以前言っていたホワイトデーのifエンドです!
今回は千歌のお話です。
「ただいま・・・」
いつものように残業をこなし、家に帰宅すると既に22時を過ぎていた。
「おかえり〜。ご飯できてるよ。あ、先にお風呂がいい?」
玄関にで迎えに来たのはエプロン姿の俺の妻、千歌。
高校の時のような活発な雰囲気は変わり、落ち着いた女性に成長して、髪も伸ばし、どことなく志満さんに似てきた気がする。
「そうだね。先に風呂もらうわ」
「はーい。着替え用意しておくね」
千歌は楽しそうにパタパタと走って行った。
「・・・なんか、テンション高いな」
何か千歌が企んでいるんだろうな、と思いながら浴室に向かい、服を脱ぐ。
「くっはぁ〜・・・!いい湯・・・」
浴槽に浸かり、少し結露のできた天井を見上げる。
すると。
「えへへ〜、おじゃましまーす・・・」
「ち、千歌!?」
少し恥ずかしそうにしながら、体にタオルを巻いた千歌が浴室に入ってきて、思わず俺は千歌から背を向ける。
「ち、チカもお風呂まだだったから、一緒に入ろーかなー、なんて・・・」
「だからって、入ってくる必要はないでしょ・・・」
「い、いいじゃん・・・。ふ、ふーふのイトナミなのだ・・・」
「口調、昔みたいになってるよ・・・。恥ずかしいなら、無理しなくていいじゃんか・・・」
「むぅ・・・。てぇーい!」
千歌は何か叫ぶと浴槽に無理矢理入ってくる。
「こうすれば暖かいじゃん・・・」
千歌は俺の背中にピタッ、と抱きつき、体を押し付けてきた。
「・・・うん、暖かい。でもさ、押し付け過ぎじゃない?」
背中に伝わる千歌の柔らかくて大きなもの。
仕事で疲れた体には少しばかり刺激が強い。
「・・・わざとしてるの、バカ・・・」
「バカなこと言って・・・」
俺は千歌の手をほどき、立ち上がる。
「上がるの?」
「体洗うだけだよ」
「だったら、私が背中洗うよ!」
千歌はキリッ、とした顔で手を上げる。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うん!任せてよ!」
千歌も浴槽から上がり、タオルにボディソープを付け、泡立て始める。
「じゃあ、いくよー」
千歌は俺の背中に回り、ゆっくりタオルで俺の背中を擦り始めた。
「どーお?気持ちいい?」
「うん、いい感じ」
「良かった。こういうこと、やったことなかったからやってみたかったんだ」
「そ、そっか・・・」
千歌は鼻歌混じりに俺の体を洗い続ける。
他人に洗ってもらう経験の記憶なんて全くないから複雑な気分だ。
「はい、終わり。前もやろうか?」
「前はいいよ。自分でやる」
「はーい。私はもう少し浸かってようかな」
千歌はもう一度浴槽に入ると鼻歌を再び歌い始めた。
「それ、『夢で夜空を照らしたい』?」
「そうだよ。初めて作ったPVの曲だから思い入れがあるんだ」
「そっか」
「懐かしいなー。あの頃は夢中になって色んなことやって。今、私がこうやってカズくんと一緒に居れるのってスクールアイドルのおかげだよ」
千歌は鼻歌をやめ、昔を懐かしみながら小さく微笑む。
「確かにね。そういや、千歌はいつから俺のこと好きだったの?」
「えぇ!?それ、聞く?」
「別にいいじゃんか。今更恥ずかしがるような仲じゃないし」
「そうだけど・・・」
千歌はうー、と唸りながら、湯に顔を半分沈める。
「笑わない?」
「笑う必要ないでしょ」
「・・・中学生の時から」
「そんなに前からだったんだ」
「うん・・・」
千歌は顔を真っ赤にしていた。そんな千歌を見ながら俺は笑い、髪を洗い始めることにした。
「全然気づかなかったよ」
「鈍すぎるよ・・・。いつ気づいたの?」
「えっと・・・。バレンタインでチョコ貰った時かな・・・」
「えぇーー!?」
千歌は驚いた声を上げ、立ち上がると同時にタオルが取れ、千歌の一糸まとわぬ姿が目の前に広がる。
「ちょっ!?前!!」
「何回も見てるじゃん!」
