ということで以前書きあげてまたどこかのタイミングで投稿しないとなー、と思っていたものを投稿します。
あの日の自分と
沼津駅の隣の駅、三島駅。
その9番ホームで私、松浦果南は電車の到着を待っていた。
最近何かと悩むことが多い。
進路のこと、Aqoursのこと、私のこと。
言い出したらキリがない。
これも思春期特有の悩みなのかもしれない。
電車が到着して、2人用の椅子が向かいあって配置してあるのを1人で使う。
人が少ないとこれが普通のことなのかもしれないが、普段電車なんて使わない私からしたら少し得した気分になる。
車内にアナウンスが流れ、電車が動き出す。
行き先は特に無く、ふと電車に乗ろう、そんなことを思っただけだ。
船よりも速い電車の窓から見える景色で色々なものが流れていく。最初は新鮮だったが、時間が経つと次第に興味が薄れ、窓淵に肘を置き、景色を見つめていた。
「おねえちゃん!」
声をかけられ、隣を見ると小学校に上がったばかりの小さな女の子がいた。
その子は髪を頭のてっぺんでお団子にまとめている。ニカッ、と笑うと前歯が1本無かった。丁度生え変わりの時期なのかもしれない。
・・・・・・ていうか、これ、小さい頃の私じゃん!?
「えっ、えぇ?わ、私?」
「そうなの?」
女の子は首を傾げる。
あ、あれ?勘違いだったのかな。
ふと、近くの椅子を見ると、後8人女の子と男の子が1人がいて、みんな私を見ている。
よく見るとみんなAqoursメンバーの面影がある。
鞠莉とダイヤ、千歌に曜、ルビィとカズは見間違えるわけがない。
この子たちは、Aqoursのみんなの幼少期だ。
どういうこと?夢?それとも本当におかしな世界に迷い込んじゃったってこと?まさか・・・。善子じゃあるまいし。
えっと、こういう時ってまずは情報収集が基本なんだっけ・・・?
「ねぇ、あなたたちはどこから来たの?」
善子がよくルビィや花丸に言っていたことをふと思い出す。とりあえず、一番近くにいた私?に話しかける。
「うーん、ずっととーくからかな!」
えぇっ・・・。答えになってないような・・・。
と、とりあえず、他の子にも聞いてみよう。
「じゃあ、黒髪のあなた。教えて?」
私はダイヤの目を見て話しかける。
だが、私はここで1つ、昔のことを思い出した。
「ピギャッ!?」
ですよねー・・・。
ダイヤはそのまま鞠莉の背中に隠れてしまった。
幼い頃のダイヤは人一倍臆病な子だ。その証拠に今にも泣き出してしまいそうなダイヤを鞠莉が宥めている。
もう、めちゃくちゃだよ・・・、と頭を抱えると、千歌と曜が興味津々に私を見ていた。
「どうしたの?」
「おねーちゃん、なんだかかなんちゃんににてるよね?」
「あ!よーちゃんもおもった?ちかもね、そんなきがしてたの!」
似てるじゃなくて本人なんだけどね、と言うのはなんか、雰囲気的に良くない気がする。
というか、この幼馴染みかわいい。
ハグしたい。
「ほら、りこ。だいじょーぶだって」
声のした方を見るとカズが椅子の影に隠れている梨子に声をかけていた。
「うぅっ。しらないひとだからこわいよ・・・」
梨子は今にも泣き出してしまいそうだ。
カズからも聞いたが、昔の梨子はとても引っ込み思案で臆病だったようだ。今、目の前にしているのを見ると納得だ。よく千歌を叱っている成長した梨子とは大違いだ。
小さい頃はツインテールだったんだ。
なんだか、ルビィに似てるような・・・。
「えっと・・・。どうかしたの?」
梨子とカズに近寄って、できるだけ目線を合わせようとしゃがんで話しかける。
「ひっ・・・!うぅっ・・・。・・・グスっ」
「あぁっ!?ごめん!泣かないで!」
余程私が怖いのだろうか、カズの背中に隠れて震えていた。
カズも背中で泣いている梨子をどうしよう、と困っているみたいだ。
「おねぇさん、ごめんなさい。はじめてあうひとだからビックリしちゃったんだとおもうんだけど・・・」
昔からカズはこんな感じだったんだ。
何かと面倒見が良くて、しっかりしてて。
私とカズが初めて会った時の話を梨子にしたら驚かれたのも頷ける。
「あー、ごめんね。悪気はないんだ」
「うん。分かってるよ!」
ニパッ、と笑うカズ。
純粋すぎるっ!かわいい!ハグしたい!
