亞が敵意丸出しで俺に怒鳴る。

 

「「なーんだー・・・」」

 

黒澤姉妹もガッカリしてしまい、背中合わせで座り込んでしまう。

 

「誰だと思ってたの?」

 

鞠莉ちゃんの不思議そうな声で考えを改める。

そりゃそうだ。あんなレジェンドスクールアイドルμ'sと連絡なんて取れるわけない。

 

「ということで、聖良さん、理亜ちゃん、今日はよろしくお願いします!」

 

千歌が頭を深々と下げる。

 

「ええ、こちらこそ。有意義な時間にしましょう」

 

丁寧な仕草。どこにも失礼な動作なんてないが、何故か癇に障る。やっぱり俺はこの人が苦手だ。

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