俺は咄嗟に顔を逸らすが、千歌は俺に近寄ると、俺の顔を掴み、まっすぐ目を見る。
「それって高2の時だよね。よーちゃんと梨子ちゃんよりも私を選んでくれた時のやつだよね。それまで全くの全くのまーったく!気づいてなかったの?」
「う、うん・・・」
「はぁぁぁぁ・・・」
千歌は顔を離すと、物凄いため息をついた。
「ち、千歌・・・?」
「ふん!」
千歌はささっ、と体と髪を洗うと浴室から出ていってしまった。
「・・・なんだったんだ?」
風呂から上がると千歌はリビングのテーブルの近くに膝を抱えて座り、不貞腐れていた。怒りん坊大会だ。
だが、律儀なことに2人は分の夕飯を温め、テーブルの上に並べてくれていた。
「まだ食べてなかったの?」
「1人で食べても、美味しくないもん」
「そっか」
俺は首に下げたタオルで髪を拭きながら千歌の隣に座る。
「なんで不機嫌なの?」
「ちょっとは考えてみたら?」
千歌はふいっ、と顔を背けてしまった。
「・・・ご飯、食べようよ」
「先にいいよ」
「2人で食べたいじゃんか」
「むぅ・・・」
千歌は頬を膨らませ、箸を手に取り、食べ始める。
話しかけても返事も適当でなかなか機嫌を治してくれない。
少し空気が悪いまま食事が終わり、あとは寝るだけだ。
「お皿、水につけておいて。すぐに洗っちゃうから」
「うん」
素っ気なく言われたことに少ししょぼん、としながら大人しく皿を流し場に持っていく。
「ねぇ、カズくん」
「ん?」
台所を出ようとした時に千歌が目の前に立って、俺の目を真っ直ぐに見る。
「今日、何の日か覚えてる?」
こいつはそれを聞いてくるのか・・・。
俺から言い出そうとしたのに、先を越されてしまった。
「結婚記念日だよ」
「嘘・・・。覚えてたの?」
千歌は信じられないと言った顔で口を手で隠す。
「俺をなんだと思って・・・。今日は遅くなったし、本当に悪いのことしたって思ってるよ」
「ううん。チカの方こそ怒って・・・。仕方ないのは分かってるけど、さっきの話聞いてたらカズくん鈍いから忘れてるんじゃないかって・・・」
「忘れるわけ、ないだろ」
俺は千歌の肩を掴み、キスをする。すると千歌は始めてした時のように顔を真っ赤にしていた。
「ずるいよ・・・」
「そんなことないさ」
俺は千歌を抱き上げ、寝室まで運ぶと、ベッドに横たわらせ、その上に覆いかぶさるようにまたがる。
「ま、待って・・・。まだお皿洗っ・・・んむっ」
瞳を潤わせて話す千歌の唇を強引に自分の唇で塞ぐ。
「ぷはっ・・・。そんなの、明日でいいよ。今日は思いっきり、さ」
「でも、カズくん明日も仕事でしょ?ダメだって・・・」
「知らない。今は千歌を思いっきり感じたい」
「ば、ばか・・・」
いつもの時間に起き、いつもの時間に千歌の作ってくれた朝食を食べ、いつもの時間に弁当を持って家を出る。・・・はずだったのだが。
「行ってきます」
「カズくん!忘れ物だよ!」
「え?」
部屋着にエプロンを着けた千歌が家を出る直前に声をかけてきた。
俺は言われて鞄の中を確認する。だが、特に忘れ物は見当たらない。
「ちゃんと持ってるけど・・・」
「ふふっ。これだよ」
千歌は笑いながら背伸びし、俺に顔を近づけるとキスをした。
「いってらっしゃい!」
「・・・・・・」
俺はスマホを取り出し、電話をかける。
「おはようございます、北野です。はい、すみません。妻の体調が悪く、お休みを頂きたいのですが。ええ。はい。ありがとうございます。失礼します」
通話を切り、千歌を見る。
「ほぇ?」
何が何だか、と言った顔をしていた。
「千歌が悪いから」
俺は鞄のを玄関に起き、そのまま抱き抱えると、寝室に向かう。
「え!?ちょっ、カズくん!?」
「昨日の今日であんなことする千歌のせいだよ」
「えぇー!?」
「たっぷり可愛がってやるから」
俺は今、最高に幸せだ。
と、まあこのような感じで残りの梨子と曜も書いていきます。
嫁千歌ちゃん、絶対に良妻になりそう。子供ができたらさらに良い母、良い妻になりそう。