んんっ・・・。じゃなくて。
とにかく泣いてしまった梨子はカズに任せよう。
そう言えば、ルビィたちは・・・。
「ずらぁ!」
「・・・ぅゅ・・・」
「ぎらん!」
うん。いつも通り仲良しで安心だ。
「ぷっ・・・」
姿は違うけど、今のみんなと同じなんだ、と思ってしまうと不思議と笑いが吹き出してしまった。
みんな自由でひとりひとりが何だかんだ楽しそうで。
確かに今悩んでることは大事なこと。だけど、まだ分からないことでくよくよ悩むなんて私らしくない!私だってアイドルなんだ。笑顔で明日を歌わなきゃね。
「おねえちゃん、やっと笑ったね!」
声をかけてきたのは小さな私。
「そっか。私、笑ってなかったんだね」
「うん。こたえはでた?」
「お陰様で。ありがとう」
「えっへへ」
小さな私は頭を撫でながら照れている。
すると、彼女は手を差し出してきた。少し、不思議に思いながらも、その手を取ると、触れた手から光が溢れだした。
「な、なに!?」
「だいじょーぶ。ためいきもたまにでちゃうけど、これからワクワクとかドキドキとか、たのしいことがいっぱいまってるよ!がんばってね、わたし!」
「・・・うん。頑張るよ。私も頑張ってね」
「・・・・・・・・・さ・・・。・・・・・・え・・・・・・ん・・・」
誰かが呼んでる。
その声で私の意識はハッキリする。
「あ、私・・・。寝てたんだ・・・」
「よく寝てたね、お姉さん」
私を呼んでいたのは頭の後ろで少し青い黒髪をお団子にした女性の駅員さんだ。
「この電車、ここが終点だよ」
「あ!ごめんなさい!」
私は飛び起きる。
「幸せそうに寝てたけど、余程いい夢を見てたみたいだね」
「あはは・・・。他の人からしたらどうか分かりませんが、私にとってはいい夢でした」
「へぇ、どんな?」
「励まされたんです。とても意外な人に」
「そっか。それはきっと貴女の道標になるよ。私もそんなことあったから」
「そうなんですか・・・」
駅員さんはまるで自分のことを話すように私に言った。
それに、この人。少し他人とは思えない。
「ささっ。もう降りないと。回送だから乗せていけないよ」
「あ、はい。ありがとうございました」
「ふふっ。頑張れ」
再び電車に揺られ、私は伊豆長岡駅で降り、駅の外でうーん、と背伸びをする。
「果南ちゃん!」
声をかけられ、そちらを見ると幼馴染みがいた。
「千歌。よく分かったね」
「えへへ。なんとなくね」
「そっか」
千歌と話しているとその後ろからわざとらしく大きな咳払いが聞こえた。
みんな、ここに来ていたようだ。
みんなの顔を見て私は安心する。
やっぱり、ここが私の居場所なんだ、って。
それぞれ私に一言言って、鞠莉の帰りましょう、の言葉でみんな町に向かって歩き出す。
その後ろをついて行こう、と歩き出した時、遠くの空から汽笛が聞こえた気がした。
私は振り向き、空を見るとそこには何も無いけど、確かに何かが通ったあとがあるように見えた。
なんとなく私は察し、クスッ、と笑う。
「果南ちゃーん!」
あ、カズが呼んでる。行かないと。
「ねえ、カズ」
「ん?」
「私、歌詞浮かんだんだけど、曲作り手伝って貰えない?」
「嘘でしょ?果南ちゃんが歌詞!?」
「・・・怒るよ。私をなんだと思って・・・」
「ごめんごめん。うん、協力するよ」
「ありがとう!」
今日は助けられっぱなしだったから、いつかお礼をちゃんと言わないとね。
レールはどこまでも続いてる。
私の思いを乗せて。未来に向かって。
少し変わったお話でしたね。
いかがでしたでしょう?
未来のことに悩むこの季節。
少し立ち止まって今と未来、そして過去を見つめてみるのはどうでしょうか?